チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
冒険者ギルドで用を終えたディット一行。本来ならこのまま直帰でもよかったのだが、ダンジョン果実の報酬が予想よりも多かったという事もあり、これからの英気を養う事と友好をより深めるという事も兼ねて外食へと赴いていた。
「えーと、そ、それじゃあ…。か、乾杯!」
「「「「かんぱ~い!!」」」」「…乾杯」
全員から指名されたらしく、僅かな戸惑いを見せながらも音頭を取るディットに、プレア、ササメア、アール、マールの四人が元気よく乗る。オルガンだけはあまり乗り気ではない様だが、一応声は合わせてくれた。
「んぐ…んぐ………ぷはーっ…。ふぃーっ…音頭を取るなんて子供のころ以来だから緊張したな…」
「おや、ディット様は昔に…と、そうでした。昔は孤児院の子供たちの面倒を見ていらしたのでしたね」
「うんうん、その時は確かにお兄ちゃんが音頭…というより先導してたからね」
「あら~、子供の面倒が見れるのはポイントが高いですよ~。うふふ…」
「い、いや…。最終的には耐えられずに逃げ出してしまったから、それほど偉くは…」
「その時はディットさんもまだ子供だったんですよね? なら、我慢できなかったのも仕方ないと思います」
「…そもそも、その孤児院の大人共は何やってたんだよ?」
「…さあ? 何やってたんだろうね? 少なくとも子供の面倒はあまり見てなかったと思うけど…」
「なんだそりゃ…。名ばかり孤児院とは胸糞わりぃところじゃねえか…」
と、ディットの昔話から始まり…この話こそあまり良いものではなかったが…徐々に盛り上がりを見せていく。そして…。
「何がウチを手に入れるですか! ウチは物じゃないんです! おとといきやがれってんです!!」
「ササメア~、頼むから帰ってきてくれよぉ~…。ボクはササメアと一緒が良いよぉ~…」
「お黙り! ウチはあんな辛気臭い組織は嫌です! だというのに勝手に幹部に指名したりして、迷惑も甚だしいですよ、もう…っ!」
プリプリと怒っているササメアと、そのササメアにしなだれかかりながら泣き言を囁くオルガン。二人ともかなり出来上がっている様だ。
「ああ…。プレア様の大事なお方に凶器を突きつけるなんて…。知らぬ事とはいえ何という無礼を…。やはり私は駄目な女なのだろうか…」
「大丈夫ですよ~。アールちゃんは全然ダメじゃないですからね~」
「孤児院を逃げ出したかと思えばここでも追放の憂い目に合い、今もプレア達に助けて貰って何とかやっていけている有様だ…。俺という男は何でこうも情けないのか…」
「ゴクッ、ゴクッ、ぷはーっ! 今がダメでも未来が良ければそれでいいのっ! 頑張ろうお兄ちゃん!」
同じく出来上がっているらしく、際限なく落ち込んでいくアールとディットを、マールは母性の如き優しさで、プレアは豪放な快活さで豪快に酒を呷りながら無限に元気づけていく。が、プレアはともかくマールはいつも以上に甘やかしのオーラが漏れているので、彼女もそれなりに酔っている様だ。
必然、今正常なのはプレアのみとなる。先ほどから豪快な飲みっぷりを披露しているにも拘らず、まるで酔う気配を見せないとはかなりの酒豪のようだ。
「おーう、ひと際騒がしい席があるなと思ったら、ディットじゃねえか! その様子を見る限りじゃ、上手く立て直せたようだな! 良かったぜ!」
「あ…み、ミジマルさん…」
と、ここでディット達に掛かる野太い声。ディットがその方を振り向くと、ミジマルが以前と同じく十数人の男女の取り巻きを連れて立っていた。
そして、ディットに倣ってプレアもミジマルの方に振り向いたのだが、飲食の為に兜を脱いで素顔を晒しているプレアを一目見たミジマルが、一瞬の硬直の後に「なっ…」と明らかに驚愕の表情を浮かべた。
しかし、ミジマルが次の行動へ移る前にプレアの人差し指がミジマルの口をふさぐように触れる。
「ミジマル…やはり貴様だったか。が、その名を口にするのは止めろ。貴様が過去を捨て”ミジマル”を名乗っているように、今の余も過去は捨てた。今の名前は…」
ディット達には見せた事もない剣呑な雰囲気を醸し出しながら、冷や汗を流すミジマルを睨み脅すプレア。が、ここで再び雰囲気をガラッと変え、
「お兄ちゃん大好きプレアちゃんでーす! お兄ちゃん、知り合いに見つかってちょっと気まずいから、場所を変えたいな…」
愛嬌たっぷりの可愛い声でディットに抱きつきながら懇願する。もはや二重人格と言われても反論できない程の凄まじい豹変ぶりだが、泥酔してしまっているディットは「あ、ああ…?」と前後不覚な様子の曖昧な返事を返すのみだ。
こうして、プレアの先導を受け店を後にしたディット一行。その後をミジマル一行が受け継ぐが、肝心のミジマルその人が何やら釈然としない様子で一人酒を飲んでいた。
「ミジマル。先ほどの大柄な女性は貴方の知り合いか?」
その隣に座り真剣な様子で聞いてくる女。珍しい緑色の髪にキリっと引き締まった美しい顔立ち、が最も珍しいのは、両耳の先端が長くとがった独特の形をしているところだろう。
「あ、ああ…。まあ…知り合いと言うか、仕えていた相手と言うか…」
トン…とコップをゆっくり机に置いてから口を開くミジマルだが、その歯切れは悪い。そのまま思いふけるがごとく窓の外に視線をやりながら一つため息を吐いた。
「狂皇女か…。ディット、お前とんでもないのに気に入られちまったようだな…」