俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
深夜の時刻。
「お待たせしましたー。それじゃーさっさと帰ってご飯にでもしましょー」
赤と青のボーダーパーカーといういつもの服装で、同色のキャスケットを被ったラミアが生意気な表情を向けてくる。そのあどけない様子に自分は「そうだね」と返しながらラミアへと歩み寄っていくと、そのまま二人で並ぶようにしながらアパートへ向かっていったものだった。
深夜の闇が落ち、車道と歩道の境が見分けつかなくなったひと気の無い夜道。この日も自分はキャバレーとしての
ラミアとは先ほどまで、接待という形で時間いっぱい談笑していたものだった。しかし、帰り道である現在に関しても話題が尽きることはなく、自分とラミアはたわいない話をしながら歩を進めていたものだ。
会話の内容は主に、ラミアの愚痴というものだった。とは言うものの、彼女の愚痴や相談を聞くことに自分はこれといった抵抗を持っていなかったため、この時もラミアの尽きない愚痴に共感の頷きを交えて付き合っていく。
それから、先日にも行ったラミアとの同伴以来、自分らはどこか距離感が近付いていたような気がした。特に、最近あったユノとの同伴の詳細をラミアが聞いてきてからは、ラミアもまた意識的にこちらの手を繋いでくるアプローチを見せてくるようになっていた。
今も、二人で手を繋ぎながら歩くこの夜道。表通りから外れた細道が街灯の少なさをより一層と際立てるこの空間において、自分はラミアの黒色のカバンを代わりに持ちながらも、特に周囲を気にすることもなくラミアの話を聞いていく。
「それで、周囲のホステスの胸ばっか見てたそのエロジジイがですね、ウチを見た瞬間なんて言ってきたと思いますか!? ヒトの胸を見た瞬間、あの興醒めしたザンネンそうなカオで『なんだかキミは可哀相だね』って同情してきたんですよ!? ハァー!? うるさいボケぇ!! 余計なお世話じゃあ!! ってカンジです!! ウチだってですね、好きでぺったんこでいるワケじゃないんです!! そりゃあ周りのおっぱいはウチから見ても魅力的ですよ!? だからってどーしてああいった輩は、わざわざそんな言葉をクチにしてくるんでしょうかね!? ウチのことを慰めているつもりなんでしょうか!? それともただのセクハラなんでしょうか!? どちらにしてもしばいてやりますよ!!」
「そりゃあ、とんだ災難だったね……」
苦労しているなぁ……。という言葉を内心で呟きつつ、自分は今も手を繋ぐ隣のラミアを眺めていく。
そんなこちらの視線に気が付いた彼女もまた、目を合わせるように向いてきた。
……ムッとしたジト目で訝しげな言葉を添えながら。
「なんですか。カンキさんもウチのコトを哀れむんですか」
「そ、そういうつもりで見たわけじゃないんだけど……」
「じゃー、どーいうおつもりでウチのコトを見たんですか。どーせ上から覗いてもぺったんこですよーだ」
「どういうつもりで見ていたか……まぁ強いて言えば、今はラミアの内面を見ていたかな」
「内面ですか??」
「そう。性格とか考え方とか、身体の見た目じゃないラミアの内側の部分」
「ふーん。…………カンキさんのえっち」
「なんで!?」
こちらの反応にラミアは、満更でもなさそうな微笑を見せてきた。
そんな帰り道を辿っていた時のこと。現在もアパートを目指して、自分とラミアが深夜の一本道を雑談しながらゆっくり歩いていると、ふと背後から人の気配のようなものが、ゆらっ、と感じられていく。
それに自分は、何も思うことなく振り返っていった。すると、その瞬間にも一つの人影がおもむろに飛び付いてくる光景を目撃する……。
こちらに覆い被さるよう飛び掛かり、そのまま身体全体でこちらにしがみついてきた”それ”。加えて、衝撃で揺らいだ身体がラミアとの距離を離していき、自分はこの時にも心臓が飛び出るかのような恐怖を味わっていく。
……尤も、その褐色肌に、ピンクと水色のオッドアイという“彼女”の容姿を確認するまでの恐怖であったものだが。
「あ~ん! カンキ君~、会いたかったぁ~!」
「れ、レダ……!?」
黒色のコートに、
そんな彼女はこちらに対して、豊満な乳を押し付けてくるアプローチを行っていた。ぎゅっと抱き付いてきては自身の身体をひたすらに密着させてくるその熱烈な抱擁に、自分は驚きよりも先に困惑が巡ってしまう。
共にして、隣のラミアが恨めしそうな視線を送りながら喋り出したものだった。主にレダの胸を凝視しながら。
「あのー……レダさーん……?? それ、ウチのカンキさんだったんですけどー……??」
「あらぁ~? よーく見たらラミアも一緒だったのね~? あなたって色々とちっちゃいから、こんな近くに来るまで全く気が付かなかったわ~?」
「ちっちゃ……っ。あ、アナタってホントにいろんなオンナを敵に回しますよねー……っ」
「あらあら、なにそんな些細な事で怒っているのかしらぁ~? ごめんなさいね~? わたし、持たざる人間への配慮に欠けてしまっていたみた~い?」
「持たざるニンゲン……っ。なんですか。ケンカ売ってるんですか。そんなにウチとのケンカをご所望なのでありましたら、お望み通りそのケンカ、高く買ってあげますけどー……??」
と言うなりラミアは、どこからともなくスタンガンを取り出しては電流を迸らせていく。
いやそんなもの持ってたの!? という驚きと、いやここは犯罪の温床と呼ばれる龍明だから、女の子が護身用に持っていても当たり前かという納得が同時に行われた内心。
その間もレダはこちらの懐に頬を擦り付けるようにしていくと、自身の頭をにじりにじりとこちらの顔に近付けながら、肩に手を掛けて誘惑的にそう呟いてきたものだった。
「いくら性格を重視するカンキ君でもぉ、おっきくて弾力とハリのあるおっぱいが目の前にあったら、迷わずそっちを選ぶに決まっているでしょう? ねぇ? あなたもオトコのコですものねぇ~?」
「え? え?」
と言いながら、レダは右手に提げていた黒色のスーツケースを持ち上げていく。そしてその手の人差し指を伸ばしてこちらに近付けてくると、次にもこちらの乳首をおもむろに突っついてきたことで自分は思わず声を上げてしまったものだった。
これに対してラミア、静かなる怒りで血管を浮かび上がらせながら、ニッコリとした表情で「おっぱいだけが取り柄のビッチが減らず口を叩いておりますねー……」とスタンガンを構えていく。
一触即発。これに自分は危機感を募らせる。
そして、レダがすり寄るようにしてこちらの耳元へ顔を近付けてきた。……その時のことだった。
つま先で立つような姿勢になるレダ。そして、誘惑するかのような吐息を吹きかけてきた。……かと思えば彼女は、突如と低い声音でそれを喋り出してくる。
「なに悠長に夜道を歩いているのよ」
「れ、レダ?」
「シッ。黙って聞いて」
冗談抜きの真剣な調子。これに自分が唖然としていくこの目の前では、スタンガンを手に持つラミアが真面目な様相を向けてくる。
今もこちらにすり寄った状態のレダ。彼女は誘惑するように身体を押し付けてくるのだが、一方で真剣な表情を見せながらも静かな声で喋り続けてきたものだ。
「あなた、かなり危なかったわよ。下手すれば今、ここで死んでたかも」
「それって……俺が命を狙われているっていう……」
この脇で、ラミアはそれとなく視線をどこかへやっていく。そしてどこかを暫し見つめるように佇んでいくと、彼女はその目をこちらへ戻しながらも小声でレダへと訊ね掛けていった。
「ウチらでやります?? 見たカンジ単独のようにうかがえますけど」
「いいえ、接触は極力避けたいわ。わたし達二人だけの状況だったら迎え撃ってあげても良かったんだけど、護衛対象のカンキ君がいる状況じゃあ、迂闊な戦闘はかえって弱点を晒すことになりかねないわよ」
「それもそーですね。ウチらが出払ってしまいますと、カンキさんの守りの手が疎かになってしまいますモンね。じゃーこのまま襲撃に警戒しつつ、カンキさんのアパートまで退避ってカンジでいきましょーか」
「そうしましょ。カンキ君、このまま真っ直ぐアパートを目指して。なるべく平常を装うように。“あちら”に動揺を見せてしまったら、瞬く間に付け入られるわよ」
途端に巡って来た、凍てつくような緊張感。先ほどまでの和気藹々とした温度差に自分は、極度の恐怖を覚えながらもレダの指示に従うことで、抱き付いたままの彼女を連れてアパートへ歩き出していく。
その間もラミアが、スタンガンを備えた状態で周囲をうかがうようにしながらついてくれていた。この二人の様子からして、自分が命を狙われているというのはホステス共通の認識であるらしいと感じ取っていく。
そうしてレダとラミアに守られながら、自分は住んでいるアパートまで戻ってきた。
玄関扉を開いて、ラミアとレダを入れてから鍵を閉めていく。そして自分は緊張から解放されるようにその場でへたり込むと、そんな自分へとラミアとレダが寄り添うようにしゃがみながら言葉を掛けてくれたものだった。
「カンキさん、コワイ思いをさせてすみませんでした。今日のコチラは完全にウチのミスです。カンキさんの安全も考慮しないで一緒に帰ろうと約束したのは、ウチが迂闊でした」
「まぁまぁ、いいじゃない。終わり良ければすべてよし。こうしてアパートまで戻ってきてしまえば、連中もそう簡単に手出しなんかできないわよ」
ラミアをフォローしつつも、こちらの頭を撫でてくるレダ。そんな中で自分は「二人共、ありがとう……」と口にしながらゆっくり立ち上がっていくと、それに合わせて彼女らも腰を上げていくなり、レダは思い出したかのように部屋の中を眺め出していく。
「それにしても、あれよねぇ。とんだ成り行きではあったけれども、何だかんだでわたしもカンキ君のお部屋デビューを飾っちゃったわねぇ」
「お部屋デビューって……そんな大層なもんじゃ……」
「いやぁん。わたし、カンキ君にお持ち帰りされちゃったぁ~。獣みたいに激しくされちゃったらどうしよぉ~!」
「ご、語弊を招く言い方だよねそれ!?」
未だ残る恐怖にぶっ刺さってきた焦燥。これによって自分は気持ちを転換していくと、ある意味でいつも通りになれたことに頭を掻きつつ、今も玄関にいるラミアとレダに「まぁ、とりあえず上がっていってよ……」と促したことで二人を部屋に上げていったものであった。
……いつの間にか眠ってしまっていた。
床に敷いていた布団で目を覚ます自分。そうして瞼を持ち上げていくと、そこに映し出された自室の天井が朝の日差しを帯びていることに気が付いていく。
昨夜の緊張感から解放されるなり、自分は事切れたかのように眠りについてしまったらしい。
ラミアとレダがベッドで寝るために、いつものように床に布団を敷いたところまでは覚えているこの記憶。これに自分はボサボサになった髪であくびをしながら上半身を起き上がらせていくと、その先にいた褐色の存在に自分は暫し呆然と視線を向けてしまっていたものだった。
傍に畳まれていた彼女の私服。そして目の前で佇む彼女が、こちらがよく着用している白色のYシャツのみを身に付けた露出の多い格好でこちらに振り向いてくるその光景。
ぶかぶかなそれが、かえってワンピースのようになっていたレダの姿。丈がまた絶妙な絶対領域を作り出しているその様子に自分が困惑し始めていくと、次にも彼女は魅惑的な目でこちらを捉えながらそれを喋り出してくる。
「あらぁ、カンキ君お目覚め? お・は・よ」
「あぁ、おはよう……。……いやいやいやいや! なんでそんな格好してんの!?」
彼女の挨拶に流されそうとなった自分。だがここで慌ててYシャツのみのレダへツッコんでいくと、そんなこちらの反応にレダが魔女のような笑みを浮かべていく。
「なんでって言われても、あなたの部屋にわたしのパジャマとか無いんですもの。だったら、部屋にあるあなたの私物を借りる他に考えられないでしょう?」
「だからって、俺のYシャツを直で着なくてもいいんじゃない……? それに借りるならズボンとかも履いてくれないと目のやり場に困るんだけど……」
「なぁに~? カンキ君もしかして、照れちゃってる~? わたしのようなオンナに自分のお洋服を着てもらえた嬉しさを隠しているのかしらぁ?」
「…………否定ができない」
そりゃあ、嬉しいけど……。
なんていう本音を表情に滲ませてしまう自分。そうして気恥ずかしさから視線を逸らした自分であったものだったのだが、この様子にレダは何かを企むような笑みを浮かべてくると、その時にもこんな呼び掛けを行ってきたものだ。
「カンキく~ん? コッチ向いて~?」
「ん?」
ぴらっ。
Yシャツの裾をめくってきたレダ。これに自分は思わず「ぶフォっ」と鼻血を噴き出しながらノックダウンしていく。
大人の黒色が見えたところで、部屋の廊下からルームウェア姿のラミアが顔を覗かせてきた。シャワーの後と思われる濡れた髪をタオルで乾かしていくサマを見せながら。
「お二方、ナニ朝から盛ってるんですかー。えっちするんでしたらウチがお昼のシフトに出てからにしてくださいよー」
「あらぁ、ラミアは混ざらなくてもいいの? どうせならお仕事の時間まで三人で盛り上がっていきましょうよ? わたしとラミアのどっちのがカンキ君の“カタチ”に合っているのか、この際だから交互に入れてハッキリさせないかしら?」
「生憎ですけど今日はパスでお願いします。月が終わったばかりでノリ気になれないんですよねー……」
「そうなの? わたしはすぐ発散したくなっちゃうものだけど? ラミアってけっこう重かったりするのかしら?」
「いやもうゲロおもですよ。むしろレダさんが他の方と比べて軽すぎるだけなんです。だから、終わった後のケロッとした様子がなんともまー羨ましいかぎりです。レダさんはどーしてそんなピンピンしていられるんですか?? なんですか、そーいうクスリでもキメてるんですか?? それウチにもくださいよ」
「そんなこと言われても知らないわよ。強いて言えば薬局で売ってるサプリメントとかで失った鉄を補ってるくらい? それにしたって、わたしだって完全に痛くないわけじゃないのよ?」
「どちらにしてもイタいモンはイタいんですから、だったらイタみが軽い方がイイに決まってるじゃないですかー。あーあ、ホント、ウチと身体を交換してほしいモノです」
「あなたが持っていないこのおっぱいも手に入るものね?」
「ぶち転がしますよ??」
自分が聞いてもいい話だったのかは分からない。
二人の話を他所にして、ティッシュで鼻を押さえながら起き上がる自分。その動きにラミアとレダが振り向いてくる中で、自分は息をつきながらそんなことを二人に伝えていった。
「昨日はありがとう。ラミアもレダも、俺のことを守ってくれたんだよね……」
昨夜は、ろくに感謝を伝えられずに眠ってしまった。
引き摺っていたそれを口頭で伝えていった自分。すると、こちらに視線を投げ掛けていたレダが腰に手をやりながらそう答えてきたものだ。
「カンキ君も、これからは気を付けなさいよ~? そりゃあ、あなたは一般人だから、命を狙われるって言われても実感は湧かないんでしょうけれど。それにしたって昨日は本当にギリギリだったんだから、さすがに少しだけでも危機感は持ってちょうだいね?」
「レダはあの夜、俺が狙われていたことに気が付いていたってことなんだよね……?」
「確信は持てていなかったけれど、二人がお店を出た辺りから周囲の気配に違和感があって、念のためこっそり後をつけていたのよ。そしたら案の定ってかんじ」
「すごいな……。全く気が付かなかった……」
「これからはしっかりしてね?」
先ほどまでの魔性に溢れた喋り方とは異なる、至って真面目なレダの声音。
少しばかりと呆れた様子でもある彼女が眉をひそめていたその脇で、ラミアはタオルで髪を乾かしながらも呟くようにそんなことを喋り出していく。
「それにしたって、ウチらはレダさんの嗅覚に敵わないですよ。さすが“現役”のホステスです」
適当な調子でそれを口にしてきたラミア。これに自分は「現役?」と返していくと、ラミアはそのままの調子でそう説明し始めてきたのだ。
「カンキさんに仰っておりませんでしたっけ?? ウチらホステスってみんな犯罪者なんですよ??」
「え? 犯罪者? ……え!?」
「お手本のような驚きっぷりですね」
驚きというよりも困惑に近かったその反応。自分はラミアとレダの顔を交互に見遣っていくその最中にも、ラミアは何気ないサマでこちらに歩み寄りつつ言葉を喋り続けてくる。
「
「犯罪経験のある人達を集めたお店が、あの……?」
「そーです。なので、ユノさんを始めとして、メーさんも、レダさんも。そして……カンキさんが思わず恋しちゃったこのラミアちゃんも実は、犯罪経験のあるクソのような底辺の人間に過ぎなかったりするんですよねー」
髪を拭きながら近付いてきた彼女。その頭をタオルでわしゃわしゃしながらこちらを見下ろすように佇んでくると、次にもラミアはしゃがんできたことで彼女との目の高さが合っていく。
夜景のように光り輝く、紫色の海のようなその瞳。だが、その瞳を見て深海に呑み込まれるような錯覚を覚え始めていくと、直にもラミアは感情を読み取らせない真顔をこちらに近付けながらそれを喋り出してくる。
「カンキさんは、好きになっちゃったコが犯罪者だったと知らされてもなお、その相手を好きであり続けるコトってできますか??」
「…………犯罪の内容によるかな……」
「聞きたいです?? もう、ウチのコトを好きでいられなくなるかもしれませんよ?? 世の中には、知らなくてもイイことがあったりするモンですからね。それでもなお、聞きたいですか?? ウチがこれまでに犯してきた罪の数々について」
淡々とした適当ないつもの調子が、まるでこちらに迫り来るかのような不安感をもたらしてくる。
精神を取り込んでくるかのような深い瞳を向けながら、少し首を傾げてこちらの目をじっと見据えてくるラミア。これに自分は暫しと圧倒されて沈黙を貫いてしまったものであったが、このままでは彼女を素直に受け入れられなくなるかもしれない、という別の不安が勝ったことによって、自分は覚悟するように頷いていったものだった。
「……聞かせてほしい。ラミアがこれまでに犯してきた犯罪のことを」
「後悔しませんか?? もう、お店のコトもキライになっちゃうかもしれませんよ??」
「別にそれで構わない。あの店もなんか親父が建てたもんらしいけれど、そんなこと今となってはどうだっていい。それ以上に今は、俺はラミアの過去を受け入れたいって気持ちでいる。そして、今ここでラミアの過去の過ちを聞いた上で俺は、親父が遺した遺産よりも、今こうして目の前にいるラミアのことを大事にしていきたいって気持ちでいるんだ」
「…………いいんですね。わかりました」
と、次にも座り込んでいるこちらの脚に乗りかかってきたラミア。ぼふっ、とおもむろに乗っかってはその両腕と両脚をこちらの背中に回してくると、彼女はそのまま顔を近付けて、見下ろすようでありながら、こちらを試してくるかのような瞳を向けながらその言葉を掛けてきたものだ。
「じゃー、カンキさんのお望み通り、ウチが犯してきた罪を包み隠さずお伝えします。カンキさん。どんな内容であろうとも、ウチのコトを見放さないって約束してくれますね??」
「……いいよ。教えて……」
「わかりました。ウチがこれまでにしでかしてきた犯罪はですね……」
生気を吸い取るかのような深く色濃いその瞳。それを次第と近付けていくと、今も水分を含んだサラサラの長髪を流していきながら、唇と唇が触れ合うのかというその距離で彼女は静かに言い放ってきた。
「売春です」
「…………っ」
「…………」
「…………っ?」
あれ……今と特に変わんなくない……?
いや、間違いなく変わっていることは確かだった。あのお店が特異的なだけであり、そもそもとして売春と聞いて普通に思えてしまえるその業務体制の時点で色々とおかしいのだ。
だが、こうしてラミアからのカミングアウトを耳にするなり、自分は拍子抜けと言わんばかりの表情をしてまう。これにラミアは目の前で静かに頬を膨らませていくと、とても不満げな調子でそれを口にしてきたものだった。
「……カンキさん。どーして驚いてくれないんですか」
「え、あぁ……。あぁ、いや。ごめん。なんか、思っていたよりも……いや、そんなこと言っちゃったら失礼であることも承知はしているんだけど。ただ、ラミアが初めてここに来た時に身体を売っていたって聞いてもいたものだったから、それでつい反応が疎かに……」
「ウチだって、好きでカラダを売っていたワケじゃないんですからね」
「そうだとは思う……! でも、なんだろう。俺としてはどこか安心してしまったところもあってさ……」
むーっ、と不満げに顔をしかめてくるラミアの背へと、自分は両手を回していく。そうして彼女を抱きとめるように抱え込んでいくと、自分はラミアの目をしっかりと見据えながらそれを伝えていったものであった。
「……今とそんな変わらないってことはさ、俺は今のラミアのことを、今のまま受け入れることができるってことにもなるからさ。そう考えたら、ラミアに対する気持ちもこのままで良いんだって思えてきて、なんだか安心しちゃった部分もあるんだよね」
「…………カンキさんってアレですよね。対してホンキでもないコトバを、よくそこまでハッキリ言い切れますよね。そーいう八方美人なトコロがアナタの……まー、もーイイです」
真っ直ぐと見据えて伝えたこの気持ち。それに対してラミアは心なしか瞳を潤ませていくと、こちらにしがみつく両腕両脚の力もちょっとだけ強くなった感覚と共にして、ラミアは呟くように「……受け入れる云々ってのは、ちょっとだけ嬉しかったです」と言ってきたものだった。
……しかし、見つめ合う時間は今も続いていく。
お互いに抱きしめるようにして向かい合うこの状態に、静寂な胸の高鳴りが刻み込まれる。それでいて彼女も次第と頬を赤く染めていくと、まるで自分らだけが別の世界に隔離されたかのような密接な空気感にお互いが惹かれ合うようなものを感じ取れてしまい……。
……チューするなら今だ。
どこからともなく響いてきたその言葉。これに自分も顔を赤らめながらラミアと向かい合っていくのだが、ラミアにぞっこんとなったその神経がふと途切れるようにして、意識は急にこの空間から引き戻されていく。
今もラミアと向かい合う自分。だが、すぐ脇から感じ取れたその気配へと視線を投げ掛けていくと、抱き合う自分とラミアの真横から「チューするなら今だ……!」と囁いてくるレダの存在に気が付いたものだった……。
……囁く間、口元に手をあてがってその言葉を届け続けていたレダ。完全に遊び感覚である彼女のそれに自分は、変な汗を流しながらレダを見遣ってしまったものであった。