※この作品はR-18です。

俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活   作:祐。

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第68話 La tentation du bleu clair 《水の誘惑その2》

 昼のLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)。レストランの営業が開始されてから一時間ほど経過しただろうその時には、既に満席となる程度には席が埋まっていたものだった。

 

 店のホステスらが忙しそうに行き交う光景の中、いつもの席でボーッとしながら“少女”を待っていた自分。暫し意識を途方へ投げ掛けていると、直にも一つの足音を伴いながら制服姿のノアが歩いてきた。

 

 平然とした透明感の様相。心なしか自信を思わせるキリッとした表情でこちらの席へ歩み寄ってくると、次にもその右手に乗せていた銀色のお盆から、一枚の皿をテーブルに移しながらそれを口にしてきた。

 

「柏島歓喜!! 長らくと待たせてしまったね!! Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)の充実した厨房の調理器具や食材、調味料その他エトセトラエトセトラを存分に活用した、ボクお手製の賄いカルボナーラだ!」

 

 言葉と共にして、コトンッとテーブルに置かれた皿。

 こんがりベーコンと半熟の目玉焼きが乗せられたスパゲッティ。ツヤツヤな白色のソースを絡めるように和えたそれらには黒コショウが振り掛けられており、匂いだけで味が伝わってくる滑らかなチーズの香りがまた、舌だけでなく鼻までも喜ばせてくる。

 

 こんなに豪華な料理が賄い……?

 思わず、「うお、すげぇ……」と感嘆してしまった自分。こちらの反応にノアは渾身のドヤ顔でフフンと鼻を鳴らしてくると、向かい側の席に同じようなスパゲッティを置きながら、少女はその席に座っていく。

 

 ノアの分なのだろうそれにも意識が向いていく中で、自分はフォークを用意しながらそれを訊ね掛けていった。

 

「厨房の手伝いはもういいの? せっかく午前中に学校が終わったのに、制服のままキッチンに呼ばれる程度にはレストランの方が忙しかったんだよね?」

 

「あぁ、それならば安心してくれたまえ! ボクの役目は、臨時のコックがやってくるまでの助太刀。そのカレは二十分ほど前に合流してくれたものだったから、ボクはそれとは別に、持て余した余裕を賄い飯の調理に注ぎ込んだまでなのさ」

 

 自身の胸に右手を添え、高らかに語るよう仰々しく振る舞うノア。その高尚な態度からは圧倒的な自信が溢れていて、これがノアのチャームポイントでもあったものだ。

 

 ……制服の姿で店の厨房に立つ女の子って、なんだかカッコいいな。

 ノアの様子を脳内で描き、内心で憧れに近しいものを抱いていく。それを脳裏に留めながらも自分は「それじゃあ、早速頂いちゃおうかな」と口にすると、ノアもまたフォークを手に持ち、手を合わせながらそれを喋り出してくる。

 

「柏島歓喜。決して忘れてはならないよ。本日のボクとの同伴は、“既に始まっているんだ”。キミにはそれを念頭に置いてもらいながら、ボクの賄い飯を味わってもらいたい」

 

「如何せん、いつ抗争が始まってもおかしくない時期だから、外にお出掛けはさすがに危ないもんな。……最初こそ、ハオマさんに『Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)で同伴するのはどう?』って提案された時は驚いたけどね。あまりにも身近すぎて、この店を同伴先にするだなんて思い付きもしなかったよ」

 

「普段は、朝焼けにさえずる小鳥が如き温和な雰囲気のカノジョだが、ハオマはこの道のプロでもあるからね。経験から来る閃きにはボクも学べることがたくさんある。今回のLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)を同伴先にするという発想も、カノジョならではの提案だったとも言えるだろう。……さて、話はこれくらいにして、そろそろカルボナーラを頂こう。温かい内に召し上がってもらえると、ボクとしても嬉しい限りさ」

 

「それもそうだね」

 

 何気無い会話を交えつつ、二人で微笑しながら「頂きます」と挨拶してカルボナーラを頂いていく。

 

 話にも出ていたように、今日はLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)でノアとの同伴が行われる。その景色自体は非常に見慣れた様子であったものだが、これから体験するであろう事柄に関しては、いろんな意味で未知に溢れていた。

 

 本日はノアとの同伴だ。それも、シュラに続く濃厚な昼の予感がする同伴になることだろう……。

 

 

 

 

 

 ノアと共にする食事は、実に穏やかな時間が流れたものだった。

 自信に満ち溢れた、高貴な喋りで世間話を行う少女。食事中も口をもぐもぐ動かしながら絶え間なく喋り続けており、左手を胸元にあてがいながら繰り出されるそれら言葉の数々に、自分は終始、うんうんと頷き続けていた。

 

 そうして食事を終え、二人で手を合わせて「ご馳走様」と挨拶を口にしていく。それからノアは無言のまま暫しその場に留まり続けていくと、次にも少女は何かを言い出そうと口を開き、しかし言葉が喉に引っ掛かったのであろうそのままの表情で、ひとり静かに俯いたりしていた。

 

 ……もしかして、乙女の一面が出てきてる?

 ボクと愛し合おう。先日にも告白が如く伝えられたノアからの言葉。本日の同伴に繋がるキッカケとなったやり取りだが、その際にも知った、少女から寄せられた恋情に近しい好意の存在によって、自分もどこか意識するように気恥ずかしく頬を赤らめてしまったものだ。

 

 愛、というものをキミで感じようとしている。

 ノアから言われたセリフが脳内で反響し、同時にして視界に映る少女の恥じらう姿に余計と意識してしまう。だが、ここは男らしくどっしり構えようという心意気でノアと向かい合っていくと、次第にもノアは色白の頬に火照りの赤みを浮かばせながら、こちらの顔色をうかがうようにそれを訊ね掛けてきた。

 

「柏島歓喜っ! ……その、あれだ。実はだね……サプライズとして、食後のデザートも用意してあるんだ……! この日のために、念入りに用意してきた絶品のデザートさ。きっとキミなら気に入ってくれると思う。いや、絶対にメロメロにしてみせる! だから……この後にでもそれを召し上がってもらえると、ボクとしては天にも昇るほどの幸福に満たされるのだが……」

 

「あ、あぁ! 食後のデザートか! しかも、今日のために用意してきたサプライズ! ノアのお手製デザートかな。なんだかすごく嬉しいな! ノアがこんな自信満々に勧めてくれるんだ。もう、今から期待してもいいんだよね?」

 

 寄せられた好意に、自分も慣れないためか緊張したように食い気味な返答をしてしまう。

 この、互いに恥ずかしさをぶつけ合うやり取りに、二人で誤魔化すような苦笑を見せながら向かい合っていくと、ノアはノアで明るく振る舞うように、「き、期待してもらっても全然構わないよ! ……ハードルが上がったことに少しだけ心許なさを感じてしまえるけれども、キミならばきっと、受け入れてくれると信じているからね……!」という返答を行ってきたのだ。

 

 ……ノアにしては、だいぶ弱気に見えるのは気のせいだろうか。

 王子様気質の気取った喋りが独特な、仰々しいほどに溢れ出る自尊心。それこそがノアという人物の特徴であり、チャームポイントでもあったためなのか、こんなにも躊躇いを感じさせる少女の姿にこちらの調子が狂ってしまう。

 

 ともあれ、ノアが用意してくれたという食後のデザートを楽しみに、席に座った状態で静かに胸を弾ませた自分。今もお盆に皿を回収し始めたノアを視線で追っていたものだが、こちらの期待の眼差しに対して、ノアは華麗な佇まいと共に左手を差し伸べながらそれを口にしてきたのだ。

 

「さぁ、それじゃあ柏島歓喜、食後のデザートを用意してある部屋へと移動しようか」

 

「え? あれ? ここで食べるんじゃないの?」

 

 認識の食い違い。

 早速と巡ってきた沈黙に、お互いが黙りこくっていく。それからノアはハッとするようにその言葉を付け加えてきたものだ。

 

「すまない! キミに重要な部分を伝えるのを忘れてしまっていたようだ! 実はそのデザートは、我々ホステスの控室に用意してあってだね。少々ワケありなもので、お客であるキミには本当に申し訳ないものだが、部屋の移動をお願いしたいんだ」

 

「あぁ、そういうことか。……控室に用意してあるってのは何だろうな。取り敢えず、ノアの言う通りに移動しようか」

 

 彼女らの控室でしか召し上がれない食後のデザート。この、いまいちピンと来ない意外性がまた、ノアらしいサプライズ……か?

 

 とにかく、ノアについていけば何の問題も無い。それを思いながら腰を持ち上げていき、それからノアにさり気無く手を繋がれてから、自分らは今も盛況であるレストランLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)のホールを横断したものであった。

 

 

 

 

 

 移動を終えて、自分は入口の仕切りから覗き込むようにしながら“罪の花園”へと訪れた。

 

 エントランスやホールの裏側にある、禁断かつ禁忌のプライベート空間。その光景は主として、壁沿いに用意されたいくつもの鏡と、鏡を利用するための個別の机。それら付近にはホステスの私物が置かれており、化粧品の数々といった道具が片付けもされずに散らかっていたものだ。

 

 部屋の中央には、四つほどの横長のテーブルが置かれていた。

 白色で、傷だらけな年季ある机。その上には主に、流行りのゲーム機や充電中のスマートフォンなどが不用心にほっぽり出されており、中には、既に貴重品がはみ出している誰かの鞄であったり、あろうことか“マッサージ器”だったり、“男の立派なソレの玩具”といった代物が放り出されたりもしていた。

 

 風景こそ、キャバクラの控室かなんかのごく一般的な雰囲気だったことだろう。しかし、Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)のそれは所々と穢れており、女の子だけが活動するお部屋という理想に塗れた期待から一転として、生々しいリアルの実情をこれほどまでかとぶつけられた眼前の光景に、自分は一周回って「みんならしい控室だなぁ」という感想を抱くに至ってしまった。

 

 部屋の奥には、キャバレーの営業中に使用するステージの衣装などが、ハンガーに掛けられていた。

 それは男装系のスーツから、貴族風のドレスまで実に様々。ステージ上の演技やダンスなどで使用されるそれら大中小の衣類達は、壁から壁までぎっちりと詰め込まれるように並んでいる。ホステス達はそれらを着回す形で日々のステージに臨んでいき、素人によるショーとは思えないクオリティを以てして、客を感動の渦へと誘っていた。

 

 ……罪を抱えながらも、アンダーグラウンドの世界で必死に生き永らえる彼女達。危険な香りを放ちながら、艶やかに妖しく舞い踊る姿は妖艶そのもの。そうした、アブないが故にその深淵を覗き見したいという誘惑に駆られた一般人が、Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)という罪の味の虜となって、接客からショー、そして食事にまで心を奪われてしまうのだ。

 

 龍明だからこそ成り立つビジネスだよなぁ。という内心を胸に秘めながら、ノアに誘われるまま控室に踏み入っていく自分。そこでノアに「後ろを向いていてくれないかい?」と言われたことから、自分は少女の言葉のまま後ろを向いて暫し待たされた。

 

 ……この背後では、何やら衣類が擦れる音が響き出してくる。

 皆目見当がつかないな。そう思いながらも目についていた、視線の先にある横に長い半開きのクローゼット。ちょうどこの身体も収納できそうな高さもあるそれの内部には、人が二人分だけ入れそうな空間ができている。

 

 ああいうのを見ちゃうと、何故だか入ってみたくなるよなぁ。

 男ならではの冒険心だろうか。これにささやかながらもワクワクとした気持ちを抱いていたその時、後ろにいたノアに「柏島歓喜! もう大丈夫だ! 振り向いてもらっても構わないよ!」と声を掛けられたことによって、自分はサプライズのデザートに更なるワクワクを伴いながら振り返っていった。

 

 くるっ。期待と共に投げ掛けた視線。それと同時にして視界に映ったのは、テーブルに乗り掛かったノアが、着ていた制服のシャツを半分開きながら艶めかしく座る姿だった。

 

 ほわぁん。あのSEが自然と脳裏に流れてくる。

 既に脱いであった白色のアンダーシャツはテーブルにほっぽり出されており、脇を見せつけるように上げられた両腕の後ろには、指に絡めてあるのだろう水色のブラジャーが下がっている。

 

 両脚は横へ伸ばしており、右脚を持ち上げたセクシーな角度と制服のスカートが、一層もの背徳感を醸し出してくる。そして、仕上げにノアは練習してきたのだろう上目遣いからなる、絶妙な角度が織り成す艶やかな色っぽい表情によって、透明感を伴った可憐な眼差し攻撃を繰り出してきたのだ。

 

 な、なんて可愛さだ……! 水晶が如くミステリアスなその雰囲気が売りである少女が、大人のクールさを全面に押し出したアプローチ……! 銀嶺のように真白の神秘を纏うその少女はまさに、不可思議という言葉を体現した白銀の天使……!! そんな少女が自ら露出して男を誘惑する行為と、垣間見せてきた度重なる羞恥の仕草、そして色白の柔肌を曝け出し、胸部の“神秘”が見えそうな際どい格好が最高に普段とのギャップになっている……!!!!

 

 …………で、どうして急に脱ぎ出した!?

 興奮よりも驚愕が勝る目の前の状況に、自分は半ばガビーンッと衝撃を受けながら硬直した。だが、そんなこちらにお構いなしといった具合に、ノアはその言葉を続けてくる。

 

「食後のデザート。それは、このボク自身のことさ!! 柏島歓喜!! さぁ! この、ノアという甘味に溢れた甘美なるスイーツを、好きなように味わいたまえっ!! さぁ!! さぁっ!!!」

 

 切ない表情と共にして、押し付けるような勢いでアピールを行ってきたノア。脇を見せつけるようにバァーンッ!!! と繰り出したポージングは、もはや神々しいとまで言えてしまい、そんな少女のある意味で仰々しい様子に、自分は呆気にとられるように見遣り続けてしまっていた。

 

 ……途端にして巡ってきた沈黙。互いに暫し動じない空気感の中、ノアは恐る恐るとこちらへ視線を投げ掛けながら、すごくしょんぼりとした顔と声音でそれを口にしてくる。

 

「……柏島歓喜。もしかしてボクって、そんなに魅力が無いのかな……」

 

「い、いやいやいやいや!!! そんなことはないって!! エッチだよノア!! とんでもないくらいの爆発的な色気が漂っているよ!! ……ただ、あまりにも唐突すぎたから、それでちょっと驚いちゃっていただけというか」

 

 すかさずフォローを入れて、すごく悲しげな表情をしていたノアの機嫌を取っていく。これにノアは直ぐにもキリッと表情を引き締めていくと、次にもはだけた胸に右手をあてがい、自信満々といった具合にそれを喋り出してきた。

 

「そうか! そんなに今のボクがエッチに見えるか!! アッハハハ!! それならば良かった、本当に安心したよ! ……今日という日のために、男の好みというものを研究してきた甲斐があった! 柏島歓喜。キミに、ボクという特上の一品を召し上がってもらうためにね!」

 

「なんというか、ノアってけっこう積極的だよね……」

 

 制服のシャツからチラチラとうかがえる胸に意識が向きつつ、呟くようにそれを口にする。こちらの反応にノアはフフンと鼻を鳴らすものの、ふと控室の隅にある衣装の類へと視線を投げ掛けるなり、「なるほど」といった感じに右手を顎に添えながら、そんなことを喋り出してきたものだ。

 

「ふむ……現役JKの制服姿による背徳感を味わってもらうのも乙というものだろう。しかし、せっかくこうして色々な衣装が用意されているんだ。柏島歓喜、キミはボクにどれを着てもらいたいかな?」

 

「え? いやでも、そもそもとしてステージの衣装を無断で使用するのはマズいんじゃないかな……」

 

「案ずるな! 大丈夫さ、心配など不要に等しいものだろう。如何せん、ボクが衣装を身に纏うのも、柏島歓喜、キミのために他ならない。最も優先されるべき特別な客であるキミが望むのならば、少なくともユノは寛容な心持ちによって許してくれるだろう」

 

「あのユノさんのことを考えると、マジであり得そうなのがまた……」

 

 というか、まさか俺好みの衣装に着替えて“誘惑しよう”としている……?

 よぎってきた良からぬ予感に、自分が冷や汗を流してしまう。だが、ノアははだけたままの姿で身軽にテーブルを下りていくと、スタタタと軽快に横長のハンガーラックへと駆け寄って、漁るようにそれらを手で掻き分け始めたのだ。

 

 ……まぁ、ノアの気が済むまでやらせておいて、最後に「制服姿のままが一番だよ」と声を掛けてあげれば何とかなるかな。

 内心でセリフまで考えておいてから、自分も重い足取りで少女の下へと歩み寄っていく。その最中にも、テーブルに放置されたノアのブラジャーについ目が行ってしまうのだが、邪念を振り払うように頭を横に振ってから、少女のいるハンガーラックへと向かっていった。

 

 当たり前ではあるけれど、ノアも身に着けているんだよな……。という感想が脳裏にチラついて、次第と興奮が芽生え始めたこの身体。“生理的な現象”もちょっとだけ及んできた自分自身にモヤモヤしていたその間にも、ノアはノアで男性の貴公子を模した気品のある衣装を手にしながら、何気無いサマでそれを喋り出してくる。

 

「そうだな……。柏島歓喜、いま最もアツい衣装と言えば、この男装系の衣装だろうか。現在、夜のキャバレーで『ガリヴァー旅行記』を原典にしたショーを上演していることは、キミも知っているだろう。主人公のレミュエル・ガリヴァーを演じるミネがこれを身に纏ってステージに立っているものだが、カノジョとボクは身長や肩幅が似ているために、ボクもこれを身に着けることができるはずなんだ」

 

「今やっているショーのやつだね。かの天空の城のアニメの題名は、この『ガリヴァー旅行記』に出てくる空島のラピュータから影響を受けている……みたいな話があるんだっけな。まぁ、いま上演しているお話は、小人の国で奮闘するガリヴァーの冒険譚ではあるけれど、回数を重ねる毎に上手くなっていくミネの演技がまた、見ていてワクワクしてくるんだよな……!」

 

「カノジョは舞台上で試行錯誤を繰り返すタイプの人間だからね。その日の公演が終わった後も練習場に残って、演技の練習も兼ねたひとり反省会をしているものだよ」

 

「ミネは努力家だからね。他にも、レダが演じている小人の国の王様は鬼気迫るものを感じさせて恐怖すらも覚えるし、モブの小人を演じるメーとシュラはアドリブでやりたい放題してるし、それで本気で困惑しているミネの反応がまた面白いんだよな……。あと、ラミアのナレーションもいいよね。ニュースのキャスターみたいにすごく丁寧な口調で喋ってくれるのに、演者がふざけた時にたまに見せてくる冷めた対応が、今までとの温度差で笑っちゃうんだよね」

 

「違いない。特に、メーとシュラは本当に気が合うんだろうね。カノジョ達の絡みは、ボクらホステスから見ても奇々怪々で笑わせられるよ。まぁ、ヒヤヒヤさせられる場面の方が多いけれどね。……柏島歓喜。ホステス達のことを隅々まで見てくれているその観察眼こそは、ボクとしても嬉しく思うわけさ。しかし今は、ボクと同伴している最中でもあるんだよ? そこは気を利かせて、原典『月と六ペンス』において天才画家のチャールズ・ストリックランドと、歌においてはセンターでボーカルを務めた主役のボクを褒めるべきだと思うんだ」

 

 訴え掛けるような力強い声音で、そのようなことを言われてしまった。

 今もはだけた胸に左手をあてがい、眼差しから承認欲求が伝わってくるノアのアピール。透明感からなる少女の訴えに、自分は申し訳無さを感じながら「ご、ごめんごめん」と謝りつつ、ノアの頭を撫で掛けながらそう感想を直で伝えたものだ。

 

「ノアの演技も最高だった。ストリックランドの自分勝手な振る舞いと、芸術の魂に取り憑かれたかのような演技が逆に恐ろしくも感じたよ。まるで、本人が目の前にいるかのような、演技の上手さとはまた別の、悪魔に魂を売ったかのようなあの臨場感は、日頃から誰かに影響を受けて、それを自分のものにしてみているノアにしかできない芸当だと思う。歌もすごく上手くてビックリした。普段とのギャップはさることながら、アイドルのようにキラキラした曲調で歌って踊るノアの姿は、誰よりも輝いていたよ」

 

「フフ……。フフフッ……。いいね……! 完璧だよ。パーフェクトだ……。ボクが欲しかった言葉を、キミは一語一句、間違えることなく全て表現してみせた……! キミの褒め殺し口説き文句は、ボクらアンダーグラウンドに落ちた女の荒んだ心を浄化してみせて、生きる希望さえももたらし、心臓の遥か奥底にこびり付いた切り傷さえ、言葉で癒してくれる……」

 

 ミネの衣装をハンガーラックに戻しつつ、ノアは心臓を押さえるように両手を胸元へと移していく。それから少女は鏡のような瞳に潤いを浮かべながら、透き通った雰囲気で、柔らかい微笑を見せながら言葉を続けてきた。

 

「……なんて心地良いのだろう。キミの言葉は本当に、ボクの心を満たしてくれるんだ」

 

「ノア……?」

 

「あぁ、ドキドキする……。キミに褒められたという事実がボクの意識を掻っ攫い、胸によぎる不安を取り払って、空っぽにしてくれる。その器にキミの優しさが注がれることによって、ボクはキミから賜った温もりで心まで温かくなるんだ。……寄せていた期待は好意へと変化して、その好意は次第と、本意となる。これが、恋、というものなのだろうか……? なぁ、柏島歓喜。ボクはキミに対して、恋情を患ってしまったのだろうか……? 教えてほしい……この、火傷しそうなほどにぐつぐつと煮え滾る熱の正体を……っ!!」

 

 あ、暴走し始めた。

 確信したノアの様子と共にして、少女はこちらの右手を取るなり、はだけた胸部へと引き寄せていく。そうしてシャツの内側へと滑り込ませたこちらの手を、自身の“神秘”に触れさせていくと、その瞬間にも日頃の“開発”で敏感となったソコの接触により、ノアは不意にも甘い声音で「はぁん」と喘いでみせたのだ。

 

 ……以前にも、手のひらで存分に転がした“神秘”の突起。指でも摘まみ、その腹でいたぶり、撫で掛けて弄んだ少女の清らかな部位。再び触れたソレに自分も心臓の鼓動を速めていく中で、ノアから受けたアプローチによって自分は、理性の糸がプツンッと途切れるように左手でノアの身体を抱き寄せていった。

 

 右手は、まさぐるように少女の“神秘”を揉みしだく。その、控えめながらも滑らかな柔肌は、まるで吸い付くようにこちらの手を快く迎え入れてくれて、加えて、小さな“輪”のわずかな感触が余計に欲情を駆り立ててきたことで、自分は我慢できないと言わんばかりに、ノアの後頭部に左手を添えていった。

 

 ……このまま、キスでもしちゃおうか。

 こちらの思惑に、薄々と勘付いたのだろうノア。“本番”どころかキスさえしたことがなかった少女を前にして、こちらからアプローチするようにこの口をノアへと近付けていって…………という、その瞬間だった。

 

 ガチャッ。開かれた控室の扉と、そこから聞こえてきた二人のホステスの喋り声。いつものメンツではないそれらの声に自分は、はだけた姿のノアを急ぎで抱き抱えながら、反射的に周囲を見渡してしまう。

 

 この時にも、自分は“ある隠れ場所”を見つけてしまった。

 後ろを向いていてほしい。そうノアに言われた時にも目についていた、横に長い半開きのクローゼット。ちょうど自分が入れそうな高さもあるそれの内部には、人が二人分だけ入れそうな空間ができている。

 

 ああいうのを見ちゃうと、何故だか入ってみたくなるよなぁ。

 男ならではの冒険心だろうか。……とか何とか考えていたそれを見てからというもの、自分はノアをお姫様抱っこの要領で抱え、急いでそのクローゼットの中へと入り、内側から扉を閉めてから、ノアを下ろして抱き締めていった。

 

 直後にも聞こえてきた、ホステスらが不思議がる疑問の声。音が聞こえたような気がした、といった話を二人で繰り広げるその間にも、自分は抱き締めていたノアを見下ろしていく。

 

 ……するとそこには、シャツが全開になったノアが、頬を真っ赤に染めながらこちらの身体に寄り添う姿が見受けられたものだった。

 

 こんな姿、他の人に見られたくない。面子を気にするノアにとって、自身の羞恥的な有様は何よりも致命的だと考えていたことだろう。

 こちらのお触り以上に、心臓の鼓動を速めていた少女の様子。この調子から、即座に身を隠して正解だったことを直感で悟っていくのだが……。

 

 ……抱き締めていたこちらの腕を解き、この右手を取ってきたノア。直後にも少女は、何の躊躇いもなくそれをスカートの中へと滑り込ませていき、至って自然な動作と共にして、男性の手を自身のショーツの中へと招き入れてみせたのだ。

 

 な、何をしているんだ……!?

 隠れているが故に、声は出せない。その代わりとなる視線でノアへと問い掛けていくのだが、次にも右手に伝わってきた感触に、自分は生理現象を余計に加速させてしまう。

 

 ……水晶のようにツルツルとした、滑るように滑らかな柔肌。もちもちとした肉感はまさに少女の“神秘そのもの”であり、また、“ソレ”を覆うように巡らされた湿り気は、独特な粘り気を伴ってもいた。

 

 肌触りからして、“草原”の存在を一切と感じられない。

 隅々まで行き届いた、几帳面なほどのデリケートなお手入れ。指で擦りつければ、ピカピカとなった食器のような音さえ出そうなくらいにツルツルな柔肌に、自分は思わず小声で「……ノア?」と訊ね掛けてしまう。

 

 見下ろした視界には、暗がりでありながらもスカート越しのショーツがうかがえた。

 白色の布地に、水色の水玉模様。ノアらしいと言えばノアらしいその柄に意識が向いていく中で、少女は切なそうな眼差しでこちらと向かい合いながら、その左手でこちらの“ソレ”を撫で掛けてくる。

 

 …………つまり、そういうことなんだな? “此処”でも大丈夫だというサインなんだな……!?

 

 バレるかバレないかの瀬戸際。もれなく名誉の損失というチキンレースに対して、自分は最終確認の視線をノアへと送っていく。

 

 その答えは……多分、イエスだった。

 履物のチャックを下げて、トランクスの間からボロンッと“モノ”を取り出すノア。既に最大限もの本領を発揮していた“息子”に、少女は一瞬だけ引きつった声を出していくのだが、それからノアは“息子”を容赦なく鷲掴みにするなり、自身の下腹部へと押し当てて、こちらの目をジッと見遣ってきたのだ。

 

 ……心も身体も、準備はできているということか。

 少女からの訴え掛けに、自分は無言で頷いてからその華奢な身体を抱き締めていく。それから両手で掬うように少女の尻を掴んでいき、そこから持ち上げるように高さを調節していってから、今も“息子”を、自身の“神秘”に触れさせるノアの期待に応えるべく、二人はクローゼットの中という場所で“行為”に及んでいったのだ。

 

 

 

 

 

 この昼、ノアというホステスとは緊張感と隣り合わせのひと時を過ごすこととなる。

 

 今もクローゼットの外から聞こえてくる、他のホステスらの話し声。休憩で入ってきた彼女らの他愛ない談笑を傍らにして、自分は立ち上がった姿勢のまま、そそり立つ“息子”をノアへと侵入させ始めた。

 

 ショーツも履いたままの少女を尻から持ち上げて、そこからゆっくり下ろすようにして“聖域”に収まっていく。そうして、音を立てないよう細心の注意を払うのだが、ノアから溢れ出してくる“熱情”が湿気の摩擦音をわずかに響かせたものだったから、自分らは互いに違う意味で心臓をドキドキさせながら、結合部の“合体”を進めたものだ。

 

 ノアにも力を入れてもらい、少女の体重を極限まで減らして結合を続けていく。そして、“息子”が少女の最深部にまで到達すると、二人で向かい合っては静かに苦笑し合い、初めて一つになれた記念を祝すかのように、同時にして自分はノアとの初キスも済ませていった。

 

 ……最強のヤクザ組織『銀嶺会』会長の一人娘に手を出してしまった。

 これを知られた瞬間にも、自分はどんな無残な方法で消されることになるのだろうか。という恐怖に苛まれる一方で、あの透明感からなるボーイッシュなノアの“神秘”に包み込まれた快楽が、“息子”を通じて全身に巡り巡ってくる。

 

 それでいて、満更でもない様子のノアもまた、うっとりとした蕩ける瞼でこちらのキスに没頭していたものだった。

 少女からしたら自分は、恋情かもしれない淡い気持ちを抱くに至った気になる相手。胸に秘めるその想いが一体なんなのか、その正体を知るべくこの“行為”に走ったのだろう大胆なお誘いがまた、意外性な意味でノアらしいとも思えてくる。

 

 少女と過ごすひと時はいつも、想定外なものばかりだ。

 共にしてきたこれまでの時間が、現在のシチュエーションに一層もの興奮を与えてくる。そうして愛しくさえ思えてくる、水晶が如く透き通りながらも非常に脆い存在を、自分は一生大切にする心持ちで力強く抱き締めたものだ。

 

 この抱擁に、ノアはゆっくりと瞼を閉じて唇の温もりに集中し始めた。

 談笑が響く外界の傍。薄い扉を挟んだ暗闇の中、自分とノアは二人だけの世界に入り浸っていく。そのひと時は優に一時間は超えたのだが、外のホステスらが控室を後にするまでの間、自分らは一切と離れることなく、ずっと繋がり合った状態で、互いの温もりを交わし続けていたものであった。

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