俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
眠すぎて起きることができない。
アパートの自室にて、開けっ払ったカーテンから射し込む日差しを鬱陶しいと感じていく。そうして、今も床に敷いた布団で横になっていた自分は、掛け布団を頭に被せることでその光を遮断したのだが……。
廊下から歩いてくる一つの足音。共にして、私服姿のレダが呆れた調子で言葉を投げ掛けてきた。
「ちょっと、カンキ君。いい加減に起きなさ~い? もうお昼になるわよぉ?」
「んむぉ…………もう少しだけ寝かせて……」
「もう少しって、あなたねぇ……。確かに昨日、ホステスの勤務が長引いて、みんなで夜遅くに帰ってきたものだったけど。だからと言ってお昼まで寝ていたら、あなたの生活リズムが崩れちゃうわよ? 働いていたホステスがきちんとしてて、あなたがこんな様子じゃあ、だらしないにも程があるわよ」
「て、手厳しい……」
レダに叱られ、自分は己を奮い立たせるように上半身を起き上がらせていく。そのゆっくりとした動きに、彼女は息をつきながら部屋の中を歩き出すと、次にも窓を開けたり布団を直したりといった動作を交えながら、レダはこの言葉を口にし始めてきた。
「起きたら洗顔、それから朝食をとる! 朝食というか、もう昼食ね。とにかくご飯を食べなさい。そのあとは歯磨きをして、寝間着から着替えなさい。着替えた後は軽くストレッチでもするなり散歩するなりして身体を動かすこと。散歩をする時は、あなた一人じゃ危ないからわたしも付き添うわ。……ちょっとカンキ君、まだ布団から出てないの? そんなにだらしないと、ホステスのみんなから嫌われちゃうわよ?」
きびきびと動くレダに視線を投げ掛けられ、自分はボーッとした状態で彼女と向き合っていく。これにレダは疑問を抱くように首を傾げてくるのだが、彼女の様子に自分は、未だ覚醒し切っていない意識でそんなことを呟いてしまったのだ。
「…………お母さん」
「はい??」
「レダ……お母さんみたい」
「お、おか……っ?!」
喜んでいいのか、怒るべきなのか。入り混じる感情に複雑そうな反応を示してきたレダが、石化するようにピシッと硬直してこちらを眺めてくる。その反応を見た自分の意識は一気に覚醒し、咄嗟にも、弁解とも言うべき慌て具合でそれを説明した。
「あ、いや……! 何て言うのかな。俺、幼い頃から母親がいなかったもんだから、もし今も母親が居てくれたのだとしたら、こんなやり取りでもしていたのかなって……なんか、今、何となくそんなことを思っちゃったんだよね……!」
むしろ、この弁解によって一層と気まずい空気を作ってしまったかもしれない。
幼い頃に突如と消えた存在。そこからなる、欠けた日常を想起させる一場面を先のやり取りで見出した自分に対して、レダは言葉を失うように暫し佇んでいく。
それ以上のことは言わず、返答に困っていた様子のレダ。これに自分は謝ろうと口を開いていくのだが、次にも彼女からはそのような言葉を掛けられたのだ。
「……別にね、イヤだって思ったわけじゃないのよ? それどころか、何でしょうねぇ……言うほど悪い気はしなかった? って言うのかしら。……とにかく、早く起きなさい! そのお布団も干したいから、早く退いてくれないと困るのよ」
「…………お母さん……」
「いいから早く退きなさい!!」
絶好のお出掛け日和である快晴の龍明。鳥のさえずりが心地良いその空間において、自分とレダは運動を兼ねた散歩を行っていた。
二人でアパートを後にして、何気無く手を繋ぎながら歩いてきた道のり。住宅街を突っ切ることで桜並木の道路に出てくると、既に葉桜となった若葉色の光景を二人で眺めていきながら、その道のりの途中にあった公園に立ち寄っていたものだ。
滑り台やジャングルジムなどの遊具が備えられた、至ってポピュラーな公共の場。今も五名ほどの男子達が広場で遊んでいる光景を他所にして、自分とレダはベンチに座って休憩を挟んでいった。
自販機で買ったペットボトルを彼女に手渡し、それのフタを開けて飲んでいくレダ。そんな彼女の横顔をまじまじと眺めている間にも、自分は内心でこのような心情を抱いてしまう。
……こうして見ると、レダって本当に綺麗な人だな。
いつもの艶やかさが勝る印象とは裏腹に、何気無いサマで過ごす彼女は実に美麗な淑女だった。決して、珍しく綺麗だと思ったわけではないものだが、現在は色気を前面に出した通常の立ち振る舞いとは異なって、健康的な褐色肌が織り成すその横顔が、健気さともうかがわせる可憐な一面を醸し出しているようにも感じられたのだ。
第一印象が淫魔として映る、白鳥レダという存在。しかし、日常を共にする中で自分は、彼女の淑女らしい側面を随所で目撃しているような気がする。
……内面よりも意識が向いてしまう、彼女の魅惑的な体つき。バスト九十九という豊満なスタイルは、オスの本能を揺さぶってくる。だが、彼女自身は己の身体にコンプレックスを抱いており、実際、そこから来る不純な印象によって、レダは過去にも壮絶な災難に見舞われてきた。
望みもせず向けられた、ケダモノ達の視線。レダという存在そのものが、男の食欲をそそってくる。
自分も例外ではない。今も横から眺める彼女の体つきに、どうしても意識が向いて仕方が無かった。そんなこちらの視線を感じ取ったのだろうか、口からペットボトルを離した彼女がジト目でそれを指摘してきたものだ。
「カンキく~ん? やらしいことでも考えてるの~? そのエッチな視線、わたしにバレバレよ~?」
「ご、ごめん。つい」
「ウフフ、いいわよ別に。もう慣れているもの、セクハラな視線を向けられることくらいねぇ」
「本当に申し訳ない……」
本人はそんな本気で言っていないのだろう。こちらの反応にレダは艶やかな微笑を見せてくると、彼女は丈の短いワンピースで誘惑的に脚を組み、少し首を傾げた色っぽい仕草でこちらを見遣りつつ、豊満な胸を突き出すようにしながらそれを喋り出してきた。
「ごめんなさい、ちょっとイジワルし過ぎちゃったかしらぁ。そんな真に受けないでちょうだい? 大丈夫。カンキ君になら、どれだけ見られても気にならないから。……それどころか、わたしも意識しちゃうかも? ムラムラしたカンキ君に、たくさん見られちゃってる……ってね。だから、カンキ君。わたしのこと、遠慮せずにもぉっと見てちょうだい……? あなたから注がれる熱烈な視線で、わたしもその気になっちゃうから……」
「……レダ、ここは外だから……」
「ウフフ。周りのホステスとたくさんの経験を積んできたのに、反応はずっとウブのままよねぇ。本当に、カンキ君って可愛いわぁ」
欲情的な息遣いで、こちらに顔を近付けてきたレダ。彼女から香ってくるフェロモンが一層もの欲を掻き立ててくる中で、今にもレダの唇がこの頬に触れようとした、その時であった。
前方から、ボールが跳ねる音が聞こえてくる。これに自分らは視線を投げ掛けていくと、それと同時にして視界の中央からはサッカーボールが迫ってきて……。
ぶつかる。
身の危険を感じて、思わず目を瞑ろうとした自分。だが、それよりも前に褐色の右手がこちらの視界を遮ると、直後にもこの顔面に飛んできたサッカーボールは、その右手によって間一髪と防がれた。
肉を打つ鈍い音が響き渡り、これに自分は唖然としたサマで暫し放心してしまう。だが、その間にもボールを持った手が視界の外へ引っ込んでいくと、次にも隣で立ち上がったレダが数歩と歩き出すなり、先ほど受け止めたサッカーボールを抱えながら、すぐさま駆け寄ってきた三名ほどの男子達へと言葉を投げ掛けていったのだ。
「ちょっとあんた達~!! 周りをよく見てからボールを蹴りなさい!! 他の人に当たったら危ないでしょう!?」
軽く叱りつけたレダの声に、男子達は揃って「ごめんなさい!」と謝罪を述べてくる。それから彼女は、手放したサッカーボールを軽く蹴りつけることで少年達へと返していった。
コートやワンピースをなびかせて、割と正確なシュートでボールを渡していく。これに少年達はお礼の言葉を口にするのだが、去り際にも彼らは無邪気な調子でこのような会話を行っていたものだ。
「なぁなぁ! あの人おっぱいすっげぇデカかったなッ!!!」
「あぁ! ボインボインしてた!! チョー揉みてぇー!!」
「パンツも見えそうだったけど見えなかった。おまえら見えた?」
悪意の無い明るい喋り声。これにレダは複雑な顔を見せながら、呆れたように「まったくもう……」と呟いていく。それから、踵を返すようにこちらへ戻ってくると、レダは自分の隣に腰を下ろしながらそう苦笑してみせた。
「本当に、子供って正直。それも男子だから余計に手が掛かるわね。……あんまり良い気分にはなれないけれど、でも……こういうのも案外、悪くは無いのかもしれないわねぇ」
「こういうの?」
「子供を持つ、ってこと。まぁ、大好きな人と結婚して、その人と子供を授かって、育児に苦労するでしょうけれど、その苦労も幸せの内の一つなのかしらって。健気な子供達を見ていると、そんなことを思っちゃうのよねぇ」
そよそよと吹く、心地の良い春の風。胸元まで伸ばしたもみあげを揺らすレダは、それを手で掻き上げる仕草を交えながらこちらへ尋ね掛けてくる。
「カンキ君は、結婚願望とかあるのかしら?」
「結婚かぁ……。俺もそういう年齢ではあるけれど、なんだか自分とは無縁のような話に思えてきちゃうなぁ」
「奇遇ね~。わたしもそう。結婚には憧れるけれど、自分とは程遠いもののように思えてきちゃって、やっぱり無理かなぁって諦めちゃったりする」
「レダなら、良いお嫁さんになれると思うよ」
「あらぁ、どうして?」
「面倒見が良いし、誰にでも気遣いができて、教養もある。他人に優しくすることができるし、時には他人を叱ることもできるし、あとは性格と顔も良くて、何よりも人としてすごく頼りになる。恋人としても、妻としても、これほど心強く思える女性って滅多にいないんじゃないかな。……レダは、良いお嫁さんになれるよ。少なくとも、男の俺から見たら、そう思ったんだ」
何気無く説明してしまったこれらの言葉。喋り終えてから自分はハッとするように隣へ振り向いていくと、そこには呆気にとられたような表情でこちらを見遣るレダが存在していた。
……何か、マズいことでも言ってしまったかな。
内心でメチャクチャ不安になった自分。だが、こちらの憂いとは裏腹に、次にもレダは微笑しながらそう喋り出してきた。
「ウフフ、フフ……アッハハハ。よくそんなこと、本人の前で恥ずかしがらずに言えるわねぇ。ホステスをたくさん口説いてきたからかしらぁ~? 随分と大胆なオトコになったわね、カンキ君」
「あ、あぁ……。いや、その」
「今、恥ずかしがらなくてもいいじゃない。本当に、可愛い子」
そう言ってレダは、満更でもない様子でこちらの背をバシバシ叩いてきた。
彼女から加えられた振動で、自分は誤魔化すような笑みを浮かべながら視線を逸らしていく。それから自分用のペットボトルを手に持って、気まずさを晴らすかのように、それのキャップを開けてから喉に流し込むようにして飲み物を口にしていった。
……我ながら、一体何に焦っているんだろう。
自分の行動に、自分自身が疑問を抱いていく。だが、そうして意図的な沈黙の時間を設けていたその最中にも、未だこちらへ視線を投げ掛けていたレダは次にも、穏やかな調子で、おもむろにその言葉を口にしてきたのだ。
「それならカンキ君、わたしと結婚しましょうか?」
「ブフォッ!!?」
お決まりのような定番の反応。空中に虹を描いた飛沫を飛ばす中で、自分はむせながら答えていく。
「ゴホッ、ゴホッ……ゲホッ!!! ……れ、れだ。急に何言って」
「割と本気だけど? カンキ君的にはどうかしら? 事故物件だけど、あなたにとっては悪くないんじゃない~? ……答え、ここで聞かせてくれる?」
からかうような視線を投げ掛けてくるレダ。膝についた両肘で、その両手に顎を乗せたあざといポージングでこちらを見遣る彼女に、自分はときめきを覚えながらもひとまずそう返していった。
「れ、レダが良いのなら……っ。で、でも、あれだな。やっぱりこういうのは、もっとこう。お互いの人生のためにも、せめてもう少しだけ考える時間が欲しい……かも?」
「ウフフ、あなたって本当に面白い反応をするわよねぇ。見ていて飽きないわぁ」
「その本人は割と本気なんだけどね……」
「そこが良いんじゃない。あなたのそういうところ、わたし、素直に大好きよ?」
ああああぁぁぁぁ…………可愛い……。
本心から惚れてしまう、レダというその女性。今も褐色肌で艶やかに微笑む彼女に、自分は先の提案を真剣に検討し始めてしまってもいた。
……と、彼女の言葉に乱されるようこの先の将来を考え出していたその中で、レダは視線を前方の公園へと投げ掛けながらも、落ち着いた声音でそう喋り出してくる。
「偶然なのか、必然なのか。本当に、生きている中でこのような奇跡を実感する日が来るだなんて、思いもしなかった」
「奇跡……?」
「あなたのことよ、カンキ君。……一体何の因果かしらねぇ。わたしがこうして本気で結婚を考えた時、最初にその相手に選んだのも柏島の血族だった」
「……柏島長喜。俺の親父か」
「そう。本気で彼に惚れていたわたしは、ホームレスという身分でありながらも、ついつい、彼と共にする未来を思い描いてしまっていたものよ」
投げ掛けた視線はそのままに、レダはしめやかに言葉を続けてくる。
「……既に彼が結婚して、あなたという子供も授かっていただなんて露知らず。バイでもあった彼が男性と二人で歩いていれば、わたしは物陰で勝手に嫉妬してしまって。依頼人の女性から話をうかがっているその姿を見ただけでも、わたしは勝手に発狂してしまいそうなほどに、気持ちが滅茶苦茶になってしまった。当時、彼の相棒だった荒巻オーナーに対しても、彼が羨ましくて羨ましくて仕方が無くって、そんなこと彼は知らずにわたしを口説いてくるものだったから、その度についつい手が出てしまいそうになったりして。……当時のわたしは本当に、柏島オーナーにぞっこんだったわぁ」
今だからこそ語れる、過去の話。それを、意中の相手だった人間の息子に語っているというシチュエーションがまた、言葉にし得ない感慨深さを与えてくるのかもしれない。
遠くを見遣るレダの眼差しは、地平線のその先を捉えていた。
もう、あの頃の純粋な恋心は取り戻せない。それは、医者を夢見た学生生活の崩壊だけに留まらず、意中の人間が既婚だった現実まで突き付けられ、まるで見放されるようにどん底へと突き落とされた彼女の心労は、自分なんかには想像することができないだろう。
……レダという女性を幸せにしてあげたい。
自分にできることは、一体何だろう。ただ守られることしかできずにいた自分の立場を情けなく思えてしまうその中で、自分は思い立ったようにレダへと言葉を掛けていく。
「……俺は、とても親父のようにはなれない。親父の武勇伝を聞かされてから、尚更とそう思えて仕方が無かった。でも……それでも俺は、何としてでもレダの心を満たしてあげたいと思えてくるんだ」
こちらの言葉に対し、レダは軽く視線を投げ掛けながら尋ね掛けてきた。
「じゃあ訊ねるけれど、今のわたしに対して、あなたには一体何ができるのかしら?」
「それは……」
……つい、答えに詰まってしまう。
答えたいのに答えられない自分の無力さ。レダの問い掛けによって再認識させられた現実に、悔しく思えて俯いてしまう。しかし、こちらの反応を見守るように眺めていたレダは、次にもこちらへ手を差し伸べながら、穏やかにそう喋り出してきたのだ。
「そんなに思い詰める必要は無いわよ。だって、今のあなたにも、わたしに対してしてあげられることはあるんですもの」
「…………?」
「わたしという一人の女性に寄り添うこと。それなら、あなたにだってできるでしょう?」
伸ばした手で、こちらの身体を抱き寄せてきたレダ。最初に豊満な乳に迎えられた彼女の温もりは、次第と腕、頭、胴体と続いてこちらを包み込んでくる。
……温かい。レダの香りに包まれた自分は、自然と目を瞑ってしまう。この反応に彼女は優しく微笑んでくると、こちらへと頭をくっ付けたその状態で、囁くような声音で、言い聞かせるようにそれを喋り続けてきた。
「柏島長喜は歴史的にも偉大な人物で、わたしが心から惚れた意中の存在でもあった。けれど、あなたはその息子だからと言って、無理に彼のようになろうとはしなくてもいいの。だって、カンキ君。あなたは、あなたなんだから。柏島長喜は飽くまで柏島長喜なのであって、その息子の柏島歓喜は、柏島歓喜であることに代わりない。あなたは飽くまでも、それ以上にも、それ以下にもならないの。……馬鹿にしているわけじゃないのよ。むしろ、その逆。カンキ君。あなたには、あなたにしかない魅力がある。そしてわたしは……いえ、我々ホステスは、あなたのそんな魅力に、心から惹かれているのよ」
「……レダ」
「お父さんと違って、自分は何もできないだなんて思わないで。あなたには、あなたにしかできないことがあって、それはわたしという存在を、心から支えてくれている。……カンキ君。どうかこれからも、わたしの傍に付き添ってくれないものかしら。わたしはあなたのことを、柏島長喜の息子さんとしてではなく、柏島歓喜という一人の男性として見てる。だからあなたも……白鳥レダという一人の女性のことを、柏島長喜の息子としてではなく、柏島歓喜という一人の男性視点で見てくれないかしら。そうしてもらえると、わたし、とっても嬉しいかも」
自身の頬を、こちらの頬にくっ付けてきたレダ。互いの柔らかな部位が触れ合う心地良さが、滲むように伝わってくる。
……レダの包容力に、自分は魅了というよりも安心感を抱き始めていた。
ユノとは異なる安心感。それは女神の守護による物理的な安心感ではなく、女神の加護を授かったかのような、精神的な安心感によるもの。
ずっと、レダとこうしていたい。包み込んでくる彼女の温もりに穏やかな心情でそれを思い、自分はゆっくりと顔を上げながら、それを口にしていく。
「レダ、結婚の件だけど……」
「お互いの人生のためにも、もう少しだけ考える時間が欲しい。自分でそう言ったんでしょう? なら自分の発言に責任持って、もう少し冷静に考えなさいな」
「……ごめん」
「ウフフ、わたしもイジワルしちゃってごめんなさい。これも全部、あなたの反応が面白いのがいけないのよ~?」
妖艶に微笑んでみせ、悪戯にこちらを見下ろしてきたレダ。いつも通りとも言えるだろう彼女とのやり取りに、自分は安堵しながらもそれを切り出したのであった。
「……レダ、このあと時間空いてる?」
「えぇ、今日はお休みですから、いくらでも。……あなたからの“お誘い”だなんて、珍しいこともあるのねぇ」
「ダメ、かな……?」
「ダメなわけないじゃない。だって、わたしから言ったんですもの。これからも、わたしの傍に付き添ってくれないか、って……ウフフ」
十階建ての大きな宿泊施設。その内の八階にある一室を借りた自分とレダは、真昼の景色に一切と目もくれることなく、カーテンを閉め切った薄暗い空間の中で熱情を共有し合っていた。
夜景を売りにした、ロマンチックなひと時をコンセプトとした大人の休憩所。大きな窓の傍にある大きなソファやベッドなどが、景観を背景にした特別なムードを演出している。しかし、自分らは入室早々から絡まり合ったため、出入口付近の壁にもたれかかるような形で肉を打ち付け合っていた。
服も脱がずにいる、着衣の行為。ワンピースだったレダの左脚を上げ、晒した“肉壺”めがけて自分の“ソレ”を突き出していく。既に潤滑となっていた彼女の“聖域”は容易くこちらを受け入れて、初っ端から加減の無い激しい運動に対しても、レダは痛みどころか快楽を見出して艶めかしい嬌声を上げていた。
一心不乱に腰を振る自分。レダの左足には、脱がした黒色のショーツが掛かったままになっている。
己の意思では止まることができない。今も“息子”は悦びに浸っており、自慢げに背を伸ばした直立の姿勢によって、彼女の命の空間とも呼べるだろう最深部をノックし続けていく。
他ホステスと比べて、肉付きが良いレダの身体。温もりと色気を帯びた至高の肉感は瞬く間にオスの欲望を満たしていき、直にも自分は放出を目的に一層と運動を速めていった。
だが、そうしてフィニッシュを目指し始めたこちらの様子に、レダは水を差すように両腕を回してくる。そこから抱き寄せるようにしてこちらの運動を止めてきた彼女は、熱烈なキスをねだるなり自らその唇を近付けてきて、静止した空間の中でディープなそれを交わし合ったものだ。
メスの本能が、こちらの“モノ”を貪らんとギュウギュウに締め付けてくる。その締まりの良さに自分が天にも昇る快感を覚えていく最中にも、レダは口付けを交えた艶やかな息遣いで、その言葉を口にしてきた。
「カンキ君……っ。わたしのナカ、気持ち良い……?」
「すごく気持ち良いよ。もう、今すぐにでも出したいくらいに……っ」
「ウフフ……ダ~メ。まだお楽しみはこれからなんですもの。……ねぇ~カンキ君、わたしの身体ってすごくエッチかしらぁ?」
「すごくどころじゃないよ。とんでもないくらいエッチだ。……好きだ。レダの身体が好きで好きで堪らない。もっと欲しい。レダの、最高の抱き心地をもっと堪能したい。そしてずっと、こうしていたい。レダの身体を抱き締めて、レダの体温をずっと感じながら、レダのおっぱいをたくさん眺めて、レダの表情にも興奮して、レダの身体に触れながら、レダの大切な場所と繋がっていたい……っ」
「わぉ、とんでもないアプローチ……っ。そんなに刺激的な言葉を並べられちゃったら、わたし、今よりもっと興奮しちゃうかも……」
彼女の言葉通りとも言うべきか、こちらを受け入れる“肉壺”が、“モノ”を締め上げるように奥へ奥へと引き締まっていく。これに自分は悶えるよう声を漏らしていくと、レダは恍惚とした表情で、全身からフェロモンを醸し出した
レダは、行為において何よりもムードを大切にするタイプの女性だ。相手との行為であれば、攻めや受けから始まり、緩めから激しめなどの、ありとあらゆるアプローチに対応するオールラウンダーな性質を兼ね備える彼女。だが、彼女は自身の極上の肉感を提供する代わりとして、主に言葉などを用いたロールプレイを相手に求めてくる傾向にあった。
行為による物理的な快楽も、彼女にとっての好物であることに代わりない。しかし、それを上回る更なる大好物として好んでいたプレイが、相手を愛人や夫などに見立てた、仮想のシチュエーションからなる対象との掛け合いというものだった。
行為中に交わす、相手との刺激的な言葉のキャッチボールに興奮を見出す彼女。それは、以前にも夫婦ごっこと称するお出掛けなどに楽しみを見出していた本人にとって、最も快感を得られる手段でもあったのだろう。そうして彼女から投げ掛けられる期待に見事応えてみせ、加えて、彼女の体つきや魅力についてのセクハラ
ムードを重視とした、間接的な愛情表現を好む肉食の淫魔。褐色の肌にたわわな乳が、無意識とオスの欲望を掻き立ててくる。それらから繰り出される彼女からの誘惑に勝る男など存在するはずもなく、魅了されたオスは瞬く間に子種を搾り取られてしまう。
立った状態で行っていた行為から一転して、繋がり合ったままレダを抱え込んだことで、場所を移しながらの運動を行った自分。その際に彼女の両脚に腕を通すことで、M字のような開脚の格好でレダをベッドまで運んだものだった。
何をやらせても、どんな格好でも色っぽい。すべてにおいて欲情を仰ぐレダという存在に興奮が高まった自分は、ベッドに寝かせた彼女へと覆い被さるようにしてキスを交わしていき、そこから首筋、胸、へそ、下腹部と移動しながらの軽い口付けを行ってから、直にも到達したレダの“肉壺”に触れていく。
快感によって充血した、ふっくらとした肉感の“ソコ”。既に準備も万全な、受け入れ態勢の湿り気を伴ったソコに自分は口を近付けていくと、次にも唇を埋めるようにしてレダの“聖域”を堪能し始めていった。
堪らず、彼女の中で咀嚼する自分。潤いさえも貪る勢いでレダを食すこちらの行為に、彼女は演技ではない本気の声音を上げて身体を仰け反らせていく。
……愛おしい。レダという女性が堪らなく大好きだ。
こちらの好意が伝わってくれていたら嬉しいな。内心で抱いた恍惚の念と共に身体を起こした自分は、そのまま食い散らかした彼女のソコに自分の“息子”をあてがいつつ、今も快楽の余韻で悶えるレダの両手首を掴んでいく。それから一気に顔の距離を近付けてレダに迫ると、彼女は不意を突かれたように驚いた、意外そうに唖然とした表情を見せてきた。
見開いた眼差しが、余計に愛おしい。これに自分はゴクリと息を呑みながらも、レダの両手首を握る力を少し強めてから、彼女の身動きを完全に封じたその状態で言葉を口にしていった。
「……よし。俺、決めた」
「な、何をかしら……?」
「これからレダを孕ませる」
「へ……っ?」
「だから、レダもそのつもりでいてほしい。いいね?」
「……は、はい……っ。お手柔らかに……っ」
ビキビキとそそり立った自分のソレ。背を伸ばしたソレが彼女の聖域に触れることで、自分の興奮は一層と昂り出していく。
そして、自分は再びレダへと進入し始めた。
瞬間にもこちらを迎え入れた、極上な温もりでソレを抱き抱えるレダの聖域。熱烈なほどの締め付けによりすぐさま達した自分が、発射を我慢しながらも脳天に電流を迸らせていく。
……まだダメだ。彼女の奥に到達していない。今ここで欲望を放出してしまうと、レダの命の空間に子種が届かないかもしれない。
絶対に、孕ませる。揺るぎない断固たる意思で欲を堪えた自分は、次の時にも、我慢によって限界まで引き締まった全身の筋肉からなる、理性が飛んだ猛烈な勢いによる激しい上下運動を繰り出していった。
何としてでも植え付けてやる。圧し掛かるようなプレスの運動は、レダの身体を容赦なく打ち付けていく。この力ずくな行為に彼女は悲鳴のような嬌声を上げていくと、レダもまた我慢を忘却した本能からなる声を雄叫びのように響かせて、獣のようなプレイに恍惚とした表情で天井を仰ぎ始めていたものだ。
殴り付けるかのような、肉を打つ音。湿り気を伴った鈍い音が部屋中に轟いて、ベッドもいつ折れてもおかしくないほど軋み続けていく。
これまで史上、一番とも言える激しい行為だった。
血に飢えた猛獣が淫魔を襲う構図。欲望にそそのかされ、歯止めが利かなくなった猛獣が淫魔を貪るその光景は、傍から見れば犯罪を想起させること間違いない。
しかし、襲われる側の淫魔は至極ご満悦な様子だった。
圧迫される状況の中で、彼女はこちらの身体に両腕を回して抱き留めてくる。一方で両脚は快楽のままにピンと伸ばしており、この行為を後ろから覗いた際にはWのような形を描いていたことだろう。
それでもなお、彼女はこちらを求め続けてきた。
乱暴かつ本能的な行為に快楽を見出していた彼女。その様子に自分が極限までの昂りを覚えていく中で、次にもレダとはこのようなやり取りを交わしたものだった。
「レダ……っ!!! これでレダに子供ができたら……っ、俺達、結婚しよう……っ!!」
「えぇッ、いいわよ……っ! 子供ができたら、ッ、結婚しましょうっ……!!」
「結婚が決まったら……みんなにお祝いしてもらおう……! その際には、レダは綺麗なウエディングドレスを身に纏って……俺と一緒に、高級ホテルで豪華な結婚式を挙げるんだ……っ!!」
「ウエディングドレス……っ。一度でいいから着てみたかった……! わたしの憧れだった……!! 街中にあるドレスのショーケースを見て……ずっと、着てみたいなって思ってたの……っっ!!」
「着られるよ……! レダなら着られる……! 俺がそれを実現させてやるから……っ!!」
「カンキ君……っ子供の名前。子供の名前はどうしましょう……っ」
「あとで、一緒に考えような……! 男の子と、女の子……二人分の名前を考えよう……っ」
「わたし、子供……四人、四人欲しい……っ!!」
「分かった。それじゃあ四人産むためにも……健康に気を遣った生活を送らないとね……っ」
ロールプレイなどではなく、本気で語り合う自分とレダ。二人で抱き締め合ったそれにひと段落がつくと同時にして、自分は限界まで差し迫った己が欲望を、レダの中へと吐き出すよう一気に噴出させていった。
熱を帯び、どくどくと脈打つ肉の管。そこから自分の全てを捧げるよう彼女に熱意を注ぎ込み、溢れんばかりの欲望で彼女の中を満たしていく。
……ラミアとメーに続き、自分史上もっとも多い量を噴射した。
出すと共にして、レダの肉壺からは熱意が溢れ出してくる。そうして、最深部に達していたはずの管から即座に溢れ出た自分のそれを実感すると、次にも彼女の頬を手で撫で掛けていき、それに力無く微笑んだレダに続いて、自分も微笑を浮かべたものだった。
結果から言ってしまうと、今回の行為で子供を授かることはできなかった。
しかし、彼女との関係を再確認することもできた自分は、そこから来る充実感から倒れ込むようにして力尽きてしまった。
下に居たレダが、落ちてきたこちらの身体を抱き留めてくる。そして、豊満な乳が触れる彼女の温もりに包まれながらも、自分とレダは暫し抱擁を交わした後に、共にして深い眠りについたのであった。