※この作品はR-18です。

俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活   作:祐。

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第28話 Désirs partagés 《欲望の共有》

 ラミアの帰り、なんだか遅いなぁ。

 

 ボーッとした意識で部屋の天井を見遣る自分。『夕方には帰りまーす』という連絡をもらってから数時間は経過して、既に夜を迎えていたこの時刻。

 

 メーやレダが夜勤で部屋にいない今、自分は一人でベッドに腰を掛けている状況だった。

 普段なら、同伴から帰ってきたラミアと二人で他愛ない話をしながらテレビを観ていたことだろう。そんな、彼女らと過ごす時間が日常となっていた自分にとって、ラミアが帰ってこない現在の状況に不安や寂しさが巡り出してくる。

 

 ……大丈夫かな、ラミア。

 本気で心配に思った自分が、スマートフォンを手に持って彼女へ電話を掛けようとした時のことだった。

 

 ガチャッ。という扉が開く音と共に、ラミアの「ただいま戻りましたー」という声が玄関から聞こえてくる。

 

 これを聞いて、自分は言葉を返しながら飛び出すように玄関まで歩み寄ったものだ。

 

「おかえりラミア! 大丈夫!? 無事!? 何ともない!?」

 

 抱えていた心配を口走っていく。

 これに対して、玄関で佇んでいた地雷風コーデのラミアがキョトンとしていくと、首を傾げながら「?? どーかされました??」と答えてきたものであったから、自分はちょっと気まずく思いながら「な、なんでもない……」と言葉を返す他になかった。

 

 それから、ラミアが提げていた黒色の小さなショルダーバッグを代わりに預かって、二人で部屋へと戻っていく。

 

 何はともあれ、彼女は無事に帰ってきた。洗面所で手を洗うラミアを想いながら内心で安堵した自分が、ベッドの脇に佇んで意識を遠のかせていく。そうして安心感のままに暫しボーッとしていると、歩いてきたラミアがこちらの顔色をうかがうようにその言葉を掛けてきたのだ。

 

「あの、カンキさん。ちょっとイイですか??」

 

「ん? どうしたの?」

 

「今ってお時間あります??」

 

「あるけれど、何かあったの?」

 

 話しながら歩いてきたラミアを見遣っていく。その視線に彼女は目を合わせてくると、普段通りの適当な調子でそれを持ち掛けてきたのだ。

 

「そーですか。なら、今からウチとえっちとかできます??」

 

「え?? あ、えっち?? え? 今から??」

 

「そーです。今からです」

 

 あまりにも急なお誘いに、一瞬ばかり思考停止した自分。

 尤も、別に嫌というわけではなかった。ただただラミアからのお誘いに困惑してしまいながら「で、できるよ?」と答えていくと、彼女は柔らかく微笑みながら「ありがとうございます。じゃー早速えっちしましょー」と言ってベッドに寝転がっていった。

 

 地雷風コーデで、黒色の猫耳キャスケットを被った幼げなその姿。スカートである格好で無防備に寝転がったラミアの、大人びた白いショーツが見える光景に自分の気持ちは昂り出していく。

 

 それにしても、唐突に行為へ突入することになるなんて思わなかった。

 しかも、部屋でするのは初めてだ。以前のホテルとは違う空間に未だ戸惑いが隠せない自分であるものの、近くのタンスからゴムを取り出して、メーから貰ったそれをベッドに置きながらラミアへと覆い被さっていく。

 

 こうして、目の前で寝転がる彼女のいたいけながらの色気を目の当たりにしていくと、次にも自分から顔を近付けながらラミアへとその言葉を掛けていった。

 

「帰ってきてすぐだけど、休まなくても大丈夫?」

 

「お気遣いどーも。ウチのコトでしたらヘーキですので、カンキさんの思うままにしてください。できたらでイイですけど、ウチを満足させてもらえますと嬉しいです」

 

「わかった。それじゃあラミアが満足できるように、ラミアの好きなトコロをたくさん可愛がるようにするからね」

 

「ハイ、存分に可愛がっちゃってください」

 

 彼女の上着に手を掛けながら交わしていく会話。その間にもラミアの服を一着ずつ脱がしていくと、上下共にインナー姿となった彼女をベッドに押さえ付けるようにその両手首を掴んでから、自分はラミアの唇を奪うように優しく口づけを行っていったのであった。

 

 

 

 

 

 手で入念にほぐしていき、湿り気を伴った彼女の“クチ”にキスを行っていく。

 とても柔らかくて、舌で撫で掛けるだけで幸福感に満たされた。尤も、独特な香りも鼻をくすぐってくるものでもあったが、それすらも愛おしく思えてしまえる。

 

 こちらのアプローチによって、仰向けでいる全裸のラミアはベッドの布団を握り締めるようにしていた。

 力んだ全身がよく分かる。緊張と快楽が入り混じる彼女の反応に自分は尚更と舌を駆使していくと、少ししてラミアは甘い声と共に痙攣を起こしていった。

 

 ……可愛い。もっと見たい。もっと欲しい。

 息を荒げる彼女の顔へと近付いて、“下”を可愛がっていた口でキスを行っていく。これに彼女も応えるように食い付いてくるものだったから、自分もまた猛った“モノ”を彼女のに押し当てながら、入り口を探すように腰を動かしたものだ。

 

 既にゴムは着けてある。あとは再び一つになるだけ。

 ……彼女の聖域に進入する自分。同時にして全身に訪れた快楽の悦びを受け止めてから、自分は彼女の快楽を最優先にゆっくりと動き始めていった。

 

 ベッドの軋む音が響く空間。共にして、こちらが動く度に甘い声で鳴き始めたラミアの様子。

 そんな彼女の顔をじっと見遣りながら、自分は“先端”の感覚で彼女の好きなトコロを刺激していった。すると、投げ掛けていたこちらの視線を感じ取るようにラミアも見つめてくるなり、適当な調子でありながらも蕩けた瞳でそう喋り出してきたのだ。

 

「カンキさん、っ、ソコ、イイです。っ続けてください」

 

「ココが好きなんだ。わかった、続けるね」

 

「っ、あの。帰ってきてすぐにお願いして、すみませんでした」

 

「えっちのこと? 気にしなくてもいいよ。むしろ、ラミアとはまたシたいなって思ってたくらいだったから」

 

「そーですか。それなら別にイイです、ぁっ」

 

 悶えながら声を出してくるラミアが、その一突きでとても気持ちよさそうによがっていく。

 

 だが、その快楽に浸ることなくもう一度こちらと見つめ合ってくると、こちらの目をじっと見据えながらその話をしてきたのだ。

 

「……今日、同伴先で契約外のプレイを強要させられました」

 

「契約外の? それって違反だよね」

 

「そーです。違反です。お相手さんはお一人だけという契約だったんですけど、お相手さんが同伴先に仲間を呼んでおりまして」

 

「……まさか、その連中もラミアを?」

 

「輪姦されました」

 

 彼女の言葉で、動かしていた腰が止まってしまう。

 だが、ラミアの「続けてください」という言葉を耳にして、自分は行為を再開しながらそう喋り出していった。

 

「酷い連中だな」

 

「まー、ウチらもソレを覚悟でこの商売してるんで、その辺は割り切っておりますよ。輪姦なんてたまーにありますし、イマに限ったハナシでもないので」

 

「それでも、酷いものは酷いよ。お店にはそのことを伝えたの?」

 

「ハイ、そのやり取りで帰宅が遅くなってしまいました。ご心配をおかけしたみたいで、申し訳ないです」

 

「心配するのは当然のことだよ。それも、ラミアの意思に反する行為を強要されたんだ。ただただ怒りが湧いてくる」

 

 沸々と煮え滾ってきたこの感情。しかし、それが今の行為にも表れてしまっていたのだろう、ラミアの「もうちょっと弱くしてもらえます??」というお願いで自分は冷静さを取り戻していく。

 

 で、彼女の話を聞いた上で自分はそれを問い掛けていった。

 

「でもそれじゃあ尚更、“これ”をしていても大丈夫なの……? 股とか今も痛まない? やっぱり今日は止めておいた方が良かったんじゃ……」

 

「いえいえ、今日のような出来事があったからこそ、帰ったらカンキさんにお願いしようと考えていたんです」

 

「?」

 

 と、その時にもラミアは上半身を起こしてこちらに抱き付いてきた。

 

 彼女が動いたことにより、一層と奥に突き刺さる“モノ”。これによって双方が悶えるように悩ましい声を上げていくと、ラミアはそれに浸りながらも両腕でこちらを強く抱きしめてきて、甘い吐息を交えながら耳元でそう呟いてきたのだ。

 

「ナカの感覚を、カンキさんので上書きしたかったんです」

 

 鼓膜に優しく響いてきた、甘美で背徳的な彼女の声音。

 一瞬にして脳細胞が弾け飛んだ。あまりもの破壊力で思わず思考停止するこちらへと、ラミアは容赦なく言葉を続けてくる。

 

「今日、いろんなオトコの“モノ”を突っ込まれて思ったんですけどね、やっぱりカンキさんの“カタチ”が一番、ウチのナカに合ってるんですよねー」

 

「ぁ、へぇ~……。そ、そうなん、だ……?」

 

「長さも太さもちょーど良くって、ウチの好みです。そう考えますと、ウチとカンキさんの相性ってサイコーにイイんじゃないですか??」

 

「そ、そうかもしれないね……?」

 

 こんなアプローチの仕方はずるいって。

 内心でそれを呟く自分に対して、ラミアはいつもの適当な調子で先のような言葉を口にしてきたものだ。

 

 だからこそ、高揚感が最高潮に達しつつある自分が“モノ”を更に強直させていくと、次にも自分は抑え切れない衝動のままに彼女の身体を抱きしめていき、懐にいる小さき存在を大事にするように抱え込んでしまった。

 

 もう、抑えが利かない……。

 本能が彼女を求めている。理性や知能が伴わない、元から人間に備わる欲求に駆られるまま彼女を抱きしめていく。

 

 そんなこちらの様子にラミアはしてやったりな表情を浮かべてくると、彼女はそのまま両手と両脚でこちらの身体にしっかり抱き付きながら、自身の前面を押し当てるようにしつつ耳元でそう呟いてきたのであった。

 

「遠慮なんて要らないですよ?? 今日のラミアちゃんは、カンキさんのモノです。なので、カンキさんの好きなように使っちゃってくださいね?? 愛でるなり犯すなり、ぜーんぶカンキさんの自由なんですから。……貪らなくてもイイんですか?? ラミアちゃんがこんなに寛容的なのはイマだけですよ?? さ、カンキさんの男前な姿をしっかりと見せてください。ウチ、期待してますからね」

 

 

 

 

 

 小鳥のさえずりを耳にして、途絶えていた意識がふと覚醒する。

 

 ガバッと上半身を起こしていくと、ベッド近くのカーテンからは朝の日差しが零れていた。

 ……退けた布団と、隣で眠る全裸のラミア。仰向けでスヤスヤと眠る彼女を見てから自分も裸であることに気が付いて、昨夜にも長時間に及ぶ行為に励んでいたことを思い出していく。

 

 いつも泊まりに来るメーもレダも、あの夜には帰ってこなかった。いや、元から同伴で留守にすることを聞いていたため、ラミアと二人きりになることは承知の上であったものだが。

 

 ……それにしても、“モノ”が痛い。

 ラミアのリップサービスによって本能が常に掻き立てられ、欲望に従うまま酷使してしまった我が息子。それが朝特有の直立をしていたこともあってなのか、今も張っているソレがジンジンと痛む感覚に暫し頭を抱えてしまう。

 

 だが、それ以上に隣の彼女が気になって仕方が無かった。

 全裸の姿で、無防備に眠っている仰向けのラミア。それも、こちらが起き上がった際に退けられた布団によって、その全貌が晒されている。

 

 ……いつ見ても、何度見ても興奮してしまう。

 思わず舐め回すように凝視してしまった自分を恥じていきながらも、しかし本能に抗えないと言わんばかりに彼女の下腹部を見遣っていく。そうして視界の中央に据えられた“カノジョ”を見つめていくと、次の時にも自分は無意識にもそちらへ手を伸ばしてしまっていた。

 

 本当に綺麗だ。商売で使っているとは思えないほどに。

 昨夜にもたくさん愛でた”カノジョ”に触れていく。尤も、本人は眠っているために許可なく触ることは禁忌に等しい行為であっただろうが。

 

 で、何気なく指先で弾力を楽しんでいると、その触れられている感覚でラミアは脚を閉ざしてきた。

 眠り続けている無意識の動作。共にして彼女の「んぅー……」という声が零れてくると、ラミアはそのまま横向きになってしまう。

 

 だが、自分は好奇心から彼女を転がすようにうつ伏せにしていって、こうして露わとなった彼女の尻を見るなりついつい撫で掛けてしまったものだった。

 

 ……ハリとツヤがあって、撫でているだけでご利益がありそう。

 あぁ、自分は変わってしまった。彼女らと出会う前の貞操観念なんて既に塵と化していたことだろう。

 

 そんなことを思いながらずっと撫で掛けていたものだったから、触れている感触を心地良く感じている最中にも「……ナニしてるんですか」という訝しげな声を掛けられてしまった。

 

 ジト目で見遣ってくるラミアに、自分は尻から手を離して「……ごめん」と謝っていく。

 だが、この謝罪に彼女はニッと笑みを見せてくると、次の時にも誘惑するような表情でそう問いかけてきたのだ。

 

「寝起きの朝えっちでもシます??」

 

「え?」

 

「第二ラウンドですよ、第二ラウンド。どーです??」

 

 思わず息子が反応した一方で、自分は呆然とした視線を彼女に送ってしまっていた。

 そんなこちらの反応に、ラミアは仰向けになりながらも適当な調子で「お昼のシフトまでに間に合えばイイので、それまで二回戦でもシましょーよ」と言葉を掛けてきた。

 

 それを聞いたものだったから、自分は無意識にも彼女に覆い被さってしまっていた。

 乗り気であるこちらに、ラミアもしてやったりな顔を見せていく。で、彼女が枕元にあったゴムの箱へと手を伸ばして中から取り出そうとした時に、ふとそう喋り出してきたのだ。

 

「ありゃ、空ですねー」

 

「え、マジで?」

 

「マジです。もうありません」

 

 空になった箱を逆さまにして見せてきたラミア。これを受けて自分は息子と共に萎えていくと、こちらの様子に彼女は挑戦的な瞳を向けながらこう問いかけてくる。

 

「それじゃー、ナマでシます??」

 

「えっ」

 

 いやさすがにそれは。

 そう思った自分が、「いやいやそれはさすがにマズいって」と答えていく。しかし、提案してきた本人はこちらの拒否に対してそう言葉を返してきたものだ。

 

「ウチはかまいませんよ?? 同伴先でもよくシてますから。終わった後にお薬を飲めばヘーキですからねー」

 

「いやいやいや、それでも少なからずと身体に負荷が掛かるかもしれないし、やっぱり万が一のことを考えるとナマは……」

 

「ふーん?? じゃーやめます??」

 

 うっ。

 やめたいかと問われると、それはそれで……。という内心が表情となって表れたこちらの反応。これにラミアがからかうような視線を向けてくると、次にも彼女は両腕を上げて上半身の無防備を晒していき、両脚も広げてあられもない姿を見せながら挑発的に訊ね掛けてきたのだ。

 

「責任くらい、カンキさんなら取れますよね?? ……万が一デキちゃったとしましても、カンキさんならウチのコトを幸せにしてくれますよね……??」

 

 プツンッ。

 悩殺。理性の途切れる音が脳内に響き渡っていくと、直後にも自分は捕食者の如くラミアへと食らい付いてしまっていた。

 

 

 

 

 

 昼下がりの時刻になり、ふぅっと一息ついていく自分。

 部屋の窓を全て開けっ払ったその状態で、ベランダには布団やシーツといった寝具を干してある。そのどれもが汗といった類で濡れてしまっていたために、ラミアがレストランのシフトで部屋を出た後にも慌ててそれらを洗濯したものだ。

 

 すっかり秋となった龍明の空気が流れ込んでくる。この、どこか切ない優しさを帯びた風にそよそよと吹かれていると、不意を突くように『ピンポーン』とインターホンが鳴らされた。

 

 一体誰だろう。

 インターホンを鳴らされること自体が久しぶりな気がする。そう思いながら映像を見ていくと、そこには私服姿のミネが複雑な様相で佇んでいるのを確認できた。

 

 茶色のシャツに、青色のオーバーオール。無難な私服に身を包んだ彼女の訪れに自分は意外に思いながらも、「はーい」と声に出して玄関の扉を開けていく。

 

 すると、扉が開くなりミネは一瞬だけ目を見開いて驚き、かと思えば一人で不機嫌そうにしながら「……上がっていい?」と訊ね掛けてきた。

 

 どうしたんだろう。それを問い掛ける前にも、「いいよ。上がって上がって」とミネを玄関に招き入れていく。

 そうして彼女を部屋に上がらせていくと、今も開けっ払っている部屋に踏み入るなりミネは、鼻を摘まみながら不審に思う声音でそれを喋り出していったのだ。

 

「うっ、え、なに……このにおい……」

 

「え?」

 

 いやまさか。自分が振り返った時にも周囲を見渡していた彼女の様子に、自分はものすごく申し訳なく思いながらそう伝えていく。

 

「あー……やっぱ臭う?」

 

「やっぱ、って……。なに、これ……え、なに、ホント。く、臭い……よく知らないけどなんかすごく臭い……。なにこれ……」

 

「まぁ、ちょっと。あー……ごめんね」

 

「なに、アンタの部屋ってこんなに臭いの? こんな部屋にみんな泊まってんの……?」

 

「いやいやいや違う違う違う。その、このにおいは多分、今だけ。まぁ、ラミアと、その……ね」

 

「ぇ…………」

 

 ドン引き。言葉にせずとも伝わってきたミネの表情に、自分は目を逸らして暫し口を噤んでしまった。

 

 ……すごく気まずい。ただただ沈黙が続く空間に自分が話し出せずにいた中で、ミネは不快感を露わにしながらも、こちらをうかがうように訊ね掛けてきたものだ。

 

「……ね、ねぇ。これが、さ……そ、“そういう”におい、なの……?」

 

「そ、そういう……?」

 

「だ、だからさ……! えっと……っ、せ、せっ……」

 

「セ〇クス……?」

 

「っ!? ッちょっと……! な、なんでそう、簡単に言うの……!! あ、ぁ、ァタシだって、そ、それくらい、言え、言える、のに」

 

 その四文字を耳にして、ミネは一気に顔を赤くしながら怒ってきた。

 

 恥ずかしい。言わずもがな伝わってくる少女の隠し切れない焦燥。どこか強がるようでありながらも、しかし羞恥が生じているのだろう挙動不審な慌て方に、ミネは動揺する自分自身に怒るような苛立ちを見せていた。

 

 と、こちらと目が合った少女は、次にも気の抜けた表情を見せてくるなりカーッと顔を真っ赤にして、両手で自身の顔を覆い隠して俯いてしまう。

 

 ……やっぱり、見ていて飽きないなぁ。

 同時にして『護りたい……』なんて思うミネの動作に、ほっこりした気持ちで眺めていた自分。こうして向けられていた視線を受けて、ミネは指の間から目を覗かせてくると、今も真っ赤にしたその顔で不機嫌そうにそう呟いてきたものだった。

 

「…………ホントに最低。ケダモノか何かでしょ……」

 

 

 

 

 

 暫しと気まずい時間を過ごした後、落ち着きを取り戻した不良少女は、こちらから差し出されたコップを受け取ってリンゴジュースを飲んでいく。

 

 二人で座り、背の低いテーブルで向かい合ったこの状況。窓は全開になったままの清涼感に染まったこの空間において、自分はミネへとそれを訊ね掛けていった。

 

「それでなんだけど、ミネが一人でここに来るのも珍しいよね。何かあったの?」

 

 訊いてみたこちらの言葉に、ミネは口ごもるように視線を下げていく。だが、直にも再び向かい合ってくると、彼女はこちらの顔色をうかがうような目でそれを喋り出してきた。

 

「……ね、ねぇ。あのさ……」

 

「大丈夫、無理して話さなくてもいいよ。もう少しゆっくりしてからにする?」

 

「う、ううん! 大丈夫っ言えるから!」

 

「わかった。それで、どうしたの?」

 

「ぁ、えっとね。……あ、アンタに頼みたいことがあって、さ……」

 

 自分の気持ちを素直に言うことの難しさ。

 目があちこちに泳いでいくミネのことを、ゆっくりと待っていく。そうして彼女のペースに任せていると、ミネはこちらの顔を覗き込むような視線でそれを喋り続けてきた。

 

「……ど、同伴のことで、相談があるんだけど……」

 

「同伴? あぁ、ミネにもとうとう同伴の話が出てきたの? アルバイトとしてホステスになってから毎日頑張ってたもんね。おめでとう」

 

「ぁ、ありがと……。い、いやいやそうじゃなくて!」

 

「そうじゃない?」

 

「いやそうなんだけど!! ちょっと待って!!」

 

「あぁごめん!」

 

 ミネはとても繊細な女の子だ。ちょっと焦らせ過ぎたかもしれない。

 反省反省。慌てて口を噤んだ自分にミネは申し訳なさそうな顔を見せながらも、恐る恐るといった様子でそう喋り出してくる。

 

「……同伴のこと、なんだけど、さ。その……あ、アンタにさ、ぁ、アタシの最初の相手になって、もらえないかな、なんて……?」

 

「ミネの初同伴の相手を、俺が担当する感じかな?」

 

 こちらの確認に、ミネは「そう!」と健気な調子で答えてきた。

 ミネの最初の接客相手も、自分が担当した。今回はその同伴バージョンとも言うべきか。

 

 彼女からうかがった話に自分は躊躇うこともなく「いいよ」と快諾した。

 すると彼女はちょっと意外そうな顔を見せてきて、次にも安堵したように一息ついていく。尤も、これを弱味として悟られないよう彼女はすぐにも不機嫌な表情を繕ってきたものだったが。

 

 で、ミネは両膝を抱えるような座り方になって、ムスッとしながらそれを喋り出してきたものだ。

 

「で、さ。同伴するための手続きとかは教えてもらったんだけどさ、同伴先の決め方とかはお客様と話し合いながら決めるって教えられて、それがイマイチよく分かんないままなんだよね……」

 

「そんなに難しく考えなくてもいいんだよ。主に、お客様が希望したデートコースを一緒に巡ったりするだけだから」

 

「お客様が希望したデートコース……。えっと、じゃあ、今回の場合だと……アンタがアタシのお客様になる、ってことでいいんだよね?」

 

「そうだね。基本的な流れとしては、利用するお客側が『一緒に野球観戦をしたい!』という目的だったり、『お食事だけでもご一緒したい』といった要望をホステスに提示していって、その内容をホステスが承諾することで同伴の契約が成立する。って流れになる……らしい」

 

「らしい?」

 

「いや、俺の場合はホステスと話し合ってから行き先を決めたりしていたもんだったから、こちらから一方的に要望を提示してそれを承諾してもらうって流れはしたことがなかったんだよね。まぁ、そういうパターンもあるよっていう認識程度に覚えておいて」

 

「ふーん」

 

 ラミアとの一回目の同伴では、二人で話し合った末に水族館に行くことになった流れであることは覚えている。

 ユノとの同伴では、彼女からの提案によって龍明の駅前でデート。メーとの同伴に関しては、メーが「東京タワーに行きたい!」と言ったところから話が進んでいった。

 

 で、レダとの同伴は穏やかな話し合いで旅館に行くことが決定した。

 どれも懐かしく思えてくる。Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)のホステス達と過ごした濃密な日々が脳裏に流れてきたことで、自分は感慨深い気持ちになってしまった。そんなこちらの様子にミネが首を傾げてきたものでもあったから、自分は我に返ってから改めて喋り出していく。

 

「それでさ、ミネの行きたいところとかがあれば、俺はそれに合わせられるけど。どこか、ミネの行きたい場所ってあるかな?」

 

「ねぇ、それアタシに聞く? 同伴のルール的に、アタシがアンタの要望に合わせるんでしょ?」

 

「あー、まぁそうなんだけどね。いや、一緒にお出掛けするんなら、二人で行き先を決めたいなって思って」

 

「それってもう同伴じゃなくない?」

 

「あはは、こりゃもう同伴って名目でただデートしてるだけだよね。まぁ似たようなもんでしょ」

 

「で、デート……」

 

 乙女心とも言えるのだろうか。少しだけでも刺激を伴った言葉を耳にしたミネは、途端に耳を赤くして俯いていく。

 

 彼女の様子を見て、自分は「あー……まぁ、普通のお出掛けだから。ね……?」とフォローするように言葉を掛けていく。それに対してミネは「別に気にしてないけど……」とそっぽを向きながら答えてくると、そこから暫しもの沈黙を挟んでから、ミネはムスッとした顔でそれを提案してきた。

 

「……じゃあ、遊園地」

 

「遊園地?」

 

「……行きたい。最後に行ったの、お姉ちゃんが居た時だったから……」

 

 蓼丸ヒイロとの思い出の場所、か。

 彼女の存在は他人事じゃない。久々に出てきたその名前に、破天荒な親戚のお姉さんという認識を持つ自分は何度も頷きながらそう言葉を返していく。

 

「……わかった。それじゃあ同伴で遊園地に行こう。俺がヒイロ姉さんの代わりになれるとは思えないけれど、俺なりにミネが満足できるよう頑張ってエスコートするからさ、初めての同伴、思いっきり楽しもうね」

 

「あ、うん。あ、ありがと……?」

 

 親戚のお兄さんを意識しすぎたか。先の言葉にちょっとだけ自分で恥ずかしくなってしまいながらも、ミネとの同伴という新たな予定が決まったことに充実感で満たされたものでもあった。

 

 次はミネとの同伴。純情な不良少女と遊園地を巡ることになるだろう。

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