新婚夫婦達の休日①
目覚め。
それは柔らかな何か口に触れる事によってもたらされた。
何度も触れたがあるような、俺の欲を煽る何か。
むむ、これは…
「!?」
目を開くと、そこには一人の美少女がいた。
まだまだあどけない顔をこちらに向けて、微笑んでいる。
この顔、この仕草…四葉だ。
昨日(今日)熱い一夜を共に過ごした、素敵な嫁だ。
そんな四葉は、俺が起きた事に気付くと、ニコッと笑って話しかけてくる。
「…おはよ、風太郎。」
「お、おぅ…」
一言で十分だった。
俺はゆっくりと毛布から出て、服を来て、部屋の真ん中に立つ。
叫んだ。
「新婚生活さいこぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「うるさぁぁいぃぃぃ…」
四葉が心底嫌そうに耳を塞ぎながら枕に蹲る。
バカめ。その行為すらも俺をワフワフさせる材料である事に気付いてないな?
なんて四葉よりよっぽどバカな事を考えていると、突然部屋のドアが開いた。
「朝からうるっさいわね!結局普段と変わらないでしょ!」
「おぉ、二乃か。おっはー」
「おっはー…じゃないわよ!う る さ い の!近所迷惑!」
突然世界中の幸せに向かって叫んだ俺に、起こしに来てくれたニ乃からの雷が落ちる。
しかし、そんな嵐にも負けじと応戦する。
「分かってないなぁニ乃。恋人、という関係も素敵だが、朝起きたら裸の妻が笑っている、というシチュエーションは正に男にとっての理想!夢想!幻想だがしかぁぁし!俺は今その幻想を掴み、現実として引き寄せた!どうだ、分からないか!?」
「ちょっと何言ってるかよく分からない。」
「私も分かんないかな…」
「えぇぇ分かってよぉぉぉ。」
「…なんか風太郎、結婚してからキャラ崩壊が激しいね。」
力強くプレゼンした筈なのだが、良く分からないと一蹴されてしまった。
悔しいのと甘えたかったので駄々をこねてみたら、キャラ崩壊と言われる始末。
俺ってそんな真面目キャラだったか…?
いや、仕方ないな。何故なら…
「仕方ないわ、作者も書くのが久しぶりすぎて、この小説内ではどんなキャラだったのか見失ってるのよ。」
「二乃?何を言ってるの?」
「何でもない。…もういいわ。朝ごはんが出来てるから早く来てね、あ・な・た♡」
どうやら言いたい事はニ乃が全て言ってくれたようだ。
恩義を感じないでもないが、実は俺はもう少しイチャイチャしたいわがままモードなのだ。
すまない、朝食達よ…
取り敢えず、返事はしておく。
「すぐ行くよぉーう」
扉がしまった後も、俺の顔はにやけっぱなしだった。
ヤバい、最近本格的に真面目キャラが崩壊しつつある。
なんとか厳格な教師だった過去の俺を取り戻さなければ…
「…ドアがしまった瞬間大きくなってる。風太郎はやっぱりエッチだね。」
「あ。」
意図せず膨らんだ股間に、思わず呆れてしまう。
そんな俺をよそに、四葉は股間をまじまじと見つめながら、手をクイクイッと振る。
四葉の方に向かうと、上目遣いで一言。
「出すだけね。すぐ終わらせて、早くご飯食べよ?」
「…すまない、頼む。」
何故だろう、昔の俺より今の四葉の方が人間として完成されてる。
…まぁ、今は目の前の快楽を堪能するとしよう。
ちなみに、結局長引いて3回出したのは秘密だ。
☆★☆
「あ、おっはー、風太郎君。」
「おぉ…おはよう。」
廊下を歩いていると、同じく通りかかった一花と会った。
もうメイクは済んでいて、佇まいはプロの風格を感じさせる。
「やけにげっそりしてるね。さては、四葉に絞られたな?」
「さてはも何も、ご名答だ。」
「それは重畳、無問題。…あれ、四葉は?ハッ、まさか、今頃部屋で縛られて放置…!?」
「んな訳無ぇだろ。着替え中だ。」
ただし言葉からはプロの風格など欠片も感じられなく、分かるのはこいつが品性の無いただのMだって事くらいだ。あ、プレイはSだよ?
「風太郎君は相変わらず、誰に向かって何の忠告をしてるの?」
「あぁ、いや、何でもない。」
いかんいかん。
この世界の心理に気付くのは、俺と世界戦の狭間を行き来したニ乃だけでいい。
そんな事は置いといて。
とにかく俺はリビングに向かわなければいけない。
今頃二乃は「料理が冷めたじゃないの!」といった感じでカンカンだろう。
ヤバい、それだけは避けなければ。
今ドアを開け、風太郎ゴール!結果は…
「遅いわよ!一体いつまでイチャついてたの!?」
あぁぁっと間に合わなかったぁぁぁ!
これは、料理も冷めてしまったかぁ!?
_と思ったが、実際に料理を見てみるとそこには、湯気の立ち上る素敵な野菜炒めと目玉焼きがあった。
もちろん白飯とみそ汁もお代わり可能な態勢。
我が家は意外と和食好みなのだ。
「あれ、まだ冷めてない…」
「おはよう、風太郎君。気付かなかった?ニ乃は風太郎君がまだイチャつき足りないのを見越して、ご飯を作る前に呼びに行ったんだよ。君に、あったかいご飯を食べてほしかったから。」
「…ニ乃ぉ。」
「ちょっと五月!何で言っちゃうのよ!これは秘密にって!」
机に座って授業でもするかのように解説してくれた五月の言葉と、
俺を気遣ってくれていたニ乃の優しさに、感動の涙が止まらない。
後ろの一花も、うんうんと頷いている。
そして優しさを露わにされたニ乃は、恥ずかしさからか顔が真っ赤になっている。
可愛い奴め!
「…あ、三玖。」
「おはよー、皆。」
廊下から子供達を連れて出てきたのは、我が家1番のお母さん枠、三玖だ。
3歳になったものの、まだまだ幼い朝陽と雪乃を両手に抱えている。
体形はよりすらっとして、人妻感倍増だ。まぁ、渡しませんけど!
「おはよ、三玖。子供達はちゃんと寝てた?」
「うん。雪乃はおもらししちゃってたけど、それくらいかな。」
「ごめんなさい…」
「いいんだよ。でも次からは気を付けようね。」
「…はい!」
…ふむ。
ここまでお母さんの雰囲気が出るとは、やはり人間慣れと積み重ねなのだ。
そして気になる度合いはこっちの方が上なのだが、なんか最近三玖の体形が進化してる。
子供を産んだとは思えない細いお尻。モデルかな?
そんな事を考えてた矢先、三玖の後ろから俺に向かって猛スピードで突っ込んでくる何者かが見えた。
「あ、お父さん!おはよー!くらえー、りうりうまひぃ!」
「うおぉぉぉ!?」
飛び掛かってきたのは、我が家の暴れん坊怪獣、最近5歳になった未来だ。
流流舞と言いたかったのだろうが、幼い故に上手く発音出来てない。
それでも技としては完成されていて、俺の膝裏などのくすぐったい場所を的確にくすぐってくる。
それに対抗すべく、片足を重心にして、しがみつく未来を高速スピンさせる。
それは彼女に上質な眩暈と吐き気を与え、未来はすぐさま手を離し、五月にしがみついた。
「ツキママー、ちょっと、休ませて…。あと、お腹触らせて…」
「何でお腹まで!」
未来の謎の五月のお腹推しは相変わらず変わってない。
気持ちは分かるぞ。
なんかこう、第三のおっぱいみたいな…
「…鼻の下、伸びてるよ。」
「え、そんな露骨に!?」
「そんなに露骨だから言ってるの!」
「ツキママー、怒るとストレス増えて、ブクブクなるよー」
「…」
☆★☆
「さて、今日は何しようか!」
朝食を食べ終わった後、一花が手を叩いて皆の注目を集める。
今日は一花も久しぶりの休み。
羽目外しには妥協を許したくない所存だ。
「えとねー、わたしねー、プールいきたいー!」
「まだ3月だよ?」
「プールになんがつもなんにちもかんけいないの!」
「こら、我が儘言わないの。」
「…ぶぅ。」
三玖の窘めに、渋々我慢する未来。
そうだな、流石にプールへこの人数で行くのは少し気が引けるな。
色んな意味で注目されるだろうし。
しかし、ぷくっと顔を膨らませる姿も、また愛らしいといったものだ。
「…あ、そうだ、ゲーセン行きません?」
「ゲーセン?」
「そう、ゲームセンター。私達、昔一緒に行きましたよね。」
…そういえばそんな事もあったな。
大昔すぎてあまり覚えていないが、確かあの頃はまだ仲もそれほど良好じゃなかったっけか。
「だが、行ってもする事なんて無いぞ?」
「ふふ…それはどうかな?」
あの時は、一体何をしてたのだろうか。いまいち覚えていない。
が、五月がここまで推すなら何かいいアイデアがあるのだろう。
というか、ノープランだったら殴ろう。
「ちょっと、皆忘れてない?今日の夜はお祭りがあるんだよ!?」
ここで四葉が思い出したように手を挙げる。
その手には、祭りのパンフレットが握られていた。
「あぁ、そんなのもあったわね。」
「最近忙しかったから、忘れてた。」
なるほど、今日は忙しい一日になりそうだ。
☆★☆
「わきゃー!」
「あ、こら!走らないの!」
入口を見るなり駆け出していった未来達を、三玖が必死に追いかける。
しかし、子供特有の永久運動機関を存分に発揮され、あえなく三玖はダウンしてしまった。
「体力は付いたと思ってたのに…」
「運動もしてないのにどこから来るんだその自信は」
「すぐにはイ…」
「分かった、しかし黙れ。」
程なくして、未来と雪乃は発見、確保された。
俺の後ろでは、二乃と五月による
ヤバい。後ろを振り返ると、こちらまで半泣きになりそうだ。
「あはは…取り敢えず、朝陽君も探そっか。」
「お、おう…」
☆★☆
捜索開始から、20分が経過した。
どこを探しても、まったく見つからない。
「風太郎…まさか、人攫いじゃ…」
「そ、そんな馬鹿な…」
しかし、その可能性も捨てきれない。
うちの朝陽は特別可愛いからな。
可愛いほのぼの系男子としてきっと将来はモテモテだろう。
と、その時。
「うえぇぇぇん、お母さん…」
「ちょっと、早く歩こう?立ち止まってたら駄目だよ?」
見つけた。痩せた男が、朝陽の手を引いている。
こんな事に巻き込まれるのは初めてだが、上手く対処出来るだろうか。
取り敢えず話しかけて、事情聴取を…
「うちの子に、何してるんですかぁぁぁぁ!!!」
「うぼぉぉぉ!?」
…四葉は、男に思いっきり肘鉄を食らわせた。
「えぇ!?私達を探してくれてたんですか!?」
「はい。その結果、肘鉄を食らうとは思いませんでしたよ…」
「すんませんした!ほら、お前も謝れ!」
「通報だけは!」
「そうじゃねぇよ!」
先ほどの男は、善意で俺達の事を探してくれていたらしい。
そして、四葉に、攻撃を食らったと。
あまりに報われない…
「あ、あなた達って、今話題の「最初の多重婚」ですよね?」
「え”、そんな二つ名みたいな物があるんですか?」
「はい。「日本のアフリカ」とか、「マサイ族」とか、「原住民」ってネットではよくネタにされてますね。」
マジか。
少しの事で炎上するネット怖い…
「その顔、なんで言われてるか自覚が無いですね?…まぁ、僕は全然いいと思いますよ。二人だろうと、ハーレムだろうと、逆ハーレムだろうと、それは結婚する本人達にしか選ぶ権利はありませんから。本人達が選んだ結論に、何人たりとも口を出してはいけないのです。野暮ですからね。」
「…」
モブなのがもったいないくらい良い事言うなこの人。
人気になって名前が付けられる事を祈ろう。
「あ、そういえば…あれ?」
お礼を言おうとした時、目の前に男はいなかった。
☆★☆
やはり、世の中にはいい人もいるな。
そう思って、俺は帰路につ「まだだよ!?」
「…は?」
「まだ何もしてないのに、なに帰ろうとしてるの!」
目の前には、怒った五月が一匹。
そうだ、捜索に夢中になって本題を忘れていた。
「やっぱり、ゲーセンといったらこれだよね!」
一花が指を指した先にあったのは…
「「「「「エアホッケー!!」」」」」
…店員の視線が痛かった。
ゲーセンなんて最近行ってないですね。
近くにあったけど潰れちゃって…