チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
「うっ…? ん、んん…」
泥がまとわりついたような気怠い感覚と共に目を覚ますディット。最初こそ視界がぼやけていたが、暫く上空を見つめていると、見慣れた天井が見え始めた。どうやら自分の家にいる様だ。
少し間を置いてから体を動かそうとしたが、上手く動かせない。何かに体を縛られている感覚だ。
不思議そうな顔で自分の体に視線をやるディット。そこには、ディットの体に抱きついて眠るプレアの姿があった。
「ふへへ…。お兄ちゃん…」
幸せそうな顔でディットの事を口にするプレア。そのあどけない笑顔にディットの心も穏やかになる…筈だったのだが、
「お兄ちゃんは…美味しいなあ…」
その笑顔のまま不穏な事を口走ると同時に、ディットの体を舐めるプレア。結局、ディットは顔を青ざめさせてプレアの抱きつきから何とか脱出しようともがき暴れる羽目になるのだった。
全員が起床を終え、ダンジョン探索の再開の準備を整えている時だった。不意に玄関の扉をトントンと叩く音が聞こえてくる。
「はい、どちら様で…って、ミジマルさん? おはようございます。どうしたんですか急に?」
「おうディット。おはようさん。プリ………ああ、えーと、プレアって奴いるかい?」
「プレアですか? いますけど、ミジマルさんってプレアと知り合いだったんですか?」
「いや、昨日酒場で初めて会ったばかりだ。ばかりなんだが、奴もダンジョン攻略を始めているらしいから、ちょっとダンジョンの事で言いたい事があってな…」
珍しい来訪者に僅かに首を傾げながらも、プレアを呼ぼうとするディット。が、次の瞬間ディットの背後から信じられない程の濃密な殺気が放出された!
「っ!?」
慌てて振り返るディットだったが、そこにいるのはいつもの様子のプレアだ。殺気もすでに消えている。
「おはようミジマルさん! 昨日はどうもです! お兄ちゃん、私もこの人とちょっとお話があるから先に準備を済ませておいて」
快活にミジマルに挨拶をするプレア。そして、ディットが口を挟む間もなくプレアがミジマルを連れて少し遠くへ移動してしまった。
そんな二人をじっと見つめるディット。場所そのものを移すつもりはないのを見るに、話自体はすぐ終わらせるつもりなのだろうが、それでもコソコソされてしまうとやはり気になるものだ。
「ふふ…。ディットさん、お二人が気になりますか~?」
「あ、ああ…いや…まあ…」
「けっ! もっと素直になれよ! 今まで自分にべたべただった美少女が他の男を連れてんだ。気にならねえ訳ねぇよなぁ?」
そわそわしているディットに、安堵させるように優しく声を掛けてくるマールと、直球でいじって来るオルガン。しかしディットは曖昧な返事をするのみだ。
そうこうしているうちにミジマルは何処かへ行き、プレアも戻ってきた。本当に数分程度で終わる短い話だった様だ。
「…プレア。何の話をしてたか聞いても良いか?」
「んー? さっきも言った通りダンジョンの話だよ。ミジマルさん、俺の到達階層まで案内してやる…だってさ。あと、無限の神豆の事も話したから、それ関係で悩み事があったらミジマルさんに相談してみるのもいいかも。やっぱ、男同士じゃないと話せないお話とかもあるでしょ?」
おずおずと尋ねるディットに答えるプレアだったが、ここで唐突に顔をニマァ…と歪ませる。
「もしかしてお兄ちゃん…私がミジマルさんと一緒にいて…妬いちゃった?」
そしてぶつけられる意地悪な質問。どうやらディットの背後にいたニコニコ顔のマールとニヤニヤ顔のオルガンを見て察したらしい。
「ばっ…! なっ…! そ、そんな訳…っ!」
「むはーっ! もう、お兄ちゃんは可愛いなぁ!! 大丈夫だいじょーぶ!! 私は何があってもお兄ちゃん一筋だから! お兄ちゃんのお願いは何でも聞いちゃうからねーっ!!」
慌てて否定するディットを楽しそうに抱きしめるプレア。その様子をマールはやはりニコニコと眺めていたが、オルガンはふんっ…と鼻を鳴らし何処かへ行こうとする。
「オルガン、何処に行くんだ?」
「一旦組織に戻るんだよ。顔も出さねぇとだし、それ以上に金、渡さねえといけねえんだ」
ディットの問いにそれだけ言うと、先ほどとは一転、不機嫌そうに行ってしまった。
「いわゆる上納金…という奴ですね~。恐らく表ではアンデッド…? とやらの開放やらなんやら宣っていると思われますが、実態はあんなものでしょう~…。さて、私も行かなくては~」
その後姿を見てしんみりと語るマールだったが、その彼女もどこかへ行く素振りを見せる。
「マールは何処へ?」
「私はプレア様にあるお仕事を任されましたので~。しばらく顔は出せないと思いますが、必ず帰ってきますので心配しないでください~。それじゃアールちゃん。プレア様の身の回りの事はお願いね~」
「分かりました。姉さん」
ディットの質問に答えた後、いつの間にか近くに来ていたアールに後の事を託し、マールも出て行ってしまった。
が、その事に思いを馳せる暇もなく、入れ替わるように新たな客人が二人も現れたのだ。三角帽子をかぶった女とシスターの二人…そう、あのビットの後ろにいたエリクシルに異常な反応を見せた二人だ。
「おはよう。今日はアンタに用があってきたの」
「用があるんならまずは名乗るのが礼儀じゃない? お兄ちゃん以外はアンタたちの事なんか全く知らないんだし」
警戒するディット達にまずは挨拶をする三角帽子の女。しかしプレアから厳しい言葉が飛んでくる。
「………。私はノーザ」
「
その言葉に不愉快そうに顔を歪めながらも間を置いて名乗る三角帽子の女…ノーザ。その後ろでシスター…ホリナも名乗る。
ところが、ここで会話が途切れてしまう。何かを言おうとしては口を閉じるノーザ。両手を強く握りしめ、表情も青ざめているのを見るに、嫌だけどやるしかない…といった感じの雰囲気が見て取れる。
そして、覚悟を決めたのだろう。くっ…とうめき声を一瞬だけ上げたと次の瞬間…なんとディットの前でいきなり土下座を始めたのだ!
「お、お願い! アンタのエリクシルを私達に譲ってくれない!? 今すぐは無理だけど、お礼は必ずするから…どうか、どうか…っ!!」
そうして、絞り出すような声で懇願してくるノーザ。見ると傍にいるホリナも同じく土下座している。
「ちょっと、突然そんなことされても迷惑なんだけど。せめて理由を…」
そんな二人に、しかしプレアは冷たくあしらおうとするが、それをディットが手で制して止める。
「…ササメア。エリクシルの入った小箱を取ってきてくれ」
「え、あ、は、はい…」
「お兄ちゃん。この二人にあげちゃうの?」
「ああ。どうせ片手間で手に入ったものだ。なにやら事情もありそうだし、ここは気前よくいこう」
そう言って、ササメアから受け取った小箱をノーザに手渡すディット。それをプレアは不服そうに、ササメアとアールも不可解そうな様子で見つめている。
一方、ノーザは受け取った小箱から中身を取り出し、それをホリナと一緒に確認し始めた。
「―――。間違いありません! これはエリクシルです!!」
「…やった……やった……っ! これで…これであの人の病気も治る…っ!!」
ホリナのお墨付きにノーザは心底嬉しそうに顔をほころばせる。
「ディット、アンタっ! 助かったわ! このお礼は必ず」
「礼などいらん。それより、二度と俺達の前に姿を現さないでくれ」
その勢いのままディットに礼を言うノーザだったが、しかしディットはその言葉を冷たく突き放すのだった。