転生先の学友がちょっとエッチな件 作:豪州侍
私、蒲生鶴千代は六角新十郎、いや一応目上だから新十郎様、か。ともあれ私は彼をあまり好きではなかった。
親しくしていただいている次郎さまに連なる血のいけすかない男。佐々木源氏嫡流の六角のさらに正嫡の血でありながら、品性を感じられない男だ。
「なあ、猿夜叉丸。今日は琵琶湖で釣りでもするか?」
「ああ、いいとも。まあ此度も私が勝つのだがな」
「そのすました顔に吠え面かかせてやるから、覚えとけよ……」
ぐぬぬ、と新十郎様は顔を歪ませて食い掛かる。
側から見れば、猿夜叉丸の方が六角の当主に見えるだろう。
(六角の当主は貴公子、あるいは淑女であるべきよ。猿夜叉丸や次郎さまのような方がなるべきね)
祖父や父は懸命に六角家を支えているけれど、なんというか私はあまり忠誠心を持つことはできない。
やや夢見がちだけれども、六角の当主には怜悧で品格のある人物が着くべきだと本気で思っている。
義賢様の濁った眼差しに、義治様の自意識過剰。到底あの賢君の定頼様の血を引いているとは思えなかった。
まだ彼らに比べれば、新十郎様はマシな方か。
素行は悪くなく、人倫にもとることもせずに学問も武勇も圧倒的な成績を叩き出している。一つ上の世代では並ぶ者はいないほどで、定頼様以来の大器とすら言われていた。
(優秀であることは認めるわ。認めざるを得ない。……けれども、あの奔放な振る舞いから考えると性根は義治様たちに近いかもしれない)
次郎さまのことを考えると、無碍にはできない。けれども、私個人はあまり好きにはなれない。だから、顔を合わせることは多いけれど、私と新十郎様の間にはいささかの溝があるのだった。
*
時は流れて、私は後一年で元服を迎える身となった。
次郎さまは六角義定、新十郎さまは六角高村と名乗るようになる。
猿夜叉丸殿は浅井賢政と名乗ったが、程なくして観音寺城を脱走した。理由は彼の母への陵辱だったらしい。義賢様の自業自得だと私は思った。
新十郎様は元服して間もなく、その武勇を見込まれて伊勢方面で父上たちと轡を並べて戦に出ていた。
「高村様、あの方の才は凄まじい物がある。特に騎兵の運用においてはもはや家中の誰もが及びもつかないところにある」
戦が終わり、帰ってきた父上が嬉々として高村様のことを語る。
初陣は流石に手痛い思いをしたようだが、失敗から学んで将として大成しつつあるらしい。
「鶴千代。そなたの才も並々ならぬものがある。弛まず磨き、高村様と仲良くして同じように家中に尽くすよう。それが、蒲生のため。ひいては六角のためになる」
「……はい。父上」
熱に浮かされたように語る父上に、私は生返事しかできない。
高村様と仲良く? 六角家中に尽くす? あの色情魔の暴君のために?
父上の気分を損ねたくないから口にはできないが、正直言って願い下げだった。
(それにしても、明日の晩か……)
高村様のことより今の私の頭の中にあるのは、明日の晩に開かれる宴のことだ。
浅井征伐の前祝いと私たちの世代と現役世代の交流会という名目で、義賢様や高村様をはじめ六角家中のほとんどが出席する。家中の気風をあまり好かない私にとっては拷問としか言えない催事ですでに憂鬱だった。
*
そして、後日になるが私の憂鬱は杞憂ではなかったことが分かった。
宴の時は私は義定さまと共にいた。が、その義定さまは常に高村様の横にいたので必然的に私も高村さまと一緒にいることになる。
「……なんか、今日の酒はあまりうまくないな……」
高村様は義定さまや時折やってくる父上たちと酒を酌み交わす他は、ただ緩慢に料理を食べることしかしなかった。
宴席の真ん中の方では、義賢様が性奴隷にしている姫武将で劣情を晴らしていたが、高村様は目もくれない。
(義定さまが高村さまにかかりきりだと、私のすることがないのよね……)
同世代と私はあまり交流がなかった。私の成績が冠絶していたこと、私自身がやや内向的な性格だったこともあるのだろう。同世代に友と呼べる者がおらず、手持ち無沙汰になった私は酒を飲んでいた。
……それが、良くなかった。
「……うっぷ。流石に気持ち悪くなってきたわね……」
蒲生家は比較的酒には強い家系ではある。とはいえ、日暮れからずっと飲み続けていたら酩酊するのは明らかだった。
月明かりが照らす中、厠を目指して歩く。
曲がり角を過ぎた暗がりを過ぎれば厠なのだが、暗がりのところで私の足は止まった。
そこに、魔物がいたからだ。
「……おお、鶴千代か。ちょうど良い、近う参れ」
「義賢様……ッ!」
すでにかなり酔っ払っているのだろう、身体を這いずりながら義賢様は私ににじりよってくる。
「……ッ!」
走れば逃げれる。そう思っていたけれど、私にもかなり酒が回っていたことを失念していた。思うように身体が動かず、脚をもつれさせて転んでしまう。
「それにしても、愛らしく育ったのう、鶴千代……」
「いや、やめて……っ!」
私は抵抗するが、所詮は小娘。義賢様になす術もなく組み敷かれ、厠に連れて行かれるばかり。これから行われることを考えると、身震いが止まらなかった。
*
「はあ、ため息が出るほど美しいな……」
鶴千代を厠の隅に連れ込んだ義賢は初めに鶴千代の服を剥ぎ取り、その白磁の肌を矯めつ眇めつ鑑賞していた。
13歳とまだ幼いため身体の発育はまだ途上だが、胸の膨らみや腰の丸みはすでに表れてきている。今はまだ清純な乙女といった風情だが、育てば怜悧な美女に成長することは疑いなかった。
やや幼さが残るためか、義賢もいささか逡巡したが、(いささか早いか? いや、今だからこそ味わえぬ果実もある……か)と割り切って下準備に入る。
「ひゃっ、やめて。そこはいじらないで……!」
まず、義賢は鶴千代の膨らみ始めたばかりの胸をいじる。まだ硬いが、乳首の辺りは感じるらしく、そこを責めると鶴千代は身を捩らせた。
初めての感覚に鶴千代は震えたが、義賢にとってはジャブにもならない。ただ鶴千代の生来の感度を調べただけでしかなかった。
(……やはり、まだ微妙だな。もう少し調教が必要か……)
.
義賢的にはどうも鶴千代の感度はまだ基準に達していなかったらしい。ならば、と義賢は今度は鶴千代の身体を押さえて全身を舐めまわしていた。
「……鶴千代。お前は美しいが、まだ男を知らぬ。お前ほどの美少女でそれはあまりにもったいないというもの。光栄に思えよ、鶴千代。余が直々に教えてやろう」
鶴千代を舐め回しながら義賢は適宜、彼女の秘所や胸を弄る。その度に鶴千代の身体は大きく跳ね、喘ぎ声が甲高くなっていく。
「なんで、どうして……? イヤなのになんでこんなに気持ちいいの……?」
義賢が一方的に責め立てる中、鶴千代はただただ自らを襲う未知の快感に恐怖していた。
「はぁ、はぁ……! このままじゃ、おかしくなる……! この男の女にされちゃう……!」
歯を食いしばり、鶴千代は耐える。しかし、そんな彼女に義賢は一つ耳打ちした。
「それのどこが悪いのだ? 少なくとも、お前は気持ちよくなれるのだぞ? 受け入れよ、それがお前という女の本質だろう?」
完全に身体をいじくられ、快感への耐性が下がった鶴千代にとってそれは猛毒だった。
その後、追い討ちで鶴千代の膣に指が二本入れられる。それが彼女の理性へのとどめとなった。
「違う、違、ああああああああんっ!」
快感の洪水に飲まれて鶴千代はこの時、初めて絶頂した。
「はは、良いぞ! 良いぞ!」
天女のようないたいけな美少女の嬌態を見て義賢は満面の笑みを浮かべる。
処女厨というほどではないが、義賢は清らか或いは貞淑な女性を自分に性的に屈服させた時の恍惚とした表情を見るのが好きだった。屈服させた女性が清純であればあるほど、その快感は強くなっていく。
鶴千代は義賢にとっては数年来の上物だった。
(……そろそろ良い頃合いか……)
鶴千代を鑑賞して満足した後、義賢は彼女の秘所をまさぐりその具合を確かめる。義賢の体感通り、彼女の秘所はすっかり濡れていて男を迎え入れる体制が出来上がっていた。
後は挿し込むだけなのだが、ここで厠の扉がこつこつと叩かれる。
「やれやれ不粋な奴よな。いや、ここは厠ゆえ仕方ないことではあるか」
義賢ら迷い込んできた者を体よく追い返そうと厠の扉を開く。
だが、その開いた先では二人の男が腕を構えて義賢を待ち受けていた。
「殿、流石に言いづらいのですが、まだ幼い鶴千代にあんなことをするのは良くないと思いまする。襲うなとは言いませぬが、あと数年は待った方がいいかと」
「高村殿の申す通りよ。ただの後家ならまだ良い。蒲生家でも庶子の姫君ならば辛うじて。しかし、鶴千代殿は蒲生家の次の跡取りにございます。次期六宿老に禍根を残してはのちの差し障りになるゆえ、何卒彼女ばかりは見逃しては下さらぬか」
呆れたように苦笑いを浮かべる六角高村と、切々と諌める後藤賢豊。
高村は本来の六角の正嫡にあたる血を引き、後藤賢豊は六角六宿老の第二席にあたる。
さしもの義賢とていくばくかの配慮をしなくてはならない二人だった。
これには、義賢の酔いも覚めていく。
「……その方らが言うならば、仕方あるまい。今宵はここまでよ」
そう吐き捨てて、義賢はばつが悪そうに自室へと去っていく。行き場のなくなった劣情の証はあてもなく、ふらふらと彼の股の間で揺れていた。
*
目が覚めたら知らない天井だった。
隣には、六角高村がいる。昨日の私は六角義賢に犯されていた。その一門の彼がここにいるということは、つまりそういうことなのだろう。
「酒に酔った私を寝ている間に乱暴するなんて……! 見損なったわよ、六角高村!」
「誤解っつうか逆に助けた側だ! 嘘だと思うなら調べてみろ!」
言われて恐る恐る調べてみる。すると、彼の言う通り純潔の証はあった。
(本当に、私を守ってくれたんだ……)
この時、私はようやく心の底から安堵した。安堵のあまり涙まで出てくる。
「よしよし、辛かったな。すまんな、助けるのが遅くなって」
慰めようとしているのだろう、彼が私の頭にその手を頭に伸ばしてくる。
その時だった。
「触らないでっ!」
不意に私は金切り声をあげて彼を拒絶していた。
彼が悪いことをするつもりはないのは、わかってる。けれど、どうしても彼が男というだけで身体が義賢の陵辱を思い出してしまう。
「ごめんなさい。悪気があったわけではないの。本当よ」
居た堪れなくなって私は頭を下げる。
すると、高村様は「別にいい」と手をひらひらと振って許してくれた。
「この様子なら、俺はこの場から離れた方がいいな。じゃあ、またな」
そう言って高村様は部屋を辞する。
その去り際に、
「そうか。……俺は、また間に合わなかったんだな」
と寂しくつぶやいたのが、いやに耳に残った。