★の間にエロシーンがあります。ご注意下さいませ。
初めての経験だった。
告白。……そう、告白だ。
非リア充たる俺にとって、一生に一度あるかないかの、女子からの愛の告白。
——それを断るということが、これほど苦しいものだったなんて。
告白する勇気なんかよりも、胸を抉る痛みは酷い。
ひょっとしたら
俺は彼女に優しさでフられたんじゃない。彼女の信念は、優しさとはまた別のものでできている。
……だからこれは、俺が受け入れるべきもの。——罰なのかもしれない。
「……いやだ」
「——!」
……それでも。
その瞬間、俺は一色の瞳を直視出来なかった。
口の中に嫌な苦味が広がる。
誰かの真心を否定した時、された時。そんな時に味わう苦痛。
ハッピーエンドの選択肢をわざと蹴った——そんな、どうしようもない倦怠感。
きっと、愛想が尽きたとはこんな感じなんだろう。
一色が翳りのある眼で、縋り付くように俺に言った。
「どうして、ですか、……?」
「……だって、考えてもみろ。一色さんは、俺のことが好きなわけじゃない」
それを聞き、一色はぽかん、と口を開ける。そしてすぐに悲しそうにきゅ、と口を結んだ。
…………当然の反応か。彼女に返したのは告白を断るという答えだし、俺の態度は一色が比企谷八幡のことを「好きだ」と言ってくれて、それに対して俺が受け止められなかったというだけのヘタレの行動だ。誰がヘタレか。いやヘタレだけど。
「はっきり言うが」
でも、ここからはヘタレなりにも慎重にいかなければ。
「一色さん、いじめられてんだろ」
「……!」
けれど。彼女と出会ってから実質的に1日すら経っていなくても、これだけは断言できる。というか、彼女自身もわかっているはずだ。
一色いろはは『比企谷八幡が好き』と思い込まされているだけなのだと。
この事は『お礼だけ言ってすぐに別れるつもりだった』と一色自身が話しているので、最初は違っていた事は間違いない。
では、それまで普通だった彼女を歪めたのは誰か。……大体想像はつくが、犯人を個人に特定する事は難しい。
何故なら、一色を今の状態に貶めたのは彼女のクラス内で起きた〝いじめ〟によるものだからだ。
一色が言ってたじゃないか。
〝クラスのみんなには最初、揶揄われたり——〟
千羽鶴がいい例だ。「クラスの先生のため」とかなら兎も角として、学年も違うクラスメイトが関わっただけの他人に「クラスのみんなが千羽鶴」は普通ありえない。
そして、いじめとは言っても、明確に敵対行動があったわけではないのが厄介なところだ。
むしろ一色の行動を後押ししてしまうような応援があった。
頑張れという圧力があった。
そして。
人の数による威圧は凄まじく、敵対よりもあえて味方をすることでむしろ簡単に彼女を独りにしたのだ。
彼女が現在俺に感じている感情は、罪悪感を恋慕と勘違いしたもの。そしてその罪悪感は、クラスメイトなどの周囲の人間からの圧力によって必要以上に肥大化し、今なお彼女の心を圧迫している。一色はそれでも心折れずに「負ける訳にはいかない」と奮い立った結果、明らかに間違えた心の拠り所として俺を選んでしまったというだけの事。
いじめから逃げようとするのではなく、「こうあれ」といういじめを受け止め、いじめに順応する。……これが、どれだけ危険なことだかは理解できるだろう。
つまるところ、彼女は結局「そうしなければいけない」という周囲からの圧力によって「来させられている」だけなのだ。
だから、ここに来てしまう
——そうだろうと、思い込んでいた。
「……、」
さぁここから矛盾点を突いて理論を崩して浮ついた彼女の気持ちを覚ましてやろう——なんて、考えていると。
「……あは」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
ニィ、と。
とてつもなく、おぞましい笑みを彼女は浮かべた——気がした。
何か、重大な選択を間違えたせいで空の色とかが変わっちゃうような、どうしようも無いバッドエンドに向かっている気がする。
彼女は嗤う。
その顔は幻覚より朗らかで、それでもしてやったりという、愉悦の表情をしていて。
一色は、俺の予想とはまったく異なる反応をしてみせた。
「先輩。わたしが周りに流されて、先輩に告白したと思ってます?」
「……」
違うのか。いや、違う筈は……。
「……っ」
咄嗟に出るはずの答えが口から出ない。図星だからというのは間違いなくあるが、それだけでこんな——どうして一色はそれだけ余裕の笑みを浮かべられる? こいつは一体何を考えて……。
——こんこん。
「っ!?」
……びびった。いや……そうか、ナースコールで呼んでたもんな。
「あ、はーい」
一色が返事をして医師が入ってくる。
あ、そうか。今一瞬忘れかけてたけど、俺4ヶ月も寝たきりだったんだ。
その医師が優しく話してくれる説明を聞きながら、俺は今更のようにそれを思い出していた。
筋力の低下は歩行が困難になるレベルにまでなっていて、さっきはその状態で窓から飛び降りようとしたもんだから筋繊維はぶちぶち、最低でも1週間はリハビリは無理。
加えて俺の家族に連絡したは良いけど誰も出なくて、留守電に吹き込んでおいたけど面会時間内に来るかわからない。
ケータイとかで連絡を取ろうにも事故の時にバキバキの粉々。ソシャゲのデータ復旧が出来ないと知った時はマリアナ海溝より深く落ち込んだな。
……ただ。
「…………」
医師の診察が終われば、また彼女と相対しなければならない。
それに対する戦慄は、目覚めたことへの祝福を簡単に吹き飛ばしていた。
「……ふぅっ」
医師が部屋を後にして数分。
当然一色はここにいる。だけど、俺が彼女に対して「どうしたらいいのか」がわからない。
「…………」
何にしても、対策や反論は——いや待て。先程の一色の言葉が真実だという証拠がどこにある。だけど俺の吐いた予想が妄想だったと言うにしても、それを裏付けるだけの証拠が足りていない。いやそもそも俺の考えはまだ伝えては——
止まらない俺の思考とは対照的に、平静を装う俺の口からは何一つ言葉が出やしない。口に出すための勇気が足りない。根性が出ない。いやそれ以前に……。
「もしもし♪」
「っ!?」
……自嘲と自傷の嵐に
動けない俺の右肩、左頬の横にそれぞれ手を置き、覆いかぶさるようにして彼女は俺を睨む。
「先輩。質問に答えてください。先輩はわたしが周りの人達に『告白させられた』——そう思ってますか」
「……、どうだろうな」
なんて言いつつ目を逸らし、彼女と意思の疎通を拒む。
確かに俺は、一色の問いかけ通り彼女が自分の意思で俺を好きになったのではないと考えている。
……だから、彼女が比企谷八幡を好きという事にはならないのだから、俺が一色を好きになる理由は必然的に消滅する。……そう思っていた。
「……っ」
繋ぎのための思考、その間にも一色による揺さぶり(?)は続いていて、俺に覆い被さった彼女は体重をかけない為か肘をついてさらに近づいてくる。それでもほぼ密着してるようなもんだから、胸なんかはもう掠れるどころじゃなくて、俺の胸板にむっちりと乗せられている。
その上、股に膝を差し込まれ寝返りすら出来なくなってしまった。当然、俺の今の筋力じゃ彼女を押し退けることさえできない。
そんな「あきらめろ」状態になっても、どうにかこうにか顔だけは逸らしながら考える。
彼女の意図を読み解く鍵を。一色が俺に告白した本当の原因を探らなければ。
自慢じゃないが、少なくとも一目惚れされるようなツラ(主に目)ではないと自覚してるし、事故にあった直後はさらに酷い有様で、まさに肉のついた血袋状態だ。そんなものに一体誰が好きになると、……?
…………。
…………。
…………………………………………。
「…………まさか」
血だらけの怪我だらけ。そんな状態で、いやそんな状態『であっても』恋の淵に叩き落とす。それこそが————
「ようやくわかってくれました?」
……あぁ、そうか。
確かに俺は間違えていた。
それにようやく気づいた。
彼女は、他人の押し付けで俺に告白したのではない。
彼女は、本当に。
「わたしは、先輩に助けられた。命を救われたんです。ですから、わたしが先輩を好きになってしまうのは当然だと思いませんか」
『一目惚れ』を彼女はしたというのか。
よりによってこの俺に。
わざわざ胡散臭い科白まで選んで。
「……………………」
「……俺は、見返りが欲しくてお前を助けた訳じゃない」
俺が一色を突き離すための唯一の切り札だった、一色が俺に抱く『間違った恋慕』が実は純愛。
誠心誠意の真心を向けてくる彼女に、俺は戸惑っていた。
素直な好意を寄せられることは嬉しい。……けど、それはそのまま、この後に彼女を襲うであろう絶望の大きさを意味する。
俺と付き合うとはそういう事だ。一時の気の迷いに目をくらませて、人生を投げ出すようなもの。だから、自分のせいで他人が不幸になるなんて、俺には耐えきれない。
「そうかもですね。……でもわたしは卑怯でクズだったから、先輩の事より自分の今後を考えてしまったんです」
クズて。
「……それが普通じゃないの?」
「普通ですよ。先輩が普通じゃなく、優し過ぎたんです」
「…………」
いや、俺の行動が優し過ぎるという事はないだろう。咄嗟の判断なんてそんなものだし、助けたくても手を伸ばせない事もあるだろうし。
そんな俺の関わりたくないよ思考とは別に、一色は続きを話す。
「後から気づきました。『気に病むな』なんて言葉を先輩に使わせてしまったのは、わたしなんです。……わたしはその言葉に、それを言ってくれた先輩に……ほんとに濡れて……」
……え。
「……好き、になったんです」
……一瞬、言葉を選んだ一色の笑顔が透き通ったような気がした。邪気が祓われたとか、本心が垣間見えたとか、そんな感じの。
……とんでもない聞き違いがあったような気がしたけど、あれほど澄んだ表情でそんな事言えるわけないもんな、うん。
念の為瞬きをすると、彼女の顔は普通の笑顔に戻っていて一安心。……したい。
「…………そうか」
今の一色の状態を見て分かる通り、俺は一色の告白にありがとうを返せない。
彼女の本心は聞いた。それでも今の彼女に対してありがとう、とは口にするべきじゃないと、俺の第六感が叫んでいる。
歪なまま、彼女との関係性を始めてはいけないのに。
いや、そもそも俺に彼女なんて——
「……うおっ」
どうすればいいか迷っていると、ずっとくっついていた一色が突然手をついて離れた。
勢いもあって急な行動だったので、思わずびっくりしてしまう。
「…………正直、怪我をさせてしまった身分でそんなことを考えるのは、先輩に対して取るべき責任の方法として、筋違いも甚だしいと思いました」
そう言って一色は、自分の手首をこちらに晒す。
重い体をどうにか捻って首を前に向ける、…………。
「……おい、これ」
内側に赤く走る、幾筋もの線。
それは夥しい数の傷痕に違いなく。
どれも腕の向きに対して横一直線に引かれていて、これはつまり——
「……だからわたしは、もしも先輩が亡くなられた時、ちゃんと死ねるように思いっきり引き裂こうと決めてました」
——リストカット。
……自殺まで考えるくらい一色は思い詰めてた。俺が一色を助けたせいで。
「先輩の容態が安定してからはもうしてませんけど」そう言って彼女は腕を元に戻す。
「一色——」
「……けど先輩」
……俺はあの事故で、彼女の中の決して立ち入ってはいけない領域まで踏み込んでしまったのか。
だけどあの場で俺が一色の腕を引いていなければ、彼女は最悪の場合、命を落としていた。俺のこの状態が良い証拠だ。
だからといって、一色を助けることで彼女を歪めてしまった俺の選択が間違いだったということにはなり得ない。
俺は俺の取る選択にいつも絶対の自信があるわけじゃないけれど、一色を助けたあの時だけは、間違っている筈がない。
だってあの時は、助けるか助けないかの二択しか選べなかったのだから。
……だが、これは……。
「…………………………………………………………ちぅ」
だから今は、一色に一刻も早くキスの感触が、…………は?
——その瞬間、視界が一色で埋め尽くされた。いや、俺の認識がようやく現実に追いついた。
それは、彼女を拒絶しようと思っていた俺には受け入れ難い光景と状況。
いつのまにか超至近距離(指の太さ一本分)まで迫っていた一色が俺に、……き、キス……。
……軽く触れる程度のもの。だけど、家族でもない男女の接吻がどんな意味を持つかなんて、一色くらいの歳なら理解していない筈もないだろうに。
ごく短い時間俺に触れていた彼女は、唇が離れた後も、会話をするために離れる間すら惜しむように俺にくっついたままでいる。
「……先輩。わたしやっぱり、クズです。いやらしいです。だって、先輩の気持ちよりもわたしが先輩とえっちなことしたいって思う気持ちを優先させてる——」
——気づけば、彼女は頬を上気させて瞳に情気を宿していて。
★
「失礼しま——かぷっ」
挨拶も半端なところで、首筋に噛みつかれた。
そしてそのまま、ちうちうと吸われる。
「……っ」
女の子特有の柔らかさに加え、香水か何かのいい匂い、吸われるという未知の感触が合わさって、ベッドの上が堕落を知った楽園と化す。
「……あ、……く、い、いっしき……っ!」
想像以上にやばい……!
一色は全身を使って俺に匂いを擦り付けるように密着してきているし、右腕が無いから踏ん張りも出来ない!
「……せんぱい」
くちゃりと。
「……っ!?」
……冷たい。液体のような何かが病衣の布地に染み込んで、濡れたという変化が肌でわかった。
汗? それとも……いや。
腰を浮かせる彼女のスカートに隠れていた秘部と、冷たさを感じた太腿の部分とが、透明な糸のようなもので繋がっていた。……だけどそれも、すぐに途切れてしまう。
その事実に気づいてるのか気づいていないのか、一色はこう笑った。
「んッ……は、ぁ……あはは。なーにも触ってもらってないのに、わたしはもう準備万端です。ほら、見ます? 私のココ」
——当然、気づいてる。
スカートの中に手を差し入れた一色はショーツを太ももの真ん中くらいまでずり下げて、中途半端に脱いだ体勢のまま、俺の左腕と胴体を両膝で挟んだ。
幾本もの糸を秘部より滴らせる彼女は、俺に下腹部がよく見せられるように仰け反った。片手をベッドについて、もう片方の手を使い、自らの恥部に人差し指と中指を当てがって、よく見えるように押し広げる。
彼女の指に押されてひくひくと動くひだは、中から溢れている半透明の液で濡れて、てらてらと鈍い光を反射している。
こくり、と喉が鳴った。
——正直、その光景は目が眩むほど蠱惑的な光景で、薬を嗅がされたんじゃないかってくらい惹きつけられた。
「……やめ……」
言いながらも、
——ぺちゃ、っ。
俺の耳と目と皮膚は、彼女が興奮していることを実感、証拠として強制的に認識させた。
「や……」
やばい。熱が出た時みたいに頭が痛くて、何も考えられない……。
でも、それは本当にやばいことじゃない。
……本当何がって、それは言うまでもなく一色の興奮が俺にも感染ることだ……!
感情の揺らぎに流されて一色とヤる。それだけは絶対に避けないといけない。
……でも、今の俺はどうしようもなく追い込まれていて。
一色が俺に覆い被さった。
マジで、喰われ——
「————」
抵抗なんて無理だ。……そう思って目を瞑ると、突然一色の気配が止まる。
「……はぁ」
彼女の吐くため息は、慌てふためく俺に対する落胆の声……だったらいいんだけど。
ため息と共に上体を起こした彼女は、失礼します、と俺の頭上に置いてあるティッシュ箱から数枚を取って、彼女の愛液が零れたとこを拭き取った。また、濡れた自分の体はウェットティッシュで拭い、一色はベッドを降りる。
脱ぎかけだった薄紫のショーツはそのまま脱ぎ、彼女はバックから取り出したオレンジと薄桃……? のショーツに片方ずつ脚を通す。
「……っ」
パンツを穿き替える——ただそれだけのことなのに。わざと見せつけるようにこちらにお尻を突き出し、スカートの中身を晒してくるその光景は、単純に秘部を晒されているものよりも簡単に俺の思考を掻き乱す。はい、すごくえっちです。
僅か数秒のこととはいえ、俺は疲労以外の理由で心拍数を上げていた。
★
「……どうし、たんだ?」
別に続けて欲しかったわけじゃない。断じて違う。けれど、彼女の行動が気になった。
服を直し、一色はこちらを振り返る。……そして、笑った。
「……ざんねんです。面会時間も終わりみたいですねー」
時計を見る。……時間は午後6時を指していた。たしかに、見舞いの人間が病院に居ることができる時間の終わりだ。
その一方で彼女は、自分の首筋を指す。
「……でも、
……彼女が
「……覚えてたらな」
左手で、一色に噛まれたところをさする。
……完全に痕に残ってんじゃねーか。……ん?
「……?」
指で肩を撫でたとき、妙な違和感を感じた。
……何故か、今回噛まれたところ以外にも指に残る感触がある。
「…………??」
確認してみると、反対側の肩、首筋にも傷痕みたいなのが。
噛まれたのってこっち側だけの筈なのに、どうし、て……。
…………。
……、
…………。
……………………。
全部、似たような痕。
似たようなサイズに、似たようなカタチ。
今回つけられたものと多少の変化はあるが、痕の付き方はどれも同じだ。
……まさか。
「……あは」
「……っ?」
一色いろはの瞳が、突如として獰猛な獣性を宿した。
「…………先輩が目を覚ますまで、どうしても我慢できなくて。……味見、しちゃいました♡」
「————————」
味見。……何を。どうやって。
それを問う暇も無く、一色はさらに踏み込んできた。
こちらの顔を覗いてくる小悪魔は、思わず安堵してしまうような、優しい声で囁く。
「——先輩が集中治療室から出てきた日。その日から、ずっとですよ……」
「……っ」
マーキング。まさに今の状況にぴったりな言葉だ。……そう思ってしまうくらい、彼女の笑みは完成していた。
可憐で。憂鬱で。文句なんてつけようがない。
……その笑顔はあまりにも完成し過ぎていて、この思い込みが恋なんじゃないかって錯覚したほどだ。
要約すると、一色は俺にとびきり淫美な笑みを見せて、ぺこりとお辞儀をしてから一色は病室から出て行った。
俺が再起動したのは彼女が病室を去って5分くらい経過してからだ。
「……の」
病衣をめくり、体を確認する。
……首周りだけでなく、似たような痕は胸や腹、腕でも確認できた。下半身は体が動かせないので、確認のしようがない。
…………。
「どうしろと」
っべー。誰だか知らんけど口癖が移っちゃうくらい我混乱してるでござる。
告白ってなんだっけ。え、事後承諾の別称?
目覚めたら既に外堀が埋められていた上に、武器を構えた敵がおはようと声をかけてきたくらいの絶望感を味わう羽目になるなんて。
既に手遅れなこの状況をどうするべきか。具体的には、これ以上一色を刺激せずに、元の性格に戻ってもらうには?
何があればいい。
考えろ。
自問自答——否、自分との戦いが始まった。
俺の理性から分離する、黒い俺と白い俺。言うなれば黒い天使と白い天使。ちなみに2人とも色違いなだけの天使なので、本能役を務める悪魔はいない。何故か?
悪魔——俺の中の本能は、数年前の告白大失敗の折にその責任を取って徹底的に権力を削がれ、発言力も乏しくなっているからだ。
今や本能は理性によって解体・吸収され、俺の中では存在しない事になっている。
そして俺の中の理性達が問題を解決するために話し合いを、
——元に戻すとは言っても、アレが彼女の本性では?
——確かに。俺が歪めたというまでもなかったり……?
……。
初っ端諦めるのが早えよなんなら肯定に持っていこうとするんじゃねえそっちの天使。
——いやでもさ、好意を向けられてる事自体は事実なわけじゃん。
——つーかエロかったわー。首筋舐め上げられる時の、流し目?
——上目遣い。
——それ! それが1番やばかったわー。
オイ。
もうちょっとまじめに議論してくださる? どれが良かったねとか感想言い合う場じゃねぇんだよ。対策を練る場所なんだよ!
——えーっとじゃあ、とりあえず避妊具と……。
それはもう手遅れなんだ。その心配をするよりも手前で食い止めなきゃいけないんだよ。わかるな?
…………。
……………………。
…………………………………………。
——自殺すればいいんじゃね? ほら、俺がいる事で彼女は歪んでるんだからさ。俺以外の事で言えば学校も休んだりしてなくて、俺だけが彼女をマイナスに持ってってるんだぞ。
——それだ!
勝手に死んでろアホ理性共。
はい。議論強制終了。
ダメだ……。真面目に考えれば考えるほど、鬱な自己分析しか出てこない。
……そもそも、ある種の熱に浮かされた今の状態で最初から議論なんてまともにできるわけがなかったのだけど。
たっぷり無駄な時間を浪費したくせに、ロクな結論が出ませんでした。
まぁ1人での思案には限界があるというか。せめて誰かに相談できれば良いんだけど、誰かに相談した時点で俺の人生詰むし。
やっと思いついたせめてもの抵抗が、『面会謝絶を発動する事で彼女と強制的に距離を置く』という対処療法のみ。
だけど、それは一色とは別の問題をむくむくと膨らませるだけだったのだと、数日後に俺は思い知る。
…………。
これ、俺が一色を異性として意識してるってことはないよね? 童貞だから必要以上に緊張しちゃってるって事だよね?
ね……?
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