※この作品はR-18です。

俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活   作:祐。

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第35話 mauvaise fille 《悪いお姉さん》

 昼下がりの時刻。電車から降りて龍明の駅に足を着けた自分は、同行していたラミアとメーの二人と一緒に駅ナカを歩いていく。

 

 地雷風ファッションのラミアと、私服姿のメー。つい先ほどまでその二人と遠出していたことで、自分はくたくたな表情で二人に振り回されていた。

 

 というのも、自分達はSNSで知り合った仲間達との交流会に参加してきたばかりだったのだ。

 

 以前にも披露したダンスの他にも、平行してパルクールも行うという自由奔放な活動が特徴的なその集まり。この話を飲み屋で口にして以来、メーが事ある毎に興味を示していた。

 

 そういうことで、彼女を連れて交流会に顔を出してきたのが先ほどまでの流れ。尤も、この話を耳にしたラミアもまた、同伴を兼ねて同行したいと希望したことでついてきたものでもあったが。

 

 で、既にダンスとパルクールで体力を消耗していた自分は、早く帰りたいという気持ちで両隣の彼女らへと言葉を掛けていく。

 

「俺、ちょっともう足が限界なんだけど……そろそろアパートに戻らないかな……?」

 

 二人の機嫌をうかがうようにする自分。これに対してラミアとメーは、ちょっと不満げにそれぞれ返答してきた。

 

「えー、もう帰るんですかー?? ウチ、せっかく気合い入れておめかししてきたモンですから、もー少し人目に触れる場所を歩きたいです」

 

「私もまだまだ遊び足りないかな~。せっかくこうして三人でお出掛けしてるんだしさぁ、もっとこう、他にも色々楽しんでからにしない?」

 

「そーですよ。ホラ、アチラのゲーセンコーナーにプリクラとかありますよ?? ウチらでプリ撮るのとかどーでしょーか??」

 

「あは、いいじゃん! ラミア、ナイスアイデア! ねぇカンキ君ほら頑張って。これからプリ撮ってクレーンゲームと音ゲーやるよ!!」

 

 二人に手や腕を引っ張られ、自分は思わず「ま、マジでぇ……?」と気が抜けたような声を出してしまう。

 

 何とも複雑な気持ちだった。疲労による早く帰りたい気持ちと、二人の美女に挟まれている幸福感の狭間に置かれたこの状況。

 

 満更でもないけど、勘弁してほしい……。

 今でもラミアとメーの二人から、甘えるような声音で「行こー」と迫られる。これを受けて自分は己に鞭を打つように重い足取りで彼女らに連行されると、狭い個室に三人でぎゅうぎゅう詰めになりながら、若者ご用達の機械で写真を撮っていった。

 

 疲れたという気持ちが先行しながらも、とても充実としたひと時を過ごせたとも感じられる。まぁ、そこに写っていた自分の死んだような表情に、ラミアとメーは二人して愉快げに大笑いしながら終始ネタにしてきたものでもあったが。

 

 それらもすごく楽しいと思えたゲーセンコーナーでのやり取り。この後もクレーンゲームなり音ゲーなりを堪能すると、彼女らは満足したようにこちらを気遣い、じゃあアパートに帰ろうという話になって出口を目指し始めた。

 

 駅ナカを三人で並んで歩く今の状況。左右の二人に挟まれながら進むその中で、ラミアが適当な調子で何気なく喋り出してくる。

 

「あーあ、楽しい時間ってすぐに過ぎちゃいますねー。今日は特にあっという間に感じられました。またお出掛けのご予定ができましたら、ウチをメンバーに加えてくださいよー??」

 

「楽しんでくれたようで何よりだよ。元は同伴のノルマ目的で参加した外出だったと思うけど、こうして満足してくれている姿を見て、俺としてもなんか安心したよ」

 

「ホント、カンキさんってウチらに都合のイイお方ですよね。おかげさまで、楽しい思いをしながら同伴のノルマも達成できて、一石二鳥ですよ」

 

 ご機嫌なラミアとは正反対に、同伴という言葉が出てきてからちょっと固い表情を見せ始めたメー。それをラミアと二人で見遣っていくと、こちらの視線にメーは焦ったような顔を向けながら喋り出してくる。

 

「あ、あは~……。やばぁ~……。私、今月分の同伴ノルマ全っ然満たしてない……」

 

 なんか、毎月それを聞いている気がする……。という感覚で自分は苦笑いして、ラミアはラミアでメーへとその会話を交わしていく。

 

「またですか?? メーさん結局、先月のノルマも達成できなくてお給料下げられてたじゃないですか。そろそろ危機感を持ちませんと、割と冗談じゃないハナシでクビになりかねないですよ??」

 

「い、いやぁ……分かってるんだけど。頭では分かっているんだけど。でもなんか、ねぇ? なんか、行動が伴わないっていうの……?」

 

「ウチも時には我慢しながら同伴しているんですよ?? なのでメーさんにも頑張ってもらわないと、ウチとしても困るんですよ。……ココだけのハナシですけど、ウチ、メーさんに同伴するコトを促すよう何度もユノさんにお願いされているんですから。これ以上と、何の関係も無いウチに必要の無い重荷を背負わせないでください」

 

「う、うはぁ……それ初耳。ごめん、マジでごめん……」

 

 本気で申し訳なく思っているのだろうメーの困り顔。だが、気持ち的にはどうしても乗り気になれない様子にもうかがえた。

 

 以前メーとの同伴を行った時も、ノルマ達成がギリギリ間に合わないという話が発端になっていた気がする。

 

 それを思い出して、自分はメーへとその言葉を掛けていった。

 

「俺で良ければ同伴のお手伝いとかするから、気兼ねなく声を掛けてよ。また東京タワーにでも行く?」

 

「え!? また手伝ってくれるの!? やったぁ! さっすがカンキ君! じゃあじゃあ、残りのノルマ全部カンキ君に付き合ってもらおっかな~?」

 

「え、いやさすがにそれは営業のシステム的に問題があるんじゃないかな……?」

 

「いいっていいって。誰にもバレなきゃいいだけの話だし」

 

 しめしめと言わんばかりのあくどい顔で喋るメー。そんな彼女に対してラミアはジト目を向けていたものだったから、その視線にメーははぐらかすように視線を背けていった。

 

 ……と、そうして逸らした視線で、メーは何かを見つけるような素振りを見せていく。だがこの時には特に喋ることもなく、メーは誤魔化すような苦笑いで済ませていたものだ。

 

 しかし、駅ナカの出口に差し掛かったところで、メーはふとそんなことを切り出してくる。

 

「あ、あぁ! そう言えば私、ちょっと忘れてたことあったかも!! 私それ見てくるから、二人は先に帰っててよ!! そういうわけだから、私はまた! じゃね!!」

 

 そう言って、ピューンッと逃げるように駅ナカへと走り出したメー。彼女の急な言動に自分が呆気に取られていく中で、ラミアは暫し眺めてからそれを口にした。

 

「ありゃウソですね」

 

「嘘? 何が?」

 

「デタラメですよ、デタラメ。忘れてたコトなんて元からナイんですよ」

 

「え? じゃあメーはどうして戻っていったのかな……?」

 

「~~……ッ」

 

 ん~、と思考を巡らせるラミアの様子。かと思えば彼女は閃いたようにして、こちらへと振り向いてきた。

 

「メーさんの後を追いましょー」

 

「え? えぇ? なに、そんな切羽詰まった事態だったりする?」

 

「いえ?? メーさんのご様子から、そんなワケがありませんけど??」

 

「??? それでも後を追うの?」

 

「そーです。だって、その方が面白そうじゃないですか」

 

 にぎっ、とこちらの手を取ってくるラミア。そして猫耳の黒色キャスケットを被った彼女が天真爛漫に微笑み掛けてきたものだったから、自分はその健気な可憐さに心を打たれるような衝撃を受けながら返答を行っていった。

 

「じゃ、じゃあメーを尾行してみようか……?」

 

「ハイ、じゃーそうと決まればさっそく行動です。ホラ、行きますよーカンキさん」

 

 グイグイと手を引っ張ってくるラミアにそそのかされて、自分は駆け出すように来た道を引き返し始めた。

 

 この時にも見せてきた、ラミアの楽しげなその表情。彼女も日常を堪能しているんだなという印象を抱いていくと、自分もまたこういうのも悪くないのかなという気持ちでその歩を進めていったのだった。

 

 

 

 

 

 メーを追跡し、駅ナカを巡る自分とラミア。さながら探偵の尾行っぽい今の状況に、本職を味わっているような気分になる。

 

 ラミアと一緒に駅の柱から顔を覗かせて、メーの動向を見守っていたその最中。メーは何かを探すように周囲を見渡していくと、直にも彼女は真っ直ぐと通路の脇へ向かっていった。

 

 一体なにをしているんだろう。そう思いながらメーを観察していると、次の時にも彼女は佇んでいた男の子へと話し掛けていく。

 

 通路の途中で泣きじゃくっていた、小学生くらいのその少年。緑色のシャツに茶色の短パンという格好の彼へと声を掛けたメーは中腰になっていくと、次にも持ち前の勝気な明るさで慰めるような素振りを見せ始めた。

 

 迷子の男の子かな?

 ひと目で確信できた少年を見て、自分は「メー、何をしているんだろう」と呟いていく。すると、顔を出す自分のその真下から顔を覗かせていたラミアが、納得といった具合にそれを口にしてきたのだ。

 

「なるほどー、そーいうコトでしたか。なんともまー、メーさんらしいですね」

 

「何か分かったの?」

 

 次にも、少年の手を取って二人で歩き始めたメー達。

 短時間で打ち解けたんだなぁという感想に至るその光景だったのだが、ふと自分はメーの様子に違和感を抱いたことでそれを呟いていった。

 

「……なんかメー、すごく嬉しそう……?」

 

 勝気な表情に、恍惚とした頬の赤みがうかがえる。眼差しもどこか肉食動物のような鋭いものを感じさせたことから、自分は懐疑的に首を傾げていく。

 

 と、次にもラミアはそれを説明し始めた。

 

「カンキさんはご存じないんですか?? メーさん、小さいオトコのコが大好きなんですよ??」

 

「へぇ、そうだったんだ。なるほど、それで迷子っぽい少年を放っておけなくて駆け付けたってことなんだな……」

 

「カンキさんの仰る正当な理由でしたら、親御さんも安心できたんでしょうねー」

 

「?」

 

「どーやら『大好き』のイミを履き違えていらっしゃるみたいなんで教えますけれど、メーさんのオトコのコ好きはなにも、母性本能から来る愛情的なスキではないってコトです」

 

「ん、んん? えっと……?」

 

 少年の手を引いて、二人で歩き出していく彼女らの背中を見守りながら交わしたこの会話。おそらく、その先にある飲食店に向かっているのだろう動向を眺めていく中で、ラミアも歩き出しながらそれを口にしてくる。

 

「追いますよ。カレの貞操がどうなってしまうのか、その一部始終を見届けましょー」

 

「え、貞操??」

 

「メーさんの異名をご存じないようなので説明しますけど、メーさんは所謂ショタコンというモノでございまして、特に小さなオトコのコの“未発達な”のが大好物なんですよ」

 

「え。……あー」

 

「そんなメーさんに付けられたあだ名がですね…………」

 

 不気味なほどにまで冷たい空気が流れ出したこの空間。共にしてラミアは恐る恐るとこちらを見据えてくると、陰りによる彫りの深いその表情で、雷が落ちる効果音を伴いながら、シリアスにそれを言い放ってきたのだ。

 

「…………“ショタ喰いのメー”」

 

「ショタ喰いのメー……ッ!!!!」

 

 …………。

 

 いや、それただの不審者では?

 冷静になって考えると、ただヤバイだけのお姉さんでは? よぎった疑念に自分が唖然としていく最中にも、ラミアは「早く行きますよー」と声を掛けながら歩き始めたことによって、自分も我に返ったように動き出していった。

 

 

 

 

 

 駅ナカのハンバーガーショップに到着し、その入り口で待ち合わせを装いながら佇む自分とラミア。そうして何食わぬ顔をしながら店内を覗き込んでいき、イートインスペースで食事を行うメー達の様子をうかがっていく。

 

 覗いた先には、隣に並ぶ形でハンバーガーなどを食べているメーと少年の姿があった。二人は打ち解けたように会話を行っており、とても楽しそうにしている。

 

 一見すると、迷子の少年を保護した優しいお姉さんという組み合わせに見えたその光景。加えて、ここは犯罪の温床として悪名高い龍明という地域であることから、無垢な少年を犯罪から守ったとして、本来であればメーは讃えられるべきだったのかもしれない。

 

 だが、遠目からでも分かる程度には、今のメーは恍惚としたアブない表情を見せていた。

 

 赤らめた頬は獲物に対する欲情を想起させ、悶々としたフェロモンを解き放つ様子がひと目でうかがえてしまえる。尤も、自分がメーを見慣れていたからという要素はあるのかもしれないが、少年が狙われていることもまた事実であるため、自分は気を抜かずに彼女を見張るように眺めていた。

 

 直にも、彼女らの話し声が聞こえてくる。

 

「ハンバーガー美味しい! ありがとうお姉ちゃん!」

 

「いいのいいの~。このことは、たかし君のママには内緒だからね?」

 

「分かった!」

 

 少年はたかし君って言うんだな。得られた情報を脳みそへインプットしていく最中にも、視界の中央では少年の頭を撫でるメーが映されている。

 

 本当に小さい男の子が好きなんだなぁ。と思わせる彼女の動作を凝視しながら、再び二人の会話へと耳を傾けていった。

 

「ねぇ、お姉ちゃんって良い人?」

 

「んー? 良い人~?」

 

「知らない人についていっちゃいけないよってママ言ってたけど、ママがどっか行っちゃって迷子になったから……」

 

「ん~? んー、そうだなぁ~。私は、ママが近くにいない時のたかし君を守るお姉さんだから、まぁ良い人なんじゃないかなぁ?」

 

「じゃあ、お姉ちゃんは良い人でいいの?」

 

「そう! 私は良い人だよ~!」

 

 いや悪い人だよ。

 

 内心でツッコミを入れつつも、引き続きメー達の会話に意識を向けていく。

 

「ママはどこに行っちゃったのか、たかし君わかるかな?」

 

「分かんない。いつの間にかいなかった」

 

「ふぅん。ママとはぐれる前にさ、たかし君一人で歩いたりしてたのかな?」

 

「おもちゃのコーナー探してた。ママずっと服見ててつまんなかったんだもん」

 

「はは~ん、暇を持て余して単独行動しちゃったパターンのやつね。それじゃあママが見てた服のところに行けば会えるんじゃないかな?」

 

「ううん、もういなかった。どっか行っちゃった」

 

「あらら、これは完全に迷子ですなぁ」

 

 とても危機感の無い声音で喋るメーは、少年を愛でるように撫で続けながら思考を巡らせていく。

 

 そして、しばらくした後にも彼女は少年へとそれを話していった。

 

「じゃ、ご飯を食べたらお姉さんと一緒にママを探そっか」

 

「うん! お姉ちゃんと一緒がいい!」

 

「おぉ~そうかそうか! たかし君にそう言ってもらえて、お姉さんとっても嬉しいぞぉ~」

 

 勝気でハキハキとした喋りが、小さな子にも安心感を与えるのだろうか。

 

 既に懐いていた少年を愛でるようにわしゃわしゃと撫でていくメー。そしてポテトを食べさせてあげたりと少年にぞっこんな様子を見せてから、食事を終えるなりメーは少年と手を繋ぎながら駅ナカを歩き出していった。

 

 それを尾行する自分とラミア。途中にも姿を隠しつつ、ラミアとは「なんだか俺達、探偵みたいだね」という他愛ない会話を交わしていく。

 

 そうして、メーを尾けること三十分ほど経過した頃だろうか。ふとメーが足を止めたことで自分らは慌てて柱の陰に移動していくと、メーは中腰になって少年の目の高さに合わせながら言葉を投げ掛けたのだ。

 

「私ちょっとおトイレに行ってきてもいいかな?」

 

「うん。いいよ」

 

「ありがと、たかし君。……あーでも、ちょっと不安だなぁ」

 

 ……なんか、わざとっぽい言い回し?

 

 違和感のある喋り方をするメーに首を傾げてしまう自分。だが、こちらに見張られていることに気が付いていないのだろうメーは、とうとうその手段に出てきたのだ。

 

「たかし君を一人にしちゃうのはちょっと心配だから、たかし君、お姉さんと一緒におトイレ入ろっか」

 

「え? でも女子トイレは入っちゃいけない……」

 

「今だけ特別。お姉さんが一緒だから大丈夫だぞ?」

 

「……じゃあ、入る……」

 

「よしよし、たかし君はすぐに決断できてえらいね~」

 

 少年の頭を撫でるメーは、そのまま彼を連れて女性用のトイレへと入っていった。これを見送る形で目撃した自分らは、柱の陰から姿を現しつつ言葉を交えていく。

 

「えっと……ラミア、これからどうする?」

 

「まー、このまま尾行を続ける以上は待つしかありませんよねー。あるイミで探偵っぽいんじゃないですか?? 不倫の対象(ターゲット)がラブホテルから出てくるのを待つみたいな、そんなカンジのシチュエーションです」

 

「やっぱそうなるよなぁ……」

 

 探偵の勉強をし始めた身として、何ともまぁ実践的な経験を積んでいる真っ只中とも言えるか……?

 

 女性用トイレを張り込むという状況に、憂いや恥じらいとは異なる複雑な心境になっていく自分。その間にもラミアが現場から離れるように歩き出したことから、いつ出てくるかも分からないメーを待つために、付近で暫し身を隠し続けていたものだ

 

 

 

 

 

 二十分ほど経過した頃、周囲の目を掻い潜るようにメーと少年が現れた。

 

 監視している自分らを除き、赤外線センサーのように行き交う他者の視線をすり抜けるメーの動きはさすがのもの。そうして何食わぬ顔で女性用トイレから出てくると、共にして恥ずかしそうな顔をした少年へと彼女は喋り掛けていく。

 

「ほら、大丈夫だったでしょ?」

 

「で、でも……」

 

「気にしない気にしない。ただ、このことは私とたかし君だけの秘密だから、ママには絶対にナ~イショ。いいね?」

 

「……う、うん」

 

 メーが口元で立てたその人差し指が、少年と二人の秘密を示していく。それを自分らは陰から眺めていると、ラミアは察したように適当な調子でそれを口にしてきた。

 

「あー、間違いありません。アレは確実に“しゃぶり”ましたね」

 

「しゃぶり……って……」

 

「決まってるじゃないですか。おち〇ち〇ですよ」

 

「いや、わざわざ口に出さなくていいから……」

 

 こらこら。という諦め気味のツッコミを内心で入れていく最中にも、ラミアはそう喋り続けてくる。

 

「それにしましても、また一人とメーさんにテイスティングされてしまいましたねー。つい先ほどまでピュアだったアチラのショタも、こーしてオトナの世界を知ってしまったワケです。いやー、龍明ってホントに末恐ろしい街ですよ」

 

「犯罪の温床とはよく言ったものだな……」

 

 なんかもう、人が危険に晒されていなければ平和なのかなという感覚を持ってしまえるのがこの街だった。

 

 これによって自分は、変な汗を流しながら周囲へと意識を向けていく。と、その時にも目に入った一人の人物を目撃するなり、自分は「もしかして……」と呟きながら咄嗟にそちらへ駆け出してしまった。

 

 急に動き出したこちらへと、ラミアは「どうしたんですか??」と言いながらついてくる。それに対して自分は目の前を指差しながら、それを説明した。

 

「何かを探しているような素振りの女性がいたんだ。もしかしたら、あのたかし君って子の親御さんかもしれない!」

 

 可憐な瞳を向けながら、懸命とついてきていたラミアが眉を上げていく。そして自分は前方へと意識を向けていくと、白色のシャツに水色のジーンズという格好の三十代ほどの主婦らしい人物へと駆け寄って、急ぎで声を掛けていった。

 

「あの、もしかしてたかし君を探していますか?」

 

「え? は、はい……! うちのたかしをご存じなんですか……!?」

 

「彼でしたら今、トイレ前で女性に保護してもらっています。緑色のシャツに茶色の短パンの格好をした男の子ですよね」

 

「は、はい! そうです! と、トイレ前ですね!? ありがとうございます……!」

 

 居場所を聞き次第にも、血相を変えてそちらへ駆け出していく主婦の方。彼女が急ぎで走り出したその背を見送ると、次にも息を切らしたラミアがヘトヘトになりながら、ぶつかるようにこちらへ寄り掛かってきた。

 

 そんな彼女へと、「急に走り出してごめんね」と言いながら頭を撫でていく。これにラミアはむぎゅっと抱き付くようにしがみ付いてきたものだったから、自分はしばらく彼女の頭を撫で続けてその機嫌を取っていった。

 

 

 

 

 

 自分らがトイレの前に戻ってくると、そこには主婦が少年を大事そうに抱き抱える光景が目に入ってきた。

 

 迷子の息子さんと合流できて良かった。それに安堵する自分は、ラミアと共に付近の柱へと身を隠して様子をうかがっていく。

 

 で、親子の隣にいたメーも、どこか気まずい表情をしながらお礼の言葉を受け取っていた。

 

 親御さんとしては何よりも、息子の無事が確認できただけでも救いだったことだろう。ここが龍明という、人身取引も行われる地域であるからこその光景とも言えたのかもしれない。

 

 今も親御さんから掛けられるお礼の言葉に、メーははぐらかすような相槌で答えていく。次に少年からも「お姉ちゃんありがとう!」と感謝を告げられて、尚更と募った罪悪感で彼女はとても居辛そうにしていたものだ。

 

 と、穏やかな空気に包まれたこの空間の中で、ふと主婦の女性はメーへとそれを訊ね掛けていく。

 

「本当にありがとうございました!! たかしのことを教えてくれた“お友達さん”にも、私の代わりにお礼を伝えてあげてください……!」

 

「へ? お友達さん?」

 

「はい。あの、そうですよね……? あなたと同じくらいの年齢の、二人の男女の方々からたかしのことをうかがいましたので……」

 

 あれ、これマズいのでは……?

 

 すぐさま、この場から離れようとした自分とラミア。だが、直後にも振り向いてきたメーと目が合ったことによって、自分らは迸った寒気と共にギクッと反応してしまった。

 

 

 

 

 

 駅ナカを後にして、龍明の駅前を三人で歩いていた現在の様子。一段落した自分らがアパートを目指して帰宅するその最中にも、一緒にいたメーが喋り出してきた。

 

「私そんなに疑われるようなこと言ったかなー……。そりゃあ独りぼっちのショタがいたもんだったから、保護しなきゃ~って思って適当な理由で二人と別れたりしたけどさぁ」

 

 まぁ、実際にそれで疑われるようなことをしていたからなぁ……。

 

 ボーッとそんなことを思っていく自分。一方、話を聞いていたラミアが改めてといった具合にメーへと釘を刺してくる。

 

「あの、それよりもメーさん、同伴はどーするんですか。そのハナシの途中でメーさん抜け出してましたけど、こんなコトをしてる間も同伴ノルマは待ってくれませんからね」

 

「う、うゎああぁぁぁ!!!! お、思い出させないで!!! ど、同伴のノルマだけは……ッえ、同伴のノルマどうしよ!!!」

 

 ラミアの言葉を耳にして、急に頭を抱えたメーが本気で焦りながらこちらを見遣ってくる。

 

 その視線が実に、助けを訴え掛けてくる必死なものであったから、自分はメーをなだめるようにしながら言葉を掛けていった。

 

「大丈夫だよメー! 俺も手伝うから大丈夫だよ! また同伴しよう。前みたいに本格的なお出掛けじゃなくても大丈夫だから、ノルマのために明日から少しだけ頑張ってみようよ。ね?」

 

「う、うあぁあ、カンキ君ありがと~……! もうこの際だから贅沢なんか言ってらんないし、適当にビアガーデンとかに行ってノルマ達成だけしちゃいたいよぉ~……」

 

「なんか、しれっと人の金でビール飲もうとしてない?」

 

 こちらのツッコミに、すぐにも「あれ、バレた?」と言わんばかりのテヘペロを見せてきたメー。その様子を見て自分は、安堵と共にただただ汗を流してしまった。

 

 何はともあれ、この後は特に何事もなく三人で帰宅した。

 それと、話の流れでメーと同伴することになった自分は、彼女と話し合うことでお出掛けの日程を決めていく。これによってメーの同伴日時が確定し、あとはその日を迎えるだけという状態になった。

 

 次はメーとの同伴だ。それも、ラミアに続く濃厚な夜の予感がする同伴になることだろう……。

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