私の夢を話した訳では無い、だが……深く繋がり合う信濃には筒抜けだったらしい。
心当たりがあると言い耳打ちをしてきた。
こっ酷く赤城に叱られ正座していたものだから足が痺れている最中でだ……
……曰く、私の身は元々の信濃そのもの……いろんな願いが絡み合った末に月夜見尊の影響が大きかったと言う。
ツクヨミとも呼ばれ満ち欠ける月そのもの……日本では特等有名な神の一柱。
太陽神のアマテラス、武神のスサノオ……それらに並ぶ神だ。
月自身が命とそれを育む女性自身の象徴でもあるが故に……今の私に深く結びついたと言う。
欲望を一身に受け、妖魔ではあるが、命を何度も産み落としている……
人に孕まされた事もありツクヨミをベースとした新たな神としての神格を得つつある。
そう……説明された。まさか妖魔からの信仰で神格をとはな……
人間からの信仰もある程度混ざっているかも知れぬが……ふ……皮肉が利きすぎてるな。
しかして、この世界における人類の動向はかなり……芳しくないな。
ヨーロッパの方は幾分落ち着いているが……アメリカもアフリカも……大いに削れている。
それまで栄えていた人類がゴリッと減って3割程になっていると言えば事の深刻さは分かろう。
もっとも……ポコポコと産まれ人口の増加に歯止めがかかっていなかった地域が壊滅的というだけで……主要先進国はそう……
生産人口はかなり痛手だ、生き残っている人員は……多くは50過ぎた老年に入る面々だ。
盛り返しつつもあるが……んむ、このメールは……
「……んん……フォーミ、ちと此方へ……」
「はい?なんでしょう?」
「このメール、読めるか?全文、英字で分からん……」
「では……読み上げますわよ」
差出人は流石に分かるが……英国の政府か……
英国と言えばフォーミダブルやベルファストの故郷とも言うべき場……
クイーンズイングリッシュがネイティブとも言うべきフォーミダブルやベルファストが居てくれて助かるとは思うが……
「これ、イラストリアス姉様の文ですわ……分からず屋な方々とお話をつけて今からそちらに向かうと……」
「真か?なんと……よくまぁ……」
イラストリアスは淑女然としているが……その実、中々にお転婆な面もある。
読み上げたフォーミダブルには及ばぬとしても……大半は茶目っ気で済むレベルではあるが……
これは、あれであるな……向こうの面々がしつこく食い下がるが故にキレたか。
読み上げた原文を聴いても節々に凄みが滲んでいる……
「して、空港付近の治安はどうなって……うーむ、これは芳しくないな」
「女性襲撃事件が多発していますわね……イラストリアス姉様も襲われるかもしれませんわ、指揮官っ……!」
「……武蔵と共に参ろう、ベルも連れて行く」
国際空港はあまり多くはなく、英国から直行できる航空便も無い。
途中何度か乗り継ぎを行うが……もっとも近い中継ポイントが旧ロシア連邦のど真ん中か。
あちらは……一部の文化圏を除いて人類は閉じこもる他になくなってしまった。
「メルクーリヤもこちらに来ていたならば……否、来ては……欲しくないな、凌辱の限りを尽くされるかと思うと……」
「それくらいは指揮官と再会できるとあれば小さいことですわ、辛いですけど」
「……むぅ」
存外、日本のドコかにポンと出てきているかもしれぬしな……期待しているのもあるが……
このような淫欲の世界に来てほしくは無いと思うのもある。
今の私を見たら、雑魚と罵るだろうか?
空港となると山の上か……それとも海辺か。
玄関口は海が多いな、我らKAN-SENには海は第二のホームグラウンド……縁しかないな。
こちらでは海というのはより強大な妖魔の生息域になる。
沿岸部ならばいざ知らず……すこし遠洋に出て漁などは出来たものではない。
タコやイカの巨大化……などというのは生ぬるいまである巨大生物が平気で跋扈している。
巫女でどうにかなるものではない、対抗するとなれば……神にでも祈る他ない。
「神格宿りし今ならば……むぅ」
神格を得たとして、私はどうしたら良いものなのかまるで理解らぬ。
そも、KAN-SENとしての力の振る舞い方もままならぬのにな。
満足に振るえたならば航海事情もなんとかなったやもしれんが……
「何を迷っているのかしら?」
「否、今は近辺の妖魔を減らすことに集中するのみ、か」
「焦らずにね、指揮官……それとも今はお嬢ちゃんって呼んだほうが良いかしら?」
武蔵はどうにも……私を子供同然に扱い甘やかそうとしてくる。
事戦闘では頼りになる存在ではあるが……どう接したら良いものか、悩むな。
空港付近は見事に荒れていて電車で行き交うのが精々であろう。
車で来ようとするならば巫女の一人は同乗せねば……妖魔の群れに出くわし跳ね飛ばし続け……やがて損壊し止まる。
……巣穴の検討はつく、これは……神格を得た恩恵なのか妖魔の気配を以前よりも明確に察知できる。
武蔵が感知していないと見るに……隠密には長けていると思われる。
ベルファストもそうだ、二人は気配察知には敏感だが……あまりにも気配を殺している相手には反応に遅れる。
総じて釣り野伏には弱いということだ、未だ武蔵は特段妖魔には犯されては居ないが……
改造されたとなればどうなるか……
「こっちだ、向こうは隠れているつもりだが私には感じ取れる……」
さ、参ろう……
空港付近に潜む魔、それは多数のヒルだった。
無論狙いは……信濃の肢体、霊力あふれる母乳とその母体に卵を産み付けること。
他の妖魔と同じく強い子孫を残そうとしていた。
そのために近づいてくる退魔巫女3人を奇襲しようと柔らかな土の中で潜んでいた。
それで息を潜めればヒル妖魔の小ささも相余ってよっぽど探知特化の巫女でも無い限りは感知出来ないハズだった。
「爆ぜよ、土に還るがよい」
青白い蝶が舞い、次の瞬間にはその辺り一帯が爆ぜる。
主に妖魔に強く作用する術の焔、多少なりと実際の爆発みたく土が捲れるが……その中に潜んでいた妖魔はひとたまりもなく爆散する。
普段はそう吊り上がることもない眼が鋭さを見せていてただの苗床からは脱しているかのように思えた。
「武蔵はあちらの防風林の妖魔を……まだわかりやすいと思う、ベルは共に……」
「理解ったわ、くれぐれも無茶だけはしてはいけないわよ?」
「かしこまりました、御主人様」
潜む手は封じられた、これが妖魔側には中々厄介な事になった。
だが、これで黙って滅ぼされるほど……妖魔側も甘くはない。
空港での攻防は一方的に終わる……が、信濃が蹂躙しベルファストがその脇をしっかり締める中……
防風林に向かった武蔵は少しの油断から妖魔に奇襲されていたのであった。
つーわけで次武蔵ネキのエロです。
たぶん花触手