俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
紅葉し始めた龍明の街。いつもの駅前でバスに乗り、三時間ほどかけて到着した登山口の駐車場に自分は降り立っていく。
雲が泳ぐ晴天の下、多くの車が停まる広大な敷地と、駐車場を囲うように並ぶ建物の数々。主に登山客が訪れるその観光名所は登山コースといった山の案内から始まり、一昔前の街並みを楽しめる通りや、食事処や土産のコーナー、植物園といった様々な施設が見受けられた。
山の歴史を学べる博物館と、その前に佇んでいる、ミノムシに手足が生えたようなマスコットキャラクター。今もそれが家族連れの団体へと手招きしていく光景を何となく眺めていると、次にもバスから降りてきた私服姿のノアが声を掛けてきた。
「あぁ! なんて鮮やかな紅葉の景色なのだろうか! 麓を観光するだけでも丸一日潰れてしまいそうなくらいに美しい光景なのに、ボク達はこれからゴンドラに乗って山頂付近まで移動してから、秋の風物詩を物語る大自然のキャンプを堪能する予定になっている!! 一泊二日で泊まり込むそのひと時を、柏島歓喜と共にすることができるこの喜び……! あぁ、ボクはこの昂る気持ちを一体、どう表現すれば良いのだろうか……!?」
ストリート系のファッションをしたノアが、謳うように熱弁しながら持ち上げた右拳を震わせていく。その様子を自分は苦笑しながら見遣っていく中で、少女はこちらへ振り向きながら右手を差し伸べ、甘いマスクからなる中性的な声音で言葉を続けてきた。
「柏島歓喜!! ボクは改めて、キミと同伴できて良かったと思っているよ! ……抗争前に交わした約束を果たすことができたんだ。今も生き永らえ、キミと喜びや感動を分かち合える
「何だか締め括りみたいな雰囲気が出てるけど、むしろ同伴はこれからだからね。……俺も、ノアと同伴する約束を守れて本当に良かったと思ってる。だから、今回の同伴は精いっぱい楽しもうな!」
「あぁ!! 前回の遭難した同伴も中々にスリリングで楽しむことができたからね! キミと一緒ならば、本日のキャンプツアーも忘れられないひと時になること請け合いさ!!」
「いや、前回の遭難した同伴はさすがにハラハラしかしなかったけどね……」
バードウォッチングと言って、二人で山にお出掛けした前回の同伴。初となるノアとの外出で非常にアクティブな体験になるだろうと予感していたものだったが、アクティブどころか命懸けのサバイバルになるとは当時は思いもしていなかった。
あれ以来、ノアの行動に対してユノは厳重な注意を払うようになった。
ノアがこちらを連れ出そうとした際には、必ず他の者も同行させることで少女の行動を監視したりなど、しばらくはノアと二人きりでお出掛けという機会に恵まれなかったものだ。ノアもそれを承知した上で、自分らはデートとまではいかない外出を楽しんだりしていたのだが、つい先日になってとうとう、十分な反省がうかがえるという理由で、ノアは二人きりのお出掛けが許された。
自分もノアも、いつ死んでしまっても何らおかしくない状況にある。特にノアは、自らの命を捧げる覚悟を以てしてこちらを守ってくれていた。
今回の赦しは、そんな日々に対して悔いが残らぬよう過ごしてもらいたいというユノの気持ちが込められていたのだろう。前回の件を深く反省していたノアの様子も鑑みて、ユノはようやくと二人きりでの外出及び同伴を許可し、本日も自分らのことを快く送り出してくれたものだった。
ただ、個人でキャンプへ出向くのではなく、専門的な人間が案内してくれるツアーなどの形式でキャンプをしてくるようユノは念を押してきた。これをノアは快諾し、自分とノアの二人でどんなキャンプをしようか話し合いながら予約を取ることで、今に至る。
お互いに念願でもある、久方ぶりの同伴。バスの前で佇むこちらへとノアはさり気無くすり寄ってくると、次にも少女はこの左手を取るなり、王子様が如き甘いマスクの自信満々な表情から一転して、年相応の乙女チックなしおらしいサマで頬を赤らめながら喋り出してきた。
「ここで立ち話をしていても何だろう? さぁ、柏島歓喜っ……ボクと一緒に、集合予定となっているゴンドラ乗り場へ赴こうじゃないかっ……」
「え?? あ、うん……。そうだね……?」
声音はそのままに、乙女な一面を発動したノア。今まで困惑混じりに照れていたはずのそれが、今回はしどろもどろになるどころか照れながら平常運転を維持してみせている。
デレデレな調子で、普段通りの王子様口調で喋るノア。共にして手を繋いだ少女が歩き始めたものだから自分もそれに合わせて歩き出していき、そうして足並みを揃えたこちらへとノアは言葉を続けてくる。
「なぁ柏島歓喜っ……。傍から見たボクらはきっと、恋人同士のように映っていることだろうっ……」
「そ、そうかもしれないね……?」
「キミとしては、ボクとはそういう関係で見られるのは嫌なものかなっ……?」
「そんなことはないよ……!! 何だったら、めちゃくちゃ嬉しいくらいだ」
「そうか……! そうかそうかっ……フフフ。ボクが良きパートナーであることに、キミは何の躊躇いを持たずにいると思っていいんだねっ……! それはつまりっ、キミはこの瞬間だけでも、ボクのことを愛人として迎え入れてくれたと解釈しても良いのだろうっ……?」
もはや、恥ずかしいというには堂々としたサマでそれらを口にし始めたノア。
まさか羞恥を克服したとでも言うのか。
患っていた強い感情に振り回されず、まるで当然といったサマで話し続けてきたノアの調子。得意げな表情で頬を赤らめてきた少女は依然としてその足を進めていき、周囲へと自慢するかのように人前で手を繋いでみせながら、到着したゴンドラ乗り場でも迫るようにこちらへと好意を伝え続けてくる。
段階を踏むように、着実に自身の恋情を打ち明け始めていたノア。もう、未知だった淡い気持ちに動揺することもなく、むしろその甘酸っぱい感情を武器として扱うように一気に距離を詰めてきた少女の大胆さには、その対象としても実に驚かされたものだった。
それ以前にも、バスの中で既にノアからのアタックは開始されていた。
ノアがお手製のおにぎりを作ってくれており、きちんと包みで渡されたそれら二つを受け取りつつ、お礼を口にした自分。これに対してもノアは乙女を発動し、頬を赤らめながらも右手を胸にあてがいながら誇らしげに「お礼など不要さっ……! これは、キミに対する誠実な想いを形にしただけに過ぎないからねっ……! なに、所謂『愛妻弁当』というものだよっ……!」と返答してみせていた。
何気無く流してしまった少女のアプローチだったが、ノアの行動力が体現したかのような積極性はこの先でも遺憾なく発揮されていく。
ゴンドラに乗り込んだ自分らは、案内役やツアー客と共に揺られながら山の上を渡っていく。その紅葉で紅くなり始めた秋の風物詩を眺めていく最中にも、ふと目についたのだろう双子のような同じ高さの山を見て、ノアがそんなことを口にしたものだ。
「柏島歓喜っ……! あの奥にある山を見てくれっ。まるで、今も寄り添うボクらみたいじゃないかっ……? ボクらはいずれ永遠の誓いを交わし合い、お揃いの指輪でも着けるのだろうかっ……今から楽しみだなっ」
元から自分の世界に入り浸る傾向があるノアだけど、そこに恋情が合わさるととんでもない化学反応を引き起こすんだな……。
とか内心で思っている間にも、ノアの言葉を聞いていたツアー客のおばあさん達は微笑みながら「あらまぁ」と言って、こちらを温かい目で見遣ってきた。そんな視線を受けて自分は苦笑いを浮かべてしまいながらも、ノアには「あ~……そうかもしれないね~……?」と無難に返答することでゴンドラの旅を乗り切っていく。
ゴンドラを乗り終えて、頂上付近に到着した自分達。ウサギのようにぴょこぴょことした足取りのノアと一緒に五分ほどの徒歩で案内されていくと、その先に広がっていた光景に自分とノアは思わず感嘆を零していった。
一面の紅葉と、青空を映し出すほどに透き通った鏡のような湖。雲の白色が混じる透明な水面は紅葉の鮮やかな色合いも含むことで、秋という季節を一層と感じさせる華やかな紅の湖を演出していた。
湖の付近には、現地のスタッフによって既に用意されていたテントの数々がうかがえる。更にはバーベキューセットや焚き火台などといったキャンプの醍醐味も揃っていたことから、至れり尽くせりな光景に心が躍り始めていたものだ。
誰でも気楽に参加できるツアーなだけはあってか、自前で必要な物が特に指定されていない今回の旅。それは料理で使用する食材から、寝袋や着替えなども既に用意してくれている好待遇のプランであったため、自分とノアはスマートフォンや財布以外を持たないほぼ手ぶらに近い状態でこちらに訪れていた。
今も目の前に広がる湖を傍らに、自分らが泊まるテントへと案内されていく。そうして張られた布の住宅を自分は眺めていると、案内役が去っていったそのタイミングで乙女なノアがこんなことを言い出してきた。
「柏島歓喜っ……。ここが今日の、ボクらの愛の巣みたいだねっ……」
「愛の巣って……。さすがにここで“する”のは、周りにバレそうだからマズいと思うけど……」
「声を出さなければ大丈夫さっ……。今日ボクはここで、柏島歓喜と二人きりで愛を育むんだっ……。今夜はどのような愛の形を見せてくれるのだろうかっ……今から楽しみだなぁっ……!」
内股になって、ムズムズとした様子のノア。そしてワクワクした面持ちのままテントへと入っていく少女の背を見送ってから、自分は内心で「参ったなぁ……」と呟きながら頭を掻いて立ち尽くしてしまった。
……ノアはもう、こちらに対して明確な“好意”を抱いてくれていると考えていいのかもしれない。
周囲には、結婚について冗談半分で考え合ったレダであったり、こちらを義理の兄のように慕ってくるシュラのような距離が近いホステスがいたものだ。しかし、彼女らはいずれも恋情というよりは友情からなる好意を向けてきており、そんな自分らは所謂『友達以上恋人未満』という関係性でバランス良く成り立っていた。
だが、ノアに至っては友情よりも恋情が
つまりは、そういうことなのだ。こればかりは男として心からありがたいと思えた反面、その肝心の相手が日本屈指の極道組織を率いる銀嶺会トップの愛娘。この現実を前にして、果たして素直に喜んでいいのかどうか分からずにいた自分は、現在も少女から寄せられる淡い感情に複雑な気持ちを抱くことで、同伴中もずっとそれについて悩み続けてしまっていたものだった。
少女の真意を、相手方である自分は中々受け止められずにいる。この一方的な状況を恋愛と言えるかどうかはともかくとして、自分は今、ノアという好意的なホステスと過ごすひと時を大事にしていきたいとは考えていた。
自由時間となったキャンプ地において、周囲がバーベキューや撮影会などで盛り上がっていく中、ウサギのようにぴょこぴょことした足取りで付近の木へと駆け寄ったノア。その様子を見守るように歩きで追い掛けていく自分の視界には、屈んでは木の根元に注目し始めた少女の背が映し出されていく。
歩きでゆっくりと追い付いた頃には、既に拾っていた“キノコ”をまじまじと見つめていたノア。しっかりとした茎にふっくらとした先端のそれを少女は暫し見つめていくと、次にもノアは口を尖らせた真剣な眼差しで、ふと閃いたようにその言葉を言い放ってきたものだ。
「…………! “柏島歓喜”……っ!」
「こらこら」
手を乗せるように、ペシッと少女の頭を優しく叩いていく。これにノアは反応を示すなり、キノコを“息子”に近付けて見比べようとしてきたものだったから、自分はそれを取り上げるようにしてノアから預かった。
バスを降りてからは、乙女なノアに振り回されっぱなしだった自分。しかし、キャンプ場に到着してからは持ち前の甘いマスクで、ノアは周辺にいるツアー客との交流にも勤しんだものだ。
バーベキューの準備に手間取っていた、四名ほどの若い男性グループ。その様子を放っておけなかったのだろうか、次にもそちらに顔を出したノアがボーイッシュな活気で手助けに入っていくと、そのミステリアスな存在感で瞬く間に男性らを惹き付けては、あっという間に打ち解けて問題事も解決してしまった。
わずかな時間で、手懐けたように指揮したノア。その中性的な存在は女々しくもたくましく、初見では性別もあやふやであったことだろう。しかし、ノアを女性と知って一層と魅了された男性らがノアを口説いていく中で、少女は慣れた調子でお誘いを断っては次なる団体の下へとぴょこぴょこ移っていった。
少女が辿り着いた先には、焚き火を使用して飯ごうや鍋を温めている父親と娘の親子が存在した。そこでは、五歳ほどのぐずった娘が帰りたいと言って父親に泣きついており、父親は父親で焚き火を見ながら娘の相手を行ったりなど、とても忙しそうな様子を見せている。
そこに、ノアは助っ人として顔を出してきた。
積極的な姿勢で娘へと優しく話し掛けていくノア。その不思議な喋りがアニメのキャラクターみたいで面白かったのか、ノアが話し掛けるなり娘は機嫌を直したように泣き止んだ。これに父親がお礼を伝えてくる中で、ノアは焚き火でカレーライスを作っていることを知り、且つ、父親が料理に慣れていないという話をうかがってからというもの、ノアは自信満々に手助けを名乗り出てその手伝いへと取り掛かり出したのだ。
ノアの裁量により、野菜や肉が手早く処理されて鍋の中へと入れられていく。それから味見も行っては付近で焼肉を行う他の団体へと顔を出し、そこからカレーライスに見合った調味料などを借りることで必要な材料を見繕い、ノアは自身の納得がいくカレーライスを完成させた。
そのカレーライスは、親子に大好評だった。
胸を張り、得意げに喋るノア。そんな少女らの下へと、先にも顔を出した他の団体がスパイシーな香りにつられて訪れてきたことで、ノアは皆に振る舞うようにそのカレーライスを渡し始めたのだ。
意識せずとも、周囲を巻き込むノアという影響力。少女が持つ健気な活力は老若男女を魅了して、一つの輪を作り上げていく。
皆を家族だと謳い、今だけの関係も大切に扱うノアの様子。少女の背景にはヤクザ組織の文化が根付いていたものだったが、ノアという人間に関して言えば、その仲間想いな後天性の性格はプラスの方向に働いていたことだろう。
ツアーのスタッフとも打ち解けたノアは、気付けばキャンプ場を奔走する人気者となっていた。
そんな様子を遠くから眺めていく自分。個人的には同伴という
環境などのしがらみに囚われず、ただ楽しそうに過ごしているノアをずっと見ていたい。
うら若き、恋する乙女。華やかな人生を謳歌する少女の生き様を前にして、自分もまた改めてノアに魅了されるようその様子を見守ったものだった。
時が流れ、夜を迎えた現在時刻。
立てられた木製の柱には、照明が括り付けられていた。それがキャンプ場に複数とうかがえており、安全を確保するには十分の明かりが灯っている。
夜ならではの遊びとして、焚き火を囲いながら談笑やトランプに耽るツアー客。スタッフらもお疲れな様子でミーティングを行い、その脇では望遠鏡で天体観測を行うマニアな客も見受けられたものだった。
そんな空間の中、自分はテントの前で呆然と佇んでいると、あちこち行き交っていたノアが息を切らしながら駆け寄ってきた。
少女との同伴であるお出掛けだが、むしろ一緒にいる時間の方が少なかったな。それを思いながらも「おかえり、ノア」と迎えていくと、ノアは汗だくとなった健康的な笑みを浮かべつつ、ちょっと心配する調子で喋り出してきた。
「柏島歓喜! すまなかった! ボクとしたことがうっかり、キミのことを放置してしまったよ!」
「いいよいいよ、気にしないで。俺としても、ノアが活躍する姿を見ていて何だか気持ち良かったからさ」
「しかし、ボクはキミの護衛を放棄したとも言えるだろう……! あぁ、またユノに怒られてしまう……! またしてもキミと二人きりで過ごす穏やかなひと時を制限されてしまったらどうしよう……っ」
「まぁ、結果的にこうして無事でいるからさ。今からそれを意識していければ、たぶん大丈夫……なハズだよ。周囲のために頑張ったその話を正直に伝えれば、ユノさんもきっと納得してくれると俺は思っているし」
「柏島歓喜……」
心配や不安が巡るのだろう複雑な表情を見せたノア。だが、少しして納得するよう頷いてくると、次にも少女はそれを言い出してくる。
「そこで、キミに一つ頼みたいことがあるんだ」
「どうしたの?」
「それはだな……。その、何て言うのかな……」
「?」
「っ……ふ、付近に共用のお手洗いが設置されているのは知っているだろうか?」
「あぁ、キャンプするお客のために設けられた共用トイレね。俺も利用させてもらったよ」
「しかしだな……今現在、少々混み合っているようで、空きそうな気配が微塵にもうかがえなくてね……」
「あー、そろそろ就寝する人達も出始めるだろうから、ちょうど今が一番混む時間かもね」
しかしそうなると、利用したくても利用できない場面が出てくるということだよな。
内心で何となく思い、そうなったら大変だなぁと他人事のような感想を抱いていく自分。だが、その手前では今も内股になってもじもじとするノアの様子がうかがえて……。
「……っ柏島歓喜」
「え、まさか」
「っ…………キミを一人にするわけにはいかない! だから……っだから! このノア、恥を忍んで頭を下げるとするよ! その、つ、ついてきてくれないだろうか……! ……ひと目の無い場所までっ!」
「ま、マジか……っ」
遠回しに、自然界に解き放つ行為の実行を知らせてきた少女のお誘いに、自分は思わず唖然としてしまった。
だが、これでノアのダムが決壊してしまったら、それこそ大惨事となってしまう。
取り敢えず、自分は周囲の視線をうかがいながらノアの背に手を添えていく。それから誰も見ていない隙を見計らって少女を暗がりの山の中へ連れていくと、二人は明かりの無い不安定な地面を早歩きで巡り出したものだった。
そう言えば、懐中電灯が支給されていたな。
ふと思い出した自分が、上着のポケットから照明を取り出していく。それで目の前を照らしながら暫し歩き進めていくと、ちょうどキャンプ場の陰になりそうな大木を見つけたことで、自分はそちらへノアを移してから言葉を掛けていった。
「ひとまず、ここで済ませちゃおうか。ウェットティッシュはある?」
「く、配られた物がボクの手元にあるから、心配には及ばないさ……っ」
「おっし。それじゃあ……あれだ。俺は適当に見張っているから、今の内に済ませちゃって」
「柏島歓喜……。本当にすまない。キミをこんな穢れた雑用に付き合わせてしまうだなんて」
「いいからいいから」
「ついでにだが、安心してもらいたい。ボクが今催しているのは……小さい方なんだ」
「そ、それも……それもいいから!」
懐中電灯を手に持って、ノアから背を向けるように佇んだ自分。直後にも背後からは衣類を脱ぐ音が聞こえ始め、一緒に脱いだのだろうパンツとショーツを大木の根本に置く音と共にして、少女のしゃがんでいく気配が伝わってくる。
……なんでだろう。どうして俺も緊張しているんだろうな。
女性の“用”に付き添うという行為に、言い知れない羞恥が巡ってくる。今も不思議とドキドキさせた心臓が静寂の空間でドックンドックン音を立てていく中で、この脳裏には紳士にあるまじき
……そんな、“小さい方”と言われると……ちょっとだけ気になっちゃうよなぁ。
背徳的な行為だからこそ、ついつい意識してしまう。現に、耳を澄ませていた自分も確かに存在しており、その相手がミステリアスなノアであるという事実が一層と、男の本能をくすぐってきた。
……見張りもしているし、ちょっとくらいなら……いいかな……?
ほんの、ほんのチラ見程度。視界の隅っこだけだから。そう思いつつ、バレないよう顔を少しだけノアの方向へゆっくりと動かしていき、本当に一瞬だけ、視界の隅っこで少女の姿を収めようと視線を向けていく……。
……だが、やはりとも言うべきか。顔を上げていたノアと目が合ってしまった。
何なら、こちらをずっと見つめていたのだろう少女。今も下半身を丸出しにしてしゃがむノアの姿が映ると同時にして、自分は目が合った驚きで思わずこの身体を少女へと向けながら退いてしまい……。
完璧に見てしまったこちらの反応に、ノアはしどろもどろに言葉を口にしながら、必死に誤魔化すよう両手をバタつかせてきた。だが、その動作でバランスを崩した少女はしゃがんだ姿勢のまま後ろへすってんころりんと転んでしまったことによって、自分もまた咄嗟にそちらへ駆け出しては、反射的に伸ばした両腕をノアの背に回すことで少女の身体を何とか受け止めたものだった。
その際に、自分は懐中電灯を落としてしまったらしい。
眩いほどの照明が、二人の下へ向けられる。これに自分が目を閉じ掛けていく中で、転んだ勢いでおっぴろげたノアの両脚と、その照明の中央にて最も明るく照らされていたであろう少女の“聖域”からは、直後にも上向きの蛇口を捻ったかのような“聖水”が流れ出してしまったのだ。
……空を切る清涼な音と、地面の葉に打ち付けられる水の音。
もう止まらない。両脚を全開にした姿勢のノアは、羞恥のあまりに両手で顔を覆い隠してしまう。その間も“排泄”は収まらず、今までずっと我慢してきた分のありったけが放出されていた。
これには自分も、放心に近しい面持ちで見守ることしかできずにいた。
何よりも面子を大事にする少女。だが、今この瞬間においては、これまでの人生で一番とも言えるだろう恥辱を晒したことだろう。
両手で隠した顔からは、喉なのか口なのか分からない「きゅぅ~……っ」という空気の抜けるような音が聞こえてきた。そんな、共にして顔を真っ赤にした少女の様子を前にして、自分は不本意ながらも相当な興奮を覚えてしまったのだ。
直にも、“聖水”の勢いは収まった。
……地面に落ちた懐中電灯は、残酷にも微動だにせず少女の“聖域”を照らし続けていく。このショッキングな現実に身体が動かずにいたのだろう少女の様子をうかがいつつも、自分は恐る恐ると優しく言葉を投げ掛けていった。
「……ノア。もう、大丈夫そうかな……?」
「…………っ」
「えっと、ウェットティッシュで拭こうか……?」
「…………っ」
コクコク。無言で頷いてきた少女の反応を確認してから、自分は付近に置かれていたウェットティッシュの袋へと手を伸ばしていく。
手にした袋から、湿った布を抜き取った。それから自分は少女の“聖域”へと手を伸ばし、水晶が如くツルツルとした“表面”と、幼ささえ感じさせるふっくらとした“丘”へと触れることで、その布で水滴を拭き取り出していく。
……この暗がりでもなお、細部まで行き届いた少女のケアを視認できた。
一切の妥協を感じさせない、非常にデリケートな部位のお手入れ。その色白の肌がまた健康的な背徳感を漂わせ、本質は健気である乙女な柔肌の、前から後ろに渡る股全体をウェットティッシュで拭い続けたものだった。
その間も、少女は両手で顔を隠し続けていた。
少女の様子に、自分は「ごめんね」と謝罪の言葉を掛けていく。これに対して少女はコクコクと頷いてみせたことから、自分は安堵した心持ちで“聖域”の清掃を終えていくのだが……。
清潔となった“聖域”から手を離し、ウェットティッシュをひとまず地面に置いていく。それから自分は滾る本能のままに頬を赤らめていくと、次にも無意識と伸びたこの手のひらで、清らかとなった少女の“聖域”を撫で掛けてしまったのだ。
瞬間、少女は身体をビクッとさせながらも、艶めかしく「ぁんっ」と喘いでみせた。
本当に、こういうところが可愛らしい……。そんな内心が生まれ出でるに至ったノアに対する欲情が、一層と手の運動を活性化させていく。こうして本能に駆られた感情のままに繊細な柔肌を入念に愛でていくと、間もなくとして顔を出した“突起”を目にして、自分は待ってましたと言わんばかりに触れてから指の腹で転がすように可愛がってしまう。
ノアは、良くも悪くも常にアクティブなタイプの女性だ。少女との行為において最も特徴的とも言えたのが、その場所は常にベッドの上ではないということだろうか。それは外出先のクローゼットの中であったり、キャンプ場から離れた森林地帯といった、主に寝床以外を中心とした非常に背徳的なシチュエーションにおける行為がほとんどの割合を占めている。
ムードで気持ちを高め合ってから至るのではなく、思い立ったら即行動という突発的に発生するイベントとして考えた方がいいだろう。それも、場所を問わないある意味での行動力や柔軟性が仇となり、出先の建物内でゆっくり休んでいようが野外を歩いていようが、いつ如何なる時でも少女に食われる可能性を孕んでいる。尤も、そんなリスクを意に介さないマニアックな嗜好の持ち主であれば、少女との相性は抜群とも言えるのかもしれない。
また、少女は非常に自身の面子を気に掛けている。特に知人といった少女を知る人間に対しては、自身の情けない無様な姿は見せられないというプライドが常に存在しており、そんな自身のあられもない格好を見られたくないという一種の恐怖心が働き過ぎるがあまりに、少女は結果的に一層もの性的な興奮を覚えてしまう傾向がある。そのためか、『快楽に敗北したこの姿を見られるかもしれない』という可能性が存在する限り、少女は自滅するように、勝手に快楽で狂い悶えてしまうのだ。
行為を致すにあたって、相手方には自身のあられもない姿を見られてしまうものだ。それを意識するだけでも興奮を覚えるノアは、こちらから手を出さずとも勝手に胸部の“突起”をそそり立たせ、少女は「こんな無様なボクの姿を見ないでくれ……っ」と口にしながらも、その身体は快感に飢えるよう次なるアプローチを待ち望んでくる。
見られたくないけれど、続けてほしい。そんな葛藤に板挟みとなった少女の脳みそは常に沸騰し、本人は無意識にも物欲しげな眼差しでおねだりしてしまう。そんな、ある意味で複雑なお年頃とも言える少女の有様はオスの本能を掻き立てるに十分であり、これに魅了されたオスは堪え切れない欲情を伴いながら、中性的な振る舞いによって王子様のようなイメージが定着した少女のことを、己が猛々しい“息子”の蹂躙によって滅茶苦茶にしてしまいたくなるのだ。
十分に可愛がった“聖域”は悦びの涙を流し始め、粘り気のあるそれを両脚に滴らせながら少女は起き上がる。共にして自分は懐中電灯を拾い上げては照明を消していくと、完全に暗闇で染まったその空間において、大木に手をつかせた少女の身体を背後から抱き締めていった。
下半身を露出した、情けない少女の姿。自分は下から両手を伸ばすことで、今も少女が着用する上着の中へとそれらを忍び込ませてから、少女が日頃から開発している控えめな胸部の“突起”を堪能し始めていく。
これだけでも、少女は仰け反るほどの快楽で呻き出していた。
想像以上の反応が、最高に堪らない。そうして乙女の柔肌に吸い付くよう両手も全身もその華奢な身体にくっ付けていき、次にもチャックの隙間から“息子”をボロンッと取り出すや否や、迎える準備が整った潤いの“聖域”へと進入させたのだ。
粘液が擦れる音を響かせながら、背後から一体化する自分。その最中にも少女は快感によって全身を痙攣させながら仰け反ったものだったから、自分は胸部を包み込むように掴んでいた両手の運動はそのままに、腕に力を加えることで少女を持ち上げるようにしながら“息子”を奥まで詰め込んでいった。
……キャンプ場から聞こえてくる、笑い混じりの話し声。一同が交流に励む中、その物音を聞きながら自分は腰の運動を開始する。
ゆっくりと、ゆっくりと、“内部”の側面に先端を擦り付けるようなアプローチ。両手による“突起”の撫で掛けを継続しながら行われたこちらの行為に反応して、少女は必死に声を抑えるような、低く呻きながらも堪え切れない甘い声を出し続けてくる。
次第にも、少女の身体を“息子”だけで持ち上げるような力強さで運動し始めた自分。その、何度も深く突き刺さる上に身体まで持ち上げられる感覚に、少女は思わず夜空に向かって腹の底から嬌声を上げ始めたのだ。
中性的で、透明感のある存在。今、その少女が“息子”によって分からされている。
ゾクゾクと巡ってきた興奮に、自分は少女の首筋に鼻を付けていく。それから日中の活動で汗をかいた少女のニオイを嗅ぎながら、手や腰の運動はそのままに言葉を投げ掛けていった。
「ノア……っ。全部、ノアが悪いんだからな……っ。バスに乗っている時からずっと、俺をその気にさせといてきてさ……っ。いざここに着いたら、急に俺のことを放置して他の人達と仲良くするんだもん……っ」
「うぁっ、ごめんよっ……柏島歓喜っ……! どうかっ、偉大なる柏島の血を継ぎしっ……キミという存在の護衛をっ……目先の感情に囚われるがあまりにっ……己が使命を軽々と放棄してしまったっ……この罪深きボクのことをっ……どうか許してもらえないだろうかっ……ぁん」
「別に、怒っているわけじゃないんだ……っ。率先して人助けをするノアの姿は、本当に輝いて見えていた……っ。これが、ノアの本質なんだなと心から思えたし、そんなノアの姿は誰よりも気高くて、そして……誇らしかった……っ」
「や、やめてくれっ! こんな恥晒しのボクに情けをかけないでくれっ……! これではボクはっ、尚更と自分を不甲斐なく思えてきてしまうっ……!」
「もう十分に情けないよ、ノア……。こんなに汗臭くなって、ノアともあろう人間が何てだらしない……」
「ぁぁ……あぁぁぁっ……やめてくれ柏島歓喜ッ……そんな言われ方をされるとッ……ボクはボクでいられなくなってしまっ……」
言葉を遮るように、深々と突き刺さる一撃を叩き込んだ。
銃声が如く、甲高い肉の音が響き渡った。これを受けた瞬間にも少女は悲鳴のような喘ぎ声を出していき、直後にも大木に振り掛ける勢いで失禁し始めたのだ。
こちらの履物にもかかった、少女の“聖水”。そのあられもない醜態を晒したことによって、少女は自身に幻滅するよう声を震わせながら喋り出してくる。
「ぁぁぁ……ぁぁぁぁぁ……っ!! 柏島歓喜ぃ……。柏島歓喜ぃ……!」
「まだ出し切ってなかったのかな? おしっこすることも我慢して、たくさんの人達を助けて回っていたんだね。えらいよ、ノア……」
「あぁぁやめてくれ本当に頼むからぁっ……! ボクは自分という醜い存在が恥ずかしくて堪らないっ……! こんな見苦しい姿を曝け出して、何が銀嶺会トップの娘だっ……! オヤジぃ……! ユノぉ……! こんなボクでごめんなさいっ……こんな、オトコの“モノ”に負けるような恥晒しのボクで本当にごめんなさいっ……!!」
「ノアは恥晒しなんかじゃないよ。ノア、これはね、俺に対して心を許してくれているという確たる証拠なんだ」
「ッ……柏島歓喜に、心を許している証拠っ……?」
「そうだよ。ノアが俺のことを信頼してくれているからこそ……ノアが俺のことを、大好きでいてくれているからこそ……今のノアは我慢もせずに、自分の全てを曝け出してくれているんだ。大好きな人に対して、隠し事せずに、包み隠さず、本当の自分を見せてくれている。そんなノアの“誠意”に、俺は今、すごく嬉しいと思えているんだよ」
「っ……これが、“誠意”っ……? ぅぅ……柏島歓喜……」
「ノアの本気、俺にしっかり伝わったよ。だから、もっと見せてくれないかな……? ノアの誠意を……ノアが心から満足してくれている、あられもない本当の姿をさ……」
もう、我慢の限界だ。
腰の運動は、大胆な一突きの繰り返しから小刻みへと変化する。それと共にして絶え間の無い快楽が巡り出したノアは小刻みの喘ぎ声を出し始め、こちらに全てを委ねるかのように全身の身体を脱力してみせた。
ありがとう、ノア。俺のことを信じてくれて。
ありがとう、ノア。俺のことを好きになってくれて。
与えてもらった恋情のお返しとして、己が意識を“息子”へと集中させた自分。それに伴い腰の運動は次第と激しくなっていき、既に待ち構えている“子種”が今か今かと押し寄せてくる。
暗闇の中、様々な汁が飛び散っていく。そして、もう限界だと言わんばかりに内なる欲求を解き放つよう我慢を緩めていくと、同時にして最後の汁が快楽となって噴き出していった。
熱を帯び、どくどくと脈打つ肉の管。そこから自分の全てを捧げるよう少女に熱意を注ぎ込み、溢れんばかりの欲望で少女の中を満たしていく。
……ラミア、メー、レダやミネ、そしてシュラに続いて、自分史上もっとも多い量を噴射した。
佇んだ状態の“出入り口”から、すぐにも白の快楽が溢れ出してくる。共にして、最深部への注入を終えてすぐにも引き抜くと、直後にも独特な臭いを放つ白色の塊がドロッと零れ出してきた。
熱烈な行為は終了し、一気に力が抜けたノアの身体。そんな少女の崩れ落ちる様子に自分はすぐさま距離を詰めて受け止めていくと、ノアは今までに見せたことのないボーッとした表情で、魂が抜けたかのような面持ちで暫し頭上の夜空を眺め続けたのだ。
心ここにあらず。自分は心配するようにノアへと言葉を掛けていくと、次にも少女は力無い有様で微笑んでみせた。それに安堵した自分は背後から優しくハグを行っていき、それから振り向いてきたノアと運動後の柔らかい口付けを交わし合っていくと、最後にも静寂に包まれた野外の暗闇の中、ノアと愛の言葉を囁き合いながら二人きりで過ごすひと時を暫し堪能したものであった。