チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
漆黒の簡素なドレスに身を包んだ女…リストリア。あのディット追放劇の中、一人だけその理不尽な虐待に興味を示さなかった女。どうやら探索中に先ほどの影魔物に不意を突かれ、リストリアと新たなチームメンバー…オルガンの二人を残して倒されてしまったそうだ。
助けた後にディットの知り合いという事で、ディット以外のメンバーと自己紹介をし合ったのだが、その時にさきの虐待の話が出たのだ。これを聞いたプレアは「助けるんじゃなかった!!」と言い放つほどに烈火の如く怒り出したのだが、詳しく話を聞けばリストリア自身もむしろあの現場は気分が悪かったそうだ。
「他の人に理不尽に暴力を振るうなんて、常人ならいい気分な筈ない…。でも、私もチームの一員だから不用意に反対してチームの士気を下げる事も出来ないし、そもそもビットは私のいう事なんて聞いてくれないし…」
「そうそう! 下手に反発してチームを追い出されたらやっていけないもんなぁ! ほんと、凡夫共は意志薄弱で嫌になる!」
暗い表情で語るリストリアに、赤い髪の女…オルガンが嫌味ったらしく大声で叫ぶ。
「うるさいな…。アンタだって一人じゃ生きていけないでしょ?」
「別にぃ~! 今までもずっと一人だったし、これからも一人で生きてくつもりだけどぉ~!?」
その嫌味が気に障ったのかリストリアはムッとした顔で尋ねるが、オルガンは大げさに答えるのみだ。わざわざ大きく身振り手振りを行う分、小憎らしさもマシマシだ。
「お、オルガンちゃん…! あんまり他の人を罵倒するのは…」
「ササメアも言ってやれ! お前らみたいな凡夫とボク達を一緒にするなってな! 大体、なんでササメアがこんな凡夫共と一緒にいるんだ!? 価値観が違い過ぎて合わないだろ!?」
そんなオルガンをササメアが止めようとするが、残念ながら聞く耳を持ちそうにない。どころか、ディット達を指差して逆に非難してくる有様だ。
「そ、それは、ウチからお願いして…」
「ああ、なんか利用価値があったんだな!? お前ら運がいいな! ササメアは魔術の天才なんだぞ!! そんなササメアに同行してもらえるなんて、えっと…あれだ! 神に感謝しろよ! お前ら凡夫は神とかそういう存在はしないけど都合のいいの好きだろ!?」
「………なんだこいつは?」
小声で答えるササメアを無視して、好き勝手にわめき散らすオルガン。そのあまりの非常識っぷりに、流石にディットも不愉快そうに言葉を漏らす。
「この子はオルガンという名前で、アンデッド組織『ブレイブパーソンズ』の一員です」
「アンデッド組織…! 話には聞いていたが、やはり実在するのか…!」
が、ササメアの説明を受け苦虫を嚙み潰したような表情を一転、驚きの色に変えるディット。その様子を見て、このダンジョン初心者であるプレア、アール、マールの三人が視線で説明を求める。
「アンデッドが敬遠されているのは前に説明したとおりだけど、その事に不満を持っている一部のアンデッドが設立した組織だ。ただ、暗部が多く実態はまだほとんど明かされていな…」
「おい! そのアンデッドとかいう不快な呼び方を止めろ!! ボク達は命を賭ける事もいとわない勇敢な者達なんだ!! 命の一つや二つでギャーギャー騒ぐお前ら貧弱な凡夫とは違う!」
視線に応えるように話し出すディットだったが、その途中でオルガンが割り込んでくる。言葉通りに不快そうに顔を歪めながら。
「…一応言っておきますが、策も無しに特攻するのは勇気ではなく無謀ですよ」
「勝算があるのに縮こまるのは慎重ではなく臆病って言うのと一緒だな!」
「なんだ。偉そうに言ってた割には、ちゃっかり専用の組織を組んでるんだ」
「よっぽどの事が無けりゃお前らみたいに群れたりはしないがな! 今回お前らのチームに入ったのも金で雇われただけだしな!」
アールの冷静なツッコミにも、リストリアの失望した感じの言葉にも嘲笑を交えて返すオルガン。と、同時にここでリストリアと一緒にいたのは、オルガンがビットのチームに雇われたからだという事も判明する。
「しかし、あのビットとかいう奴は最低だった! 確かに多少腕はたつが、偉そうなくせにここぞという時にしり込みしやがって! やっぱ地上の腑抜け共は駄目だな! ササメアもそんな奴らとは縁を切ってボクと一緒に行こう!」
そう言ってササメアの腕を引こうとしたオルガンだったが、オルガンの手がササメアの腕をつかむ前にササメアが身を引き、ディットの後ろに隠れてしまった。
「………何してんだ、ササメア?」
「う、ウチはディットさんと一緒がいいから、オルガンちゃんと一緒には…その……」
茫然とした様子で口を開くオルガンに、ササメアはしどろもどろになりながらもオルガンとの行動を拒む。その様子に、暫く口を開けてササメアを見つめていたオルガンだったが、不意にその視線がディットへと向かう。
「お、おまえ…っ! ササメアに何をしたっ!?」
怒りに燃える両眼で睨みつけながら怒声で問い質すオルガン。が、何をしたと言われてもディットからはナニをした…としか言えない。
「…くそっ! しょうがない。おいディット…だったよな!? さっさと行くぞっ!!」
ディットが答えに詰まっていると、オルガンは苛立たし気にしながらもディットを手招きしながらズンズンとダンジョンの奥へ歩いて行ってしまった。
「あら~…。まさかあの子一緒に来る気でしょうか~?」
「そのつもりみたいだね。どうやらササメアちゃんにだいぶ執心してるみたい」
「とりあえず追いかけましょう。また魔物…とやらに襲われて怪我でもされたら後味も悪いですし」
その後姿を見つめながら、マールとプレアがすこしげっそりした様子で呟くが、アールの言葉と共にディットとササメアも含めてオルガンの後を追おうとする。
「ま、待って!」
が、ここでリストリアからストップが入った。
「この先…31階に行くんだよね? なら私も連れて行って…お願い!」
「えー…? 31階になにかあるのー…?」
続くリストリアの懇願に、しかしプレアがあからさまに嫌そうな声を出しながらも質問する。
「それは、着いてからのお楽しみだ。分かった、一緒に行こう」
そんなプレアに答えをぼかしたまま、ディットはリストリアの同行を許可するのだった。