俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
業務終わりの深夜の時刻。自分は私服姿のレダと共に
カツカツとヒールの靴音を鳴らしながら、両腕を広げながらこちらへ真っ直ぐ駆け付けてくる“彼女”。
それは、ヒール込みで百六十八ほどの身長である女性。活気に溢れた活発的な表情が印象に残る彼女は緑色のキャップを被っており、活力でキラキラさせながら見開いた黒色の目と、膝丈まで伸ばしたミルクティーベージュの長髪を低い位置で結んだツインテールにしてあるその容貌。
服装は、膨らみのある緑色のパーカーをだらしなく着こなすことで肩を出しており、へそ出しで背中の開いた黒色のキャミソールを着用している。また、青色のホットパンツのボタンを敢えて開けておくことで黄色のショーツをチラ見せする大胆なコーデをしており、薄い黄色のヒールサンダルと、首に掛けた緑色のヘッドフォンというその外見でこちらに駆け寄っていた。
彼女はすぐにも、流暢な方言の訛りで「ニーチャァーーーンッ!!!」と叫んできた。
声を上げながら盛大に飛び込んでくる彼女。これを受けてレダが盾になるようこちらの目の前に立ち塞がってくると、同時にして抱き付いた柔らかな感触に目の前の彼女は「あれ?」と言葉を零しながら喋り出してきた。
「なんでやねん!! なんでウチの邪魔をすんねん!!」
耳元で騒ぐ彼女を引き剥がすレダ。その動作の最中にも呆れと不信が混ざった表情で「あなたをカンキ君に近付けるわけにはいかないからよ」と答えていき、今もこちらへ手を伸ばしてくる彼女の「そないに警戒せんとってやー!! なぁーー! ニーチャーン!!」という言葉を無視するようにレダは、彼女を他所へと退けていく。
このやり取りの途中にも、店の裏側から私服姿のユノが凛々しいサマで歩いてきた。
軽く腕を組んだ様子で、やり取りを見遣っていく。そのユノが合流してきたところで、方言の彼女は活気に満ちた調子でそれを喋り始めたものだ。
「ほんで、この後はどないすんねん。ニーチャンの自宅に直行か!? ならウチも行くー!!」
乗り気な彼女に相反して、レダが「あなたをカンキ君の部屋に上がらせるわけにはいかないわよ」と突き放すように返していく。
まぁ、彼女が素性の知れないハッカーである以上は、自分としても接触は避けたいし……。
という内心が表情として表れてしまう自分の反応も含めて、冷たくあしらわれた彼女は「なんでやぁ!!」ととても悲しそうな顔を見せてきた。
だが、一方でユノは冷静な声音でその言葉を口にしてくる。
「構わないわ。彼女を柏島くんの部屋に案内することを許可するわ」
ユノの回答に、レダは「ちょっとユノさん、どうして!?」と即座に反応していく。これにユノはレダを見遣っていくと、その視線をすぐに方言の彼女へと向けながらそれを口にしてきたのだ。
「我々が柏島くんの住所をはぐらかしたところで、彼女は既に彼の住所くらい把握しているでしょうから」
ユノの言葉に、方言の彼女は「なんや、そないなことか」と口にしながらそう喋り出してくる。
「そんなん当たり前やんか。ニーチャンの住所くらいウチも知っとるで。ここから歩いて十五分くらいの距離にあるアパートのことやろ? 基本この道を真っ直ぐ歩いてくだけやしな。あー、せやけど時間に関してはまちまちっちゅうとこか。女帝のネーチャンの歩くペースやと約十二分くらい、闇医者のネーチャンのペースやと十八分くらいか? んまぁ、心配には及ばへん。ウチも一人で行けるもんやさかい、置いてかれたところでウチ一人でニーチャンの部屋まで辿り着けるからな!!」
はっはっは!! と笑い飛ばす彼女。これにレダが頭を抱えながら「……尚更と心配になってきた」と呟いたものだ。
そんな会話を交わしていると、店の裏からはそれぞれ私服姿のラミア、メー、制服姿のミネが歩いてきた。
業務終わりの店の前。そこに皆が集い、各々で「お疲れ様」と挨拶を口にしてくる。その彼女らが合流してきた直後には、店の裏からもう一人、ボーイのクリスが私服姿で音も無く現れてきた。
ボロボロになったノースリーブの赤色ロングコートに、灰色のシャツと黒色のダメージジーンズ、そして黒色のブーツにドクロの銀色ネックレスという彼の格好。ブライトピンクの無造作なショートヘアーで、土器のような質感である灰色の肌と猫背気味の様子で姿を見せてきたその脇で、方言の彼女は満面の笑みを浮かべながらそれを喋り出してきた。
「全員大集合やなぁ!!! ほんで、明日は急遽閉店ときた!! そんなら、今日は徹夜で遊ぶ他ないやろ!! なぁニーチャン!」
え?
思わず振り返る自分の反応と、ニコニコな彼女の傍で頭を抱えるレダ。共にしてレダが「誰のせいで店を一日閉めることになったと思ってるの……」と呟いていく中で、ユノもまた淡々とした調子でそう口にしてくる。
「サイバー攻撃を受けて、明日はセキュリティを増強するべく表に出せない業者を呼ぶ手筈になっているわ。システムの脆弱性が露呈した以上、然るべき措置を早急に取らなければ、我々は再び危機に晒されることになりかねない。明日の臨時休業もやむを得ないということね」
じっ、と方言の彼女を見遣るユノ。その視線に対しても方言の彼女は「ウチのおかげで自分らの弱点が分かったんやろ? なら、ウチに感謝せぇ? なぁ、ニーチャンもそう思うやろ?」と、困ったようなサマを見せながらこちらに投げ掛けてくる。
いや、そう言われても……。
ただただ困ってしまった自分。そんなこちらの反応にレダが助け船のように喋り出してきた。
「あのねぇ、そもそもとしてあなたがサイバー攻撃なんかを仕掛けなければ良かっただけの話なの。おまけにわたし達の裏の情報を人質みたいにして脅してきて、それでもなお穏便に済まされている現状に感謝くらいしなさいよ?」
怒りも込めたレダの言葉。尤も、方言の彼女は笑いながらそう答えてきたものだ。
「あっはっは!!! せやから、ウチのアクセスが途絶えたら自分らの情報がネットに放流されるっちゅう脅しはブラフやったって説明したやろー? むしろウチ、単身で敵陣に乗り込んだ状況でよくあんな切り返しを思い付いたと自画自賛しとんねんでぇ!! ……まぁ、女帝のネーチャンはブラフやってことに気が付いとったみたいやけどなぁ」
方言の彼女がユノを見遣っていく。これにユノは凛々しい調子で「えぇ、目の動きに違和感を覚えたから、ブラフであることは薄々と感じ取っていたわ」と返答した。
だが、続けて「けれども、万が一の事態を考慮した末に、貴女の要求を吞むことにしたのよ」と付け加えてくる。これに方言の彼女がやっぱりな~という表情を見せてくる中で、ふとラミアがそれを口にしてきた
「それにしましても、クリスさんがいらっしゃらない日で良かったですねー。もしもカレの出勤日でしたらアナタ、ブラフをかましてる間にも容赦なく撃たれていたと思いますよ??」
ラミアの言葉で、既に帰ろうとしていたクリスが「呼んだ?」と不敵な声音で振り返ってきた。
猫背で赤色の瞳を向けてくる彼。続けてクリスは不敵に笑みを浮かべながらそう喋り出してくる。
「当時の話は聞いているよ。とても楽しそうな空間だったみたいだね。僕も混ざりたかったな。出勤していない日をこんなにも悔やむことになるなんて思ってもみなかったよ」
方言の彼女を見据えた視線。それにユノがため息を交えつつ「貴方が現場に居合わせていなかったことは不幸中の幸いね」と呟いたものだったから、クリスはユノを見遣りながらそう言葉を口にしてきたものだ。
「僕らは常に罪を背負いながら生きている人間だ。負い目があるからこそ発覚を恐れなければならない立場にいる。そんな僕らにとっての敗北は、各々が背負う罪を外部の人間に知られることだと思うんだ。つまり、その彼女に罪を知られた僕らは完全敗北したも同然。僕らは既に負けている以上、ブラフであれどのようなプログラムが仕組まれていようとも、だったら彼女が何発目の鉛玉で絶命するかの観察に勤しんだ方が有意義だと思わないかな?」
あぁ、クリスが居合わせていたら問答無用で撃っていたな……。
自分が抱いた確信は、方言の彼女も同様だった。これに彼女は「なんや自分、末恐ろしいやつやなぁ……」と口にしていくと、これにクリスは不敵な調子で「君のそのへそに、どれほどの鉛玉を詰め込めるかを試してみたかったよ。だから、いつでも敵に回っていいからね。そうすれば拳銃の使用が許可されるからさ」と答えたものだから、その返答に方言の彼女はドン引きする表情を見せていった。
尤も、彼女はその表情をケロッと変えていくなりそう提案してきたものだが。
「んまぁそないなことは別にええわ!! で、明日は店が臨時休業やさかい、せやったらこれからパーッと夜遊びでもしようやないか!! なぁニーチャン!」
「そこでどうして俺に訊いてくるんだ……?」
やけにこちらにこだわる方言の彼女に、ツッコミの形で答えていった自分。その返答に気分良くした彼女が笑顔を向けてくるものだったから、レダが警戒するようにこちらへと引っ付いて護衛に徹底し始めてくる。
で、周囲の薄っぺらい反応に思った返答を得られなかった方言の彼女は、上着のポケットからタブレットを取り出しながらこう脅してきたのだ。
「へへっ、誰も乗り気になれへんのなら、自分ら、イヤでもウチに付き合うてもらうで」
一体何をするつもりだ?
彼女の動向に、レダが「ちょっとあなた、何をするつもり?」と睨みを利かせながら訊ねていく。だが、方言の彼女は「別に?? ま、ニーチャンがウチの夜遊びに付き合うてくれるんなら、何もせんといてやるわ」と口にしてくるなり、物欲しげな瞳でこちらをジーッと眺めてきたものだ。
……これでまた店の機密情報を抜き取られたら大変だ。
彼女の脅しに、自分は「分かった。遊びに付き合うから、店に手を掛けないでほしい」と伝えていった。
これにレダが振り返っていく最中にも、方言の彼女は「やったー!!! じゃあ駅前に行こー!!」と盛大に喜び始めると、直後にもこちらをうかがうことなく龍明の駅前の方へと駆け出してしまったのだ。
今の自分らは、完全に彼女の術中にはまっていた。
取り敢えず、彼女についていくしかない。これに自分は周囲へ「……勝手に決めちゃってごめん」と謝罪していくと、ユノは「いいえ、これは私達の弱みが招いた結果に過ぎないわ。だから柏島くん、貴方が自責の念に駆られる必要は無いの」と答えながら歩き出していく。
続いてレダが、「大丈夫よ、わたし達がカンキ君を守ってあげるから」と言いながら、方言の彼女の後を追うように歩を進め出していく。
その後ろからはラミアが歩いてくるなり、いつもの適当な調子で「まー、ウチらはいつ死んでもイイような覚悟の中で生きてるんで、あまりお気になさらずー」と口にして通り過ぎていき、そしてメーが勝気な表情で「私はあのコのこと気に入ったよ。なんか面白そうだからね」とウインクを一つ見せてからこちらを追い越して歩いていった。
後ろでは、残されたミネが不安そうな表情でこちらを見つめていた。
共にして自分らの背後では、クリスが背を向けて逆方向へ歩き出していく。それを見て自分が「クリスはどうする?」と訊ねてみたのだが、彼は不敵な調子で「人を撃てない余興には興味が無いからね。僕はこれでお暇するよ」と答えて歩き去ってしまったものだ。
……再びミネと目が合っていく。
今日の業務で、既に疲労困憊な雰囲気だった少女。だが、強気な表情をつくってこちらへ駆け寄ってくると、「あ、アタシだってホステスの一人だし……っ!」と口にして、こちらの手を取ってから「だから心配なんか要らないから! それよりもほら、さっさと行こ」と言葉を掛けて駆け出していったのであった。
ボウリングのピンが薙ぎ倒される爽快な音。これが一階の空間に響き渡る中で、吹き抜けとなっている二階ではビリヤードの甲高い弾ける音が鳴らされていた。
二十四時間営業の遊技場に訪れていた自分らは、そこでビリヤードを嗜んでいた。
方言の彼女を中心として、主にユノ、ラミア、メーの四人がビリヤードの台を囲っていく。その様子を近くの席で眺めていた自分は、今も左隣で付きっ切りに守ってくれているレダと、右隣でウトウトしているミネという二人に挟まれていた。
特に、ミネは仕事の疲れでほぼ寝てしまっていた。ウトウトしながらこちらに寄り掛かってきて、そのまま眠り切れないサマでぼんやりしていく少女。自分はそんなミネの頭を撫でながら眠ることを催促していく最中にも、ユノがキューで玉を突いた音を聞いてそちらへ意識を向けていく。
お手本のように爽やかな甲高い音。これが響き渡ると三つの玉がポケットに落ちていったことで、方言の彼女はとても悔しそうにしながら喋り出したものだ。
「うあっちゃー!! まんまとスゴ技を決められてもうた!! 女帝のネーチャンほんま容赦ないで!!」
快活に喋る彼女は、満面の笑みでそれを口にしていった。
この言葉にユノは、凛々しいサマを崩すことなく自身のターンを継続していく。また、その脇ではラミアが「さっきからユノさんばっかり入れてるじゃないですかー!! 大人げないですよー!!」と不満そうに眉をひそめていた。
メーもユノのプレイに釘付けとなっていた空間の中で、方言の彼女はこちらへと向きながらこう言葉を投げ掛けてきた。
「なぁなぁニーチャン!! ニーチャンもビリヤードやろうやぁ!!」
「俺? ……いいのかな?」
自分を指差しながら答えたそれ。この呟きに対して彼女は「ええに決まっとるやろ! はよ来てぇ!」と楽しそうに手を振ってくるのだが、如何せん睨みを利かせる隣の護衛によって自分にも躊躇いが生じていたものだった。
……まぁ、この誘いを断ったら断ったでまた脅されそうだし……。
内心でそれを思って、自分はレダへと「じゃあ、俺もちょっと行ってくるよ」と伝えていく。これにレダは「無理に期待に応えなくてもいいわよ」と不機嫌そうに引き留めてきたのだが、自分は「まぁ大丈夫、ユノさん達も居てくれてるし」と返してから、寄り掛かっていたミネをレダに任せて自分はビリヤードの台へと向かっていった。
任せたミネの頭に、レダの乳が乗せられていく。これに少女がうなされるような悩ましい表情で眠る様子を背にしてから、自分はビリヤード組に合流する形で歩み寄っていく。
それと共にして、ラミアが「じゃーウチ休憩しますんで、代わりによろしくお願いしまーす」と言いながらキューを手渡してきた。
また、これを自分は受け取っていく最中には、メーがからかうような表情で「カンキ君ビリヤードできる? 私が手取り足取り教えてあげよっか?」と口にしてきた。それに対しても自分は、「友人と時々やってたから、一通りのやり方は身に付いているよ」と答えてメーの思惑に乗らない形で台に寄っていく。
そんな彼女らと会話していくこちらの様子を、方言の彼女は遠目からじっと眺めていた。
その眼差しはどこか、穏やかで落ち着いたような雰囲気のもの。これは決して、待ち遠しいとか期待しているとかの活発さをうかがわせなくて、むしろ今まで見せてきていた快活さとは相反する何かを宿していたことから、その優しく向けられた視線に自分は違和感を覚えて仕方がなかった。
で、その彼女のことを、ユノも観察するようにじっと見遣っていたものだ。
ユノさんも、あの視線に何か思うところがあるのだろうか。既にキューを構えて玉を狙い定めている間にも、ふとよぎった疑問に自分は気を取られていく。
尤も、そうして隙を晒していたものだったから、悪戯で忍び寄ってきたメーによって手に持つキューを後ろから押されてしまい、それがコツンッと最弱の力で玉に触れたことによって、自分の出番が呆気なく終わってしまったものでもあったが……。
気が付けば、自分は方言の彼女と楽しく卓球をしてしまっていた。
互いに汗を流す自分ら。今も相対する彼女はとても楽しそうに振る舞っていく様子を見せていて、サーブをするべくその姿勢を低くしながらこちらをじっと見据えてくる。
……それにしても、彼女は運動もできるというのか。
ハッキングの技術を持っていることから、勝手な先入観で彼女はインドア派だと決めつけていた。しかし、外見の快活さは裏切ることなく、抜群なスタイルの良さにも納得できる機敏な動きで卓球に勤しんでいたものだ。
で、結果的にこの試合は僅差で負けてしまった。
白熱したムードに、隣の台で見ていたラミアとメーが「おー」と声を出していく。で、台を挟んだ向こう側では方言の彼女が飛び跳ねながら喜んでいて、心から嬉しいんだなと見て取れる彼女の姿に負けた自分が嬉しくなってしまう。
……なんだろう。彼女を見ていると、不思議と穏やかな気持ちになってくる。
本当に、自分と遊ぶことを楽しんでいるんだろうな。そう思わされる彼女の様子に自分が見惚れるような視線を向けていく中で、方言の彼女は周囲からの監視の目を無視するようにこちらへ駆け寄ってきてその左手を差し出してきた。
そして、快活さに溢れた満面の笑みでそう言葉を投げ掛けてくる。
「ごっつ楽しかったわぁ!!! またウチとやろうな、ニーチャン!!」
ニッコニコの笑み。だが、すぐにも遮ってきたメーに「はーい、カンキ君へのお触りは禁止されてまーす」と言われながら彼女は引き剥がされていく。
これに対して、方言の彼女は「なんでやぁ!!!」と本気で悲しむ顔を見せてきた。
……まぁ、店の人間全員を脅しにかけた以上は仕方ないよなぁ。なんて内心で言葉を呟いていきながら、自分は慰めるように彼女へとそう喋りかけていく。
「俺も楽しかったよ。またやろうね。えっと……」
……あれ、そう言えば名前を聞いていなかった。
今日の研修で、たぶん源氏名は決まっていそうだけど。そう思った自分が言葉を詰まらせていくと、方言の彼女がメーの肩越しに顔を出しながらその言葉を掛けてきたものだ。
「源氏名は“シュラ”や!! 武器の“トリシューラ”から来とるから、そこんところよろしゅうな!!」
「シュラね。教えてくれてありがとう」
神話が由来であること。そのルールに則った彼女の源氏名を耳にして、自分は方言の彼女もといシュラとの親交を深めることができた気がした。
夜が明け始めたその時刻。明るくなってきた外の様子に自分らは遊技場を後にしていくと、人通りの少ない龍明の駅前を集団で歩いていく最中にもシュラはそれを喋り出してきた。
「あー、ウチはこっちやさかい、ここでお別れやぁ」
名残惜しそうな調子で口にした言葉。共にして彼女だけが駅の方へと歩き出していくと、かと思えば踵を返してこちらに振り向いてきて、両手を身体の後ろに回したその佇まいで健気に見つめてきたものだ。
シュラの視線を受けて、自分は「シュラは電車?」と訊ね掛けていく。それに対して彼女は「そうやでー」と答えながら喋り続けてきた。
「本当やったら、ウチもニーチャンの部屋に上がりたい気持ちでいっぱいなんや。やけどウチ、まだ信用ないからニーチャンと一緒に居られへん。せやからウチ、今日からホステスとして頑張るつもりやさかい、ウチのことを少しずつ認めていってくれるとめっちゃ嬉しいわ!!」
ニッ!! と笑みながら伝えてきたその言葉。同時にして、この時にもシュラが見せてきた天真爛漫なその笑顔に、自分は嘘偽りない本音を感じ取れた気がした。
彼女は心から、自分という存在の傍に居たがっている。その時ばかりはちょっと自意識過剰だったかなと思えた自分であったものだが、シュラの微笑みを見たユノは凛とした佇まいでシュラへとその言葉を掛けていったのだ。
「貴女の素性については、未だ不明瞭な点があることに代わりないわ。ただ、研修に取り組む姿勢や周囲への掛け合いなどの様子を見ている分には、貴女からは
「そんなん当たり前や! ウチが自分らを脅したのも、そうでもせな自分らの店のホステスになれへんかったからや! ウチの身分じゃ仕方がなかったことやねん。せやさかい、自分らに牙を剥くのもあれが最初で最後。あの時にお披露目したウチのハッキングの技術、これからは自分らのために発揮するつもりでおるから、ウチのことをガンガン使てもうてもかまへんからな!! それが、ウチなりのケジメやねん!!」
「貴女の覚悟はよくわかったわ。尤も、今この場で意思表明をせずとも、荒巻オーナーの素性調査によって貴女の正体が判明しつつあるものだから、貴女という存在の有無は既に然したる問題ではないのだけれども」
「な、なんや自分、もうそないにウチの正体を突き止めてあるんか……」
「えぇ、オーナーの報告を聞いた時には耳を疑ったわ。でも、そうして耳を疑う事実であったからこそ、貴女の強硬手段にも納得がいったものよ。貴女の正体をあの場で知っただけでは、確実にただでは帰していなかったでしょうからね」
「まぁ、そうなるわなぁ……。っちゅうかあのオーナーのニーチャン、短期間でウチの身元を特定する程度には優秀やったんやな……。さすが、あの柏島長喜の相棒やっただけはあるなぁ……」
会話の雰囲気的に、シュラという人物に対する警戒はだいぶ薄れた印象を受ける。
それでもレダが未だに睨みを利かせていく中で、ユノは割と寛容的な声音でシュラへ「そういうことだから、身内にかけた迷惑の清算なんてものは考えなくても結構よ」と言い渡していったものだ。
まぁ、ユノがここまで言うのならシュラという人物は無害なのかな。そう思えた自分は彼女へと、「今日は難しいかもしれないけれど、もう少しだけ時間が経ったら今度、俺の部屋に上がっていってよ」と言葉を掛けていく。
すると、これを聞いたシュラは途端にパーッと表情を明るくして、かと思えばその喜びを抑えるように控えめな微笑みを見せてからこう答えてきたのであった。
「……! ……せやな、今度そうするわ! ありがとぉニーチャン!! 次はニーチャンの部屋に上がり込むさかいに、お泊まりで遊べるカードゲームやらをぎょうさんと持ち込んでお邪魔するとするわ!! ニーチャンの部屋に上がるのがほんまに今から楽しみやぁ!! ウチ、これをモチベーションにホステスを頑張るとするで!! へへっ」