俺のハーレムはワル女子だらけ 貸出ホステスと暮らす新生活 作:祐。
自室のベッドで目覚めた早朝。ボヤけた意識で天井を眺め遣っていくその中で、隣から感じられる間近な気配へと振り向いていく。
首を動かすと、すぐにも灰色でスポーティな下着姿のシュラと目が合った。
膝丈まである超ロングヘアー。いつもはツインテールにしているそれを
こちらの抱擁を迎えてくるシュラ。彼女も心地良さそうな表情と共に「ニーチャン、おはよー」と答えてくると、抱き合う形で互いの熱をしばらく堪能していき、肌を露出したシュラの首筋に鼻を添わせたりなど、朝から本能をくすぐるシュラ成分を摂取したものだった。
布団の中で心行くまでむぎゅうして、下着姿でくっ付いてくるシュラ。それから彼女に甘い瞳で見つめられていき、おねだりするようなアプローチに魅入られた自分は、誘惑に負けるように口付けを行っていく。こうしてシュラと過ごす濃密なひと時を過ごしていくと、直にも巡ってきた眠気で天井を仰ぎながら、自分はそれを彼女へと伝えていった。
「シュラ、もうひと眠りしていい?」
「イヤや。ニーチャンと話せへん時間が苦痛でしゃあないねん。ニーチャンお願い、ウチに構うてやぁ」
「少し寝るだけでもダメかな……?」
「うー……イヤやぁ~……。ニーチャンとイチャイチャしながらお話ししたい気分やねん~……」
頬を膨らませて、こちらの腕に絡みついてくるシュラ。彼女の様子に、自分は不思議に思いながらそれを訊ね掛けてみた。
「どうしたの? 今日は特に甘えん坊さんだね。何かあったの?」
その問い掛けを耳にしたシュラは、こちらに対していじらしい視線を向けてくる。その潤いを帯びた目に自分が首を傾げていく中で、彼女は拗ねるように低い声音でボソッと「……なんでもあらへん」と答えながらくっ付いてきて、それからシュラは小動物のように顔を擦り付けてくると、次にも思い立ったように身体を起こしては、寝転がるこちらの上に乗り掛かってきたのだ。
掛けていた布団を退けて、こちらの顔に跨るよう腰を下ろしてくる。そして姿勢を下げてうつ伏せになっていくと、互いの股が目の前にある体位で、シュラはおもむろにこちらの履物をずらして“息子”を取り出してきた。
寝起きの生理現象。本人より先に起床していた“ソレ”はボロンッと元気に背を伸ばし、その勢いで自身の鼻先に接触したシュラはビクンッと身体を跳ねさせながらも、“息子”を愛でるように握りしめながら、それを上下に動かす運動で甘えてきたものであった。
掻き立てられる本能と、視界いっぱいに映る彼女の“ソコ”。スポーティなインナーがかえって欲求を煽られ、くっきりと形を象る“割れ目”に自分は見惚れながら、彼女の腰を両手で掴んで引き寄せていく。そして鼻先を擦り付けることで香りを堪能し、舌を伸ばすことで直々に触れ始めたこちらの行為を受けて、シュラは甘い声を漏らしながら敏感な反応を示してきた。
直立した“息子”を一口で呑み込んだシュラ。躊躇いの無い彼女の行為は“息子”に極上の悦びをもたらして、ビクビクッとそそり立った“ソレ”を、シュラは手と口によるアプローチで丹念に刺激を与えてくる。そして、間もなくと自分は限界を迎えると、目の前にある彼女の“ソコ”に顔を埋めながら、達すると同時にして「うっ」と声を出し、溜め込んだエネルギーを早朝から一気に放出してしまった。
噴き出した白濁の子種を全て、口の中で受け止めたシュラ。これに嫌悪の表情を見せることなく、口から溢れ出る白濁をもぐもぐすることで暫し味わっていく彼女。直にも、飲み込んでいるのだろう喉の音を何度も鳴らし始めると、シュラは“息子”にも付着した子種を舐め取ってから、お掃除を済ませたピカピカの“息子”に納得するよう頷いてみせた。
鼻先から香ってくる、かぐわしいメスのフェロモン。神経が焼けるような感覚に自分がボーッと意識を遠のかせていく中で、“息子”を舌でご奉仕したシュラは満足そうな様相でこちらの上から下りてきて、次にせがむような調子で、この身体を両手で揺すりながら言葉を投げ掛けてきた。
「ニーチャン起きてぇ。はよ起きんと、一分おきにニーチャンの“オニーチャン”抜いてくで」
「そ、それはそれで魅力的ではあるけれど……シュラをもどかしい気持ちにさせたまま放置しちゃうのも可哀想だしな……。分かった、起きるよ。ごめんね、放っておいちゃってさ」
仕方ない。そう思いながら身体を起こした自分が、シュラへと振り向いていく。
だが、その動作の途中にも既に飛び付いていたシュラが抱き付いてくると、この懐に顔を埋めながら、喜びに満ちた明るい声音で「ほんまか!! 嬉しいわぁ!! ニーチャぁン!!! ニーチャン好きやぁ。ごっつ好きやねん~!! 子宮から手ぇ出るくらいニーチャンのこと大好きなんやぁ~!!!」と甘えてきたものであったから、自分は彼女の勢いに苦笑してしまいながらも、その頭を撫でることでシュラの気持ちを正面から受け止めたものでもあった。
シュラに起こされてからというもの、食事やシャワーから始まり、濡れた髪の乾かし合いや、着せ替え人形のように服を着せ合ったりなどなど、この日の午前中は甘えん坊なシュラからべったりとアプローチされる時間を一緒に過ごした。
普段と比べて、一段と人懐っこい犬のように「くぅ~ん」とすり寄ってくるシュラ。私服姿になっても行動はまるで変わらず、髪の途中で結ったツインテールを揺らしながら、彼女はこちらの腕や胴体にくっ付いて、顔を埋めて落ち着いていく。
どこに行っても彼女がついてくるため、歩く際にはシュラと足並みを揃えながら部屋の中を右往左往したものだ。
いや、それにしても今日は甘えたがりだな……。
この数日で何かあったのだろうか。そんな深読みをしてしまう、シュラのべったりとした様子。これに自分が疑問を抱きながら部屋の中央に佇んだところで、ベッドに置いてあった自分のスマートフォンが着信を受け取った。
シュラに動くことを伝えながら、のそのそと端末を手に取っていく。それから画面を確認し、相手がミネであることに気が付いてから、「振替で今日は登校日になってるし、今って授業中の時間だよな……」と呟きつつ応答した。
電話越しのミネの声。教室なのだろう聞き慣れた雑音が後ろでガヤガヤ響いてくる空間の中、ミネが変わりない調子で喋り出してくる。
『カッシー。急に電話してごめんね』
「いいよいいよ。それでどうしたの?」
『今日、午後の授業無くなったから遊ぼ』
「あぁうん、それは構わないけれど……また授業無くなったんだね」
『抗争があったから、学校の予定が不規則になってる。昼のシフトがある日に振替とかで登校日になったりするから、ホントに最悪』
「龍明抗争の影響で、学校に限らず色んな会社やお店が振り回されているよね。こればかりはユノさんと相談しながらやっていくしかないのかも」
『分かってるけどさ……前日にもなって、振替で授業するとか連絡してくる学校も学校だと思わない?』
「あはは……災難続きで大変だね……。今、電話してきたってことは、もう帰るとこ?」
『あぁうん、そう。カッシー今ヒマ?』
「予定は空いてるよ。夜の仕事の時間まで、どこか遊びに行く?」
『遊ぶっていうか、ちょっと話したいことがあるっていうか……。あぁ、ノアもいるから。一緒に来るつもりでよろしく』
「おっけー。こっちは今シュラがいるから、四人で軽くお出掛けしよっか」
というやり取りを終えて、電話を切っていく。それを隣で聞いていたシュラは、顔を上げて「学生は学生で大変そうやなぁ」と口にしながらハグをしてきたため、自分も「そうだね」と答えながらシュラを抱き締めて、その流れで熱烈な口付けを交わしたものだった。
急遽と決まった午後の予定。自分はシュラと共に龍明高等学校へと向かい、既に校門付近の木陰で待っていた制服姿のミネとノアの二人と合流する。
最近になって、恋という未知なる世界を知ったノア。尤も、学生の目が届く場所では、さすがにノアは気高き銀嶺会の娘として悠々と振る舞っていた様子だった。
いつもの王子様チックな喋りで、意気揚々とカースト最上位の生活を語り始めた少女。主に、友達を増やそうにも怖がられてしまって、みんな離れていってしまうというノア特有の悩みを自分らに打ち明けながらも、一同は駅前にあるクレープ専門店へと足を運んでいく。
何気無い会話を交わし、また、下校が早まった生徒達もこぞって集まっているクレープ専門店に来店した自分らではあるが、爽やかな露出が目立つシュラや一般人男性の俺が混じることによって、どこか場違い感を醸し出しながらも席に案内されていく。
そうして、ファミリーレストランのような内装をした、学生だらけの青春的な空間に身を置いた自分。その際にも、何だか肩身が狭い思いで席に座っていくこの傍らでは、迷うことなく隣に座ってきたシュラにべったりとくっ付かれながらも、彼女は店員に対して、いつもの方言で軽快とオーダーを済ませていく様子を見せてくる。
また、向かい側の席に座る、ミネとノア。二人もクラスメートとして無難なやり取りを交わしていた。主に、ミネが不規則な学校の日程について愚痴を喋っていったり、隣のクラスの不良男子が、女子の目の前では分かりやすくカッコつけててめちゃ笑えない~? などといった、如何にもっぽい会話をノアに話していき、ノアはノアで「むしろカレは、人目という同調圧力の束縛に縛られぬ、人間が人間であることを心から望みし、型に囚われない真なる自由を謳歌する人物なのだろうね」などと、どこか共感するような調子で答えたことでミネが言葉を失ったりと、特筆する点の無い至極穏やかな光景が広がっていたものだ。
時間が少し経過して、四人が頼んだクレープが届けられてくる。
スカスカになったパフェの容器みたいなものに入れられて、四人分のそれらがテーブルに置かれていく様子。そもそもとしてクレープ専門店などに訪れる機会がなく、周囲を眺めると、皆はそれぞれ談笑したり、テーブルに勉強関連の本や道具などを並べている光景など、まさに青春の真っ只中とも言える非常にフレッシュで甘酸っぱい、健気な若さに溢れた世界を確認することができた。
いいなぁ。俺も戻れるのなら、学生生活をもう一度経験してみたいな。
という内心をよぎらせながらも頂いたイチゴクレープ。その食べ方もまた、クレープが届けられるのと一緒に運ばれてきた専用の紙を、下から入れるようにして本体を包み込み、そこから持ち上げるようにして容器から取り出してから口へ運んでいく……という形式の慣れない一連の流れも、現役JKのミネやノアから教わりながら食していくひと時は実に新鮮だった。
食べる際にも、ミネとノアの二人からは「クレープ食べるの下手すぎ~」と、それぞれの調子でからかわれた自分。これに苦笑いしながらも、食べ方を教授いただこうと会話を交わしていたその最中のことだった。
シュラは、どんな風にしてクレープを食べているのだろう。それが気になった自分が、何気無い調子で隣にいるシュラの方を見遣っていく。しかし、そこで目にした彼女の表情によって、一瞬にして平穏なひと時が崩れ往く音が聞こえてきたのだ。
……左手で持ったスマートフォン。画面に映るメールの文章に目を通していた彼女の顔は、極度の緊張があまりに真っ青となっている。
シュラの様子に、自分は「……シュラ?」と言葉を掛けていく。これにミネやノアも振り向いて視線を向けていくのだが、直にもシュラはハッするように顔を上げ、誤魔化すように乾いた笑いを見せてくると、次にも慌てた様相でそう言葉を口にしてきた。
「や、な、なんでもあらへんよ?? なんでもあらへん!! 大丈夫や。大丈夫……。大丈夫やから、これもいつも通りのこと……もう、分かり切ってたことなんやからな……ッ」
「シュラ……?」
「ごめんなぁニーチャン!! JKのジョーチャンらも、ほんまスマン!! ちょいとばかしウチ席外すわ!! 電話かけなアカン大事な用事ができてしもぉてな! すぐ戻ってくるから!! ウチのこと心配せんでもええからな!!」
ぎこちない喋りに、バタバタとした動作。
シュラにしては珍しい慌てた様子に、ミネもノアも、不思議に思う面持ちでシュラを眺め遣った。そんな二人からの視線を気にすることなくシュラはこちらへ向いてくると、「ニーチャン。すぐ戻ってくる。すぐ戻ってくるから待っとって……!」と、何か思わせぶりな言葉を繰り返してから、シュラはスマートフォンを片手に急ぎで店の外へと出てしまった。
……どうしたんだろう。心配だな……。
走っていった通路を暫し見つめてしまい、シュラの身を案じてしまう自分。そうして、走り去った彼女の名残を大事にするよう隣の席に手を置いていく中で、ミネはミネで、こちらの顔色をうかがうような視線で、それを訊ね掛けてきたものだった。
「カッシー。その……今、いい?」
「菜子ちゃんもどうしたの?」
こちらの返答に、ミネは浮かない表情を見せてくる。これにノアも神妙な顔つきで見遣ってくる中、ミネは最近の心配事について話し出してきた。
「カッシーはさ、
「友仁さん?」
友仁彼方。ミネとノアの同級生であり、バイであることを話してくれた優秀な女子生徒。久方ぶりとなる少女の名に自分が聞き返していくと、ミネは不安で眉をひそめながらそれを喋り始めてくる。
「抗争の後から、友仁さんと一度も会えてないの。学校に来てなくて、連絡も取れなくて……。アタシからの連絡なんて、数秒で既読が付くくらい返事が早いのに、そんな友仁さんがこの数ヶ月、ずっと音沙汰無しでいるからさ……」
「それは心配だね……。俺も、友仁さんとは会っていないよ。最後に会ったのは龍明抗争の前。臨時休業した
「やっぱそうだよね、アタシとノアもそうだもん。……ずっとくっ付かれているのも、正直ちょっと微妙に思っていたんだけどさ。でも……いざ居ないとなると、アタシ、すごく不安に思えてきて……。探偵のオーナーに相談した方がいいのかなって思う気持ちがあるんだけど、もしかしたら、友仁さんが自分の意思で学校に来ていないのかなって考えもあって……そうなると、アタシが一方的に連絡するのも気が引けるし……。ねぇカッシー。アタシ、どうしたらいいんだろう」
自分のことのように、深刻な様子で俯いていくミネ。ノアも同級生として親しみがある分、こちらへと向いては「抗争に巻き込まれた可能性も考え得る以上、現時点で友仁彼方の行方は闇の中さ」と、真面目な面持ちで言葉を付け加えてきたことから、自分もまた考え込みながらノアと会話を交わしたものだ。
「既に数ヶ月の期間、連絡が取れていなくて、学校にも来ていないんだね。そうなると学校の単位とかが問題になってくるだろうけれど……今までの友仁さんの様子とか、学校生活とかを考慮するに、もちろん問題事もあったりしたもんだけど、菜子ちゃんやノアと一緒に楽しく過ごせていた様子も含めて考えて、不登校の可能性は無くなりそうだよね。……となると、家庭の事情とか、環境の変化とか。それこそ、抗争に巻き込まれて入院していたりとか、どちらかと言うと、何かしらの外的な要因が理由になっているように思えてくるかな。何であれ、友仁さんの単位も心配だよ」
「抗争の影響で、学校は未だ混乱状態にある。不規則な振替などでまばらな日程が続く関係上、授業のペースなどは他校と比べてだいぶ遅れをとっていることだろう。ただ、友仁彼方からすれば、この事態は幸いとも言うべきかな。数ヶ月の欠席が続いているカノジョだが、元々から無欠席を維持していた秀才だ。現時点でもギリギリだとは推測できるが、単位に関しては心配いらないだろうね」
「それじゃあ、みんなと一緒に進級できるか。後は、友仁さん本人が今、どのような状態にあるのか。……あまり他人のプライベートに介入するのも良くないとは思うけれど、抗争があった以上は万が一の事もある。最悪の場合も考えたら、友人としてせめて、友仁さんのためにしてあげられることを、しておきたいよね。俺としては、オーナーに相談してみてもいいんじゃないかなって思ったりはするかな。ユノさんでもいいかもしれない。ユノさんは、友仁さんのことを特に気に掛けていたみたいだったし」
無難な返答になってしまったかもしれない。だが、背中を押してくれたのだろうこちらの言葉に、ミネは少しだけ明るい表情を取り戻しながら「……ありがとう。カッシー」とお礼を口にしてきた。
それにしても、友仁さんが心配だな……。
自分も関わりがある以上、少女の行方が気になってしまう。これに思い悩むよう思考していく最中にも、席を立っていたシュラが駆け足で戻ってきた。
明るい調子で、「おまたせぇ!! ……なんや、えらい重い空気になっとるなぁ」と喋るシュラ。彼女の言葉に一同が先ほどの説明を行っていき、それにシュラも理解したように頷きながら腰を下ろしていく様子を、自分は真横で何気無く眺めていく。
いつもの、太陽が如き快活な調子で振る舞うシュラの姿。しかし、彼女の様子に自分はどこか違和感を覚えてしまっていたのもまた事実だった。
その違和感の正体は、間もなくと本人から明かされることとなる。
クレープ専門店の後も、駅前をぶらつくようにお出掛けを楽しんだ自分ら。早い事にも時刻は夕方を迎えていき、キャバレー
ミネも、シュラも、ノアも、みんなが出勤予定であるこの日。今も、公園で子供のようにはしゃいでいた一同が、そろそろ
秋の紅に染まった、自然に溢れた公園の木々。夕暮れの黄昏がもの寂しげな雰囲気を醸し出し、次第と冷たい風を吹き付けてきた憩いの空間。これに制服のスカートを揺らしたミネとノアは、二人で咄嗟にこちらを見遣ってきて、ミネは赤面しつつも低い声音で「……見た?」と訊ねてきたり、ノアは瞳にハートを浮かべながら「なんて悪戯心に満ちた風なのだろうか。これでは、ボクが意識せずとも柏島歓喜を誘惑してしまうじゃないかっ……。ついでだから教えるが、今日のボクのパンツは白と水色の縞々さっ……」と喋り、何だか期待するような視線を送ってきたりしていたものだ。
ノアの言葉に、ミネがジト目を向けながら「前々から気になってたんだけど……アンタ、いつからカッシーのこと好きになったの?」と、どこか複雑そうな声音で訊いていく光景。これにノアが高らかに謳うよう返答していく中で、自分はシュラの姿が見えないことから周囲を見渡していく。
投げ掛けた視線の先。黄昏によってもたらされた地面の陰り。若葉色の芝生が黒色に染まりつつある光景と、こちらに背を向け、空を見上げながら呆然と佇むシュラの姿。彼女の様子に自分が「シュラー。そろそろ
「ニーチャン!!! ……話があんねん」
「シュラ?」
距離が空いた状態から、彼女が数歩とこちらへ歩み寄ってくる。しかし、シュラは少し離れた距離で立ち止まると、彼女は今までに見せたことのない険しい表情を浮かべながら、真っ直ぐな眼で言葉を続けてきた。
「…………ウチ。鳳凰不動産、クビになったわ」
「え?」
ミネとノアが振り向いてくる様子を背景に、シュラは続けてくる。
「鳳凰不動産代理社長が、直々に電話を掛けてきよった」
「代理社長って……
「せや。ニーチャンのトーチャンの仇からな、電話越しで解雇を言い渡されたんや」
先ほどクレープ専門店で席を立ったのは、その電話をするためだったのか。
内心で納得しながらも、こちらからシュラへ問い掛けていく。
「シュラは、鳳凰不動産のスパイとして
「代理社長はな、ハナからウチが寝返ることを確信しとった。せやけど、それを見越してウチを派遣したらしいわ。……
「シュラを始末するため……?」
「代理社長は、ウチのことが邪魔で仕方無かったんや。……ウチは過去、柏島長喜に加担した裏切者やねん。それが、代理社長にバレとった。せやから、ウチの始末を目的として
不穏な言葉が次々と出てくる様子に、自分は言葉を失うようにただただシュラを見つめてしまう。そんなこちらと真っ直ぐ向かい合っていた彼女は、次にも真剣な眼差しでそれを喋り出してきたものだった。
「……ウチはもう、鳳凰不動産の人間やあらへん。ウチもホステスのネーチャンらと同様に、命を狙われるだけの存在となってもうた。せやから……今まで、仮にも鳳凰不動産の人間やからと隠し続けとった“秘密”を、ニーチャンに全部明かしたいと思うとる」
「秘密……?」
どこか生き急ぐようなシュラを前にして、訊ねることしかできずにいた自分。それでも構わずシュラはこちらの返答に頷いてから、その場で深呼吸を挟んだ後に、芯のある声音で“秘密”を明かしてきた。
「……ウチの本名は、“
前社長。生前の親父と激突し、親父がその手で打ち倒したとされる人物。親父が前社長を負かしたことで日本が救われたことから、
その人物の娘であることを明かしたシュラに、自分も、居合わせたミネとノアも、絶句するように立ち尽くしていく。この様子にシュラは一息置いてくると、返答の無い様子から彼女は言葉を続けてきた。
「ニーチャン。前々から気にならんかったか? ニーチャンのカーチャンは、どこに行ってしもうたんやろなぁ、と……」
「俺の母さん……? そりゃあ、まぁ。俺がすごく小さい頃から、急にいなくなっちゃったって聞かされていたから……顔も声も覚えていないけれど、その理由を知れるんなら、知ってみたいかな。……でも、どうして急に、俺の母さんのことを訊くんだ?」
「ウチも、“ニーチャンと同じ母体から生まれた人間”やからや」
「え…………」
ゾッとして降り掛かってきた、全身の血の気が引いていく感覚。青ざめた様相のこちらに構うことなくシュラは続けてくる。
「ニーチャンのトーチャンである柏島長喜が、我が子のニーチャンを放置してまで鳳凰不動産っちゅう組織を追い続けた理由。それはなにも、日本を救いたいからっちゅうアニメや漫画に出てくるヒーローのような綺麗事からやないで。柏島長喜はな、もっと個人的な目的で鳳凰不動産を長年と追い続けていたんや。日本を救ったっちゅう成果は飽くまでも、その個人的な目的を果たすための通り道でしかなかったんよ」
「…………」
「柏島長喜が、鳳凰不動産を追い続けた理由。それはな、“愛する妻を取り戻すため”やったんや。……ニーチャンが生まれて間もない頃、ニーチャンのカーチャンは、骸ノ市によって攫われた。ほんで、元から探偵やった柏島長喜が骸ノ市を調査していくその過程で、自分の妻が鳳凰不動産の社長に売り払われたことを知るんや。全てはそこから始まったんや……柏島長喜による、長年に渡る鳳凰不動産の追走劇がな」
親父が、鳳凰不動産の前社長と戦った理由。今まで、親父の行動に意味を見出せずにいた自分が聞き入っていく中で、シュラはその真実を語り続けてくる。
「柏島長喜が妻の行方を捜している最中、鳳凰不動産の前社長は購入した“奴隷”を孕ませた。“奴隷”はこれに従うしか無く、腹を痛めてまでしてな、頑張って頑張って、踏ん張りに踏ん張って、気合いと努力の末に、望まない子供を産み落としてみせたんや。……自分の命と引き換えにな」
「それって……」
「柏島長喜が真相に辿り着いた頃には、愛する妻はとっくに死んでおった。それも、へその緒がついた状態で、掃き溜めのゴミ捨て場に放棄されるっちゅう惨たらしい扱いを受けてな。……相棒だったオーナーが、ウチだけに教えてくれたで。オーナーも当時、現場に居合わせたらしいんやけどな、そん時の柏島長喜は怒るに怒れず、泣くにも泣けず、悔やもうにも悔やめず。ただただ、間に合わなかった自分をひたすらに責め立てて、絶望に打ちひしがれとったってな」
「…………」
「ほして、前社長と“奴隷”の間で産み落とされた子供だけは、何事も無かったかのように育て上げられたんや。……その子供こそが、ウチやねん。ウチは……前社長と、柏島長喜の妻の間から生まれた子供。せやから…………ウチとニーチャンは、『異父兄弟』っちゅうことになるな」
同じ母親から生まれた、異なる父親を持つ兄弟。
シュラが、こちらを兄のように慕ってくる様子。親父が、自分を放置してまで何かを追い続けた意味。幼い頃に消えた母親。そして、柏島長喜と鳳凰不動産前社長との決着。
これまでに語られてきた『なぜ?』の全てに、合点がいったような気がした。
親父はきっと、取り戻したかったのかもしれない。生まれてきた子供と、愛する妻の三人と一緒に暮らす幸せや日常を。だが、現実は惨く残酷なものであり、取り返したいと願った妻は死んでしまい、鳳凰不動産に固執するがあまりに息子を長年と放置してしまった。
その結果、彼は鳳凰不動産前社長とケリをつけることで日本を救ってみせた。しかし、偉大なる功績と、知る人ぞ知る名声を得てもなお、柏島長喜の心には、全てを失ったままの空虚が残り続けていたものだろう。
鳳凰不動産との決着がついても、柏島長喜は組織の残党などに狙われる可能性を考慮して、息子の下には帰らなかった。その末に、蓼丸ヒイロを餌にした誘導作戦におびき寄せられた柏島長喜は、“敵討ち”として鳳凰不動産代理社長の雌羊斗織に殺害された……。
輪廻という言葉が当て嵌まる、悲劇の無限ループ。復讐心は巡りに巡り、それは善悪を問わずに繰り返されていく。この現実と直面した自分は言い知れない心境となり、言葉にできない悔しさやもどかしさ、なぜ? どうして? という疑問ばかりが脳裏に浮かび上がるやるせなさのようなものを感じてしまうことで、何かに悲観するよう脱力気味に俯いてしまった。
……どうして、親父が苦労しなければならないのか。どうして、純粋な悪意に振り回されないといけなかったのか。
これじゃあ、親父が報われないじゃないか。そう内心で嘆く自分が佇んでいると、すぐにもシュラがこちらへと歩み寄ってきて、顔色をうかがうような視線を向けながらそう喋り出してくる。
「……ニーチャン。ウチのこと、鳳凰不動産の連中や思うて、思いっきり殴り飛ばしたらええ」
「…………どういうことだよ」
「ウチは、柏島長喜の人生を奪った血筋の人間やねん。血を継いでいる限り、ウチも同罪や。せやからウチのことを、カーチャンを殺した前社長やと思うて、好きなだけタコ殴りにすればええ。実際、ついさっきまで鳳凰不動産におった人間でもあるからな。代理社長の代わりとしても、殺すなり、犯すなり、ニーチャンの気が済むまで痛め付けてもろてええから……っ」
次第と涙ぐみ始めたシュラ。目からボロボロと大粒の涙を零す彼女は申し訳無さそうに言葉を口にして、それから左頬を突き出すようにして喋り続けてくる。
「ウチは……っ忌み子やねん……。日本を貶めるような人間の遺伝子を継いだ、邪悪な血が混じった、この世にとっての異物なんや……っ。ウチのような存在が、ウチのトーチャンのような人間を生み出して……トーチャンのような存在が、純粋な信仰心で、邪悪な遺志を受け継ぐ代理社長のような人間を作り出してまう……っ。せやから、この遺伝子は絶対に許されへん、この世にあってはならないモノなんや……っ」
「…………」
「同じ遺伝子を持つ以上はな、トーチャンの罪は、ウチの罪でもあんねん。やから、ニーチャンにはウチを殺すだけの資格はある。……ずっと隠しとって、ほんまにごめん。ウチがやっていたことは、自分を騙し続けて、自分の罪から逃れようと必死になっとっただけなんや。でも……生まれの家でもある鳳凰不動産からクビを言い渡されて、ウチ、ニーチャンに本当のことを打ち明ける覚悟ができたんや。もう、ウチには何もあらへん。後悔も無いわ。自分なりに、この人生は精一杯生きた。どうせ不動産の刺客に殺されるんやさかい、ほんならニーチャンの手で全てを終わらせたい……」
どこか自棄になっているようなシュラの言葉。悲しみを浮かべた切ない目で他所を見遣り、全てを託すように佇んだ彼女は、頬を差し出したままの状態でじっと、こちらのアクションを待ち続けていた。
……母さんの仇。親父の人生を狂わせた人間の娘。
無意識と持ち上がった右手。これにシュラはビクッと跳ね上がるような反応を見せてくる。この様子に見守っていたミネも思わず「カッシー……!」と呼び掛けてくる空間の中、自分は右手を持ち上げたまま暫し留まって、次にもそれをシュラへと伸ばしてから、彼女の身体を力強く抱き寄せていった。
もう離さない。心の奥底から湧き上がる信念の下、シュラを抱き締めていく。この抱擁に彼女は戸惑った様子で「ニーチャン……?」と訊ね掛けてきたものだったから、自分は一層とシュラを抱き締めながらそれを喋り出していった。
「馬鹿なこと言わないでくれよ……。誰がシュラを殺すかよ……」
「に、ニーチャン……?」
「俺の親父のこと。シュラの親父さんのこと。俺達の母さんのこと。全部、話してくれてありがとう。今日の話は、シュラなりに勇気がいることだっただろ。……正直な話、俺だって思うところはあるよ。両親が殺されてるんだ。許せない気持ちだってあるし、怒りだって湧いてくる。だけどさ……シュラ、あんたは何も悪くないだろ……! なんで自分ばかり責め立てるんだ……! シュラは優しい人間だってこと、俺は本当によく知っている。でも、だからって他人の罪まで自分が背負おうとしてんじゃねぇよ……!!」
「ニーチャン……っ」
「今の話を聞いて、俺はむしろ嬉しく思った部分もあるんだ。……両親がいなくなって、俺はもう完全に孤独だと思っていた。でも、親父は違えども……同じ遺伝子を持つ“妹”が、まだこの世に残されていたんだよ……! 俺、本当に独りだと思ってた。だから……血の繋がった兄妹がいるって分かった時、俺はすごく……すごく、救われたような気持ちにもなれたんだ……っ」
両腕でシュラの身体を抱き締めて、互いの上半身がめり込む勢いで圧迫する。同時にして、先の言葉でシュラはリミッターが外れたように涙を流し始めると、彼女は顔面が崩れる勢いで号泣しながらも、応えるように抱き返してから、その言葉を伝えてきたのだ。
「ニーチャン……っニーチャン……っ。ほんまごめん……っほんまにごめんなぁ……っ!!」
「謝らないで。シュラは何も悪くない。むしろ、俺の下に来てくれてありがとう……。残された最後の家族を、俺は絶対に死なせたりなんかしない……! 俺、兄としてシュラのことを守るからな……っ! これからも二人で一緒に生き延びて……この先は正真正銘、血の繋がり合った兄妹として……幸せな人生を送っていこう……っ!! 約束だからな……ッ!!!」
「うぅっ、うぅぅ……っ。……名前、呼んで。ウチの……“私”の名前……っ」
「あぁ。……茜。ありがとう、茜。俺達は兄妹だ。誰が何を言おうとも、俺は茜の兄で、茜は俺の妹だ。絶対に守る。これからも大切にする。だから、一緒に生き延びよう。これからもずっと一緒だからな、茜……」
「お兄ちゃん……っありがとう……。大好きだよ、お兄ちゃん……っ」
この時になって初めて、シュラとは心から通じ合えた気がした。
愛情を込めた抱擁を交わし合い、互いの温もりを分かち合っていく自分とシュラ。まるで生き別れの身内と再会したかのような感動が巡ってくる内心と、そんな“妹”を守りたいという想いの訪れによって、自分は家族と共に過ごす人生というものを、初めて体感できたような気がしてしまえたものだ。
母親の遺伝子を共有する者同士として、これからは共に歩んでいくことになるのだろう。この瞬間にも自分は、胸に抱えた唯一の家族に永遠の幸せを誓い、そして……これ以上と身内を失わないよう、柏島の血を継ぐ人間として一層の覚悟が巡ってきたものでもあった。