※この作品はR-18です。

チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~   作:塞翁が馬

2 / 45
ヤケ酒

 今から三百年ほど前。何の特徴もない平地に唐突に地下へのダンジョンが出来た。そのダンジョンに興味を持った当時のリッダームの王が兵に偵察を行わせたのだが、驚くべきことにこのダンジョンには今まで見た事の無い未知の化け物共がうようよ生息していた…という報告が上がったのだ。

 

 領内にその様な危険なダンジョンを放置しておくわけにはいかない…という事で、今度は選りすぐりの精兵を送り出したのだが、残念ながら制圧は失敗。

 

 化け物の強さも勿論なのだが、何より深く深くどこまでも地下に続くダンジョンに物資がもたないと判断されたのが何よりの大きな原因だ。

 

 しかし、悪い報告ばかりではなかった。このダンジョンにはいくつものお宝が眠っている事。また、道をふさぐ生物達も時折宝物を落としていく事。そして、その宝物の質は地下へと潜れば潜るほど良質な物へと変質する事。

 

 この報告を聞きリッダームの王は調査を続行しようとするが、ここでこのダンジョンの事を聞きつけた隣国のメイハ―共和国と新帝国が介入してくる。無論、このダンジョンの調査によってリッダームが強大な力を身に着ける事を阻止するためだ。

 

 そこから今に至るまで幾度となくゴタゴタはあったが、現在では中立の場所として落ち着いており、また国の調査団のみならず一攫千金を狙う者達も集まってくる場所となった。

 

 そして、そうなれば当然その者達を相手に商売を始める者も増え、結果としてこのダンジョンの周りは周囲の国の首都にも劣らぬ一大都市となるのだった。

 

 これが、夢と現実、希望と絶望、自由と無法を抱えもつ”ダンジョン街”のあらましである。

 

 

 

 

 

「………っ。畜生、チクショウ……。もうちょっとくらい待ってくれてもいいじゃないか…」

 

 そのダンジョン街の一角にある酒場において、緑のローブの男が酒を飲みながら管を巻いていた。勿論先ほどの理不尽な追放の事だ。

 

 まあ、あのビットたちのいう事も分かる。つい先日、やっとの思いでダンジョンの地下三十階を踏破できたのだ。これで晴れてSランクチームとして認められた…のだが、能力的な事情により緑のローブの男は既に戦力外に近かったのだ。更に上を目指すために、戦力外を切って新たな戦力を加えるのは当然の行動とは言える。

 

 言えるが、これも当然だが切られた方はたまったものじゃない。いくら行動が正しかろうが不平不満が募るのは当たり前の事だった。

 

 と、その時だ。唐突に酒場が騒がしくなる。グズグズと酒を呷(あお)っていた緑のローブの男がそちらに視線を向けると、一人の男が大勢の仲間を引き連れて酒場に入ってきたのだ。

 

 色黒で筋肉質、背もあのビットよりさらに高く、とさかを模したような変な髪形と明らかにガラの悪そうな男だ。そうして暫くの間仲間と騒いでいた男だったが、不意に酒場の隅っこで一人飲んでいた緑のローブの男と視線が合う。

 

「お、よぉーうディット! どうしたどうした、そんな隅っこで暗い表情して!」

 

 途端に、酒がなみなみとつがれたコップを片手に緑のローブの男…ディットの席へと寄って来る。そのガラの悪さとは対照的に、非常に陽気な性格のようだ。

 

「あ、ミジマルさん…。その…」

 

「あーん、悩み事かぁ? カッカッカ、オーケーオーケー! このミジマルさんが聞いてやるぜ! 話すだけでも結構スッキリするもんだからなぁ!!」

 

 恥ずかしそうに顔を伏せるディットに、男…ミジマルは快活に笑いながらディットの対面の椅子にドカッと腰を下ろした。

 

 

 

 

 

 

「はーん、なるほどねぇ…。ま、確かにいくら合理的でも切られた方からしちゃたまったもんじゃねえわなぁ…」

 

 淡々と先ほどの一部始終を語り終えたディットに、ミジマルは一つ息を吐いてからしみじみと呟く。

 

「ま、でもよ。下手に連れまわされた挙句、魔物どもの囮にされるよりかは良かったんじゃねえか? ビット…だったよな? あのチームはあんまり評判が良くねえから、それくらい平気でやりそうだしよ」

 

 そうして、ディットの言い分に同意しながらもプラス思考に持っていこうとするミジマル。確かに、ビット一味はあのディット追放劇に興味を示さなかった女を除いて全員性格が悪そうだ。そうなってしまっていても不思議ではない。

 

「それに、このままダンジョン潜りを諦める気もないだろ?」

 

「―――それは、勿論です。どうせ帰る場所などありませんし…」

 

 続くミジマルの言葉に、ディットは深く頷く。そう、孤児であり孤児院で育ったディット…その孤児院にしても、ボロボロになるまでこき使われていたので、決死の覚悟で飛び出したのだ。今更帰る場所などない。

 

「おう、良いねぇ良いねぇその意気だ! よーし、今日はミジマルさんの奢りだ! 気が済むまで酒を呷っていきな!!」

 

「へ!? し、しかし、そこまで甘える訳には…」

 

「けっ、んな小せえ事気にすんなって!! 俺を誰だと思ってやがる!? このダンジョン街でナンバーワンの実力者、ミジマルさんだぜぇ!! 金くらい腐るほどあるってもんよ!!」

 

 唐突なミジマルの提案に驚きとめようとするディットだったが、大声で宣言するミジマルに押し切られてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 そして次の日、自宅で就寝していたディットはゆっくりと目を覚ます。窓の外に目をやると、既に日は高く空に昇っていた。

 

「―――こんな時間まで寝ていたのは久しぶりだ。最近はビット達に追いつこうと夜遅くまで修練を積んでいたからな…」

 

 窓から降り注ぐ日の光を凝視しながら、しみじみとそんな事を口にするディット。そうしながら、昨日の事を改めて思い出す。

 

 チームを追放された事。その後ミジマルに慰めて貰った事。…何故ミジマルがあんなに親身になってくれるのかはディットには分からない。昨日だけでなく、以前からずっとそうなのだ。

 

 ミジマル曰く先行投資…らしいが、自分に可能性などあるのだろうか? とディットは首を傾げるばかりだ。ついでに言うと、ミジマルはビットは全く相手にしていなかった。昨日言及こそされなかった物の、この辺りも追放の遠因になっていたかもしれない。

 

 まあ、ミジマルが気にかけているのは別にディットだけではない。可能性云々はともかく、先行投資というのはあまり間違っていないのだろう。

 

 そして、もう一つ思いだした事があった。孤児院時代の事だ。先述の通り暮らしは最悪だったのだが、そんな中において平穏のひと時も無くはなかったのだ。

 

 当時は孤児院の子供たちの中ではディットが最年長だったので、嫌な大人のいう事を聞きながら小さい子達の面倒を見ていたのだが、ある日一人の少女が孤児院に現れたのだ。

 

 綺麗な金色の腰まで届く長髪に、透き通るような青い瞳。身長はディットと同じくらいだったので、恐らくは同年代だと思われる。

 

 そしてその少女の機嫌を常に伺う嫌な大人たち。当時は謎だったが今ならわかる、多分あの少女は貴族の出…それもかなり有力な貴族のご息女だったに違いない。

 

 その後、短い間ではあったがよく孤児院に来ていた少女と共に子供たちの面倒を見てきたのだ。この少女が孤児院に入り浸っていた理由は不明だが、この間、嫌な大人たちの介入も少なく、まさに安寧のひと時だった。

 

「プレア…元気かな…」

 

 その少女の名前を口にするディット。と、その時だった。不意に部屋の外からドンドンと音が聞こえてくる。誰かが玄関の扉を叩いている様だ。

 

「おっと……は、はい、どちら様……う………」

 

 少し慌て気味に玄関の扉を開けるディットだったが、そうして相手の姿を確認した瞬間、ディットは声を詰まらせるとともに身を竦ませた。

 

 しかしそれも無理はないだろう。何せ相手は全身を…文字通り足の先から頭のてっぺんまでを重厚な鎧に身を包まれているのだ。この時点でも異様な雰囲気だが、驚くべきはその身長だ。

 

 信じられない事に、あのミジマルよりも更に一回りは大きい。その巨体から放たれる圧倒的な威圧感にはたとえディットでなくとも初見では怯む事うけあいだろう。

 

「あ、あの、どちら様でしょうか…?」

 

 恐怖で顔を青くしながらも恐る恐るといった感じで尋ねるディットに、鎧の巨人はその背の高さからは到底見合わない様な高めの声質…明らかな女の子の声で、耳を疑う言葉を口にしたのだ!

 

「久しぶりだねお兄ちゃん! ずっと探したんだよ! 元気にしてた!?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。