その防風林は随分と放置され荒れ果てた様子を伺わせる……斯様な酷さはお目にかかったことは無い。
地面を覆い尽くすのは膝丈まで伸びた雑草、少し歩めば足先に当たる骸……
命を賭し護ろうとした者共の跡か……弔いの儀式も頭には入れている、後々で弔ってやらねばな。
さて、無粋な妖魔は何処か……臭う妖気は四方八方から向けられる。
雑草もだが、少し伸びすぎているまである杉もあるな……丁度良い、剪定して見せようか。
右手を大きく天に掲げ想起するは大いなる力。
金剛力士が振るう大太刀……瑞穂の力よ、ここに!!
「時は……来たれり――――」
霊力で形作られた大太刀一閃……やはりか、この防風林全体が怪異と化しているのでしょう。
そして、愛しい指揮官のみならず、妾も捕らえ浅ましくも苗床にしようと企てて居るのね……
ふふ……ふふふ、実に実に……
「武蔵はここに居る!!滅ぼされたい愚か者から順に出てくるが良い!!」
烏滸がましいにも程があるわ。
一歩、二歩……歩めば地面より飛び出てくる物が……上手く伏せたつもりか。
この手の物は、脆い。
手に魔力を纏わせ、振り払う。
ギィッ――――!
浄化の力に耐えきれずそのまま無に還る……これでどうにかできたと思うのであれば、あまり舐めてもらっては困る。
指揮官は優しい子であるから何かと隙が多く付け込めるのでしょうけど……
護るべき者が居る妾にそのような隙は無いと思い識ると良いわ、物怪共……!
激憤に目を煌々と輝かせながらも非常に冷静に迅速に……襲い来る妖魔の数々を屠っていく武蔵。
号砲一発の巨大霊力刀の一薙で大概の妖魔は勝てないと察し奇襲に篇重する他ない。
真っ向から勝負して勝てる相手ではないのだ。
戦闘センスの塊であり、綾波には無かった膨大な魔力が最初から備わっている。
大凡……普通の妖魔では勝てる相手ではなかったのだ。
荒ぶる神と言ってもいい武蔵を前に妖魔は逃げ惑うしか無かった。
「くぅっ!?何奴ッ!」
ただ一体、老猾にして信濃の肚を使い転生を果たした妖魔を除いて……
自在に妖術を手繰り、ほのかに信濃譲りの霊力を編み込み……退魔巫女をして破れぬ堅牢な拘束術を発動させた。
「カカカ……信濃と同じで足元を良く見てない……見れない様子じゃのぉそのデカい乳が邪魔かね?」
「あの子の……貴様がッ……」
「ほっ……おぉおぉ、気迫だけでワシを殺しそうじゃのう」
かつては信濃の肢体を真っ先に辱め……幾度となく辱め、ついには妊娠させ己の身体を産ませた……かつての老魔。
その正体はぬらりひょん、嘘の権化、捉え所のないモノ。
若々しくなれど、その飄々とした老人たる言動は変わらず、身体も矮小な体躯に頭が飛び抜けてでかい……
いわゆる海坊主の一種としての特徴をたもっていた。
タコやカツオノエボシといった海の生き物の物怪……その流れをくむのがこの妖魔。
変幻自在、その在り方も人からの捉えられ方も変貌してしまう蜃気楼の様な妖魔だ。
「ふーむ……ヌシも良い素質を持っておるな……どれ、ワシの糧にしてくれよう」
武蔵の返事は特に無い、だが……ギリッと鳴る歯噛みの音が返事代わりだ。
絶対にお前は屠ってやる……そう眼力から溢れ出ていた。
武蔵も信濃も揃ってそうだが……あまりにも露出が激しい装いをしている。
拘束され、抜け出そうと暴れるだけでも乳房を収める着物が危うい状況に……
果たして……妖魔の為だけの苗床にしてやろうと考える妖魔に捕まればどうなるか?
指先一つでするりと……武蔵の着物はただただ裸体を飾る布へと変貌してしまう。
「カカカカ……信濃に負けず劣らず……いやいや、鬼共が種付けを行えばより強くなりそうな素質よなぁ……」
むんず……小さな掌が露出した乳房を掴む。
武蔵の尾は……それはそれは大層膨らみ、ピンと立っていた。
受け入れ難い相手に触れられ、下衆な妄想をされる……憤死できそうなほどだ。
「なぁに、そう激憤してられるのも……そう長くない、クカカカカ」
扱う呪詛は強烈、乳房より流れ込むそれは……武蔵を武の女傑から苗床女へと変えていく。
ドンッ
そんな武蔵の凌辱が始まろうとしていた時だった、防風林の奥……ちょうど武蔵が来た側の空が青く輝く。
……信濃の巫術が炸裂し圧倒的な火力をもって焼き払うというモノが見えたのだ。
「ほぉ、あの小娘も随分――――ヌゥッ、ワシが恐怖を覚えるとはのぉ……もうちっと遊んでやろうかと思ったが早々に引いた方が良いな」
「……二度とその面を見せないことね」
「……調子に乗るでないわ、ワシの第二の苗床女が」
パシンッ……両乳に小さな張り手を食らわせ、白い肌に赤い跡を刻む。
呪詛はコレで十分、あとは時間とともに身体に回り……全盛期とは言わずとも信濃同然の苗床女に堕ち、妖魔の勢力を増やす一助になる。
ぬらりひょんは忽然と消え……あとに残ったのは拘束された武蔵のみだった。
それが非常にマズイ状態だった……
「くっ……あの妖魔が消えても拘束術は未だ消えず……小癪な事ね」
暴力の権化だった武蔵が無力化されたまま放置されている……それを放って置く低級妖魔は居ない。
「……辱めは別に回したと言う事か、本当に小癪ね……!」
掌サイズの大きなヒルの妖魔が数匹……武蔵の周囲に湧き出る。
考える脳は無い、眼の前の上質極まるメスから力を吸い取る他に考えはない。
飛びつき……乳にその身体を張り付かせ吸い付く……
肌に張り付くこの粘着質な感触を皆が味わってきたと思うと腸が煮えくり返る……
こんな矮小で穢らわしいモノに……愛しい者を抱き包み……子を育む乳房を汚されるのは耐え難い恥辱。
うじゅる……じゅる……ちゅぷ、ちゅっちゅっ♥♥
強く歯噛みして妾を捕らえる術から逃れようとするも未だに強固。
身を捩る事すらままならず、眼下を睨む事しか出来ぬとは……
耳朶を犯すこの水音は不快な事この上無し……
びちびちっ……たぷん、ぷるんっ♥♥
先端に吸い付く蟲は身体を蠢かせ振るい……乳房に小さな振動を……
他の蟲共も乳房に跡をつけていって……あぁ、なんと悍ましく忌々しく……!
チクッ
「ッ……何を……」
乳房に走る鋭い痛み……蟲に噛まれたか。
くっ……この術が消えるが先か……指揮官がこちらに来るのが先か……
あの物怪がした事も気になる……妾の身体に毒が回っているならば……
身体が堕ちるのも……考えに入れなければなるまい……業腹モノね。
前向きに取れば……ようやく、指揮官や信濃と同じ立場になり、悩みを共有し……真に受け止める事ができる。
同じ境遇にならねば……分からぬ事も多々ある……
駆けつけた時には私が感じたあの老魔の気配はなく……武蔵が残されていただけであった。
しかし……武蔵をしてあの老魔にハメられた、この事実は看過出来ぬ事。
呪詛による苗床化と……ヒル妖魔達による物理改造の末に武蔵の乳は我らと同じ妖魔を育むミルクタンクと化してしまっていた……
救助が比較的早くに行われたがために……呪詛は乳以外にはさほど回っていないのがせめてもの救いだが……
やはり、少なからず手痛い目には遭ってしまうモノか……
苗床化はもう間違いない……妖魔共に渡せば……特質や気質からも強力極まる妖魔が生まれるやもしれぬ。
一層きを配らねばならぬな……