俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
夜の時刻も蒸し暑くなり始めた暗がりの龍明。まだ遅くはないその時間帯に自分はアパートの廊下を歩み進めていくと、自身の住む部屋とは異なる扉のインターホンを『ピンポーン』と鳴らしていった。
今更にはなるが、自分が住んでいるこのアパートは九階もの階層で成り立つ大きな建物だった。とは言え、この住宅地を見渡せばそんなアパートは当然の如く見受けられ、そんな光景に自分は、龍明もまた都会の一部分なんだなと実感させられていく。
それで、自身の住む部屋はこのアパートの七階に位置する高さにあった。かつ、今いる階層はその一つ下の六階であり、今まで全くもって縁の無かったその階層に訪れる緊張感を抱きながら、自分はその部屋のインターホンを押していく。
と、直にも歩いてくる足音と震動。次に目の前の玄関扉が開かれていくと、そこからは制服姿の菜子が不愛想に顔を出してくるなり、それを口にし始めてきた。
「……なに? なんか用?」
いつものように着崩した、不良スタイルのその少女。声も不機嫌そうではあるものの、それがデフォルトである菜子は上目遣いのような目でこちらを見遣っていた。
少女の問い掛けに対して自分は、「こんばんは」と挨拶していく。これに菜子も「……こんばんは」と律儀に返してくれると、少女の後ろにある部屋の奥からは私服姿のユノが凛々しいサマで覗き込んできた。
そしてユノは、軽く腕を組んだ余裕のある足取りでこちらへと歩き出してくる。その最中にも、奥の部屋や廊下に並べられた大量の段ボール箱を避けるようにしていきながら。
「柏島くん、いらっしゃい。せっかく貴方の方から出向いてもらえたというのに、私達の部屋の有様がこのようで本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。片付けが済んでいない乱雑な部屋でごめんなさい」
「いやいやいや! そんな、だって今日の昼に引っ越しを終えられたばかりじゃないですか! それに、お二人だけでは片付けが大変かもしれないと思いまして、俺、片付けの手伝いをするつもりでこちらにお邪魔したようなものですから」
と言って、自分は上着のポケットに入れていた軍手を取り出しながらユノへと喋っていく。
これを耳にした彼女は、「ありがとう、柏島くん。けれども、大切なお客様である貴方の手を煩わせてしまっては、“私達”
気持ちは受け取っておく。そんな旨の一言を添えてきたユノの返答の後にも自分は、彼女のセリフでふと思い出したように菜子へと向いて、お祝いの言葉を掛けていくことにした。
「そうだそうだ。菜子ちゃん、お店のホステスになれて良かったね。おめでとう」
玄関の脇に立っていた菜子。こちらの言葉に不意を突かれたよう一瞬だけ目を見開いていくと、次にも口を尖らせて「……ぁ、ありがと」と不慣れに呟いていく。
先日にも一部始終を見届けた、菜子のホステス採用面接。裏組織ならではの過激なやり取りの末に働くことを認められた菜子は、あの後にも発注するタキシードのために採寸したりなどの、ホステスとして働く準備が着実に進められていたものだ。
アルバイトという体ではあるものの、高校生という身分でキャバレーのホステスになれるその環境。これもある意味では龍明らしいという一言で納得できてしまえる無法地帯っぷりに、自分はここが本当に日本なのかを改めて疑っていく。
と、玄関先で不愛想に照れていた菜子をユノと共に眺めていたその時のことだった。
脇からコツコツと響いてきた複数の靴音に気が付き、自分がそちらへと振り向いていったこの瞬間。そこからは二つの人影が、彼女らの部屋を覗き込むようにして顔を出してきたのだ。
それぞれ、病み系コーデのラミアと私服姿のメーだった。どちらも同伴の帰りなのだろう二人が興味津々に彼女らの部屋を覗き込んでいくと、以前にもあげた猫耳付きの黒色キャスケットを被るラミアが適当な調子でそれを喋り出していく。
「どーも、皆さんお疲れ様でーす。うはー、ホントにユノさんもいらっしゃいますねー。おかげさまでウチら、カンキさんのお部屋の定員オーバーを気にしなくとも良くなりましたから、これからも最寄りの宿屋として気兼ねなくコチラのアパートを利用できるってモンですねー。ナンでしたら、ウチもコチラに住みたいくらいですよホント」
初対面のラミアとメーを前にして、菜子は華々しい彼女らにぎょっと驚いていった。
且つ、ラミアの後ろで手を振っていたメーが、その仕草でユノに挨拶を済ませながらも菜子を見遣ってそれを喋り出していく。
「あー、なになに? もしかしてこの子が菜子ちゃん? あは、なんだめっちゃ可愛い! オーナーから聞いてるよー。菜子ちゃんもホステスになるんだよね? ってことは菜子ちゃんも犯罪者でしょ? ねぇねぇ菜子ちゃん、君は一体なにをしでかしてきたのかな~? ほら、お姉さんに教えてみ?」
なんか、とても馴れ馴れしい奴。その内心がひと目で分かる菜子の表情を前にしてでも尚、メーは少女へとズカズカ踏み入ってはその頬を両手で摘まんでムニムニ伸ばしていたものだ。
これには菜子、「な、なんだよっ!!! な、なめんじゃねぇよ!!」と凄みながら彼女の手を振り払っていく。しかし、メーは「え~いいじゃんいいじゃん!」と言いながら嫌がる菜子へと手を伸ばし、それを菜子が振り払ってという攻防を二人は玄関先で繰り広げていった。
その間にもラミアは「ではでは早速お邪魔しまーす」と、さも当然のように部屋へと上がり込んでいく。
厚底ブーツを脱ぎ捨てるようにして上がっていったラミアの存在に、菜子は「え、え!? なに、ちょっと。なにフツーに入ってんの!?」とさも当然の驚きを見せていったものだ。
だが、この隙にメーの右腕が菜子の肩に掛けられていく。これに少女が驚いていると、すかさずメーもサンダルのようなヒールを脱ぎ散らかして部屋へと上がり込んでいき、廊下の脇に立つユノへと「私もお邪魔しま~す!」と一言かけてから、困惑する菜子を連れて部屋の奥へと向かっていったのだった。
……いや本当に、こんな状況に慣れてしまった自分が恐ろしい。
思わず汗を流しながらも自分は、脱ぎ散らかされた彼女らの靴を綺麗に並べていく。そんな様子にユノは、「いつも彼女達の面倒を見てくれて、本当にありがとう。店を代表して、私から貴方へ感謝を表明させてもらうわ」と言葉を掛けられたものだったから、自分は「いえ、俺も皆さんに守ってもらっていますから」と返しながらユノと向き合ってそれを伝えていった。
「じゃあ、俺はこれで失礼いたします」
「あら、遠慮は必要ないわ。貴方は、私達にとって特別なお客様なんですもの。貴方の存在を傍で感じ取ることによって、彼女達はより一層もの安心感を抱きながら親睦を深めることができると思うのだけど」
「まぁ、俺も皆さんの輪に混ざりたい気持ちは山々なんですけど、今はホステスの皆さんだけで交流するべき時間だと考えておりますので、俺は一足先にお暇させていただきます。次の機会にでもご一緒させてください。……あと、今の今までずっと独りでいられる時間が無かったものですから、たまにはプライベートの時間を静かに過ごすのも悪くはないかなっても思ってます。なので、俺のことはお気になさらず」
「柏島くんの心遣いに痛み入るわ。夜中にラミアとメーが貴方の下へお邪魔しに行くかもしれないから、それまで柏島くんはひと時もの余暇を心行くまで存分に満喫してもらえると嬉しいわ」
「あぁいや、本当にありがとうございます。こちらこそ、ラミアとメーのことをよろしくお願いします」
いや俺は保護者か。
そんな風に自分自身へツッコミを入れながらも、この言葉を最後にして自分はユノと菜子の部屋を後にしたのであった。
冷房をつけるべきかどうか。そんな些細な思考に耽る一人きりの部屋の中、自分はベッドに腰を掛けた状態でボーッと天井を眺め遣っていた。
いざ一人になると、それはそれで寂しく思えてくる。いや、むしろ今までの生活が賑やかで退屈しなかっただけなのかもしれないが。
……何という意味の無い自問自答をひたすらと繰り返していく自分。こうしてプライベートの時間を浪費するように思考の中を駆け巡っていると、直にも洗面所の扉が開く音と共にひたひたと歩いてきた“彼女”へと視線を投げ掛けたものだ。
風呂上りでホカホカな湯気を纏うレダの姿。バスタオルで髪を拭きながら歩いてきた彼女は、さも当然のように男物のYシャツを着用しながらこちらの前に現れる。
……というか、裾を余らせたそれ以外は全く身に付けていない。
素肌の上から直で着られている自分のYシャツを傍から眺めるその心境と、加えて、下に一切と身に付けず、だぼだぼのYシャツをワンピースのように着用する解放的なレダの姿を見た自分は、汗を流しながら言葉を投げ掛けていく。
「……レダ、さすがに履いてるよね……?」
「あらぁ? うふふ、色欲を必死に誤魔化し続けているカンキ君でも、こういうのは気になっちゃうものなのねぇ? ……ねぇ~カンキ君。“この下”がどうなっているか、知・り・た・い?」
と言って、レダはおもむろにYシャツの裾を摘まんでそれを上げ始めてきた。
これには自分、すかさず「いやいやいやいや!!!」と手を振って彼女を静止させていった。尤も、こちらの反応にレダは獲物を捉えたかのような表情で「あらそう? ザンネ~ン」と勿体ぶるような調子で答えてきたものであったが。
……彼女のアプローチによって、既に悶々とし始めていた自分。実にご無沙汰だった欲望を理性で押さえ付けながらも、自分は気を紛らわすようにレダへとそれを訊ね掛けていった。
「レダはさ、みんなのところに合流しなくてもいいの?」
「みんなのところ~?」
「ユノさんと菜子ちゃんの部屋。今日引っ越してきたから、ラミアとメーはそこで歓迎会やら女子会やらしているんじゃないかな」
「ふ~ん、そうなの」
とても興味無さそうな返答だった。
それどころか、こちらが訊ね掛けている間にもひたひたと歩み寄ってきていた彼女。それでいて、先の興味無さげな返答後にもレダは欲情的な表情でこちらを見下ろしてくると、ベッドに座っているこちらの両脚に腰を下ろして乗りかかってきたのだ。
反応せざるを得ない。自分は「ちょ、ちょちょちょちょ!!!」と言葉にならない困惑でレダを止めようとするものの、彼女はカフェの丸イスに座るかのように脚を揃えながら乗りかかってきたのだ。
続いて、こちらの肩に腕を回すことで背もたれ代わりとしてくる。加えて、彼女が乗せた尻部分からは素肌の熱を感じ取れてしまったことから、やはり何も身に付けていないことが証明されたことで、尚更と自分は脆弱となった理性で思考がかき乱され始めていく。
そんな弱点だらけのこちらの様子を、レダが気付いていないわけがなかった。
腕を回して寄り掛かってきた彼女。そしてレダは褐色の肌に恍惚な赤味を頬に浮かべ、
「ねぇカンキ君~。今、わたし達って二人っきりよねぇ?」
「ま、まぁそうだけど……」
「それじゃあもう、夜のお部屋で男女が二人っきりになっちゃったらぁ~……ヤることはただ一つ、なんじゃないかしらぁ?」
「これはこれは……」
もう、なんて返事をすればいいのか分からない……。
レダが放つ色気のフェロモンが、男という生き物を狂わせる。彼女自身も男を堕とすことに長けたプロのヤり手であるために、自分は今も乗りかかられているレダの肉厚に高揚する形で、衝動に駆られるまま彼女の身体へ両腕を回していってしまい……。
……自身のYシャツを着るレダを抱きとめるようにしながら、自分は彼女の目を真っ直ぐと見つつそれを告げていく。
「ごめん、レダ……。俺としても、ラミアやメーからの誘惑もあって今も我慢できないくらいの気持ちでいるんだけど……今ここでレダと一線を越えちゃうと、お互いの関係性を理由にお誘いを断わってきたラミアやメーに申し訳が立たなくなっちゃうんだ……」
「んもぅ、カンキ君って律儀なオトコのコねぇ。でも、カンキ君のそういう義理堅いトコロ、わたしダイスキよ? ……強情なオトコほど、堕とし甲斐があるというものだわ。わたしの魅力に溺れた時のカンキ君の顔、楽しみにしているわね?」
と言って、レダはこちらの頬に軽いキスを行ってきた。
頬で跳ねるようなその弾力。共にして彼女の熱がこちらの理性を一層と狂わせてくるのだが、これによって自分が無意識と顔を赤らめていく最中にも、レダは脚を組みながらこちらに寄り掛かってそれを口にし始めてくる。
「それじゃあカンキ君、わたしとの同伴なら快く付き合ってくれるわよね?」
「同伴? ……あぁ、同伴ならいつでも。レダと同伴したいとも思っていたから、レダの都合が良い時に二人で出掛けに行きたいな」
ちょっと久しぶりに思えてくる同伴の話。この返答に対してレダは「うふふ、もしもカンキ君に同伴も断られちゃっていたらぁ、わたしショックでお店辞めちゃっていたかも」と冗談めかしながら言葉を口にして、こちらの頬に自身の褐色の頬を擦り付けてくる。
いつも意図的にくっ付けてくる豊満な乳然り、今も両脚に乗せてきている彼女の下半身然り、ラミアやメーにはなかった女性らしい弾力のある肉感を武器として活用してくるレダのアプローチ。
これらから察するに、レダはボディタッチによって距離を縮めてくるタイプなんだなと把握していく。その中で自分は、彼女の冗談に「同伴は絶対にしよう。レダと会えなくなるのは俺も寂しいから」と返答していった。
そんなこちらの返事に、レダは魔性ながらも満足げな笑みを見せて立ち上がっていく。
かつ、ひたひたと部屋の中を歩き出していくと、次にも彼女は部屋の隅に置いてあった黒色のスーツケース……の隣に畳んであった黒色のコートを手にしながらそれを提案してきたのだ。
「そうと決まれば早速、同伴の予定を立てていきましょう? まだ夜も遅くないから、軽く夜道を散歩しながら考えない? 夏の夜に穏やかと吹きすさぶ、熱を帯びた夜風を浴びながら、ね? 大丈夫。何があってもカンキ君のことは、わたしが絶対に守ってあげるから」
共に部屋を出た自分らは、軽く散歩する形で夜の住宅街へと歩き出していく。尤も、自分の隣を歩くレダの格好に自分は、命を狙われている以前の危機感を抱いてしまえたものだったが。
それが、ボタンを留めた男物のぶかぶかYシャツに、黒色のコート。それと、申し分程度に身に付けた黒色のショーツに黒色のソックス、そしてモコモコとした黒色のブーツ……で以上となるその身なり。
いや、夜とは言え街中を歩く格好なんかじゃない……。それどころか、こちらの命ではなくレダが狙われそうな彼女の大胆な服装に、自分は別の意味でハラハラしてしまう。まぁ、その格好を本人が全く気にしていないのも気掛かりではあるのだが。
そんなこんなで、目的もなくアパートの周辺を適当にぶらぶら歩いていた自分とレダ。その間にもどこに行くかという同伴の目的地の候補をお互いに出し合っていくその中で、ふと辿り着いたひと気の無い小さな公園に立ち寄っては、滑り台やジャングルジムという遊具の脇にあるベンチに自分らは座っていく。
この公園は、自分の住んでいるアパートの裏側に位置する場所にあり、部屋の窓から眺めた景色としては実に馴染み深い場所でもあったりする。そんな見慣れた空間の中で自分は、隣に腰を下ろしてきたレダの温もりある気配に安堵していくその最中にも、彼女は風呂上りの全身から汗を流しながら、服をはたはたとさせつつそれを喋り出してきたのだ。
「こんな時間なのに、意外と蒸すのねぇ~。今年は例年よりも暑くなるんじゃないかしらぁ。あ~ぁ、コート脱いじゃおっかなぁ~?」
「いやぁ、さすがにそれ脱いだらヤバいでしょ……」
「うふふ、わたしはむしろ脱ぎたい派のニンゲンよ? ……他のオトコとも、よくやっているの。こうして野外で露出してぇ、自分の恥ずかしいトコロを外に曝け出しながら歩くプレイだったりとか~、あとは、林の中だったりトイレの個室だったり、そういう物陰に二人で隠れながらぁ、近くの通行人にバレるかバレないかのギリギリの物音でぇ、同伴中のカレと獣のように盛り合う熱烈なプレイを、それはもうしょっちゅうしているものよ~?」
「……こりゃあ、油断してたら警察に捕まりそうだな。レダも俺も……」
案の定とも言うべきレダの性癖。これまで偏見でしかなかったそのイメージも、彼女が自ら曝け出す形で現実を知ることになってしまった。
で、レダは隣にいるこちらをジーッと見遣ってくるなり、魔性の笑みでからかうようにしながらそんなことを言い出してくる。
「ねぇカンキ君。温泉、とかどうかしら?」
「温泉? ……あ、あぁ、同伴の話か」
「んもぅ、プレイの内容でも想像しちゃったのかしら? うふふ、カンキ君がご所望なら、温泉でのプレイも相手になるわよ? あなたが枯れ果てて、干物のように干からびてしまうまで搾り取ってあ・げ・る」
「ぁー……なるほど……。それはまぁー……別の機会にー……」
拒否できないのが、男の
こちらの反応に、レダが舌なめずりを行ってくる。そんな彼女の仕草も相まって自分は再発するように悶々とし始めたものだったから、この気持ちから切り替えるべく自分は「じゃ、じゃあ旅館に行こっか!! 旅館なら温泉や料理も楽しめるし、レダもゆっくりできるから休暇のような感じになると思うし!!」と空元気に提案していった。
それを耳にしたレダはと言うと、魔性とはまた異なる純粋な嬉しさからなる笑みで「あらぁ、それイイわね~。じゃあカンキ君との初同伴は旅館でけって~い」と答えてきたものだ。
……と、そうして公園のベンチでレダと会話をしていた時のこと。
ふと、公園の外からは男性の声が響き始めてきた。それは数名で談笑しているようにも聞き取れる複数もの低い声であり、声の大きさからあまり気持ちの良くない印象を抱いてしまえる。
その声の正体がすぐにも、公園沿いの道路から集団となって姿を現してきた。
ヤンチャな髪型に、着崩したジャージという
そして自分は、「レダ、こっち」と言って彼女の手を取っていく。
もう今すぐにも輩が公園に入ってくる。そこからなる余裕の無さでレダの手を強引に引いてしまい、これを受けて彼女はちょっと驚いた様子で「あっ」と声を出しながらも、自分と共に公園の奥へと移動したものだ。
そんなレダの声が聞こえたのだろう。直後にも不逞の輩が、「今、エロい女の声がしなかったか?」と食いつきの良い反応で周囲を軽く散策し始めたのだ。
この状況に自分は、懐にレダを隠すようにしながら木の陰で静かに様子をうかがっていく。
研ぎ澄ましたこの神経。それもそのはずで、犯罪の温床と呼ばれるだけあるこの龍明においては、強姦の被害も日本の中で断トツの被害件数を誇ってしまっている。
そういった事件を起こす人間の大体は吹っ切れており、素人目から見ても一目で分かる程度には堂々としたサマで獲物を探し求めているものだ。それもあってか、目に見えて怪しい人物、それも集団を相手に下がショーツだけのレダが見つかってしまうと最悪、彼女に辛い思いをさせかねないことになる。
……命を懸けてでも、守らなければ。
緊張の中に巡る男気。だが、無力である自分にできることも所詮、たかが知れている。
しかし、だからといってレダを守らない理由にはならない。彼女を守ろうとせずに、何が男だ。
……付近をくまなく歩き回る集団の気配。今も木の陰でじっと彼らの動向をうかがっていると、そんな自分の懐では何やらもぞもぞと蠢く感覚を覚え始めていって……。
……身に付けているYシャツのボタンを全部外し、あろうことか全開にし始めたレダ。これに自分はギョッと目ん玉をひん剥き、露わとなった豊満な谷間に興奮よりも焦燥を感じつつそれを小声で訊ね掛けていく。
「れ、れだっ、レダっ……っ?! え、なに、え、なに、なにやってんの……っ?!」
「あらぁ、ウフフ……なんて熱いシチュエーションなのかしらねぇ。身を挺してわたしを庇ってくれるカンキ君の、その必死な顔と密着した身体の温もり……こんなの、コーフンしないワケがないじゃない……」
「いやいやいや……っ! 今はそれどころじゃないんだって……っ!! じゃないと、レダが危険な目に遭わされかねないんだ……っ!」
「心配してくれてありがとう、カンキ君。でもね、ウフフ……わたし、ああいったオトコの集団を誘惑して、みんなから好き放題にされるプレイなんかも楽しんだりしているのよ?」
「え……?」
木の陰で蠢くレダ。その木を背に彼女はこちらの肩へと両腕を回してくると、次にもレダは全開となった身体をくっ付けるようにこちらを抱き寄せてくる。
共にして、息が掛かり合う距離で見つめ合った自分ら。この状況に自分は困惑していくその中で、レダは恍惚の表情で艶めかしい息遣いを耳元で行いながら、誘惑するようにそれを喋り出していったのだ。
「……ねぇ、カンキ君。あなたがさっき相手してくれなかったから、わたし今、ムラムラした気持ちを持て余しちゃってるの……」
「……待って、レダ。だからって彼らの下へ向かうのは危ない……」
「ウフフ……もうガマンできないかも……?」
「ダメだよ、レダ。ここでレダを送り出して万が一のことが起こりでもしたら、俺は男としてこの先ずっと後悔することになる……」
彼女なら向かいかねない。その気持ちが先行することで自分は、一心のままにレダの身体を両腕で抱きしめていく。
心臓を打ち鳴らした、必死な抱擁。これにレダが思惑通りとも言える魔性の微笑みを浮かべてくると、次にも彼女はオッドアイの瞳を光らせながら耳元でそれを囁いてきたのだ。
「それじゃあ、カンキ君。彼らの代わりにあなたが、わたしを満足させてちょうだい……?」
「俺が……今……?」
「えぇそうよ。カンキ君。今ここで、わたしのコーフンを満たしてちょうだいね……」
肩に掛けられていたレダの両腕に引き寄せられるこの上半身。それに逆らうことなく自分は彼女に身を任せていくと、息が触れ合う距離にあった互いの唇が次第にも、惹かれ合うようにして柔らかく重なり合ったものだ。
……木の陰で交わされる口づけ。彼女のフェロモンを感じさせる肉感の香りが一層もの欲情を掻き立ててくる一方で、今も周囲を徘徊している集団に対する不快極まりないこの緊張が、今も唇を通じて全身に駆け巡る心地良い興奮に水を差してくる。
……快楽と恐れが入り混じったぐちゃぐちゃの感情。夢うつつな意識の中で中途覚醒を繰り返すかのような不快感が、非常にもどかしく思えてしまえるこの状況。
だからこそ自分は、今もキスを交わしているレダという一人の女性を追い求めてしまった。
その柔肌に食い込む両手。必死さが勝る余裕の無いキスがレダの唇を貪るように食らいついていき、自分はその感触を堪能するどころではない心境で目の前の彼女を食い漁っていく。
もはや、思いやりの欠片も無い硬くて強引なキスだった。
傍から見れば、自分があれほどと恐れていた強姦とやっていることが大差ないだろう。そして、こんな力ずくでねじ伏せるようなキスをしてしまっては、レダに愛想を尽かされて彼らの下へ向かわれてしまうかもしれない。
……ダメだ。そんなの、絶対に嫌だ。
レダの身体に回していた両手を、彼女が身に付けているYシャツの中へと侵入させていく。それによって全開になっていたシャツが広がるようにめくれていくと、この時にも何も身に付けていない褐色の上半身が惜しげもなく露わとなっていった。
豊満な乳と、女性らしい体つき。これに一層と興奮した自分が、レダの背を撫でまわすようにしながら抱き寄せてキスを続けていく。
まさぐるようにして彼女の肉感を堪能する両手。その柔らかさに感化されるように自分の意識は唇へ注がれていくと、力んでいて硬かったその口元も今や、彼女の弾力ある唇に優しく吸い付いては粘着的に離れない、ねっとりとした口づけへと変貌していく。
その間にも自分の懐には、豊かに実った二つの果実が物欲しげにあてがわれていた。
もう、ソレを支えるものも、ソレを覆い隠すものも存在しない。これまでにも魅惑的に思わされてきた彼女の象徴に自分は手を添えていくと、それを手のひらで包み込むようにしながら持ち上げていき、しかし特に弱点であるソコを避けるようにしながら、暫し弄ぶように果実を愛でていく。
と、それを手のひらで十分と堪能した自分ではあるのだが、一方としてレダはまだまだ物足りないと言わんばかりに物欲しげな瞳を挑発的に向けてきた。
……なら、敢えて避けてきたソコに触れてやろうか。
挑発的な視線に対して、挑発し返すように見つめた自分。そして、果実の中でも特に神聖な部位へと人差し指を掛けていくことで、彼女の大切なトコロに直で触れていった、その直後のことであった。
覚悟してくれよ。
口づけをしたその状態で、目でそう訴え掛けた自分。これに対してレダもキスしたままコクリと頷いていくと、彼女の合図の下で自分がその指を動かし始めた。
この瞬間に木の裏側から覗き込んできたその存在。
猫耳の黒色キャスケット。同時にして適当な調子でその言葉を掛けられる。
「おやおや?? 楽しんでおられますねー??」
「ッっッッッ!?!?!?」
からかうような顔のラミアを目撃して、自分は思わずギョッと目ん玉をひん剥いてしまった。
共にして、木の裏側からはメー、ユノ、菜子が歩み寄ってくる。それでいてメーも弄りのネタが見つかったと言わんばかりにニヤけながら「ほほ~ん? これまた随分と楽しんでおられますなぁ??」と口にしてくるその脇で、こちらの様子を目撃した菜子が途端に顔を真っ赤にしながらそれを口にしてくる。
「んな、っ、な、ななななにやってんの……っ!!? な、ぇ……ぇ、えぇ?! や、ちょ、ほ、ホントに、ナニ、ぇ、ぇえっ……ッ?!」
両手で顔を覆い隠し、その指の間からこちらの行為を覗き見してくる真っ赤な菜子。
純粋無垢とも言えるのだろう不良少女にとって、なんとも刺激が強すぎる光景となってしまった。これに自分は助け船を求めるようにユノへと視線を投げ掛けていくのだが、そのユノは顎に右手を添え、凛々しいサマでありながらも見惚れるような視線でレダの裸体に釘付けとなっていたものだ。
ダメだ、頼りにならない顔をしている!!!
なお、この空気感で皆に見られている状況から、レダは悶々とした様子で「ぁん、イイわ……。カンキ君にメチャクチャにされてるわたしをもっと見てぇ……!!」とひとりよがり出していた。
あ、収拾がつかない。その念と共にして思い出したこの立地に、自分は恐る恐ると後ろへ振り返っていく。
……するとそこには、自分も住んでいるアパートの窓がとてもよく見えていた。
ここで自分は、この公園に来た時のことを思い出す。
それは、『この公園は、自分の住んでいるアパートの裏側に位置する場所にあり、部屋の窓から眺めた景色としては実に馴染み深い場所でもあったりする』というもの。それを思い出した自分はこの時にも、悶々としていた自身の“ソレ”が一瞬にしてヒュッと縮こまったのであった。