俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
引き続き、『俺のハーレムはワル女子だらけ』をよろしくお願い致します。
完全に秋を迎えた昼間の龍明。周囲は季節の茶色に染まり始め、
取り戻しつつある龍明の日常には、親子連れといった歩行者も見受けられた。
子供を挟んで手を繋ぐ夫婦。微笑ましい彼らの光景を見送るようにしながらも、自分は隣を歩く存在へと意識を向けていく。そうして隣に視線を投げ掛けると、そこには左腕で松葉杖をつきながら足並みを揃えるメーの姿が映し出された。
右半身を骨折した、包帯だらけのなんとも痛ましい姿。だが、本人はケロッとした様子で目を合わせてくると、次にも勝気に微笑しながら喋り出してきた。
「そんな心配しなくっても大丈夫だってば~! メー様はね、これくらいの怪我でも絶対に挫けない強靭な心の持ち味なのだよ~?」
「だからと言って、骨折した女の子を一人で歩かせるわけにはいかないからね。久しぶりに顔を出す
「みんなのことを考えてくれているんだね。さっすがカンキ君、私の忠実な家来なだけはあるね~」
「でもやっぱり一番は、メーの身体が心配だからついてきたってトコはあるよ。メーの家来……も悪くはないけど、どちらかと言うと、『ズッ友』、としての意味合いで俺は考えていたかな」
ズッ友。以前にも彼女が口にしたその言葉に、メーは一瞬だけ唖然とした表情を見せてくる。それから自分が苦笑していくと、こちらの反応に彼女は照れ臭そうな微笑を浮かべたものだった。
第二次龍明抗争で、こちらを逃がすための囮となってくれた勇敢なる彼女。命こそは助かったもののその代償は実に大きく、メーはアパートの部屋にて数ヶ月に渡る療養生活を送る羽目となっていた。
彼女は身を挺して守ってくれたため、自分はその恩を返すべくこの数ヶ月は付きっ切りでメーの看病に勤しんでいた。その間の生活は不自由でありながらも笑顔に溢れており、彼女としてもどこか充実とした様子でそのひと時を送っていたものだ。
部屋のベッドを独占したメーは、事ある毎にこちらを呼んでみせた。
ある時は、「カンキ君ご飯!」とこちらを呼び付けたメー。それに対して自分が「俺はご飯じゃないよ」と返答していくと、彼女はとても満足げにニィッと悪戯な笑みを見せてくる。
ある時は、「カンキ君トイレ!」とこちらを呼び付けたメー。それに対して自分が「俺はトイレじゃないよ」と返答していくと、彼女はとても満足げにニィッと悪戯な笑みを見せてきた。
そしてある時は……メーの後ろに座り、抱き寄せながら“彼女の栗”を指で転がした。
寝間着のカーゴパンツに右手を入れて、ショーツの中へと滑り込ませたこちらのアプローチ。そこから“前の口”を入念に可愛がっていき、次第にも中指や薬指を“口”に進入させていく。この動作にメーは堪え切れない甘い声を出しながら天井を仰ぐものだから、自分は持て余した左手で彼女の乳を弄んだりもした。
二日や三日に一度のペースで致していた行為。彼女は気分になると「性処理担当大臣~!」と呼び付けたものだったから、それを合図に自分は手や口などを清潔にしてから、メーの“発散”のお手伝いに励んだりした。
日によっては、ラミアやレダ、シュラといったホステス達が傍にいた環境。それでも彼女らはベッドの様子を一切と気にすることなく、平然としたサマでテレビを観たり会話をしたりしていた。そんなホステスらに構うことなくメーは部屋中に喘ぎ声を響かせて、時には“前の口”で快楽を噴き出したり、“後ろの穴”が中指で
怪我を負いながらも、共に過ごした日々はかけがえのない時間となった数ヶ月。むしろ、これほどまでにメーとゆっくりできた日など、今までに無かった。だからこそ、自分とメーは二人で過ごす療養生活に充実感を見出し、それは共通認識となって、それらひと時を大切に過ごしてきたものだ。
そして本日、久方ぶりとなるメーの外出に付き添っていた自分。目的地は
メーに合わせて、ゆっくりとした動作で扉を開いていく。そうして改装工事中のエントランスへと意識を向けていくと、その先では受付カウンターの前で会話を行う三名の人物がうかがえた。
内の一名は、私服姿で朗らかに会話するハオマの姿が見えている。だが、あとの二名に関しては馴染みの無い男性と少年というコンビだったこともあり、自分は不思議に思いながらメーと一緒にそちらへ歩を進めていった。
途中、三名がこちらへ振り向いてくる。この時にも、男性と少年の外見に意識を向けたものだ。
男性の方は、百八十三ほどの背丈を持つ長身だった。容貌としては、ヴィジュアル系を思わせる、毛先の艶や刺々しさが特徴的である黒髪のショートヘアーに、レダのような褐色肌が印象的だ。また振り向いた瞬間にもオーラとして溢れ出た自信と、それらが織り成す長いまつ毛や力強い黒色の瞳、そして目の周囲にある“くま”のような黒色のラインがミュージシャンを彷彿とさせた。
服装もまた、非常に個性的なものだった。
肩の部分のみを空けたオープンショルダーの、黒色のトップス。その上には着崩すあまりに両腕の関節までずり落ちた黒色のアウターに、ヤンチャにぶかぶかとさせた黒色のサルエルパンツと黒色のブーツという一式がまた、黒統一による陰りが如き無難さを相殺する、非常に派手な外見を演出してみせている。
顔や肩から見える褐色が、男から見ても実にセクシー極まりない。日頃から鍛えているのだろうパンパンだが華奢な筋肉がまた、大人びたとは異なる方向性の色気を放っていたものだ。
おまけに、自信に満ち溢れたイケメンときた。これには堪らず、隣にいたメーが釘付けとなりながら男性の顔を見つめていき、小声で「なにあのイケメンやばー。骨折してなきゃお持ち帰りされてみたかったかも~……」と、割と本気で惜しむ言葉を口にしていく。
一方、男性の隣にいた少年の姿に、自分は以前にも出会ったことがある既視感を伴いながらも、改めてその容貌に意識を向けていった。
百六十一くらいの背丈である、その人物。深々と被った灰色のキャスケットで目元を隠した彼は、スリムな顎の骨格や、キャスケットのツバを右手で摘まむようにしたその佇まいも相まって、どこか他人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
帽子からわずかにはみ出した、乙女色の黄みを含んだ淡い赤の髪。ショートヘアーというよりは、帽子の中でまとめ上げているような髪の毛のはみ出し具合に、ついつい意識が向いてしまう。
服装は、下から開くタイプのストリート風な灰色パーカーを着用しており、それを半分だけ開けることで華奢なくびれやへそを出していた。他、下に着ている黄色のショート丈トップスに、ポケットがたくさん付いた、くすんだ緑色のストリート系ボトムス。後は灰色の運動靴に黒色のチョーカーというファッションがスタイリッシュでありながらも、これによって自分は、やはり以前にも出会ったことがある確信を抱くに至ったものだ。
骸ノ市の存在を初めて知った場面において、その組織と深い関係を持つ人物達として、当時その場にいたラミアとメー、それとこの少年が呼び掛けられていた。
結局、少年は一言も喋ることなく
前回はキャスケットのツバで見えなかった、少年の目。髪の色と同様に、乙女色の黄みを含んだ淡い赤色のそれを細めながらこちらを見遣ってくるその中で、少年にも気が付いたメーは気楽な調子でその名前を呼び掛けてみせる。
「やほー! “ミズキ”いらっしゃ~い。ここに来てたんだ~、奇遇だね~! ……あは、こんな姿でのお出迎えになってごめ~ん」
メーの、悪戯じみた勝気な笑顔。骸ノ市に捕まっていた際にも交流があったのだろうそれに、ミズキと呼ばれた少年はキャスケットのツバで目元を隠しながらも、小さく端的な声音で「あぁ」と返答してみせる。
初めて耳にした少年の声音は、なんとも中性的だった。
声の特徴で言うと、ノアのような性別の判断が付きにくい調子。だが、若干と低めに喋ることを意識しているのだろう浅めの低音ボイスに、自分がどこか不思議に思っていくその中で、メーは松葉杖を見せつけながらミズキとの会話に勤しんでいく。
「ねぇ見てよミズキ~。これ骸ノ市にやられた~。マジ最悪って感じでゲロ萎え~……」
「相変わらずの汚い言葉遣いだな。黙ってりゃ顔は良いんだからよ、もう少し良識と品格を弁えりゃ、此処で働く以外の勤め口ぐらい簡単に見つかるだろうよ」
「いいのよいいのよ。ミズキには絶対にそう思えないんだろうけど、私としちゃ今の仕事は天職のようなもんだからね~。これが包み隠さない本来のメー様の姿だし? むしろ、猫を被らず素のノリでお仕事ができるこの
「ふん。おまえが納得してんなら別になんも言わねぇよ」
二人の会話からするに、ミズキという少年はだいぶ尖った口調で喋る人物であることがうかがえる。
そうして、メーとミズキの再会に意識を向けていく最中にも、間髪入れずにズカズカと歩み寄ってきた男性の存在にこちらはギョッと驚いてしまう。
で、見下げるような視線で歩み寄ってきた彼はフッと口角を上げていくと、次にも男性は両腕を上げては頂点でピタッと動きを止め、そこから一気に腕を振り下ろしては堂々と胸元や両腕を開いてこちらを迎え入れてくる、何とも鮮やかな動作を繰り広げてきたものだった。
一連の動作の後には心なしか、男性の周囲には何か言い知れない自信満々なオーラが漂い出してきた。そんな彼の様子に自分は、内心で「なんかまた、個性的な人が出てきたな……」なんて呟いていくと、ちょっとだけ引いてしまっているこちらに対して男性は、この工事中のエントランスにも反響するような、非常にハキハキとした大声でそれを喋り出してきたのだ。
「諸君!!! ご機嫌は如何かな!!! 私は今! 猛烈に! 最高に気分が高揚している!!! 理由だと? そんなもの決まっているではないか!! 今この時にも、私が尊敬してやまない“先輩”の店が生まれ変わろうとしているんだ!!! この歴史的瞬間に立ち会えて、感動しない輩など存在しないだろう!!! なぁそうとは思わないか諸君らよ!?」
……なんか濃い人が出てきたなぁ。
勇ましい大声に鼓膜が悲鳴を上げていく中、切実な面持ちでそんなことを内心に呟いていく。この光景と共にしてメーは顔を背けるようにしながらも、眉をひそめた表情で男性へとそれを訊ね掛けていった。
「ちょっ、ビックリしたぁ……。なんか第一印象とだいぶ違くない? 実は熱血系なカンジ? それはそれでギャップ的にアリだけどさぁ~……」
イケメンに甘いメー。そんな彼女の言葉を聞き、男性はその場で横に回転するようグルンッとメーへと向きながら答えてくる。
「実は熱血系??? あぁ!! それはもしかしなくても“先輩”のことだな!!!」
「へ? 先輩?」
「そうだ先輩だ!!! 諸君らがオーナーという呼称で慕う“荒巻さん”のことだよ!!! 彼はクールとユーモアを兼ね備えたタフなナイスガイ! だがしかし!!! そのサングラスの奥に秘めた情熱は人一倍と燃え滾り! 探偵としての矜持とオーナーとしての覚悟を胸に今は亡き相方の意思を受け継ぐ、過酷な宿命に立ち向かいし孤高の戦士とも言えるだろう!!! ……皆が口を揃えて彼のユニークな生き様を面白がる! しかし!! 私は先輩の生き様に心底から惚れた!!! その強さに! そのたくましさに! その雄姿に! 私はとてもとてもとてもとてもとぉぉ~~~っても感動してしまったのだ!!!」
とにかく声が大きく、身振りも激しい。喋っている間も男性は広げた腕に力を込めていき、声を上げる度にその衝撃で両腕が上がっては下げてを繰り返していく。そうして吠えるような調子で感動を語っていくと、次にも彼は右手を胸に添えながら、突然キリッとしたヴィジュアル系の鋭い微笑で自己紹介をし始めたのだ。
「今気付いたが、ところで私は諸君らと初対面だったね。ならば!!! 先輩を慕う者同士この感動を分かち合うべく、まずは自己紹介でもしていこうか!!! 私の名は“
ずっと腹の底から繰り出される声音と共にして、羅生院と名乗った男性は次にも両腕を広げて神々しい佇まいで自己紹介してみせた。
これに対し、「ヴィクトリアに続いて、新しい人が続けてやってくるなぁ……」という印象を抱いた自分。だが、羅生院の自己紹介を受けた時にもこの脳裏には、以前にも荒巻が口にしていたそれらの言葉がふとよぎってくる。
『今回、銀嶺会と鳳凰不動産の抗争に、骸ノ市が介入してくる可能性が示唆された。だが、ヤツらの動向がイマイチと不安定でな。っつーのも……さっきの話にも出てきた、骸ノ市を調べる“オレちゃんの後輩ちゃん”曰く、ヤツらは鳳凰不動産に加担している様子が無い、と言うんだ』
『……全て、鳳凰不動産の筋書き通りに物事が進んだのさ。少なくともこいつが、オレちゃんとユノちゃん、それと、“オレちゃんの後輩”で骸ノ市を追い続けていた探偵の三人で出した見解だな』
そう言えば、骸ノ市の話題が出る度にオーナーが『後輩』という言葉を使っていたような……?
前々から聞いていたからか、薄らぼんやりではあったものの納得していく自分。それから羅生院と向かい合っていき、こちらから訊ねる形でそれを問い掛けてみた。
「あの、オーナーからは『骸ノ市を追い続けている後輩の探偵』という人物のことをうかがっていたのですが……もしかして、あなたのことでしょうか?」
この問い掛けに羅生院は、誇らしげな表情を一層と強くしたのであろう、パァッ、としたとびっきりの喜びを見せながらそう答えてくる。
「先輩が、私のことを話してくれていたのか……!!! なんという光栄の至り……!!! あの先輩が私という存在を認めてくださったその心遣いに、感極まるばかりだ……!!!」
なんか、テンションを高くしたユノさんみたいな喋りだな。
冷静に感じた印象を胸に留めながらも、羅生院を見遣っていく。その間にもメーは理解したように「あ~」と頷いていくと、彼女は羅生院へとそれも問い掛けたものだった。
「それじゃあ、骸ノ市で売り払われたミズキを助けてくれたのもお兄さんってこと?」
メーの言葉を耳にして、自分はまたしても脳裏に過去の情景を思い浮かべていく。
それは、当時のラミアとメーが口にしたセリフだったような……。
『……ウチとメーさん、それと、そちらにいらっしゃるコの三名は、骸ノ市出身の元奴隷です』
『その子は、ユノさんがカチ込みする前に売られちゃって、既に骸ノ市からいなくなってた。でもね、その売られた先でも色々とあったみたいで、最終的には骸ノ市を調査する探偵さんに拾われたんだ。……今でもその子は探偵さんに面倒を見てもらっていて、しかもその探偵さんは荒巻オーナーと同じ事務所の後輩? とかだから、大丈夫、安心できる人』
第二次龍明抗争が起こる前、このエントランスに訪れていた少年。無口な彼も交えたその会話において、骸ノ市で売られた少年の行方についてメーが話をしてくれていた。
その少年こそが、ミズキのことだった。
羅生院の隣で静かに佇むクールな姿。右手でキャスケットのツバを摘まみ、それを下げて目元を隠している少年の姿を見遣る最中にも、羅生院とメーが会話を行っていく。
「まさしく!!! ミズキという人物は、同情するのも心苦しいほどに冷酷な境遇に晒されていた、忌まわしき宿命に翻弄されし不憫な子だった。私がミズキと巡り合えたのも偶然に過ぎない。しかし……ミズキを保護できて本当に良かったと思っている。この子が提供してくれた情報を頼りに骸ノ市の調査を進めることができたものだし、何よりも……身に覚えの無い不幸を被る罪無き子供を救うことができたんだ。……骸ノ市の毒牙から救出した現在、ミズキなりに幸せだと思える人生を歩んでもらえるよう私は常に最善の限りを尽くしていてね、今ではこの子が望んだが故に、唯一無二の助手として私の仕事を手伝ってもらっているんだ」
「へぇ……! そうだったんだ……! 良かったねミズキ! 骸ノ市に捕まっていた頃の姿を知っているからさ……あんなに自分の境遇に悲観して、泣くことも耐え忍びながら、必死に歯を食いしばって生きてきたあの生活から解放されて……今は納得のいく自分らしい普通の人生を歩めているみたいで……本当に良かった……ッ」
他人に共感しやすいメーが、ミズキへの同情で目を潤ませていく。これに少年は、キャスケットのツバで目元を隠しながらも「……余計なお世話だ」と口にするのだが、その声音からはどこか戸惑いのようなものを感じさせながら、少年は遣りようの無い感情があまりにそっぽを向いてしまった。
名前や姿だけは、以前から登場していたミズキと羅生院。その二人が今になって現れた状況に、なんだか感慨深いものさえ抱いていく。
その中で、こちらの様子をずっと眺めていたハオマがもらい泣きしながらも朗らかに喋り出してきた。
「ぅぇん……っぐすん……なんてイイハナシぃ……!! ズビンッぴえん…………ハッ! それはそうとですよ! 既に荒巻さんからお話をうかがっておりましてね。カンキ君、メーちゃん。実はこちらのミズキ君に、この
あまりにも唐突な発表に、自分とメーは揃って「え?」と声を出していく。この反応にハオマはポカーンとした面持ちで「へ?」と返してくるものだったから、羅生院がフォローに入るようにそれを説明してくれた。
「私とミズキは以前から、骸ノ市を追い続けていた。私に関しては、十数年もの歳月をかけてその行方や実態を専門的に扱ってきたものだったがね。しかし、先日の第二次龍明抗争によって、骸ノ市はほぼ崩壊寸前のところまで衰退した。今や鳳凰不動産が勢力を増しつつある危機的状況下に置かれているわけだが、同じく脅威を孕んでいた骸ノ市が既に警察の手で終焉を迎えつつあるものだからね。私とミズキの使命は今現在、着実に果たされつつあるとも言えるだろう」
「な、なるほど……?」
「そこで、我々には余裕が生まれてきた。余裕といっても、他の調査にあたる意味での余裕なんだがね。それで、私も先輩のお手伝いとして鳳凰不動産及び、それと同等の力を持つであろう悪が蔓延る葉山グループの調査へと乗り出そうとしている。尤も、私は先輩から独立して、単独での調査に臨んでいくつもりだ。……そこでだ!!! その調査にあたって、我々は連携や連絡を取るための手段が必要となってくる。もちろん、スマートフォンなどを使ってもいいのだけどね。だが、ハッキングなどによって調査結果のデータや会話の内容などを敵方に知られてしまっては非常にマズい。そこで先輩は閃いた!!! ならば、口頭によるやり取りを行えばいいじゃない、と!!!」
「ほ、ほうほう……?」
「そのやり取りをするにあたって、私と先輩を繋ぐ中継点となる存在が必要となる。ここでミズキの出番というわけだ!!! ミズキには私と先輩の下を行き来してもらい、双方から得た情報を運ぶ任務に就いてもらう予定でいる!!! 云わば、情報の運び屋とも称せるだろうか。そして!!! その膨大なる情報を運ぶミズキが滞在する拠点として、こちらの
「確かに、
ふとした疑問を口にするこちらに対し、ハオマが補足するよう言葉を付け足してくる。
「それがね、
「え……?」
「圧倒的、従業員不足……ッッ!!!! みんな怪我とかしちゃって、働ける従業員が一気に減っちゃってねー……。でもでも、改装はもうじき終わる予定だし、それに合わせてリニューアルオープンの出血大サービスイベントも控えているものだから、とにかく我々には人手が必要とされているワケです!!」
「な、なるほど。それで、彼には中継点と従業員を兼任してもらおうという話なんですね……?」
「そうそう! 話が早くて助かるよー!! そういうことでミズキ君には、クリス君のようなボーイとしてここで働いてもらう予定でーす! 仲間が増えるよ! やったねーパフパフ!! それと、人手不足だから私もホステスとして駆り出されます! カンキ君に指名されたら、お姉さんたっくさんサービスしちゃうから! 私のこといっぱい指名してね? 約束だよっ!? ……あぁそうだっ! あとねあとね! ヴィクトリアちゃんにもホステスとして働いてもらうことになったから、カンキ君バックアップよろしくね!!」
え。
瞬間にも巡ってきたこの感情は、寒気を催す不安からなるものだった。
先日にも邂逅した、日本屈指の財閥『霹靂一家』のご令嬢。日本で最も裕福な家庭で育てられたという彼女は本来、保護対象として匿われているはずなのだが……?
という考えが巡ってくると同時にして、ヴィクトリアにも頼らなければならないほどの人手不足に直面しているという店側の必死さも伝わってきてしまう……。
なんだか、一気に心配になってきた。
先の見えない
改築工事も行われ、新メンバーも加わった
新しく出会った羅生院という人物とも、今後は交流する機会に恵まれることだろう。
今も右手を腰に当てた堂々とした佇まいで、自信満々な微笑みを浮かべる羅生院。褐色肌のヴィジュアル系男子は次にも頷いてみせると、彼は踵を返すようにしながら一同へとその言葉を掛けてきた。
「期待と覚悟に満ち、活気に溢れたサマはまさに人間が宿せし奇跡の賜物だ! さすがは先輩が集めた人員なだけはある!!! かの柏島先輩の相方として各地を奔走した先輩が、直々に見定めて配属した洗練されし面々だ。安定した実績に安心の実力、そしてアンダーグラウンドなりに人間の生き様を謳歌する
とても誇らしげにそれを喋り、出口へと歩き出した羅生院。共にしてハオマが「そろそろ調査に行かれますか?」と訊ね掛けていく脇で、佇んでいたミズキは突如と彼の下へと駆け出しては右腕を伸ばしていく。
まるで、心から焦るような動作だった。
直ぐにも羅生院のアウターを掴んだミズキ。そうして彼の足を止めた少年は、低く小さい声音でありながらも不安げに言葉を口にしてくる。
「兄さん……」
「大丈夫さミズキ。先輩が直々に厳選した、こだわりある由緒正しき従業員達なんだ。経緯は何であれ、
「やだ……。置いていかないで……。もう、独りになんかなりたくない……」
「案ずるな。ミズキは独りじゃない。この店には、多くの仲間達がいるのだからな」
「おれが信じられるのは兄さんだけなんだ……!」
両手で羅生院のアウターに掴まり、決して離そうとしないミズキの意思。これに羅生院は優しく微笑みかけていくと、少年が被るキャスケット越しに頭を撫でながら、彼は言い聞かせるようにそれを口にした。
「離れ離れになったとしても、ミズキは未来永劫と私の助手であり続ける。どれだけの距離が離れようともその事実は覆ることはなく、互いの共通認識として、精神的にずっと繋がり続けるんだ。……調査が一段落した際には、その都度ここに顔を出しに来る。それまでは独り立ちの練習として、先輩の店でミズキなりに努力してみてくれ。そうして成長したミズキの姿を私に見せてもらいたいんだ。そしてどうか、私にそれを言わせてほしい。『一人の力でよく、ここまで頑張ってこられたね』、と」
「兄さん……」
これまでのクールな面持ちから一転として、不安に苛まれた儚げな声音で返答したミズキ。少年の反応に羅生院は眉をひそめながら頭を撫でていくと、彼は最後にミズキの肩を優しく叩き、「寂しくなったら、電話をしてくれていい! そこに私の姿は見えずとも、私は常に、ミズキを傍で見守っているからな!」と言葉を口にして、少年の手をゆっくりと離しながら出口へと歩き出していった。
去り際に、右手を掲げてさよならの合図を送ってくる羅生院。こうして離れ往く彼の背をまじまじと見つめていたミズキは、次第と見えなくなった扉越しの羅生院を見つめるようにして、その場で虚しく立ち尽くしていたものだ。
キャスケットのツバを摘まみ、俯いていく少年。そんなミズキへとメーとハオマが歩み寄っては、なだめるように言葉を掛けていった。
……改装工事は直に終わる。あとはヴィクトリアとミズキの源氏名といった手続きが済めば、リニューアルした