※この作品はR-18です。

俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活   作:祐。

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第36話 La tentation du bleu foncé 《紺の誘惑その2》

 真昼のLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)に顔を出し、ホステス達と軽く会話を交わしてから店前の入り口付近で待ち合わせていく。そうして佇むこちらの真横では今も、主婦やサラリーマンといった人達が頻繁に店の出入りを行っていた。

 

 邪魔にならないよう、ちょっと距離を置いた場所からその様子を眺めていく。

 ちょうど書き入れ時とも言える現在の時刻だが、それにしても来店客の往来が著しい。それも、自分がこの店を知った当時よりもだいぶお客が増えていたことから、キャバレーだけではないレストランとしてのLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)も世間的に注目され始めていたことは確かだろう。

 

 それ故に、ここ数カ月のホステス達はとても忙しそうにしていた。

 増えるシフトと出勤日。休みが減ったことに加えて、他と比べて過酷な同伴が彼女達の体力や神経をすり減らしていく。

 

 このことから、店の大繁盛に反して一部のホステス達は「勘弁してほしい」という悲鳴を上げていた。特にラミアやミネが大変そうにしていて、ラミアに関してはアパートに帰ってくるなり死んだような表情でベッドに直行する日々が続いている。

 

 ミネも、日中の学業と夜間のアルバイトというハードスケジュールをこなしていたものだ。尤も、少女の傍にはユノがいてくれているため、ミネのケアはそちらに任せてしまっている。むしろその方がいいのかもしれないが。

 

 他のホステス達も忙しそうに勤めていく中で、一人だけ無尽蔵な体力でへっちゃらな顔をしていたホステスがいた。その彼女は今も昼間のシフトをこなしていくと、この後にも控えていた自分との同伴に臨むべく店の裏口から姿を現してきたのだ。

 

 私服姿のメーが、勝気な瞳で「やっほー!」と言いながら駆け寄ってくる。これに自分は振り返りつつ返事を行っていった。

 

「やぁ、メー。お疲れ様」

 

「カンキ君もお疲れ様ー。そしておまた~」

 

 疲れ知らずなメーは余裕そうな表情を見せながら、周囲の男性客にも手を振って存在感をアピールしていく。それから彼女はこちらに向き直ってくると、早速といった具合にその言葉を掛けてきた。

 

「じゃ、ササッとそこらを同伴してから、ビアガーデンにでも行ってビール飲みまくろ~! おー!」

 

「メーは本当にビールが好きだね」

 

「当たり前じゃん? 女だからビールは飲まないって誰が決めたことかね。私だってビールが大好きなんだよ!! んま、そういうわけで今夜のビール代はカンキ君持ちね」

 

「どういうわけでそうなるかな……元からそのつもりだったけどさ」

 

「あは、カンキ君は都合が良くって助かるねぇ~。ささっ、ほらほら同伴するよ! 私についてきたまえ~」

 

 今日の激務をこなしてもなお、いつも以上にテンションの高い様子でこちらの手を引っ張ってくるメーに圧倒されてしまう。

 

 だが、次にも自分は思い出したようにメーへとそれを訊ね掛けていった。

 

「ところでメー、ちゃんと着けてきた?」

 

「んー? 何を?」

 

「“メーの好きなやつ”」

 

 と言って、握っていたスマートフォンをワンタップしていく自分。

 

 直後、メーは甲高い「んみゃぁ!!?」という変わった悲鳴を上げていくと同時にして、縮こまるように内股となっていった。

 

 ……迸る電流。唐突にもたらされた“震動”に、メーは思わず赤面しながら周囲を見遣っていく。

 

 もちろんそこには、往来する客が無数と存在していた。この光景からメーは誤魔化すように笑ってみせ、かと思えばこちらの手をギチギチと握りしめるなり、龍明の駅前に向かって全力疾走で逃げるように駆け出した。

 

 走り出した彼女に合わせて、自分も駆け出していく。それと共に、恥じらいで涙目の状態だったメーとそんな会話を交わしていった。

 

「~~~~ッ!!!! あり得ないんだけど!!!! ホントあり得ないんだけどっ!!!! なんで今やるの!? カンキ君最ッ低!! 最低最低最低最低!!!」

 

「ごめんごめん! ちゃんと着けてきたのかなって確認のつもりだったんだ!」

 

「だからって! だからってあんな人前でやらなくてもいいでしょッ~~!!!」

 

「でもメーは興奮したでしょ!? 違う!?」

 

「そ、れは!! ッ、ぅぅ……!」

 

 段々と緩やかになった駆け足と、途端にふにゃふにゃとなった弱々しい声音。そして二人で立ち止まり、メーは唸るようでありながらも満更でもないような声を出しながら振り返ってくると、次にも彼女はどこか物欲しそうな目を向けつつ、屈辱や恥辱が混じった困り顔でそれを口にしてきたのであった。

 

「ッ…………まぁ、久しぶりだからってのもあると思うんだけどさ……うん。まぁ、ぶっちゃけね……今の、すっごく興奮した……っ」

 

 

 

 

 

 メーとの同伴が開始して、早々と龍明の駅前にあるゲームセンターで店内を巡っていた自分ら。特別なことをやりたがらないメーがいつものお出掛けを所望していたことから、同伴という名目で至って普通のお出掛けを楽しんでいた。

 

 まぁ、同伴だというのに何故かホステスのメーに振り回されていたものだ。それが彼女らしいと言えば彼女らしいのだが。

 

 そんなメーは今、自分の目の前で音ゲーに熱中していた。

 お客をほっぽり出して、縦長な画面の筐体と向かい合っていく彼女の背中。本当にただのお出掛けとなったこの同伴だったが、自分としては満更でもなかったため、とても穏やかな気持ちで彼女の元気な姿を眺めていたものだ。

 

 で、目まぐるしいゲーム画面を前にして、両手を素早く動かしてそれに食らい付いていくメー。そしてクリアした喜びで彼女は勝気に微笑みながらこちらへ振り返ってきた。

 

「あは!! 見てたカンキ君!? クリアできちゃった!!! これ、今の環境の最高難易度の曲!!! あはぁ~嬉しい!! やったやった!!」

 

「見ていて全く目が追い付かなかったし、流れてくるマーカーもたくさんありすぎて何が何だか分からなかった……。あれについていけるメーの技術が凄まじく思えてくるよ」

 

「えへ、えへへへへ。いやぁ~努力の賜物ってやつですなぁ~。ゲームってホントにいいよね。頑張った分の成果が目に見える形で表れるんだもん。こういうところも含めて私、ゲームって大好きだな~!」

 

「あれ、でも最高難易度をクリアしちゃったってことは、もうそれ以上難しいやつはないってことになるのかな? だとしたらもう、やることが無くなっちゃったんじゃない?」

 

「そんなことはないよ。ゲームスピードを上げたりフルコンを目指したり、まだまだやることはたくさんあるんだから!」

 

 すごく楽しそうに話すメーが、キラキラとした瞳で微笑みながらゲームの画面を進めていく。

 

 その後は、休憩と言って棒付きのアイスを持ってきた彼女と一緒に、ゲームセンターの中を適当にうろついたりもした。

 

 クレーンゲームが大量に並ぶ、ファンシーでありながらもメカニックなこの空間。そこの景品であるクマのぬいぐるみなんかを見てメーが「これ、ラミア好きそ~」などといった言葉を零していく脇で、自分はふとゲーム好きの彼女へとそれを訊ね掛けたりしたものだ。

 

「メーって本当にゲーム好きだよね」

 

「ん~? そうだけど~? 変とか言わないよね?」

 

「変なんて言わないよ。ただ、ゲーマーのホステスはメー以外にいないもんだから、ちょっと珍しく思っただけかな」

 

「ゲームやってるホステスは他にもいるよ? 最近だとシュラもゲーマーっぷり発揮してたりして、同類見っけ~なんて思ったりもしたけどさー。んま、あの店だと私が一番ゲームしてるんじゃないかな?」

 

「楽しめる趣味があることは、とても素敵なことだと思う。ただ、さっきもメーがプレイしてるところを見てて思ったんだけど、メーって部屋でもスマホで音ゲーやったりしてるもんだからさ、飽きが来たりしないのかなってちょっと気になったりもしたかな」

 

 自分が話している間にも、クマのぬいぐるみが景品になっているクレーンゲームにコインを入れ始めていたメー。そしてアームを操作しながら、先の言葉に反応するよう返答してくる。

 

「まぁ、同じことばかりやってると飽きは来ちゃうよね~。だけど、なんだろ。私の場合は飽きるとか飽きないとか、そういう遊戯的な視点でゲームを見てるわけじゃないって言うのかな~」

 

「遊戯的な視点で見てるわけじゃない?」

 

「うん。なんだろうね。言葉にするのちょっと難しいんだけど、生き甲斐って言うのかな? それだとなんか大げさに聞こえてくるけどさ、私にとって音ゲーは、退屈で仕方のない人生を誤魔化すためのツール……みたいなものなのかもしれないよね」

 

 何とも曖昧な喋り方を行いつつも、メーは紫色のクマのぬいぐるみを押し出すようにして落とし口に落としていく。これによって彼女は取り出し口に落下してきたぬいぐるみを拾い上げていくと、それを両手に持ってぬいぐるみの腕を動かすようにしながら、先ほどの続きを話してきた。

 

「音ゲーって、絶え間なくマーカーが降ってくるでしょ? あのスピード感とか忙しさが、私的にすごくスリルがあって好きなんだ」

 

「スリルか。それを聞いて納得した。メーはスリルが大好きだもんね」

 

「そ。他にもアクションゲームとか対戦ゲームとか、ホラーゲームとか色々あるけどさー、そこら辺の操作性とか駆け引きとか恐怖演出とかのスリルはちょっと違くってね。なんだろ、音ゲーは競技性とか無い代わりに、他のゲーム以上にミスできない緊張感みたいなのをリアルタイムで感じられてさ、そのドキドキ感が私にとっての生き甲斐になってるって言うのかな? まぁそんな感じ」

 

 画面に流れてきたマーカーを、正確に入力していく操作性。だが、至って単純な遊び方とは裏腹に、疾走感のあるゲームスピードが一気に緊張感を与えてくるのだろう。

 

 メーは、その緊張感に生を見出しているようだった。

 まぁ、彼女は命がかかっている状況というスリルに興奮を覚えるほどの人間でもある。特に、東京タワーの透明なパネルの上で跳ねたりしていたあの姿は、今でも鮮明と脳裏に焼き付いているくらいに衝撃的なものでもあった。

 

 ……ドキドキと脈打つ心臓の鼓動に魅入られたホステス。そんな彼女の一面を再認識したことで、自分はメーという人物をより深く知ることができた気がした。

 

 と、そうして自分の中で納得したように佇んでいると、ふとメーは手に持っていた紫色のぬいぐるみをこちらに近付けながら、ちょっと裏声にしながらそのように喋り出してくる。

 

「あー、あー。コホン……『どーも、カンキさんの大好きなラミアちゃんです』」

 

「……え? あ、それラミアの真似?」

 

「『そーですよー。そーいうワケなのでカンキさん、今夜も失神しちゃうくらいの激しいえっちをしましょーねー』」

 

「いやいやいやいや外で何言ってんの!!! というか、ラミアとはそんな激しいことしてないから!」

 

 焦り気味にメーを静止させる自分。この慌てた様子に彼女はからかうような目で悪戯に笑んできたものであったから、自分は周囲を気にしながらも、メーに振り回されている感覚で変な汗を流してしまっていた。

 

 

 

 

 

 ゲームセンターを後にして、メーと一緒にデパートを巡ったりした今回の同伴。それは前回にも行った二回目のラミアとの同伴のように、デートに最適な特定の場所というシチュエーションには至らない、どちらかと言うと日常的なお出掛けに近しい穏やかな時間を過ごしたものだった。

 

 しかし、熱烈なスリルを追い求めし彼女はこの日常に飽き足らないようでもあった。

 デパートの中を歩いている間も、隣でチラチラとこちらをうかがってくるメー。その物欲しげな視線を分かっていたからこそ、自分は敢えて彼女の要望に応えないでいく。

 

 で、痺れを切らしたようにこちらの右腕にくっ付いてきたメーが、ちょっと口を尖らせながらそれを口にしてきた。

 

「ねぇぇカンキ君~……」

 

「ん? どうしたの?」

 

「どうしたのってさぁ~……ちょっと、ねぇ……」

 

「ハッキリ言ってくれないと分からないなー」

 

「うぐぅ……ッだからさぁ……!」

 

 スリルを求めている割には、恥じらいが勝るらしい彼女。今も“要求”を頑張って眼差しで伝えようとしているその努力が、かえって自分を興奮させてくる。

 

 ……おあずけされた犬みたいで可愛い。

 彼女の不機嫌そうな顔を見て、自分は右腕を上げてみせた。この動きにメーはちょっと期待感混じりのドキドキした顔をしてきたものだったから、自分は焦らすようにしながら右手に持っていたスマートフォンをゆっくりと彼女に向けていって、そのまま画面をタップしていく……。

 

 カシャッ。

 

 切られたシャッター音に、メーは呆気にとられた表情を浮かべてきた。

 次にも、我慢の限界と言わんばかりに「ねぇぇちょっとぉ!!!」と言い迫ってきた。この反応に「いい顔の写真が撮れたよ。見る?」と言葉を掛けていくと、メーは見るからにそうじゃないというもどかしい顔でこちらを凝視してくる。

 

 で、メーはいじけるように「見ない!!!」と答えてきた。

 一連の反応が、愛おしく思えてくる。これに自分が興奮を覚えてゾクゾクしたものだったから、こちらから「意地悪してごめんね。これはお詫び」と言葉を掛けて、画面のボタンをタップしていった。

 

 瞬間、隣からは「にゃあぁっ!!?」という変わった声が上がってきた。

 いや猫か。内心でツッコミを入れながら、今も恥辱にまみれた顔で内股になっていた彼女を抱き抱えるようにして姿勢を正していく。その間も周囲から視線を向けられていたことから、メーは唐突に訪れた“快楽”も相まって、暫しの間“好みの部位”に迸る震動に翻弄されていた様子だった。

 

 尤も、このあと自分はメーを無理やり歩かせるプレイを強要した。この提案に彼女は絶望じみた顔を向けてくるのだが、主導権はすべてこちらに託されている。

 

 快楽に耐えるだけで精一杯だった彼女の耳元で、「じゃあ、こんな店のど真ん中でイキ果ててみる?」と囁いてみると、メーは一層もの興奮が生じたようで「おっ……」と低い声音で喘ぎ始めていく。

 

 その反応に自分も掻き立てられたことで、「じゃあ、イートインスペースまで頑張って歩いてみようか」と言葉を投げ掛けてから、今も震動する“玩具”を身に付けさせた彼女を歩き回らせたものだった。

 

 

 

 

 

 強烈なスリルを堪能したメーは、満足気な様子でビアガーデンを所望した。

 陽が落ちた龍明を一望できる十二階ビルの屋上。犯罪で淀み切った空気も地元ならではという認識で屋上に到着すると、ビンテージな雰囲気のイスやテーブルが特徴的なこの会場で自分とメーは乾杯を行っていく。

 

 ジョッキを打ち鳴らした自分らが、「今日はお疲れ様でした」という挨拶を交えて烏龍茶やビールをいただいていく。そしてピザやロースト肉、トマトがメインのサラダというオシャレな食事を堪能していく中で、今もビールを片手にメーが勝気な瞳を向けながら喋り出してきた。

 

「フツーにお出掛けしただけなのに、豪華なご飯やビールもいただけるなんてサイコ~!! 同伴が毎回こんなんだったら私も自分からやる気になるのになぁ~」

 

「まぁ、普段こういう同伴ができないなら、せめて俺との同伴ではこういうことをしていければいいのかな」

 

「する!! また同伴する!! じゃあ次はいつ同伴しよっか? 明後日とかどう? どう!? 今度はアニメグッズがいっぱい置いてあるオタクご用達のお店にでも行こうよ!!」

 

「けっこうハイペースだな……」

 

 果たしてそれはノルマが迫っているからなのか、はたまた自分を都合良く利用しているだけなのか。

 

 どちらにしろ、メーと過ごす時間は嫌ではない。

 烏龍茶を飲みながら料理を頬張り、彼女と他愛ない会話で盛り上がっていく夜の時間。その何気ない日常的な同伴も終わりを告げ、それじゃあアパートに帰ろうということで龍明の駅前を歩き始めた時のことだった。

 

 人通りのある駅前の柱に、ビールをたくさん飲んだメーがふにゃふにゃになった様子で寄り掛かっていく。もはや見慣れた光景でもある彼女のそれに、自分は「メー、歩ける?」と声を掛けていくと、メーは酔いで顔を真っ赤にしながらそう答えてきた。

 

「むぇ、らめぇ……あらし、ぇ、ああれる……」

 

「こりゃダメだな……」

 

 またおぶっていくか?

 前の同伴でも、酔い潰れた彼女を背負って近くのビジネスホテルに宿泊したことがあった。尤も、あの時は酔い潰れること上等だったメーが事前に予約していたからできたことでもあったが。

 

 ……さすがに、酔った女の子をホテルに連れ込むのは気が引けるなぁ。

 彼女をおぶってアパートまで帰ろう。そう決断した自分が、「メー、背負ってアパートに戻るから、俺の背中に寄り掛かって」と言葉を掛けていく。

 

 だが、次にも彼女から返ってきた言葉は、こういうものだった。

 

「……えっちしたい」

 

「え?」

 

 とろんっとした瞳で、ふにゃふにゃになった勝気の顔で喋り出してきたメー。そのまま近付いたこちらに両手を伸ばして弱々しく服を握り締めてくると、彼女は酒のにおいを放ちながら言葉を続けてきた。

 

「カンキ君、えっちしようよー……」

 

「なんだ、普通に喋れるんだ……」

 

「ねぇぇ~……」

 

「また今度ね。前も同じ理由で断っちゃったけど、やっぱり酔ってる女の子に手を出す事は気が引けるから」

 

 なだめるようにメーの頭を撫でて、自分は背負って帰ることを伝えていく。だが、彼女は駄々こねるように帰宅を拒否して、そう訴え掛けてくるのだ。

 

「やーだ!! やーだぁ!!! 今日はカンキ君とえっちする!! カンキ君とえっちするまで私帰らないから!!!」

 

「いやいやちょっと、声でかいって」

 

「じゃあ朝まで付き合ってよ!! 今日はえっちするまで帰らないんだから!!!」

 

「わ、分かった分かった! 分かったから声のボリューム抑えて!」

 

 周囲の視線が鋭く突き刺さっている気がする。

 見渡すのが怖くなってきた自分が、ほぼ脅されるようにしてメーの要求を呑んでいく。これに彼女はからかうような表情を見せてくると、酔ったその足取りでこちらの右腕に抱き付きながら、ふにゃふにゃな声音で「あは、それじゃあさっそくレッツゴ~」と言って歩き出したのだった。

 

 

 

 しばらく歩くこと数分。自分らは表通りを少し歩き進めてから、脇に続く路地を通っていく。

 

 そして、メーの立ち止まる動作を合図にして、自分は真横にあった建物へと意識を向けていった。

 

 石造りのような壁の模様が特徴的な、全体的に四角い箱のようなそれ。看板には『まあ、そういうワケで』という文字が書いてあって、おそらくこれがお店の名前なのだろうと察していく。

 

 ……というか、本当に来てしまった。

 さすがに酔った女の子には手を出したくない。取り敢えず部屋に入ってから、適当な理由をつけて行為をお預けにして、メーを早く眠らせよう……。

 

 頭の中で一連の流れを用意しておいてから、自分はメーの手を引いて建物に入っていく。そうして踏み入れた大人の世界は、以前にもラミアと訪れた施設とはまた異なる雰囲気を放っていた。

 

 入口の石造りの模様が、そのまま壁や床となっている内装。付近には、部屋を選ぶための監視カメラの映像のようなモニターが用意されているのだが、目についたのはそれだけではない。

 

 まず真っ先に注目したのは、数台と並んだガシャポンマシンだった。

 え? こんなところにガチャが? という疑問にすべてを持っていかれた自分だったものの、その中身が女性用下着のランジェリーであったり、大人の玩具だったりといったラインナップであったことから、色々と察しがついて一旦後回しにしていった。

 

 他にも、飲料水を売っている自動販売機や、自由に持っていっていいのだろう入浴剤やお菓子が大量に置かれたコーナー。加えて、大人向けの雑誌やCDなんかも用意されている豊富な情報量に、自分は困惑を交えながらもモニターへと近付いていった。……また別の機会に利用しようという、淡い期待を抱きながら。

 

 『まあ、そういうワケで』、メーを部屋まで連れてきた自分はホッと一息つきながらその内装へと意識を向けていく。

 

 遊び心に溢れたフロントとは打って変わり、優しい明かりが心を穏やかにしてくれるシンプルでモダンなその個室。それは白色や黒色を始めとして、淡くて優しい黄色の光などがこちらを快くお迎えしてくれる。

 

 洗面所の、なんか石のようにツルツルしたやつといい、改めてここが宿泊施設であることを思い知らされる。目的がいかがわしいことを除けば、ここも立派なホテルであることに違いないのだ。

 

 そうして立ち尽くしている自分だったものだが、一方でメーはベッドに飛び込むなりそのまま微動だにしなくなる。彼女の様子に自分は「眠ったかな……?」と思いながら静かにそちらへ近付いていくと、次にもメーは顔を上げるなりこちらの右手を掴みながらそれを喋り出してきた。

 

「早くシよ~? ねぇカンキ君~、お願い~」

 

「あ、あぁ、そうだね。ただ、ちょっとだけ待っててくれないかな? お手洗いとか色々済ませたいし……」

 

 メーが寝るまでの時間を稼がないと……。

 自分は思いつきの理由を口にして、彼女の手を振り解こうとする。しかし、これに対してメーは鋭い眼差しを向けてくると、赤味を帯びた頬で悪戯に微笑みながら、掴んでいたこちらの手を自身のワイドパンツの中へと入れていったのだ。

 

 ズボッと侵入した自分の手。共にして雑木林が茂る彼女の聖域に触れていくと、彼女のショーツの内側なのだろうその手触りに思わず動揺しながら呟いてしまった。

 

「……メー、パンツの中がすごいカピカピになってる」

 

「…………今日、一日中ずっと焦らされてきてさぁ、それでパンツの中濡らさないでいられる人なんかフツーいるわけないじゃん。……私のココをメチャクチャにしてくれたその責任、最後まで取ってくれないと許さないぞ?」

 

 挑戦的な眼。ニッと笑みを浮かべている勝気な表情。

 赤らめた頬と、長いまつ毛。そして酒の香りを漂わせながらも、メスのフェロモンを放つ彼女の存在感。

 

 …………あっやばい。

 プツンッ、という理性が途切れる音を久々に聞いた気がする。そして、それを自覚すると同時に巡ってきた抑え切れないほどの衝動が、自分にオスの本能をもたらしてくるのだ。

 

 次の時にも、自分は食らい付くようなキスをメーに行っていた。

 ベッドに押し倒した彼女の唇を貪り尽くしていく。この、本能に従うまま行った性欲の限りのアプローチに、M気質のあるメーは蕩けるような瞳をしながら、抵抗を見せることなく眼前の獣を受け入れていく。

 

 酒の香りが、一層もの高揚感を掻き立ててくる。鼻に残り続けるそれさえも味わうように口づけを行っていく中で、自分はメーの服を少しずつ脱がしていき、彼女をインナーのみの姿へと変えてから一歩引いてその全容を視認していった。

 

 日常的な黒色の上下。着飾らないデザインがかえってそそられるメーを見てから、自分はこの右手を彼女の下腹部へと伸ばしていって、そして、今も“ソコ”に仕込んである“玩具”を押し付けるように手を添えていく。

 

 ぐりぐりと加わる感触に、メーは甘い声音を出しながら悶え始めた。

 すぐにも手に伝わってきた、生温かいものを伴った彼女の湿り気。黒色のインナーが一段と黒くなる光景を目の当たりにして自分は、自分の中のオスが完全に覚醒した感覚と共にしてメーへと覆い被さっていったのだった。

 

 

 

 

 

 この夜、獣のようなひと時を過ごしたものだ。

 

 穏やかかつ確実に気持ち良い行為を求めるラミアとは違って、メーはとにかくM気質で襲われるような激しさを求めるアプローチが目立っていた。

 

 そのため自分は、これまでにないほどの力強さと速さで、裸となった彼女の最深部をノックし続ける行為に浸っていく。

 

 これに加えて、彼女は以前にも『バックでされるのが好き』と言っていたことを思い出す。尤も、その頃には既に、自分は彼女の両腕を掴むようにして後ろから激しいアプローチを行っていたものでもあったが。

 

 肉が肉を打ち鳴らす鈍い音と、液体が摩擦で擦れるねちっこい音が絶え間なく響き渡るこの空間。それらに混じるよう彼女の低い喘ぎ声が端的に何度も聞こえてくる中で、濡れやすいのだろう“カノジョ”からは頻繁に噴き出す音も鳴らされていた。

 

 透明な雨が降り注ぎ、それを肌で受け止めながら終始と行為に及んでいった熱帯の一夜。

 

 今、この全身が悦びに満ちている。

 心が歓喜している感覚に全てを委ねた自分は、既に疲労して眠りについてしまっていた彼女の隣に寝転がっていく。そして、裸体のままである彼女に寄り添うようにして、その程よい肉付きの身体を抱きしめるように腕を回していってから、自分もまた深い眠りへとついていったのであった。




 【chapter 4に続く…………】
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