俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
引き続き行われていた、新規スタッフの歓迎会バカンス。初日にも、真夏に相応しい海を堪能した一同は、既に数日と経過していた現在において山のイベントも楽しんでいたものだった。
清らかな河川の脇でバーベキューをしていた自分ら。燦々と降り注ぐ日差しに晒されたその空間にて、ホステス達は私服姿で水遊びや食事を満喫している。
今も川では、裾を結んだ赤と青のボーダーTシャツに紫の短パンという格好のラミアが、茶色のTシャツに裾を捲った青色のオーバーオールのミネとそこら辺を駆け回っていた。共に裸足で無邪気にはしゃぐ彼女らを、赤色のシャツに黒色のバイクパンツという外見のユノが見守るように眺めている。
そうして彼女らが遊ぶ様子を他所に、自分はバーベキューのコンロで肉や野菜などを焼いていた。
煙を上げて美味を香らせる。山で遊ぶ時の醍醐味とも言える解放感あふれる食事の準備に自分は、額の汗を拭いながら睨めっこをするように網の上を凝視していく。
と、そんなこちらの様子を見て、皿と箸を手に持ったメーが歩み寄ってきた。
白色のへそ出しショート丈トップスに、七分丈で紺色のパンツというファッションの彼女。そして自前の快活さを引っ提げてやってきたメーは、勝気な瞳をコンロに向けながらそれを口にしてきた。
「ねぇねぇ、もう焼けた? もう焼けたよね? もう食べてもいいよね?」
「もう少しだけ待って。肉に火が通っているか確認するから」
「えー、やだやだもう待てない。あぁほら、これとかもうイイ感じじゃん! もーらい!!」
「あぁちょっと」
自分が引き留める前にも、メーはコンロの上から肉を掻っ攫って口に放り込んでいく。
タレも付けずに口にしたそのお肉。だが、メーは満足そうに「ん~~!!」と喉から声を出していくと、続けてもう一個の肉を取っていっては口へ投げ込んでいって、更にもう一個、肉を摘まんで食していく。
いや、肉だけ食べるんかい。
彼女の止まらない手を前にして自分は、しれっとタマネギやピーマンを寄せてみた。だが、メーの手はそれらを避けて肉へと伸ばされると、そのまま箸で摘まんでいっては遠慮なく口へ放り込んでいったものだ。
「メー、野菜もあるから食べてくれると嬉しいんだけど……」
「あは、イイじゃんイイじゃん。野菜はレダとか食べるでしょ。私は肉専門なトコあるから、そこんとこよろしく~」
「美味しく食べてくれるのは嬉しいんだけど、それじゃ栄養が偏るよ」
「バーベキューで栄養を気にするなんて野暮じゃない? あ、これもイケそうじゃん。いただき~」
遠回しに食べてほしいことを伝えてみただけなんだけどなぁ……。
内心でボソッと口にした言葉を胸に留め、自分は満足げなメーの顔を暫し眺めるように見遣っていた。
すると、その視線が突き刺さる気配に彼女は反応を示していく。
上目遣いで向けてきた瞳。今も頬張っている肉でメーは口をもごもごしていると、目が合ったこちらを見遣るなり彼女はニッと口角を吊り上げながらその言葉を口にしてきた。
「ね、カンキ君。“アレ”、してよ」
「アレ? ……え、マジで?」
「マジで。今やったら絶対キモチイイから」
期待の眼差し。彼女からの催促を受けた自分は上着のポケットからスマートフォンを取り出していくと、今も向けられているメーの期待に応えるように端末を操作して、そのスイッチをオンにしていったのだ。
途端にも響かせた、メーの「あっ」という甘い声。同時にして内股になるよう身を縮こまらせていくと、“ソコ”に伝い始めた震動に頬を赤く染めながらそれを喋り出してくる。
「あぁ~っ、ヤッバイ……ッ。すっご、あぁぁ~~…………」
「ちょうど他の客が出払っている時間みたいだけど、ホステスのみんなはいるからね。そこをちゃんと意識してもらえるといいかも」
「んなの、分かってるってば……ッ。わざと意識させないで……」
「余計に感じちゃう?」
「この、変態っ」
勝気な調子とは裏腹に、強がる表情で微笑んでみせたメー。
生意気な口を利くなら、もっと強くしちゃおうかな。そう思った自分がSっ気のままに震動の数値をいじろうとしたその時にも、ふとメーの後ろから忍び寄ってきた“彼女”の存在へと自分は視線を向けていった。
次にも、敏感になっているメーの肩へと両手を乗せてきたレダの姿。これにメーが「みゃあっ!?」と相変わらずの変わった驚き声を上げていくと共にして、飛び跳ねるように驚いた彼女の耳元でレダはニヤつきながら囁き始めたのだ。
「あらぁ~、随分と楽しそうなことをしているじゃない? わたしも混ぜなさいよ」
「れ、れだ?! いやそんなっ」
「とぼけちゃってもムダよ~? わたしに隠し事は通用しないって、あなた達はよく知っているでしょう?」
と言ってレダはメーの背後に引っ付くよう身体をくっ付けるなり、その右手を彼女の股へと伸ばして“ソレ”を思い切り掴んでいったのだ。
背後から鷲掴みにされた“秘密の道具”。そして“ソコ”に押し当てられたメーは直後にも、「ぁあッ、ぁぁあっ!!!」と悲鳴のような甘い声を上げて痙攣し始めていく。
や、やばすぎる……。
思わず自分のも反応した目の前の光景。加えて、メーが快楽に浸りながら天を仰ぐ様子が一層とそそってくる中、今も押し当て続けるレダがメーの耳元でその言葉を囁き続けていく。
「あなたにこんな趣味があったなんて、わたし知らなかったわぁ。いつから味をしめたのかしら? カンキ君と出会ってから? そういえば、カレと出会った後からあなた、随分と色気づいたわよねぇ? 前までこういうことには興味無さそうにしていたし、同伴相手とのえっちにも満足できていなかったんでしょう? それが急に、“こんなモノ”を使うようになっちゃって。この数カ月でやらしくなったわねぇ本当に」
「な、なんなの急にっ……!? ちょ、っと。やめ、やめてッ」
「あらぁ、イケないわねぇ。そんな大声をあげちゃったら、みんなにバレちゃうかもしれないでしょ~? もしも、誰よりもバカンスを楽しみにしていたあなたが、出先でこんなモノを使って気持ちよくなっていた、なんて誰かに見つかりでもしちゃったら、あなたはもうこの先ずっと笑いものにされちゃうわよぉ?」
「ほ、ほんとにだめだってッ。ちょ、ほんとっ、マジでそれヤバイッ、ぁっ」
小刻みの痙攣を繰り返すメー。彼女の身体が快感で悶える姿に自分が釘付けとなっていくこの状況にて、レダはこちらの様子をうかがうなりニヤッと魔性の笑みを一つ零して、メーへとそれを指示し始めていく。
「カレ、ここに来てからずっと働きっぱなしだったから、そろそろ誰かが労わってあげないといけないわよねぇ?」
「だ、だから、なにっ……!?」
「働いてくれたカレへの感謝として、お肉の一つでもお口にあーんしてあげなさいよ~?」
「それっ、レダがやればいいじゃ……んぅッ」
「カレは今、あなたに釘付けなのよ~? だったら、今のカンキ君を虜にしているあなたがしてあげるべきだと思うんだけどぉ?」
「わ、わかったからっ! わかったからっ、それやったら、コレやめてよッ!?」
今も自身の股に手をあてがってくるレダへとその言葉を掛けるなり、メーは快楽に抗えない身体を引き摺るようにしながらコンロへと近付いて、ちょうど焼けていた肉を箸で掴んでこちらへと差し出してくる。
そしてメーは、快感で歪ませた艶めかしい表情で「か、カンキ君っ、はやくッ、はやく!! あーんして! あーんして!!」と訴え掛けてきたのだ。
一刻でも早く解放されたいメーと、そんな彼女を悪戯な視線で見遣るレダ。かつ、この二人のやり取りを間近で眺めていた上に、やけにSっ気がそそられるメーの、されるがままのその姿。
これを目にした瞬間にも自分は、心の内に留めていた猛獣の如き本能に目覚めてしまった。
自分はメーから差し出された肉を咥え、それを口の中でしっかりと味わっていく。これにメーは安堵したような顔を見せてホッとしていたその手前、自分は肉を飲み込むと共にして、メーへと一歩近付きながらこの言葉を掛けていった。
「……肉だけじゃなくて、メーもいただいちゃおうかな」
「え?」
不思議と、以前までの躊躇いが生じなかったものだ。
牙を剥くように口を開いた自分。そして次の時にも自分は、右手でメーの顎を摘まんで近寄せてから、肉に引き続いてその唇をいただいてしまう。
唐突の口づけに、メーは唖然とした表情で見遣ってきた。それでいて、理解が追い付いた直後にも彼女は、困惑と快楽の狭間に置かれたことでグルグル目にし始めた。
加えて、メーの“ソレ”を股に押し付ける力が更に強まっていくと、レダもまたこちらの様子に「あら~、肉食系」と魔性の微笑みでその言葉を口にするなり、“ソレ”を掴んでいる手をグッと押し上げてメーの好きなトコロに強く当てていったのだ。
これによって、必要以上に“口”を刺激されたメー。両方から攻められたことで彼女は声にならない音を喉から出しながら痙攣を起こしていき、直にもメーは腰が砕けるようにその場に座り込んでしまったものだった。
彼女の様子を見て、自分はスマートフォンを操作してスイッチを切っていく。
共にしてレダはこちらへ近付いてくると、人差し指を唇に当てながら「わたしにもご褒美ちょうだい?」と艶やかな表情で口にしてきた。それを受けて自分は「ありがとね、レダ」と言葉を掛けていって、躊躇いもなく彼女とも口づけを交わしてから一息ついていく。
……そんな一連のやり取りが行われた直後のこと。いつの間にかコンロの近くまで来ていたミネが、皿とトングを持った状態で複雑な表情をしながらこの言葉を掛けてきたのであった。
「…………ねぇ、もらってもいいんだよね……?」
「あ、あぁ、いいよ……! もう焼けてるから、好きなの取ってもらっても構わないからね……!」
「…………ケダモノ」
「えっ」
夜を迎えたこの時刻。スケジュール的にもこの日が最後となる休日の締め括りに、一同は付近の神社で開催される夏祭りに顔を出す運びとなった。
森林に囲まれた山奥の神社にて、真っ直ぐと伸びる一本道に立ち並んだ屋台の光景。他、大量の提灯が吊るされた景色が夏の風物詩を物語るその中で、自分はユノと共に会場の入り口で“彼女ら”の合流を待ち続ける。
けっこう時間かかってるなぁ。
そんなことを思いつつ、自分が腕時計で時間を確認していたその最中のこと。ふと、メーの「お待たせー」という声が投げ掛けられたことによって自分は、ユノと共に声の方向へと振り向いていったものだ。
すると、そうして向けた視線の先では、借り物の浴衣姿で歩み寄ってくるメー、レダ、ミネの三人がうかがえた。
それぞれ、メーはイチョウの模様に藍色ベースの浴衣と白の帯、レダはアジサイの模様に黒色ベースの浴衣で青の帯、ミネは金魚の模様に黄色ベースの浴衣と水色の帯という外見でこちらと合流してくる。
その三人がまた浴衣を綺麗に着こなしていたため、自分は見惚れるように視線を向けながら、反射的にこの言葉を三人へと投げ掛けてしまった。
「メーもレダもミネも、みんなすごく綺麗。タキシードも水着も浴衣も着こなせるなんて、さすがだよ」
こちらのセリフを耳にして、メーはピースしながら「あは、そうでしょそうでしょ? やっぱ私達、何を着ても似合っちゃうんだな~これが」と言うなり勝気に微笑みかけてくる。
レダもまた誘惑的な目で「ウフフ、もっとじっくり眺めてもらってもいいのよ~?」と言葉を口にしてくるその脇で、ミネは不愛想にそっぽを向きながら「……ありがと」と呟いてきたものだ。
彼女らの浴衣姿に、ユノも「みんな、本当によく似合ってる。同じ店に勤める者として誇らしく思うわ」と、穏やかな微笑を交えながら凛々しいサマで賛辞を送っていく。
一方で、自分はラミアの姿がうかがえなかったことから、周囲を見渡しつつ呟くように三人へと行方を訊ね掛けていった。
「ところでラミアの姿が見えないけど、みんなと一緒じゃなかったのかな」
こちらの問い掛けに、メーが「あー大丈夫大丈夫! ラミアは着付けにちょっと時間が掛かっちゃってるだけだから、もうそろそろ来ると思うよー?」と気楽な調子で答えてきた時のことだった。
メーの言葉と共にして、彼女らの後ろから「お待たせしましたー」と適当な調子が投げ掛けられると、直後にもその声と一緒にラミアが駆け寄るようにこちらとの合流を果たしてくる。
紫と黒の幾何学模様をベースにした浴衣に黄色の帯を巻き付けた彼女の格好に、自分は見惚れるような視線を向けてラミアを見遣ってしまう。
それを目にしたラミアは次の時にも、こちらと視線を合わせるなり悪戯な調子で訊ねながら歩み寄ってきたのだ。
「あれあれ?? カンキさんもしかして、ウチに見惚れちゃっていましたか??」
これを受けて自分は、照れ隠し気味に「ら、ラミアもすごく似合ってる。ほんとに可愛いよ」とついつい答えてしまう。
この反応にすかさずと、メーやレダがからかう視線を突き刺してきた。
それを受けて自分は、気まずく思いながらそっぽを向いていく。だが、こちらの様子にラミアはとても満足げに微笑んでみせると、「まー、そーですよねー。知ってました。だってカンキさんは、このラミアちゃんにずっとメロメロでいますもんねー??」と、適当ながらも生意気な声音で返してきたのであった。
会場のスピーカーから流れてくる笛の音楽と、人混みによって奏でられる愉快げな雑音が入り乱れたこの空間。今も流されている和風テイストの曲がお祭りの雰囲気を演出していくその中で、行き交う人々に混ざる自分達もまた、一つの集団となって屋台を巡っていた。
特に、浴衣に着替えたメー、レダ、ミネは、目についた屋台を片っ端から漁るように顔を覗かせていたものだ。
主に、たこ焼きやお好み焼きといった食べ物に反応を示すメーと、金魚掬いや射的という遊戯系に興味を示すミネ。あとは、屋台のオトコを物色するレダという、それぞれの方向性の違いが顕著となっていた彼女ら。
今も、たこ焼きを頬張るメーが、味見として別のそれをミネに食べさせてあげていた。それでいて、この様子を見ていたレダがメーを誘惑するように同じことを要求してきたために、メーは渋々ながらもレダへとたこ焼きを差し出していくという光景が繰り広げられていく。
尤も、こうしてメーはレダにもたこ焼きを食べさせようとするのだが、レダはレダで目についた男前の店主へと吸い寄せられていったことから、メーとミネがそれを慌てて追いかけて……という構図が目の前で展開されていたものだ。
そんな、夏祭りを満喫する三人の様子を、自分とユノは後方から見守っていた。
自分らは自分らで、無邪気にはしゃぐ三人を見遣りながら雑談を交わしていく。こんな自分らの様子もまるで保護者に見えていたものだろうが、ふと自分は振り返った先にいたラミアと目が合うなり、あの三人の輪に混ざらない彼女へと自分はそれを訊ね掛けていった。
「ラミア? どうしたの? ラミアもみんなと一緒に屋台巡りしないのか?」
先頭を往く彼女らを指差しながら投げ掛けたこの言葉。これにユノも振り返ってくる中で、ラミアは一瞬だけ視線を逸らしながらも適当な調子でその返答を行ってきたのである。
「あー、ハイ。なんとイイますか、イマはイイんです」
「そう? じゃあ、俺とユノさんの三人でゆっくりと祭りを楽しんでいこうよ」
「あー。まー、それもそーなんですけどねー」
どこかハッキリとしない彼女の様子。これに自分はどことなく違和感を覚えていくのだが、ラミアの反応を見たユノは彼女を見遣りながらそれを口にし始めてくる。
「いいわよ、ラミア。柏島くんを連れて、二人で軽く散策してきなさい」
「ですけど、バカンス中はユノさんがカレを護衛するおつもりだったんですよね??」
「私の代わりに、貴女が柏島くんを守ればいいだけの話よ。それに、このバカンスはホステスの慰労も兼ねているの。だから、貴女が望む憩いを私はできる限り容認したいと考えているわ。私は彼女達と行動しているから、柏島くんのことは貴女に任せたわよ。二人で過ごすバカンスのひと時を満喫していらっしゃい」
「あー、これはこれはお気遣いどーもです。じゃあお言葉に甘えまして、ちょっとだけカンキさんをお借りしていきますねー」
そう言うなり、こちらの右腕に絡みついてきたラミア。そして彼女は上目遣いで甘えるような視線を向けながら、そのいたいけな容貌でこの言葉を掛けてきたのであった。
「それじゃーカンキさん、サクッとデートしてきましょーか」
「あぁ、いいよ。二人でこのお祭りを楽しんでいこっか。では、ユノさん。メーとレダ、ミネの方はよろしくお願いいたします」
ラミアからのアプローチによって、バカンス最終日の祭りの夜を彼女と二人で過ごすことになったこの状況。ユノの許可を得て別行動となった自分らは歩き出していくと、人混みに紛れたことによってすぐにも二人きりになったものだった。
ラミアの歩調に合わせながら歩き進めるこの道のり。その道中にもバカンスの感想や他愛ない会話を交わしていくことによって、自分とラミアは他人の目を気にしない二人きりの交流で親睦を深め合っていく。
途中、ラミアは目についたわたあめをおねだりしてきた。かつ、それを作っているのだろう屋台を指差して、上目遣いでお願いしてくる彼女を目撃したものだったから、自分はラミアの思惑通りにわたあめを購入してはそれを彼女に手渡していく。
これにラミアは、満足げな表情でわたあめを頬張るものであったから、自分は思わず見惚れるように彼女の横顔を眺めてしまっていた。
そんな自分の視線に気が付いたラミア。
急にクルッと振り向いてきたそれに自分が驚いていく中、彼女は目が合うなり悪戯な笑みを浮かべながら、反応を楽しむような表情でそれを口にしてきた。
「あー、またウチに見惚れていたんですかー?? カンキさんはどんだけラミアちゃんのコトが好きなんでしょーか??」
まぁ、否定はできないけど……。
からかってくる言葉を受けて、図星のような顔で見遣ったこちらの表情にラミアは一段とニヤニヤしていく。
そんな、終始ラミアの手玉にされ続けるやり取りを交わしながら屋台巡りをしていた時のことだった。
人混みから逸れるよう歩いていた自分らは、気付けばひと気の無い森林の小道に踏み入れていた。
灯りも少なく、足場も砂利と段差の組み合わせであまりよろしくないその雰囲気。これに自分は、「いつの間にかこんなところに。なんだか暗くて危ない場所だから、来た道を引き返そっか」とラミアに提案していくのだが、彼女はそれを聞くなり一層と腕に抱き付きながら、どこか慌てた様子でそう返答してきたのだ。
「あの、もう少しだけ進んでみませんか??」
「え? まぁ、それは構わないけど……足元がよく見えないからラミアが転んだりしないかが心配で……」
「あー、まー、アレです。ウチならダイジョーブですから!! まーまー、ササッ、ホラホラ。早く行きましょーよー!!」
「わ、分かった分かった!」
なんだろう。どこか焦っているようにも見えたものだったけど……。
と、やけにグイグイ引っ張ってきたラミアに対してこれを思っていく自分。だが、この疑問を抱きながらも浴衣姿で積極的な彼女に身を委ねた自分は、彼女の引っ張る力に任せるがままその小道を歩き進めることにする。
それにしても、一体どこに連れていこうとしているんだろう。
不思議に思う気持ちを胸に秘めたまま、自分はしばらくと緩やかな上り坂を進んでいく暗がりの道中。
そうして、ラミアに連れられること十分程度が経過しただろうか。
しばらくと続いた上り坂が終わりを告げると共にして、視界には開けた平坦の地形がこちらを出迎えてきた。かつ、その空間には三つほどのベンチが設置されていたことに尚更と疑念を抱いていくその最中にも、上り終えた勢いのまま歩き進めたその先の景色に、自分は思わず感嘆の声を零すこととなったのだ。
悠然たる森林を眺めることができる高台。そして、到着と同時に打ち上げられた、お祭り仕様のド派手な花火という目の前の絶景。
開始時刻となったのだろう打ち上げ花火が、ちょうど目の前で上っていく。この、特大の花火を眺めることができる特等席に自分は見惚れるように佇んでいくその中で、直後にも破裂した花火の轟音に思わず耳を塞ぎながら、一緒になって耳を塞ぎ始めたラミアへと言葉を掛けていったものだ。
「すごいな!!! こりゃとんでもない穴場スポットだ!!! こんな眺めの良い場所、よく知ってたねラミア!!!」
「あーハイ!! 以前に同伴したお方がですねー、コチラの花火を製造している職人さんだったんですよー!! その際にですね、コチラの穴場を教えてもらったというワケなんです!!」
「さすがだよラミア!!! 俺、こんな高い場所で、こんな近くで花火を見たのは初めてだ!!!」
「喜んでいただけたなら、何よりですよー!! もー、カンキさんを連れ出すのにたいへん時間が掛かってしまいましたから、ショージキ間に合うか不安だったんですよねー!! ですけど、なんとか間に合って良かったです!! ただアレですね!! すっごくうるさいですね!! とりあえずベンチにでも座りましょーか!!」
「だね!!! そうしよう!!!」
花火の轟音から、お互いに大声で交わしていくその会話。共にしてベンチの下へ歩み寄っていくと、ラミアと並ぶように腰を掛けるなり隣の彼女が身を乗り出すように振り向いてきたのだ。
期待をうかがわせる眼差し。それと目が合った瞬間にも、俊敏な動作でこちらの膝に乗りかかってきたラミア。
浴衣という格好で軽快な動きを繰り出してきた彼女に、自分は驚きながらも両手で彼女の身体を支えていく。そうして膝の上に乗るラミアと向かい合うような状態になっていくと、以前にもあったこのシチュエーションに自分はうかがうような声音で彼女に問い掛けていった。
「あの、ラミア?」
「ダイジョーブですよ。ダレもいませんから」
「いやでも、この状態じゃラミアは花火を見られないけど」
「あー、ハイ。まー、ウチは別にキョーミありませんからねー」
「相変わらず、花より団子だなぁ」
言葉を返していくこちらの顔に、ラミアは両手を添えてくる。
両方の頬に触れてきた、彼女の小さな両手。同時にしてこれに引き寄せられたものだったから、自分はそれに便乗するように顔を差し出していき、そして、以前までの躊躇いを忘却したその勢いのままにこちらからラミアの唇を奪っていったのだ。
……花火の轟音が鳴り響く中、夏の風物詩そっちのけで口づけに熱中していく自分とラミア。
その音さえもフェードアウトしていった、二人だけのこの空間。その間もずっと、触れる唇同士で感触と温もりを共有し合っては、ついばむように咥えるキスを何度も繰り返すこのやり取りに一層もの深みへと沈んでいく。
ラミアと一緒に雨宿りをしたあの日から、自分の中の何かが変わっていった。かつ、あれ以来にも自分は、他のホステスとも親密な関係を築いていくこととなる。
そんなキッカケをもたらした人物こそ何物でもない、ラミアという存在によるものだった。
思い返してみれば、彼女は悉くと自分の初めてをもたらしてくれていた。それは、
店で最初に話したのも彼女だったかもしれないし、最初にアパートの部屋に泊まり込んできたのもラミアだった。そこから始まったホステスとの半同居生活も元を辿ればラミアがもたらした結果であり、最初に同伴をしたのも彼女で、熱烈な行為を覚えるに至ったのもラミアのアプローチがあったからこそのもの。
ラミアというホステスは、自分にあらゆる初めてをもたらしてくれていた。それが常識的に良いのか悪いのかは置いといて、少なくとも自分は、彼女と関わることによってこの人生が大きく変化したことを実感している。
その予感は、次の時にも新たな形となって現れた。
今も行われている熱烈な口づけ。花火に目もくれず唇で興奮を育んでいく行為の最中にも、触れ合う柔らかな感触が離れたその合間を縫うようにラミアが言葉を口にし始めてきた。
「カンキさん。ウチのコト、好きですか??」
「唐突だね、ラミア。どうしたの」
「イイですから、早く答えてください」
「好きだよ。これが恋愛感情によるものなのかは分からないけれどね」
「まー、ウチにガチ恋されちゃっても困りますからねー。職業柄、誠実なお付き合いなんてできませんし」
会話の合間にもソフトなキスを交えていくやり取り。口づけを優先した途切れ途切れのそれをラミアと行っていく中で、彼女は一歩踏み込んだディープなキスでこちらの口を塞ぎながら、唇同士が触れ合ったその状態で柔らかなそれを擦り付けるように喋り出していく。
「ですけど、ウチのコトはもう、ただのお友達とは思えていないですよね??」
「正直な話、ラミアに限らず店のホステスが他の男とこういうことをしているって考えると、ちょっとだけ寂しく思えちゃう時もあったりするよ」
「それじゃあ、ウチのコトを独占しちゃいますか?? このラミアちゃんを、カンキさんのモノにしちゃいます??」
「ラミアは俺の物なんかじゃない。ラミアは飽くまでラミアだ」
「そーいうトコが頑固ですよねー、カンキさんは」
「俺ってあっさりしすぎなのかな」
「ウチらからしますと、カンキさんのようなおヒトは都合が良くて好印象ですよ」
「俺もそう思う。ラミア達とのこういう関係が一番しっくりくるんだ」
「奇遇ですねー。ウチもです」
こちらの両肩に回してきたラミアの両手。そして彼女は抱き付くように引っ付いてくると、鼻先を擦り合わせた至近距離でこちらの瞳を見つめながらそう喋り出してくる。
「カンキさん。また同伴しませんか??」
「いいよ。今度はどこに行こっか」
「もっとラフなお出掛けがしてみたいです」
「じゃあ、適当に街中を散歩してみよっか」
「イイですねソレ。アタマを空っぽにして、なんにも考えないお出掛けをカンキさんとしたいです」
「そうしよう。お店に戻ったら、同伴の手続きをしないとね」
「つくづく思いますけど、カンキさんってホントに都合が良いお方ですよね」
「それが取り柄みたいなもんだからね」
彼女の頭部に手を優しく添えて、ゆっくりと抱き寄せて口づけを行っていく。
華やかな花火が空を彩る光景の中、自分とラミアは二人だけの世界に入り浸っていた。
しばらくと続けられた熱烈な行為。恋人という関係ではないその間柄で、互いの性欲を満たし合うだけの接触が何よりも心地良いと思えてしまえたものだ。
共にして、約束した次回の同伴において自分は、ラミアと更なる親睦を深めることとなる。
友達の枠に収まり切らない、一線を越える行為。次回にも行われるラミアとの同伴では、それを今まで禁忌と考えてきた自分の常識を塗り替える、また新たなキッカケをもたらす出来事となるのであった。