チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
「どりゃあああああっ!!」
気合の怒声と共に振り下ろされる剣の一撃! その渾身の一発は目の前にいた黒一色の謎の球体を見事に一刀両断して見せた。
「ふんっ! なんだ、照らしても物理は効きづらいって聞いたけど、十分一発で倒せるじゃん!」
「…それはお前の膂力が圧倒的すぎるだけだからだと思うぞ」
体勢を直しながら嬉しそうに声を発するプレアだったが、そこにディットからツッコミが入る。と、後ろからパンッ、パンッと何かの破裂音が響く。
「―――ふうっ。この武器がこのダンジョンで通用するか少し不安でしたが、どうやら大丈夫の様ですね」
「まあ、その武器自体がこのダンジョンの産物ですし、逆に通用しなかったらビックリです~」
音の方に振り向くと、アールが両手で”何か”を持ちながらそれを通路の方に構え、その後ろでマールが微笑を浮かべていた。そして、その先には微かな煙を上げながら倒れている魔物の姿が…。
「あれが…銃、ですか…。見た事は何回かありますけど、実際に使っている人は初めて見ます」
「このダンジョンからしか獲得できない希少な武器だからな。一応各国も研究はしているそうだが、今の所、戦場では普通に攻撃魔術を放った方が効率がいい…という事で進歩は良くないそうだ」
アールの武器を見て物珍しそうにしているササメアに、その武器…銃について説明をするディット。
「それは軍隊対軍隊という観点から見て、ですね。個人対個人ならこの武器は十分猛威を振るえます。そもそも、この武器の利点は訓練をしていない凡人でも一定の殺傷力を得られるという事ですから」
「使用者の魔力を…えっと…ダンガン…だったかな? に変えて超高速で相手にぶつける武器なんですけど~、特筆すべきはその効率のよさですね~。何と言っても、訓練を積んでいない平均的な人の魔力量でも50発は撃てるんです~。鎧も結界も簡単に貫いちゃうので、量産さえできれば脅威ですよ~」
しかし、そのディットの評価が不満だったのか、アールとマールが銃について詳しく解説する。その評を聞く限りでは、確かに量産さえできればかなり優れた武器となるだろう。
「ねえねえ皆! あれ見てよあれ!!」
そんな中、唐突にプレアが銃で倒された魔物を指差す。見ると、あの例のキラキラ光る丸い球が…。
「よーし、ウチの出番ですね!」
それを確認したササメアが、張り切って光の球を手に取る。すると、少し間を置いてからこの光の球は瓶に入った謎の光る液体になってしまった。が、その液体を見るササメアは、何故か驚愕の表情で打ち震えていたのだ。
「ササメア、どうした?」
「こ、この薬…え、ええ、エリクシルって…」
「エリクシルだと!?」「エリクシルですか~!?」
尋ねるディットに答えるササメア。しかし、その答えを聞いた瞬間、ディットとマールがササメアに負けず劣らず驚愕の声を上げる。が、この三人の態度に、それが何なのかわからないのであろうプレアとアールは首を傾げるばかりだ。
「エリクシル…あらゆる薬品の頂点に立つ錬金術到達点の一つ。その効果はあらゆる病気を治し、どのような致命的な怪我を負おうとたちどころに治してみせるという、まさに神の薬品なのだ」
「製造法こそ過去の偉人達により確立されてますけど~、極まった魔術と知識がなければ作成は不可能なんです~。本来なら、何人もの賢者が集まって、数年をかけて作られる超超超希少品なんですよ~」
そんな二人に説明するディットとマール。だが、残念ながら二人ともやっぱり首を傾げるのみだ。多分、効果があまりにも非現実すぎて、上手く呑み込めないのだろう。かくいうディットも、薬…エリクシルを見る目は「信じられん…」とでも言いたそうな目付きだ。
「良く分かんないけど、とにかく貴重な薬なんだよね? という事は、もしかしてこれを売ればお金が手に入るんじゃないかな?」
と、唐突に発言するのがプレア。その声には名案だ! とばかりに張りがあり、それを聞いたアールもハッとした様子でプレアに視線を移す。が、
「これを!?」「売る!?」「ですか!?」
ディット、ササメア、マールの三人から発せられた驚愕に満ち満ちた声を受け、流石のプレアも少し怯んでしまう。
「だ、ダメかな…?」
恐る恐る…といった感じで三人に聞き返すプレア。
「い、いや、ダメという事は無いが…。売る…そうか、確かにこれを売れば大金を入手できるかもしれん…が…」
「これほどの貴重品を買い取ってくれる所となると、かなり限られてきますよね~…。ディットさんには何かそういう伝手はありますか~?」
「いや、残念ながら全くないな…。ここは大人しくダンジョンギルドにお世話になった方がいい。丁度、新たなチームを作ったから、それの申請もするべきだし、一石二鳥だ」
何やら難しい顔で語りあうディットとマール。そう、貴重品を売るのならば、まずはその物の価値が分かる所でないといけないのだ。更に大金が動くところとなると、これはもう正式な所に頼むしかない。
そうして手に入れたエリクシルについて話し合っていた一行だったが、不意に、
「だ、誰か…っ! 助けてーっ!!」
と、助けを呼ぶ声がダンジョンの奥から響く。反射的に全員がそちらに駆け付けると、二人の女が一体の影魔物に襲われているではないか!
「このっ!」
それを最初に確認したプレアが、その巨体からは想像もつかない俊敏さで、今まさに女達に鋭利な影の爪を振り下ろそうとしている人型の魔物との距離を詰め、その胴を切り払う。
胴体から真っ二つにされた魔物が腕を振るうが、既に地に仰向けに倒れている上半身から繰り出される一撃は空を切るばかりだ。首を左右に振りながら消滅していくその姿を見るに、何をされたのかすら理解できていないのだろう。それほどにプレアの一撃は素早く鋭かったのだ。
「ふうっ、二人とも大丈夫?」
「あ、ありがとうございます…」
一息ついてから女達に話しかけるプレア。二人の内の片方…漆黒の簡素なドレスに身を包み、同じく黒く短い髪に茶色い瞳をした女は素直に礼の言葉を口にする。
「…ふんっ! ボクは礼なんて言わないぞっ! 助けを呼んだのはこの女であって、ボクじゃないからなっ!!」
一方、もう片方の女は反抗的な態度でそっぽを向いてしまった。背はササメアと同じくらい小柄で、赤い髪を限界まで短く切り、服装は飾り気のないシャツに短パン。その所為で、それなりにある胸のふくらみを確認できなければ男と勘違いする容姿だ。
「………まさか、リストリアか?」
「あっ、もしかしてオルガンちゃん!?」
そして、この二人を見てディットとササメアが大きく反応した。