※この作品はR-18です。

俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活   作:祐。

11 / 82
第11話 Nouvelles perceptions 《新たな認識》

 夕方のle goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)。昼時に営業を開始するレストランとしての姿を一旦たたんだその店は、夜のキャバレーに備えて次なる準備へと取り掛かっていた。

 

 そんな閉じられた店の扉を自分は顔パスで開けてもらい、届け物という名目でホステスの控室へと顔を出していく。そこで自分はラミアに小さな手提げバッグを渡してエントランスに引き返していくと、帰ろうとした最中にも二名のホステスに呼び止められたものだった。

 

 彼女らから受け取った一眼レフカメラ。それを自分は構えていくと、立てかけられた白色のパネルの前に立つホステスを一人ずつ撮影していってから、カメラを彼女らに返していく。

 

 そうして歩き去る彼女らを見送るようにして手を振って、それじゃあ今度こそ帰ろうと出口へ振り返ったその時のことだった。

 

 踵を返すようにした自分は、直後にも背後で待ち構えていたタキシード姿のメーに「わっ!」と声を掛けられていく。これに自分は「うおっ!?」と驚きで一歩引き下がっていくと、こちらの反応にメーは勝気な瞳を向けながらしてやったりとそう喋り出してきたものだ。

 

「あっははは!! 良い反応してくれるじゃーん! カンキ君ってさ、からかい甲斐があるよね」

 

「いや本気でビックリした……! というか、驚かすのは俺じゃなくてもいいでしょ……」

 

「何言ってるの? 相手がカンキ君だから驚かすんでしょ? 当然じゃない?」

 

「メーの中の当然に付き合わされる俺の身よ……」

 

「えー。じゃあなに、驚かされるのそんなに嫌だった?」

 

「嫌かどうかと聞かれると……うーん、むしろ嬉しい……?」

 

「ドMじゃん。カンキ君ってヘンタイだー」

 

「いやなんでそうなるの!?」

 

 相変わらずからかってくるその調子はもはや、メーと会話しているという実感さえ湧いてくる。それくらい彼女にからかわれてきた自分が変な汗を流しながら先の言葉を投げ掛けていくと、メーは両手を後ろにやりながら勝気な瞳のままこちらへ歩み寄ってきたものだ。

 

「でー? パネル写真の撮影を手伝ってあげてたんだ? 前もなんか頼まれてなかった?」

 

「前はー……えっと、ショーで使う衣装を舞台裏まで届けに行ったりしたかな?」

 

「さっき控室にも顔を出してたよね?」

 

「あぁ、ラミアが俺の部屋に忘れ物をしたっていうから、届けに来たんだよ」

 

「へぇ、カンキ君みんなからこき使われてんじゃん。こんなにパシリに使われまくって嫌がらないとか、やっぱりカンキ君ってドMなんでしょ?」

 

「いやどんだけ俺のことを変態扱いしたいんだ……」

 

「違うの?」

 

「違うよ!!」

 

 このやり取りに、近くを通ったホステスがフフッと微笑したものだ。

 ボケとツッコミのコントみたいな会話を展開する現状に、自分は頭を抱えていく。尤も、自分はこのやり取りを楽しんでいたため、悪い気なんか一切しなかったものなのだが。

 

 そして、それはメーも同様であるようだった。彼女はこのやり取りにしてやったりな笑みを浮かべていると、ふとそんなことを切り出してきたものだ。

 

「それじゃあさ、ついでに私の手伝いもしていってよ」

 

「メーは何をしていたところなの?」

 

「ショーで使った小物の整理。舞台裏の倉庫の整理整頓って感じ」

 

「それ、部外者の俺が手伝ってもいいものなのかな……」

 

「何言ってるの? カンキ君もウチの店の立派な関係者だよ?」

 

「え? いや、前のオーナーの息子って実質部外者じゃ……」

 

「私達ホステスのパシリ役」

 

「あー…………いやいやいや! ちょっと納得しそうになったけど、やっぱ部外者じゃん!!」

 

「あは、バレた?」

 

 悪気の無いテヘペロでかわい子ぶったメー。その様子に自分は頭を掻きながらも話を軌道修正していく。

 

「……それで倉庫の手伝いだったよね? まぁ、俺で良ければ手伝わせてよ。日頃からこのお店に世話になってるから、恩返しのつもりで働かせてほしい」

 

「え、いいの!? やった、ありがとー! 私ひとりじゃチョーだるくって今までサボっちゃってたからさぁ、誰か居てくれるとすごい助かるー! いやぁ、やっぱこういうのはドMなカンキ君に頼んでみるもんですなぁ」

 

「いやどうしてドMにこだわる……」

 

 意外そうに喋りながら喜ぶメーに対して、自分は変な汗を流しながらツッコんでいく。だが、彼女は構わずこちらの背中に手をやってくると、そのまま押すようにしながら自分を舞台裏まで連れていったものだった。

 

 

 

 

 

 その両開きの扉を開けていくと、視界には衣装や小道具で覆われた密室空間が広がり出した。それはゴム製や革製のにおいが充満した独特のものを伴っており、ある意味で想定し得る馴染み深いにおいへ踏み入るよう自分とメーは倉庫に入っていく。

 

 両サイドに置かれた棚は、ショーで使用される旗や布、足元にある大量の段ボール箱などといった様々な物で埋もれていた。それでも扉から真っ直ぐ歩ける程度の道は確保されており、しかし倉庫を埋め尽くさんとする勢いの道具の多さに自分は、このキャバレーでこれほどまでの小道具が使用されてきたんだなと店の歴史に圧倒されたものだった。

 

 メーに案内されるよう真っ直ぐ歩いていくその最中、自分は飛び出していたマイクスタンドの脚を蹴ってしまう。これに自分は「うわ、ごめんなさい!」と声を上げていくのだが、一方でメーは「あぁ別にいいよー」と適当に返事してから付近の棚を漁り出したのだ。

 

 その間、自分はメーの後ろから彼女を眺めていた。

 イメージカラーなのだろう紺色のシャツを着こなす彼女。ネイビー色の瞳で見せてくる勝気なその表情は、彼女の快活さを表すに十分だったことだろう。

 

 他のホステスと比べると、メーとはだいぶラフな付き合いで馴染んでいた。先ほどにも交わしたコントのようなやり取りも相まって、メーと会話している時の気持ちはまるで、同年代の幼馴染を相手にしているかのような感覚を覚えていたものだ。

 

「あれー? ここにちりとりとかの掃除道具があったはずなんだけど、誰か動かしたのかなー……。元の位置に戻さないとか、本当に面倒くさいんですけど……」

 

 見当たらない道具に愚痴を零していくメー。そうしてタキシード姿で棚に頭を突っ込んでいく様子を自分は眺めていると、ふと彼女が漁る棚の上に意識が向いていく。

 

 がさごそと中身を掻き分けるメーの震動が、上の方にも伝っていた。そしてそれは棚の上にあった金色のトロフィーのような小道具を揺らしていき、振り子のように左右に傾き始めたそれは、次第と手前に倒れ始めてくる……。

 

 その先には、棚に頭を突っ込むメーがいた。

 これに自分は、「メー!! 危ない!!」と叫びながら飛び出していく。この声に彼女は「え?」と言いながら頭を出してくるのだが、その時にも自分は彼女の頭上越しにその落ちてきたトロフィーへと右手を伸ばしたことによって、この身体はメーの尻や背中にぶつかっては彼女を棚へ押し付けてしまったのだ。

 

 すぐにも、メーの「ひゃう!!」という珍しい声が上がってくる。だが、その間にも自分はトロフィーを棚に押さえ付ける形で落下を防いでいくと、彼女を棚と挟んだ状態で、右足のつま先だけで身体のバランスを取っていく非常に不安定な前のめりの姿勢で、暫しその場に留まっていたものだった。

 

 今や、トロフィーを棚に押さえ付けるその力のみで体勢を維持している。そんな頭上の気配にメーは「あ、ありがと……」と言いながらこちらへ振り返ろうとしたのであったのだが……。

 

 彼女が動こうとした瞬間、自分の身体がぐらついたことで思わずメーの左肩に左手を乗せてしまった。これによってメーは「みゃっ!!」というまたもや珍しい声を出しながらビクッと身体を硬直させていくと、彼女は棚と向き合うその状態で、上ずった声で喋り出してきたものだ。

 

「なに!? 何!? どういう状況!?」

 

「ごめん! ちょっと支えが欲しくって!」

 

「え、え!? こ、このままでいればいい……!?」

 

「うん……! そのままでいてくれると助かる……!」

 

 必死な自分のすぐ真横には、両手を胸の前にやっては女々しい縮こまり方でじっと突っ立つメーの姿があった。

 

 あまりにもビックリしたようで、髪の毛が逆立つような驚き具合を見せてくれたものだった。だが、今は自分のことで精いっぱいだったこちらは、現在も右手で押さえ付けているトロフィーに意識と神経を集中させていきながら、ゆっくりと両足を床に着けていって体勢を直していく。

 

 そして、押さえ付けていたトロフィーを両手で支えるところまできた。

 ……突っ立つメー越しにそれを持ち上げていって、そのまま棚の上へ戻そうと自分は背と両腕を伸ばしていくこの状況。今も棚と挟む形で彼女をその場に突っ立たせてしまっており、そうして女々しい縮こまりで棚と向き合い続けるメーの背後で自分はトロフィーを戻していく。

 

 と、その最中にも彼女から言葉を投げ掛けられたものだった。心なしか声を震わせて、若干と高い声で動揺を見せながら……。

 

「か、カンキ君! もういいよね!? ねぇ、もういいよね!?」

 

「ごめん! ちょっと、これだけ戻しちゃうから……!」

 

「ま、まだぁ!? う、うぅ~……!!」

 

 え、なにその唸り声。

 思わず真下を向いた自分。それと共にして視界に映ったメーの脳天という光景が、なんだか新鮮に思えてきてしまう。

 

 これに自分は、無意識とそんなことを呟いてしまった。

 

「あれ……メーのつむじ、初めて見たかも」

 

「ななっ、なぁっっ!!? この状況で何言ってんのカンキ君!? てか、そんなの当たり前でしょお!?」

 

 と、縮み上がったその状態で、タキシード姿のメーが途端に顔を赤らめながら声を荒げてくる。

 

 これを受けて自分は、何か優越感と思しき心の昂りを覚えてしまった。

 ちょっと巡ってきた好奇心。自分はトロフィーをそっと棚の上に戻していくと、しかし両腕を持ち上げた体勢を維持しながら、この顔を彼女の耳元へ近付けていく。そして今も縮こまるメーの耳元に自分は近付いていくと、次にも囁くようにしながらその言葉を投げ掛けてみたものだった。

 

「……メー。何をそんなに焦っているの?」

 

「にゃあぁっ!!? ななな、なに!!? な、なに……!? なにって……!? いい、いいから早く戻してよカンキ君!!」

 

「もしかして、メーってさ…………アレ、なのかな……?」

 

「……なっ、なに!? なに!? カンキ君なんなの!? 何なの!?」

 

「いや? なんにも?」

 

「は、はぁぁあっ!!? い、いいからこんなことしてないで早く戻してよぉ!! じゃないと私ここから動けないぃ!!」

 

 動かないでという言葉を未だ律儀に守る彼女の様子。メーの背中と密着するその距離感も相まったことによって、彼女は一層と焦るような必死の声音でそれを喋り続けてくる。

 

「ねぇ何なの!? なんかいつものカンキ君と全然違うんだけど!!? なんなの本当に!? こんな、こんな意地悪みたいなこと、君はしないでしょ……!?」

 

「いつもの仕返し。って言ったら? もう動いていいよ」

 

「え……?」

 

 と言って、耳元で囁くこちらへと彼女はすぐさま振り返ってくる。

 

 共にして目撃した、顔中を赤く染めたメーの女々しい姿。彼女のチャームポイントでもある勝気な瞳には、若干と涙ぐんだような潤いがうかがえる。

 

 長いまつ毛と口元をわなわなと震わせて、メーは言葉を失ったように暫しこちらを見据えてきた。そうして至近距離で彼女と目が合っていくと、自分は露呈したメーの弱点を得意げにそう伝えていったものだった。

 

「メーっていつも俺のことをいじってくるけどさ、メー自身は誰かにいじられることに慣れてないよね? どうだった? メーを意識していじってみたんだけど、本人から見て俺はどう見えた……」

 

 スパァンッ!!!! と響き渡った彼女の強烈なビンタ。頬に打ち付けられた甲高い音が倉庫に鳴り響いていくと、次にもメーは我に返ったかのように慌てながらこちらへ謝ってきたものだった。

 

 

 

 

 

 開店前のメインホール。清掃も終わって、夜のキャバレーを営業する準備が整ったその空間。

 

 いつもの席に座っていた自分は、赤くした頬で呆然と彼女を待っていた。そうして今もヒリヒリする頬の感覚を忘れていると、しばらくしてコーラの入ったコップを手に持つメーが申し訳なさそうな顔をしながら向かいの席に座ってきたものだった。

 

「はいこれ。私からのお詫び。さっきは本当にごめんね」

 

「いやそんな、元はと言えばメーをからかった俺がいけなかったんだし……」

 

「そんなことないって! そもそもとして、いつも私が人にやってることでもあるんだから、自分がやられたからってカンキ君を無暗に怒ったりするつもりなんかないよ!」

 

 勝気な瞳ながらも眉をひそませて、メーは慌ててそれを喋りながらコップを手渡してくる。そのストロー付きのコップを自分は「ありがとう」と受け取っていくと、手ぶらになった彼女は気まずそうにしながらもハキハキとした調子でそう喋り出してきた。

 

「でも、あまりにも急でビックリしちゃったかな。だって、今までいじり倒してきたカンキ君が、あの場面で急に私をからかってきたんだもん。私自身ドSキャラみたいな感じを売りにしてきたもんだからさ、その関係でM気質のお客さんに気に入られることが多くって、自分がいじられるってあんまり無かったんだよね」

 

「もしかして、俺のせいでMに目覚めちゃった?」

 

「んー?? なに?? もう一回叩かれたい??」

 

「いや何でもないです」

 

 満面の笑顔でメーに訊ねられたことで、自分は慌てて口を噤んだものだった。

 

 それだけは勘弁。なんて思いながら、ストローでコーラを飲んでいく自分。しかし、叩かれたからといって嫌な気分になったわけでもなかった自分は、向かいのメーに視線を投げ掛けながらも、反省を込めてそれを口にしていく。

 

「まぁ、俺としてもメーを必要以上に驚かせたくはなかったから、もうあんなことをしないように気を付けるよ。急にからかってごめんね、メー」

 

「ふぅん……。もうしてくれないんだ……?」

 

 こちらの言葉に対して、右手で頬杖をつきながら流し目で見遣ってくるメー。その彼女の様子を自分は気にすることなく、ただただストローでコーラを飲み続けていく。

 

 そんなこちらを、メーはやけにじっと眺め遣っていた。これに自分は不思議に思いながらもコーラを吸い続けていると、ふと彼女はイタズラに口角を吊り上げながらそれを口にし始めてくる。

 

「ねぇカンキ君」

 

「?」

 

「私の彼氏になってくれない?」

 

 ぶフォっ。

 不意打ちのいじりに、自分はストローでコーラを噴き出した。幸いにもストローだったために口から噴射する自体は免れたものの、動揺するこちらの反応にメーはしてやったりな微笑を浮かべながら喋り続けてくる。

 

「なぁに? もしかして本気にしちゃった?」

 

「ゲホッ、ごほっ。……いやいやいや!! 嘘だとしてもこうなるって!!」

 

「あは、なにそれ。ウケる」

 

 メーのやつ、早速やり返してきたな……。

 内心でぼやいたその言葉。それが視線となったこちらの様子にメーは満足そうに微笑んでいくと、その流れのままと言わんばかりに彼女は身を乗り出すようにしながら、続けて言葉を投げ掛けてきたものだ。

 

「じゃあさ~、同伴くらいならしてくれる?」

 

「同伴? メーと?」

 

「そう、私と同伴。てか聞いて! 今月のノルマさ~、まだ達成できていなくってマジやばなの!! だからお願い! 私を助けるつもりで、近い内に同伴してくれない!? ね? それならいいでしょ!?」

 

 急に頼んできたかと思えば、メーは両手を合わせながら必死に頭を下げてきた。その様子からしてノルマまで程遠いんだなと自分は悟っていき、コップをテーブルに置きながらその返答を行っていく。

 

「そんな必死に頼まなくても、俺で良ければ同伴に付き合えるよ」

 

「本当!? やった、ありがと! カンキ君ってこういう時すごい便利だよね~!」

 

「俺ってホステスのみんなからどう見られてるんだろ……」

 

 この時にも、いつしか言われた『都合の良い男としか見てないよ』という言葉を思い出した自分。尤も、それに対して悪い気がしないどころか、むしろ楽しいとも思ってしまっていたものでもあるのだが。

 

 

 

 

 

 同伴の予定を組むべく、意気揚々とスタッフ室へ向かったメーの姿。そして彼女はすぐにもこちらへ戻ってくると、抱えるように持ってきたiPadをドカッとテーブルに置きながら早速それを喋り出していく。

 

「ねぇカンキ君。私、東京タワー行きたい!」

 

「一応聞くけど、これってお客の要望を叶えるサービスじゃなかったっけ……?」

 

「あは、細かいことは気にしない気にしなーい」

 

 付き添う側が自分の行きたいところを提案してくるなんてなぁ……。

 という言葉を内心に留めながら、自分は「それじゃあ東京タワーに行こっか」と答えていく。するとメーは「え、本当にいいの?」と言い出しっぺが意外そうに訊ね返してきたものだったから、自分は変な汗を流しながらも頷いたことですぐ行き先が決まったものだった。

 

 尤も、この自由奔放な快活さもメーの長所なのかもしれない。こうして一方的に引っ張ってくれる存在というのも、受け身の人間からすれば非常に頼もしく感じるため、自分はメーの提案を聞き入れた上でそれを彼女に訊ねてみたものだ。

 

「一日中ずっと東京タワーってわけでもないよね? 他にメーの行きたいところってあったりするの?」

 

「私の? うーん、そうだな~。東京タワーの後は~……あ、ボーリングがしたいかも!」

 

「随分とアクティブだね……」

 

「私の行きたいとこばかりになっちゃってるけど、カンキ君の行きたいトコってなんかあったりする?」

 

「俺の行きたい場所? 東京タワー周辺……なんかあったかな……」

 

「なに、思いつかないの? じゃあビアガーデン行こ! 私、バーベキューしながらビール飲みたい!」

 

「これもうどっちが同伴なのか分かんないな」

 

 慣れたサマで自分はそれを口にした。これに対してメーはウキウキしながらiPadを操作していく。

 

 メーの希望で同伴の行き先があっさり決まったその様子は、もはや清々しさを感じられた。尤もメーの提案に自分も異論が無く、その結果、同伴の内容を話し合うこと約五分という短時間でその手続きが済んでいく。

 

 史上最速で同伴の内容が決まったな。そう思いながら、メーがiPadを操作していく様子を眺めていく自分。この視線に彼女は気が付いて顔を上げてくると、目が合うなりメーはファンサービスとも言える勝気なウインクを投げ掛けてきたことによって、自分は心の中で「可愛い……」と呟きつつ静かに悶えるよう視線を逸らしていった。

 

 すぐにもメーは、iPadをテーブルに置いて頬杖をついてきた。

 こちらに視線を投げ掛けて、勝気な瞳でじっと見つめてくる彼女のそれ。これに自分は暫し困惑してしまうのだが、彼女に応えるべきかと考えた自分もまた、メーの視線と真正面から向き合い出していく。

 

 互いに目が合って、何となく見つめ合い出したこの時間。

 心なしか、メーはイタズラに口角を吊り上げてきたようにうかがえた。だから自分も負けてなるものかと思って頬杖をついていくと、こちらもまた彼女のネイビー色の瞳を真剣に見つめていく真っ直ぐな視線をメーにぶつけてみたものだった。

 

 ……暫しと見つめ合うこの空間。互いに一歩も引かんとする意地の張り合いは、次第にも双方に赤面をもたらしていく。

 

 早く目を逸らしてほしい。じゃないと負けた気がするから。

 彼女の自信に満ち溢れた顔に、そんなことを考えながらも胸を高鳴らせていく自分。そして、その鼓動と連動するようにこの目が若干と揺らぎ始めていくと、次にもメーは勝気に微笑みながらそれを口にし始めてきたものだった。

 

「なぁに? また私のことをからかっているのかな? ん?」

 

「そういうメーこそ、俺におねだりをしていたんじゃないのかな? また私をからかってくださいって、物欲しげにさ」

 

「あは、言うじゃん。カンキ君のくせにチョー生意気。……でも、なんだろうね。カンキ君のその攻め気、私、ちょっとクセになっちゃったかも」

 

 え?

 思わず呆気にとられた自分。それと同時にしてメーは一段と頬を赤らめてくると、そのままうつ伏せになるように姿勢を下げていくなり彼女は、立てた右腕を枕のようにしながら上目遣いでこちらを見遣ってきたのだ。

 

 どことなく、自身の頬を隠すような動作を交えていくメー。共にして彼女は甘えるような視線をこちらに投げ掛けてくると、次にもメーは照れた調子でありながらも、微笑みながらその言葉を口にしてきたのであった。

 

「なんかね、カンキ君との同伴が楽しみになってきちゃったの。何だったら、もう待ち切れないくらいの気持ちでいるんだよ? こんな状態で同伴の日までおあずけを食らわされちゃったら、私どうなっちゃうのかな? ……これがキッカケで私がMに目覚めちゃったらさ、君にはちゃんと責任をとってもらわないといけないよね? そうでしょ? カンキ君」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。