俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
第49話 Une nouvelle beautés ? 《新たな美女?》
陽気な日差しが春を告げる、初春の季節。むしろ真冬よりも冷え込む大気に晒されながら、自分はいつものように
顔を出すついでに、昼食もいただいていこう。
そんなことを思いながら、開店前の店に訪れる。そうして店前のホステスと軽く会話を交わした後に、特別に店の中へと招かれた自分は階段を下りてその扉を開いていった。
……初めてこの店に入ってから、もうすぐ一年か。
感慨深い気持ちと共に扉を通過し、視線の先にあるエントランスのカウンターを見遣っていく自分。するとそこには、ラフなスーツ姿の荒巻と、タキシード姿のクリスという男性陣に加えて、もう一人、オレンジ色のシャツを着こなした、黒色のタキシード姿の見慣れない女性が親しげに会話を行っていた。
百六十四ほどの背丈であるその女性。美貌はさることながら、大人の落ち着いた雰囲気と、おっとりと、それでいて、しっかりとした佇まいがこちらの目を引いていく。また、ミカンのようなオレンジ色の瞳と、女性から見て左側に結った、同色のサイドテールが特徴的であり、そんな大人びた色気と、無邪気な可憐さの双方を両立した彼女の存在感に、自分は思わず惹かれるようにそちらへと歩み寄っていったものだ。
こちらから声を掛けるまでもなく、足音で三人が振り向いてくる。そして荒巻はサングラス越しの笑みを浮かべながら、陽気な調子でその言葉を投げ掛けてきた。
「よーぅ!! カンキちゃぁん!! グッドタイミングだぜ! ちょうど良い所に来てくれた!!」
「どうも、こんにちは。荒巻オーナーと、クリスと……えっと、そちらの方は?」
「おうおう、それを今から説明してやるつもりだったから焦んなさんな。いや気持ちは分かるぜぇ? 何せこの、ユノちゃんにも負けず劣らずの圧倒的美貌! 男子諸君なら気になっちまうこと間違い無しの大人の色気は、この世に存在するオトコというオトコのハートを無意識に虜としてしまうことだろう!」
大げさに喋り出した荒巻のそれに対して、女性は打ち明けたようなサマで苦笑しながら、穏やかな声音でそうツッコミを入れていく。
「ちょっとヤダなぁ荒巻さん。そんなこと言われるとハードル上がっちゃうのでやめてくれませんか?」
「ハードルが上がるぅ??? 今更なにを言いなすってんだ。オマエさんだって“元ホステス”だろうがよ。それも、ユノちゃんと肩を並べて売り上げていた、この店の稼ぎ頭だった
「え!? ホステスとして売り出すって、それ話と全然違うじゃないですか!? 私は飽くまで事務員として復帰しただけで、ホステス稼業までは担当しないって話でここに戻ってきたんですけど!」
「いやいやいや、オマエさんのような人材を事務員に留めておくのは、さすがに贅沢っつーモンよ。如何せん、オマエさんは創業時から店を支えてくれた“最初期メンバーの一人”だ。柏島さんも亡くなられた今、生き残った最初期メンバーはオレちゃんとクリスちゃん、ユノちゃんに、オマエさんの四人だけ。そんなカンジでオマエさんは、経験も豊富で強くてニューゲームな逸材っつーワケだからよ、人員が足りない時の臨時のホステスとしても、キッチリ仕事をこなしてもらう。んまぁ、そういうことでよろしく頼むぜ?」
「は、はいぃ?! そんなの聞いてませんけどぉ!?」
ガビビーンッ。という効果音が聞こえてくる、衝撃が迸る白目の表情。
意外と表情が豊かなんだなぁ。なんていう印象を抱きながら、自分はそれを尋ね掛けていった。
「あの、最初期メンバーと聞こえてきたのですが……」
「おうおう、置いてけぼりにしてすまねぇなカンキちゃん。ま、詳しい話は追々するとして、取り敢えず今は紹介だけでも済ませちまうか。じゃねぇと、気が休まらねぇだろ? こんな美人さんと初対面のままだなんてな!」
置いといて、と両手で空気を他所へ置くようなジェスチャーを交えた荒巻。彼の調子に女性は呆れ気味のため息をついていくのだが、そこから気分を入れ替えるように息を吸うと、改めてこちらへと振り返るなり彼女は、シャキッとした表情で、握りしめた右手を胸にあてがいながらそれを喋り出してきた。
「あー……はい。そんなわけで、荒巻さんからご紹介を
割と明るめな調子でそれを口にしながら、手を差し伸べてきたハオマという女性。彼女の言葉に自分は、「ど、どうも……」と返答しながら握手を行っていき、挨拶を済ませてからというもの、ハオマは困ったように苦笑しながら、冗談めかすようにそんなことを喋り出してくる。
「いやぁー、まさか柏島さんに息子さんがいただなんて、考えもしなかったですよ~。柏島さんの性格からして、息子さんを荒事に巻き込みたくないが故に私には話さなかったのかと思いますけど、それにしても、こんなご立派な息子さんをお持ちになられて……。あれ、なんか私、初対面なのに何故か親心が芽生えてきちゃった……。まぁ本当に、苦労も多かったでしょうに、よくここまで成長して……頑張ったねぇ。えらいねぇ」
急に涙ぐみ始めたハオマの様子に、自分は彼女に振り回されるように焦ってしまう。
何というか、色々と豊かな人だなぁ……。
感情然り、表情然り。また、失礼ながらも彼女の胸なんかを見ながら、そんなことを考えてしまった自分。
で、こちらとはまた別に、荒巻は悪戯にニタニタ笑みながら「お?? ご立派な息子とな??」と言葉を口にしてくる。これに対してハオマはすかさず彼の横腹に肘を入れていき、けっこう容赦の無いそれに荒巻は「グホォッ」と声を漏らしながらうずくまっていった。
まぁ、気の知れた仲なんだな。という印象を抱くやり取りを目の当たりにするその脇では、終始と不敵に佇むクリスが存在していた。そんな彼へと自分は視線を投げ掛けていくと、こちらに気が付いた彼はこのような言葉を口にし始める。
「余計な情報となってしまうだろうけれど、君も他人事ではない以上は知っておく必要があるだろう。というのもね、そこにいるハオマという女性もまた、シュラと同様に“元鳳凰不動産の人間”だった人物なんだよ」
「え? 鳳凰不動産の……?」
不吉な名前を耳にして、思わず身構えた自分。これにハオマは少し表情を曇らせて、荒巻は頭を抱えながら「いや、マジで余計な情報だな」と口にする。
だが、クリスはこちらに真っ直ぐ視線を向けたまま、不敵な笑みと共にそれを喋り続けていった。
「でも安心して。ハオマは既に、鳳凰不動産とは決別した身分にある人間だ。いや、むしろ彼女は、鳳凰不動産に命を狙われた。いつも通りに仕事をしていたその最中、あらぬ疑惑を吹っ掛けられて、彼女は組織に追われる身となったんだ」
「……それで、どうなったの?」
「何かを察したのだろう彼女は、組織に目をつけられる前から既に逃亡していたみたいでね。彼女はありとあらゆる全てを一夜の内に投げ出して、なんとか鳳凰不動産から一時的に逃げ切った。だが、龍明という土地は、彼らにとって庭のようなもの。見つかるのも時間の問題だっただろう。そんな中で途方に暮れていた彼女は、幸運にもある人物と出くわした」
「……それが、柏島長喜……?」
「いや、荒巻オーナーだ」
え?
これまでの流れでは、皆が柏島長喜という人物に助けられていた。だが、ここに来て急に飛び出してきた名前に自分は呆気に取られていく中で、荒巻は得意げに鼻を擦りながらも自慢げにそれを喋り出してくる。
「懐かしいねぇ、オレちゃんとハオマちゃんの出会い。あの日オレちゃん、ワンナイトラブを共にする素敵なレディを求めて繁華街の路地裏をうろついていたのよ。そこでばったりと出くわしたのが、泥だらけのスーツ姿で泣きじゃくっていたハオマちゃんだった。そんな変わり果てた姿のレディをオレちゃんは放っておくこともできず、身分を明かした上で彼女から話をうかがって、彼女が鳳凰不動産に狙われていることを知った」
遠い目を天井に向けた荒巻。彼の横では、過去を顧みるような表情を浮かべるハオマが静かに佇んでいて、その様相がまた、当時の余裕の無さをうかがわせてくる。
しんみりとした空気。それをもたらしたクリスは、不敵な声音で言葉を続けてくる。
「柏島長喜も、鳳凰不動産を追っていたからね。そこで荒巻オーナーはハオマを探偵事務所へと連れて帰り、しばらくはそこで匿っていた。らしい」
「らしい?」
「この話は、事件が収束した後に君のお父さんから聞いたものだからね。その場に居合わせていなかった僕が、詳しい状況を知る由も無いのさ。……むしろ僕はその時、鳳凰不動産に雇われた殺し屋として、ハオマの行方を探っていた。彼女の悲鳴と血飛沫を求めて、地面に残った獲物の残り香を嗅ぐ獣のように、血眼にしながらね」
「……クリスも当事者だったんだな。そっち側の立場で」
色々と情報が入り組んできた。
尤も、先のクリスの表現に意識が向いたのであろうハオマは、露骨に嫌悪する顔を見せながらクリスへと喋り出してくる。
「クリスくん……。お節介かもしれないけど、やっぱりそういうのは人前でやめた方が良いと私は思う……」
「君はいつになってもお節介だな。それほどまでに年下の世話焼きが好きなのかい?」
「世話焼きとか、そういう問題じゃなくって! ……あぁでも、クリスくんみたいな手の掛かる子って、正直ちょっとキュンとしちゃうかも」
「どうやら、店を離れてもなおハオマはハオマのままのようだ」
その何気無いやり取りがまた、いつもの日常らしく平然と行われていく。
既に周囲と馴染みがある、ハオマという人物。クリスとも普通に会話していくその最中にも、荒巻は悪戯にニタニタ笑みながら「お?? 母性本能か?? さっすが、オレちゃんと同じ三十路のオンナ!」と言葉を口にしてくる。これに対してハオマはすかさず彼の横腹に肘を入れていき、けっこう容赦の無いそれに荒巻は「グホォッ」と声を漏らしながらうずくまっていった。
というか、しれっとハオマさんの大まかな歳を知ってしまったんだが……。
女性の禁忌に触れた自分が、冷や汗のような緊張感を帯びながらも彼女の顔色をうかがっていく。と、そんなこちらの気掛かりも全く気にしない荒巻は、姿勢を直すなりふと思い出したように腕時計を確認してから、「げっ」と口元を引きつらせながらそれを口にし始めたものだ。
「ヤッベ!! 久しぶりに会ったハオマちゃんと楽しくお喋りしていたら、もう開店時間になっちまうじゃねーか!!! 開店前に済ませねぇといけねぇ店ん中の用事があったのに、やっちまった!!! ……おいクリスちゃん! オマエさんも、そろそろ業務に戻れ! 客が入ってくるぞ!!」
急に慌ただしくなり始めた状況に、自分は置いていかれるようにただただ佇んでいく。そんなこちらにお構いなしと動き始めた荒巻とクリスに続いて、ハオマも事務員としてカウンターへと向かい出していくのだが、荒巻は関係者以外立ち入り禁止の扉へと手を掛けながらも、振り返るようにしてハオマへとこの言葉を投げ掛けていったのだ。
「あぁそうだハオマちゃん! 一応、契約では今日から業務っつーコトになってるが、オマエさん今日は別に事務作業しなくてもいいからな!!」
「え?? あの、それってもしかして即日解雇の宣告でしょうか……!?」
「ち、違う違うッ!!! さすがに初日から現場で働けってのも酷な話だろうからよ! オレちゃん、ホワイト企業の理念っつーモンを掲げているからな。久しぶりに戻ってきた店の雰囲気に慣れる期間っつーコトで、今日は業務の代わりに、レストランやキャバレーを好きなように堪能していってもらいてぇのよ!」
「え!! それってもちろん、今日のお給料は出ますよね!?」
「もちろんって、がめついなオマエさん……。いやまぁ、出すけどよぉ……」
「わぁぁ!!! 美味しいお料理が食べられて、可愛い女の子ともお話しができてお金も貰えるだなんて、本当にホワイト企業ですね!! お店の立ち位置的にはブラックそのものなのに!!」
「う、うるせぇやい!!!! とにかく! 今日は久しぶりの
「あぁーーー!!! やっぱりそれ目的ですか!! 荒巻さん、女だけじゃなくてお金にまで強欲になったんですね!! 失望しました!」
「店のオーナーなんだから、それくらい考えるのは当たり前だろ!!!」
子供のように騒ぎながらやり取りを行う荒巻とハオマ。これには周囲のホステスも汗を流して見守る中で、荒巻はこちらへと視線を投げ掛けながらそれを伝えてくる。
「っつーコトで、カンキちゃん! 悪いが、そのオンナの一日世話係を頼まれてくれねぇかい!?」
「え、え? 世話係ですか?」
「てか、頼む!! 面倒見た分の給料なら出すから!! じゃあ、後は任せた!!!」
バタンッ。
関係者しか入れない扉を勢いよく閉めて、その姿を消した荒巻。既にこの場を去っていたクリスの姿も見えないことから、自分は初対面である女性共々、取り残されるように二人きりとなってしまった。
……き、気まずい。
周囲とはだいぶ気が知れていたハオマだが、自分は親父以外での接点が無いために、まずどのような話から切り出していくかを考え始めた。しかし、必死なこちらとは相反して、ハオマはケロッとした様子で何気無く話し掛けてきたものだ。
「カンキくんも、お給料が貰えるみたいで良かったですね! これで私とカンキくん、ほぼ働かずしてお金ゲットです! やったやった!」
「え? あ、そうですね……?」
「それで、カンキくんは今日一日、私の世話係ということみたいなので、良ければ私にお店の中の案内でもしてください。このお店に戻ってきたの、一年半ぶり? とかなので、だいぶ雰囲気とか、ホステスさんとか変わっているかもしれませんし。そこら辺なんかもお話ししていただけると嬉しいなー、なんて思います!」
「は、はぁ。分かりました……」
適応力というか、何というか……。
咄嗟の状況の変化にも混乱せず、むしろ適応する形で気持ちをすぐに切り替えることができる彼女のメンタル。
……さすがは、最初期のメンバーとしてホステスをやっていただけはある、かも?
今も無邪気に微笑み、「さ、行きましょうー!」と先陣を切って歩き出したハオマ。そんな、逆に自身が案内する勢いで進み始めた彼女に置いていかれた自分は、追い付くために慌てて駆け出しながらも、ハオマと過ごす日常のひと時へと臨んだものだった。
レストラン
前菜を味わい、メインの料理が運ばれてくる。その運んできた人物がちょうどボーイのクリスでもあったため、自分とハオマは気楽な気分で彼を迎えた。
コトンッとテーブルに置かれた二人分の皿。それらには、分厚くも色濃い赤身と、十分に火が通った、焼き目の皮が食欲をそそるマグロのステーキが乗せられている。
添えられたベビーリーフの緑色と、ワサビの緑色が爽やかさを演出しつつ、パプリカの赤やオレンジ、塩コショウのスパイシーな香りなどが伝わって、視覚や嗅覚で十分と楽しませてもらえる一品。
これはもう、味覚的にも間違いないだろう。そう確信さえしてしまえる贅沢な品を前にして、自分とハオマは食い入るように見惚れていた。そんな自分らの傍らでは、クリスは不敵ながらも機械的な調子でそれを名乗り上げていく。
「マグロのステーキ、以下省略でございます」
いや略すんかい。
もう分かってるでしょ? という身内のノリが伝わってくる手抜き。尤も、自分やハオマはこれを全く気にもせず、もう、目の前の品ばかりに気を取られて、「いただきます!」と言葉を口にしながら間髪入れずに頬張っていったものだ。
そして、二人で美味の唸り声をあげていった。
今日からの新メニュー。マグロのステーキと聞いて、居ても立っても居られずに開店前に顔を出してしまっただけはある。もはや店の関係者としてではなく、店の一ファンとしてその一品を堪能する自分は、思わず舌鼓を打ちながら無心となってそれを食していた。
で、ハオマもまた女の子らしく控えめに両手を上げながら悶えていた。
素の性格で可愛げのある人なんだなぁ。という印象を抱く、彼女の素振り。若々しいとも言えるし、純粋に可愛いとも言えるだろうハオマのそれを見たクリスは次の時にも、至って平然としたいつもの不敵な調子でこれを喋り出してくる。
「ハオマ、君はそろそろ年相応の反応を意識して身に付けた方が良いと僕は思うんだけどね」
「ふーんだ。別にいいもーん。周りからどう思われようと、私はせめて心はピュアでいたいんだしー」
「君がそれで良いのなら、別に構わないのだけどね」
「え、押してダメなら引いてみろってやつかな……? なんかそうやってすぐ肯定されちゃうと、それはそれで不安になるんだけど……」
「そうだね。やっぱり君はそのままでもいいな。側だけ取り繕ったところで、その純情なる内面は誤魔化し切れないだろう」
「え、え? 何それ? え、どういうこと? クリスくんの言うこと、私たまに分かんなくなっちゃう……! もしかしてこれが、若者、ってこと……!?」
「フフッ」
なんか、クリス。ちょっと楽しそう。
不敵とは異なる、面白げな口角の上げ方で笑んでみせたクリス。彼の様子を自分は意外に思っていく中で、彼はふと少し前屈みになって自分らのテーブルに近付くと、囁くように抑えた声でハオマへとそれを尋ね掛けていったのだ。
「オーナーから聞いたよ。君は再び命を狙われるようになって、この店に避難してきたみたいだね。対象の排除ならば、僕は君の力になれるかもしれない」
「は、排除って……。さすがにそこまでしてもらうつもりは無かったんだけど……」
「そっか。じゃあ、僕はボーイとしてのお手伝いでしか、君に助力できそうにないね」
「そんなことはないよ!! クリスくんから学べることも、私からすればまだまだ山ほどあるんだから!!」
「へぇ、僕には見当つかないな。例えばどんなものかな?」
「えっとね…………そう、博識系のやつ! クリスくん物知りだから、いろんなことを教えてくれるよね! ほら、前にも教えてくれた、『その脱皮したヘビの皮が、何日くらい経過しているかの見分け方』、みたいな。そんなカンジの!」
「前に教えたやつだね。あれ、僕が思いつきの言葉を羅列しただけの適当な説明だったんだけどな」
「え、ウソ!!? この前まで働いてたラーメン店で特技として自慢しちゃったんだけど!!?」
「さて、どこから指摘するべきかな」
この二人の組み合わせの場合、おそらく、ストッパーがいないと永遠にこのようなやり取りが続いていく。
クリスとハオマの掛け合いに、もはや料理どころじゃないものを感じていく自分。だが、それ以上に気になった言葉が出てきたものだったから、自分はハオマへとそれを尋ね掛けていった。
「ハオマさん。先ほど、再び命を狙われるようになった、とクリスが仰っていましたけれど、それって本当ですか……?」
こちらの問い掛けに対し、ハオマは少しばかり真剣な眼差しを向けながら答えてくる。
「そうですね。……あ、カンキくんもタメで喋っていい?」
「え? あ、はい。いいですよ」
「おっけー! ……あー、コホン。で、そうだね。前に命を狙われた際の事件は、カンキくんのお父様である柏島さんが解決してくれたから、それでここ数年は安泰ではあったんだけど……この数ヶ月でまた、鳳凰不動産と名乗る人達に尾行されたり、嫌がらせを受けたり、時には勤めていたラーメン店にも被害が及ぶようにもなっちゃって。数日前には店内で傷害事件。全部、私絡みの件だったから、責任を取る形というか、周りに迷惑を掛けないようにってことで、私は勤めていたそのお店を辞めたんだよね。で、そのことを荒巻さんに相談したら、『それじゃあ、ウチ来ちゃいなYO!』って感じで、ここに戻ってきた……ってカンジかなぁ?」
「この数ヶ月……。なるほど……」
この数ヶ月というと、ちょうど銀嶺会と鳳凰不動産の睨み合いが加速し、いつ抗争が起きてもおかしくないという不安定な時期に差し掛かった頃とも言えるだろう。
彼女も元は鳳凰不動産の人間。それでいて、その組織と敵対する
話を聞く限りでは、ハオマという人物の立ち位置と、自分の立ち位置はかなり酷似している。
自分も、拉致や殺害される危険性と常に隣り合わせにいる。そこから考えるに、自分とハオマは互いに外部からの脅威に晒されており、そんな自分らは揃って、
……似た者同士として、彼女と支え合わないといけないな。
今も目の前では、クリスとハオマが先ほどのようなやり取りを交わしていた。そんな彼女の横顔を自分は暫し眺めるようにしていると、直にもクリスは業務に戻るということで席を離れ、彼を見送るために手を振るハオマと二人きりになる。
で、向き直ってきたハオマが「これ、本当に美味しいね~」と幸せそうに喋ったりなどしていた最中にも、自分はちょっと割り込むような形でその言葉を口にしていった。
「ハオマさん。このお食事が済んだ後、お店の案内をいたしますよ。俺は店の人間ではありませんけれど、関係者としておそらく全ての部屋に入ったことはあります。なので、案内できるところは案内して、説明できるものは知っている限り説明いたします。……ハオマさん、二人で頑張って生き延びましょう。命を狙われても挫けずにしぶとく生き残り続けて、そして、鳳凰不動産にギャフンと言わせてやるんです。それが、俺達にできる、俺達なりの仕返しになると思いますので」
「おぉ、なんか改まっちゃって。カンキくんも可愛いなぁ」
「え?」
「それじゃあ、カンキくんのお言葉に甘えて、お店の隅々まで案内してもらお~。あ、でもそれだと年上のお姉さん……いや、おばさん? まぁ、年長者としての面子が立たないから、私が分からないものはカンキくんが教えて、で、カンキくんも知らないようなものは私が教える、みたいな感じで、相互に教え合っていければいいよね! そういうわけで、カンキくんの言う通り、二人で支え合いながらしぶとく生き延びていこー。おー!」
「そ、そうですね。ぉ、おー!」
なんか、対話している感覚で言うと、どのホステスよりも若々しいものを感じられてしまうハオマという人物。そのフレッシュさこそが彼女の個性でもあり、話していて癒される部分でもあることだろう。
ホステスというよりは、事務員としてこれからお付き合いしていく新たな美女。自分はこの後にも食事を終えるなり、ハオマを連れて一日中、店内を案内して回った。
そして、キャバレーが開店する夕暮れの時刻になった際には、同じ席で二人向かい合いながら乾杯を交わし、酒を嗜みながら、接待するホステス達との会話に勤しんだりもしたものだ。
ハオマと過ごした、店内での充実としたひと時。そして彼女はこれからも、荒巻やクリスのような立ち位置でその姿を見せてくれることだろう。