俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
夕食時となった夜の時刻。これから夜行バスに乗って出掛ける予定があったため、自分はアパートの自室にてトートショルダーバッグに携帯品などを入れて荷造りを進めていき、それの準備が一段落した段階で「ふぅ……」と一息つきながらその場でボーッとしていた。
自分の後ろには、ベッドに寝転がりながらスマートフォンを操作している寝間着姿のラミアがいる。同伴関連の相手と連絡を取り合う彼女が真顔でそれと向かい合っていく中で、ふと玄関扉の開く音で自分とラミアはそちらへ振り向いていった。
直にも姿を現したのは、いつもの私服姿であるレダだった。黒色のスーツケースとビニール袋を提げた彼女が艶やかな表情と共にこちらへ歩み寄ってくると、荷造りを終えていた自分に対してそのような言葉を投げ掛けてきたものだ。
「カンキ君お待たせぇ~。時間ギリギリでごめんなさいねぇ」
「全然大丈夫だよ。まだバス停まで歩きで向かえる程度の時間だから、ゆっくりやっていこ」
「ウフフ、ありがとうカンキ君。それにしても本当、同伴までに間に合って良かったぁ。ホームレスの患者さんに重度の病気が見つかって、やむなく緊急手術をしていて遅くなっちゃったのよ~。あぁこれね、診察が長引いちゃったお詫び。コンビニで軽食を買ってきたから、行きのバスの中で食べていきましょ~?」
「さも当たり前のように話してるけど、今しれっととんでもないこと言ったよね」
闇医者である彼女ならではの理由とも言えるだろうか。
それはともかく、自分は「夕食も買ってきてくれてありがとう」とレダにお礼を言ってから、準備してあったバッグへと手を掛けていく。だが、そんなこちらの姿を眺めていた彼女は、次の時にも魔性の微笑みを浮かべながらそう呟いてきた。
「ウフフ……あとは、カンキ君の最終チェックだけね」
「え?」
振り向いた時には既に、こちらへの接近を果たしていたレダ。そして彼女はおもむろにこちらへ抱き付いてくると、そのまま顔をこの首元に埋めていき、そこのニオイを嗅ぎ始めてきたのだ。
急に抱き付かれ、更には体臭を嗅がれている。唐突と巡ってきた呆然と羞恥の気持ちに自分が混乱していくその中で、レダはどことなく喘ぐような声音を出しながら、味わうかのようにただただこちらのニオイを嗅ぎ続けていく。
首筋を辿るように鼻を沿わせ、更には肩や鎖骨辺りも堪能する。そして彼女は艶やかに笑みながら顔を上げてくると、鼻先が触れ合うようなその距離で、メスのフェロモンを醸し出した魅惑のオーラを放ちながら喋り出してきた。
「合格よぉ~、カンキ君。よくこの日まで禁欲できました。傍には魅力的なホステス達がいっぱいいる中で、えらいわぁ」
「に、ニオイで分かるの……?」
「確信は無いけれどねぇ。強いて言えば、勘よ。オンナのカン」
「これは侮れないな……。レダに言われた通り、確かに同伴の約束をしたあの日から“そういった行為”は控えてあったけれど……」
「ウフフ、自分でも“済ませなかった”の、えらいわねぇ。あなたのそういう誠実なところ、わたしだ~いすき」
色気を伴って微笑んだレダは、言葉を終えると共にしてこちらへ軽いキスを行ってくる。そのソフトな接触に自分も応じるよう唇を重ね合わせたこの脇で、ラミアがジト目で眺めつつそう口を挟んできたものだ。
「ホント、レダさんって余計なコトをしてくれますよねー。おかげさまでウチ、ココ数日は溜まった鬱憤をカンキさんで晴らすコトができなかったんですからね。いくらウチがエッチをお誘いしても、アタマのお固いカンキさんは『レダとの約束ダカラー』の一点張りで断ってきてたんですよ?? せっかくコチラから誘ってあげていたというのに、ホント困ったモンですよ全く」
「あらぁ、そうだったの~。ウフフ、ラミアの誘惑にも負けずにわたしの約束を優先してくれたの、とっても嬉しいわぁ。それじゃあわたし、約束を守れた誠実なカンキ君のために、今回の同伴は特別に有料オプションを無料でサービスしてあげちゃおうかしらぁ」
こちらの頬を掬うように両手をあてがってきたレダ。今にも“捕食”してきそうな彼女の色気に自分が困惑を示していく最中にも、ベッドに寝転がっていたラミアは適当な調子でその言葉を口にしてくる。
「それで、お二方はココで欲情しててイイんですかねー。夜行バスのお時間、そろそろだと思いますけど」
そう言えば、そうだった……!
ハッと目を覚ますように立ち上がる自分。レダもこちらに合わせて立ち上がると、自分らは準備を済ませてあった荷物を身に付けながら、ラミアへとそれを頼んでいった。
「それじゃあラミア、ちょっとレダと遠出してくるよ。明日も向こうで夜行バスに乗って帰ってくるから、ここに戻ってくるのは明後日になる予定かな」
「ホーイ。ま、どーせ“お泊まり”するでしょーから、お二人ともコチラは気にせずご自由にどーぞ」
「お泊まりはまだ分からないけれど、予定としてはそんな感じってことで。じゃあ行ってくるね。ここはよろしく、ラミア」
トートショルダーバッグを掛け、レダと一緒に玄関へ歩き出していく。そんなこちらの背を寝転がりながら見送るラミアの視線を受けながら、自分はレダと共に龍明のバス停留所へと向かっていった。
発進したバスの中。乗客達が静かに会話を交わすその空間にて、自分もレダとのささやかなやり取りを交わしていく。
窓側に座る彼女が、コンビニで買ってきたというおにぎりを取り出してこちらへ差し出してくる。既に包装を解いてあったそれを見て自分は受け取ろうとするのだが、ふとレダは思いついたようにおにぎりを引っ込めていくと、次にもこちらへ身体を寄せながら、控えめな声量で艶やかにそう喋り出してきた。
「ウフフ……はい、ダーリン。あーん……」
「れ、レダ」
「いいからぁ。ほらぁ、あーん」
「ぁ、あーん……」
復活したダーリン呼びに不意を突かれ、ここがバスの中ということも相まってか動揺してしまった自分。しかし、それがレダの要求であるならば応じていきたいという思いの下に、自分は彼女との夫婦ごっこに興じるようレダとの熱々なコミュニケーションを図っていったものだ。
夜行バスに揺られながら眠りにつき、朝方になって目的地に到着した自分ら。季節が冬であることからその外界は冷え込んでおり、加えて、ここが都会ではない田舎町であることから余計と気温が低く感じられてしまう。
ここは、特筆する点が無いごく一般的な団地だった。言うなれば周囲に見受けられる集合住宅とゆとりのある敷地が特徴とも言える地域であり、通路に沿って植えられた緑と、遊具が整えられた公園が生活環境の豊かさをうかがわせる。
また、都会では無縁とも言えるだろう雄大な山を遠くに確認できた。それは深緑と浅緑の二色が交わっており、浅緑の部分からは人影と思われる動きが見て取れる。これらの点から、この地域は龍明では味わえない新鮮さや解放感を堪能することができ、後述する要素も含めて、澄み切った空気というものを楽しめる空間であることを感じていく。
そんな自分らは現在、学校の校庭に佇んでいた。
ここは小学校だ。しかし、バスに留まらず付近には軽トラなどの車も見受けられ、その上、関係者と思われる人々が周辺でせっせと屋台を準備する様子などもうかがえる。
今日、ここで冬祭りが行われるのだ。つい今まで乗ってきた夜行バスはそのお祭りのために運行されていたものであり、自分らも今日この冬祭りに参加するべく、そのバスを利用してこの地に訪れたというもの。
そうしてバスから降りた自分達を迎え入れてくれたのは、身体の節々まで染み渡る極悪な冷気だった。
田舎町の凍えるような寒さに、自分は思わず両肩を押さえるようにしながら震えていく。だが、続けてバスから降りてきたレダはワンピース姿でありながらも寒がる様子を全く見せず、さすがにコートは羽織っていたものだが、それでも厚着しているこちらをからかうような視線を投げ掛けながら、彼女はこちらへ寄り添いつつそう喋り出してきた。
「あらあらぁ、この程度で震えあがっちゃうの~? ダーリンってば軟弱ぅ」
「い、いやいやいや、むしろレダはなんで平気なの……?」
「ん~? これくらいどうって事ないでしょう? まぁ強いて言えばホームレス生活で寒さに慣れたから? それか~……ウフフ、わたしの身体にはそれなりに脂肪がついているから、とかかしらねぇ?」
と言って、レダはこれ見よがしに豊満な乳を擦り付けてくる。
他の人達が周囲にいる公然の中、自分は慌てるように「れ、レダ、ちょっと周辺を散歩しよう! あ、歩けばきっと俺も温かくなると思うから!」と提案を持ち掛けた。それを耳にしたレダは艶やかに笑ってみせると、直後にもこちらの耳元に口を近付けながらそれを囁いてきたのだ。
「う~ん……散歩も別に悪くないけれど~、それとは別にもっと簡単に身体が温まる方法があるわよぉ? ほら、二人で愛情を育む行為とか……」
「そうやってまた、ナチュラルに誘ってくる……。それも非常に魅力的なお誘いではあるけれど、せっかく遠出したんだから今は景色を楽しむために散歩がしたいな。……ね? そうしよ?」
「あぁん、おあずけだなんてダーリンってばドSぅ」
「ちょ、ちょっと、他の人がいるから……っ!」
レダの甘い声が、周囲の視線を集めてくる。これに自分は慌てるように歩き出していくと共にして、繋いだ手を引いて彼女を連れ出すようにしながら、暫しレダと一緒に町の中を軽く散策したものだった。
レダとの散歩によって、早朝の冷気も次第と心地良く感じ始めてきた頃合い。初めて訪れた地に対する理解も深まってきたその時には、同伴の目的であった冬祭りが開催の兆しを見せていく。
今回のお祭りは、午前から始まる催し物だった。特に、この地域の、この季節の昼頃にやってくる寒波がお祭りの醍醐味になるらしく、内容は後述するものの自分らはその物珍しさによって今回の同伴先を決めたものでもあった。
時間は過ぎ、小学校の近くにあった商店街へ足を運んでいく自分ら。すると、そこでは既に地元の人々と思われるラフな格好の人混みで溢れかえっており、この通路に張り出された冬祭りのペナントや、立ち並んだ屋台や商店の数々。また、白装束の女性が地元の滝をPRする看板を手に持って佇んでいる様子などがうかがえた。
自分らの目的はまさに、この商店街の奥で流れる滝にあった。しかし、せっかくなので出店を回りながら向かおうかという話になり、自分はレダと手を繋ぎながら、ふらっと巡るようにその通りを進み始めていく。
都会とは異なる、開放的な空気感。特に、学校や団地が近いからか小中学生の小さな子供が多く見受けられ、その様子からこの冬祭りは、賑わいというよりも和気藹々とした親しげなものを感じられたものだった。
華やかというよりは、エネルギッシュな印象だ。通りすがる子供達を横目で見送りながら内心で抱いていくそれ。周囲の活発さに自分も元気が貰えるなぁと心の中で思っていくその傍らでは、向けられていた不特定多数の視線が、隣のレダに集まっていたことにも薄々と気が付いていく……。
……艶やかに歩く姿と、挑発的な色気を放つ存在。特にオスの本能を刺激してくる彼女の容貌は、子供であっても思わず惹かれてしまうことだろう。
珍しさと見惚れ、そしてふしだらな視線。レダに魅了された人々が彼女に注目するその中で、レダはそれに慣れた様相でむしろ得意げになりながら、見せ付けるようにこちらの手を握り締めつつ、かと思えば一つの屋台を指差すなり唐突とそれを言い放ってきたのだ。
「あらぁ、見てぇカンキ君! “ちんちん焼き”ですって~!!」
「え、えっ。ち、ちん……?!」
人通りの多い商店街で何言ってんの!?
驚きのあまりに声も出なかった自分。TPOも弁えない発言に思わずギョッとした目で隣の彼女を見遣ってしまったのだが、レダの言う通りに自分もそちらへ視線を投げ掛けていくと、確かにそこには『ちんちん焼き』と書かれた屋台が眼前に存在していて……。
……マジだった。
信じられないという気持ちのまま、この足は自然と『ちんちん焼き』の前で立ち止まっていく。同時にしてレダと共に眺めたその屋台にて、扱われていた食べ物に対して良いのか悪いのかよく分からない安心感さえも抱いてしまえたものだ。
その見た目は、言ってしまえばたこ焼きのような形をしたお菓子だった。真ん丸とした球体がオトコの“金的”を彷彿とさせるものの、そこから香ってくる匂いは焼き菓子そのものでこちらの食欲を煽ってくる。この、どうしても名前に引っ張られてしまう第一印象に自分は言い知れない感情を芽生えさせてしまうのだが、その脇ではレダが意気揚々としたサマで店主のおじさんとこのような会話を交わしていた。
「おじさまぁ、この『ちんちん焼き』ってどんな食べ物なのかしらぁ~?」
「ぉ、おほぉぅ、こりゃ思い切ったお嬢さんだ。こいつぁまぁ、ベビーカステラのようなもんだよ。人形焼って知ってるかなお嬢さん。これは、その人形焼の餡が無いバージョン。まぁ丸くなったカステラみたいなおやつだよ」
「へぇ、それを『ちんちん焼き』って言うのねぇ。ウフフ、名前が名前ですから、やっぱり男子にウケが良かったりするんじゃないかしらぁ?」
「そりゃもう! こぞって『ちんちん焼き』を連呼する輩で大盛況ですわ! 年齢も年齢なもんで、子供たちはみんなそういうのが好きみたいでねぇ。こうして屋台を出しちまえば、面白半分でバンバン買ってくれますわ。おかげさんで、この地元の名物みたいにもなっててねぇ……どうだいお嬢さん。お嬢さんも『ちんちん焼き』いかがかい」
「ウフフ……おじさまの『ちんちん焼き』、とても魅力的に見えてきちゃった。それじゃあおじさまぁ、この『ちんちん焼き』、十五個入りのやつを見繕ってもらえるかしらぁ」
「毎度ぉ!! 十五個入りは四百円ね!! ついでに二個、オマケしておくよ!! ……お嬢さんからの『ちんちん焼き』一丁ぉぉぉぉ!!!!」
飽くまでこれは正式な焼き菓子の名前であり、それ以外の意味は無い。つまり、これは決していかがわしい単語ではないため、伏字にする必要も無い……はずなのだ。
レダはレダで、敢えて商品名を強調するようにそれを口にしていたものだ。もちろんこのやり取りは周囲にも聞こえており、特に男性や男子が聞き耳を立てながら、どこか背徳的なものを見る目でレダに注目していた様子だった。
何はともあれ、焼きたての『ちんちん焼き』を頂いた自分らは、十七個のそれが詰められた袋を受け取りながら店主にお礼を伝えていく。そうして立ち去る際にもレダは、「おじさまの『ちんちん焼き』、口の中でしっかり味わいながらいただくわね~」と爆弾のような置き土産を残したことによって、おじさまはたいへんよろこばれているようにもうかがえた。
そんなこんなで、購入した焼き菓子をつまみながら商店街を歩き進めていく自分ら。どうしてもネーミングに意識が向いてしまう食べ物ではあったが、お味自体は控えめな甘さで食べやすく、口に入れやすい真ん丸なフォルムと、焼き菓子のふわふわ感がまさに、ながら歩きに持ってこいな代物でもあった。
歩きながらつまむのに最適なおやつで、けっこうイケる。やはり第一印象だけで決めつけるのは良くないなと改めて思いながらレダと一緒に『ちんちん焼き』を堪能し、気付けば自分らは当初の目的だったその観光スポットに到着していた。
商店街の通りを抜け、奥に続く道を進むにつれて周囲の景色は団地から渓谷へと変化していく。段々と広がり始めた緑は苔のように茂り出し、それが草木となってびっしりと生え出していた。それは高いもので膝くらいまで伸びたものも存在しており、そんな豊かな自然による植生がこちらを迎え入れてくると同時にして、地面も水気を帯びた土となり、色も黒色に近い茶色となって、次第と脇に渓流が流れ出してくる。
渓谷のど真ん中。最深部とも言える場所を歩く自分とレダは、直にも目の前に見えてきた壮大な滝を目撃して感嘆を零していった。
爆音を立てて水飛沫を散らす滝。高さ八十メートルほどから落ちてくるそれは、階段のような形状を象って川と合流する。段々となった滝はその過程で本来の威力を損なっており、滝つぼに近しい場所にある浅瀬には、地元の人間による監視の元で多くの人々が集まっていた。
中には、一緒のバスに乗ってきた乗客と思しき人物らも見受けられたその団体。彼らはみんなして白装束を身に纏い、頭上から降り注ぐ滝に打たれては悶絶に近い表情でその極寒を堪能していく。
これこそが、この冬祭りの醍醐味とも言える行事だった。
真冬の滝に打たれ、その冷え切った清らかなる水で穢れを除き去る。特に、この地域の、この季節の昼頃に流れてくる渓谷の冷風が、滝で汚れを落とした清らかな身体に金運を授けてくれると言うのだ。
過去には、これで宝くじが当たった人もいたらしい。そこからこのお祭りは次第と知名度が広がり始めて、今では専用の夜行バスを走らせる程度には全国に普及したとのこと。
お出掛け先をレダと一緒に調べていく中で、たまたま見つけた冬祭りの口コミに興味が惹かれていく。次にも、真冬なのに滝に打たれて、更には冷たい風も浴びるのかと会話が弾んだ自分らは、じゃあ同伴でここに行ってみようという話になって今に至るというわけだった。
そんなわけで、観光客も体験できる滝行に自分らもさっそく参加した。
二人で白装束に着替え、一緒になって滝へ向かっていく。その際にもレダと手を握りながら共に浅瀬へと足を入れ、そして恐る恐ると滝に身を突っ込んで、痛いほどの極寒に思わず彼女と震え上がったものだった。
二人で歯を鳴らし、繋いだ手が離れる勢いでガタガタ震えながら暫し滝を浴びていく。そして係員に滝から出るよう促され、最後に吹きすさぶ渓谷の風を全身に浴びてから、ガンガンにつけられたストーブの前で二人、白装束のまま暫しうずくまっていった。
周囲にも、やはりと言うべきか顔を真っ青にした観光客が見受けられた。それはレダも例外に漏れず、彼女はこちらの僅かな体温さえも貪るように抱き付いてくるなり、そのままじっと、身体を震わせながらべったりと密着してきていた。
……なんか、木にくっ付くコアラみたいで可愛いな。
ふとよぎってきた思いを内心で呟いていく自分。その最中にも、レダは更なる体温を求めるようにより一層とこちらに抱き付きながら、震える口元で弱々しくそれを喋り出してきた。
「ささ、さすがにここの寒さはほ骨身みにここたええるわねね……」
「れ、レダでもこの寒さはダメだったか……」
「わ、わわたしをなんんだとお思ってるのよよ……」
「俺はだいぶマシになってきたから、体温を分けてあげるよ。ほら、おいで」
「ん……っ」
むぎゅうっ。二人で抱き合って身を寄せ合うこの空間。その際にもレダの魅惑な肉つきがこちらの全身に密着し、湿った白装束越しでありながらも彼女の女性的な温もりが自分の肌に伝わってくる。
……あー、ヤバいなぁ。
レダからのお願いにより、この日まで禁欲を行ってきた自分の肉体。だが、彼女の身体を肌身で感じたことによって、この身体はオスの本能を段々と思い出すかのように自我を持ち始めていく。
……レダを頂きたい。彼女を襲いたい……。
悶々と、沸々と湧き出した情欲。主に下半身へと集中し始めた意識と共にして、そんなこちらの欲情を察したのだろうレダが、耳元で囁くようにそれを口にしてきたのだ。
「ウフフ……カンキ君、急にオス臭くなってきたぁ。あなた、わたしとのハグで興奮しちゃったんでしょう?」
「……やっぱり女の人って鋭いなぁ」
「フフッ……ウフフッ、ニオイがどんどん強くなってくる。アフフ……んもぅ、カンキ君ったらわたしで興奮しちゃって……すっごく可愛い……」
「…………ッ」
今にも“下”が爆発しそうだった。
耐え難いほどの切ない感覚。今すぐにも抜き取ってほしい男の
「今日まで我慢できたご褒美……。これからカンキ君には、絶頂してしまうほどの心地良いひと時をプレゼントしてあげる……」
「…………っ」
私服に着替え、お祭りから抜け出すようにひと気の無い路地へと移っていく自分ら。住宅街でもあるそこを更に走り抜けていくと、次にも廃墟のように静まり返った小川の流れる団地に辿り着いた。
川の両側に生い茂る緑。それぞれの脇には道路が伸びており、そして道路に沿うように、住んでいる気配を感じられない住宅の数々が見受けられた。川の傍には萎びた木々が枝垂れるように存在していて、真冬の冷気の通り道とも言えるだろう冷え切った空気感が、もの寂しさを演出している。
川のせせらぎが心地良く、かつ二人だけに等しいこの空間。自分は周囲を確認次第に手を引っ張って連れてきたレダを付近の壁に押し当てていくと、その荒々しい行為に期待の眼差しを送る彼女の誘惑にそそのかされるまま、彼女のワンピースの中に両手を突っ込んで、それを思い切りたくし上げることで彼女の下半身を盛大に露出させていく。
……黒色の、レースのショーツ。細かな花柄がレダの妖艶さを際立たせ、女性らしい肉付きの下半身に自分は興奮を覚えるまま、彼女の尻や脚、背中を撫で回していく。それに伴いレダからキスを迫られ、自分は彼女の希望に応えるようその唇を貪るように塞ぎ、喰らうように深く、長く、そして熱烈とした口づけを行った。
無理やりと、強引に迫られるやり口に次第と息を荒げ始めたレダ。承認欲求とも言えるだろう自身を必要としてくれるアプローチに、彼女は性的な満足感を見出しているようだ。
閑静の住宅街に響き渡る、二人の唾液が入り混じる音。短く、こもっていて、湿り気を帯びながら何度も繰り返されるねちっこいそれに自分もレダも熱中し、互いに身体をまさぐり、敏感な部位を撫で掛け、愛でて、愛して、共に濡らしていく。
生理現象として溢れ出してきた欲情の証。特に、下半身を露出させたレダの変化は目に見えて著しく、布から零すほどの染みと雫に自分は尚更と欲情を掻き立てられ、昼間の時刻から彼女との行為に没頭してしまう。
そんな最中にも、レダはこちらと目を合わせていた視線を他所へと向けていく。それから彼女は、こちらを一層と抱きしめるよう両腕に力を加えてくると、次にもこの身を抱き寄せながら、耳元で囁くように背後の状況を教えてくれたのだ。
「ねぇカンキ君。ギャラリーがいるわよ……」
「うそ。全然気が付かなかった……」
「建設業の業者さんっぽいオトコの人達。三人とも、わたし達のことをヤラしい目で見ているわ。手にスマホも持ってるから、もしかしたらわたし達、撮られちゃうかも……」
「さすがに昼だと野外でも目立っちゃうな……。前にも公園でシたように、やっぱりこういうのは夜にし……っ」
他者の目を気にするこちらの唇を、レダは抱き寄せるようにして塞いでくる。その言葉を遮るように交わしてきた彼女のキスに自分は呆然とも言える様相で向かい合っていくと、思わず黙りこくったこちらに対してレダは上目遣いを行いながらそれを口にしてきた。
「ギャラリーが居てくれると、なおさら興奮しちゃうわ。でも、今日だけは……わたしはカンキ君に独り占めにされたい気分なのかもしれない……」
「……場所、変える?」
「えぇ、そうしましょう?」
「本当にそれでいい? 後ろの人達に、レダのあられもないエロい姿を見てもらわなくてもいいの?」
「いつもなら撮影も大歓迎なんだけど……でも、今日はカンキ君だけに見てもらいたいの。ねぇお願い? 早くわたしのことを連れ去って……」
「分かった。それなら俺は、レダの期待に応えてみせるよ」
たくし上げていたワンピースを下げて、彼女の頭を撫でていく。その後に覆い被さるようなキスをこちらから行ってからレダの手を取り、彼女をこの場から連れ去るように自分は歩き出していった。
この昼、レダとは愛し合うような激しい愛情を育むひと時を過ごすこととなる。
いつもは周囲に向けていたホテルへの関心も、この日は意識が向くことなく部屋へと直行した。
田舎町に設けられた大人向けの休憩サービス。閉められた赤色のカーテンと黒色の絨毯に、縦長に広い閉鎖的な空間が特徴的なその個室。そこに自分らは通されると、扉を閉めた瞬間にも互いの情欲が解き放たれるようにして彼女と抱き合い、自分はレダを扉に押し付けるようにしながらキスを行った。
そして、ベッドに行く間もなく彼女の服を剥ぎ取るように脱がしていく。
女性らしい体つきに、豊満な乳と肉付きの良い尻と脚。至福の抱き心地を誇る彼女に喰らいつくよう全身を愛でていき、“ソコ”に茂っていて、髪色と同色でもある整えられた
飢えた猛獣の如くがっつき、道具も着けない無責任な前後の運動でレダに快楽を与え続ける。これに彼女は乳を揺らしながら喘ぎで応えていくと、自分は辛抱堪らんという思いの下に彼女を抱き抱え、一つになった状態でベッドへと運んでいってからそこにドカッと寝転がらせ、そして仰向けとなった彼女に覆い被さる力ずくなプレイを行っていった。
絶対に子供を宿らせてやる。そんな力強い意思を感じさせる、種を付けるかのような圧し掛かり。昼間から汗を流した自分らは、今も外で行われている行事など一切お構いなしに二人だけの時間を大切に過ごしたものだった。
時は流れ、場面は夜行バスの中へと移る。この時にも帰路を辿る車内の中では、自分とレダは共に疲れたような、干からびたような、しかしツヤツヤとなったサマで隣同士に座っていた。
この夜、窓側に座るレダはずっと眠りについたままだった。とても満足した表情で、片手をお腹にあてがいながら、心地良く寝息を立てて眠っている。
そんな彼女の寝顔を見て、自分もまた心が歓喜している感覚に全てを委ねながら深い眠りについていったのであった。