チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
ダンジョン探索の準備を終えたディット一行。そしてダンジョンの入り口に向かうと、そこにはミジマルと緑色の髪に耳の先端がとがった女性が待ち構えていた。いつもの取り巻きは連れていない。
「よおディット。これから潜るんだよな? 早速だがどうする? 俺と同じ階層まで飛んでみるかい?」
開口一番、前置きも無しに尋ねてくるミジマル。が、これは既に満場一致でミジマルについて行くことを決めていたので、ディットは首を縦に振った。
「分かった。が、その前に頼みがあるんだ。お前らの力を見せて貰えないか? 何とかとかいう豆の話はそこの…プレアから聞いたが、やはり実際に見てみたくてな…」
ミジマルの申し出にディットは後ろにいたプレア、アール、ササメアの三人に視線を送る。そして、三人から了承の視線を向けられると、ディットは再びミジマルに視線を向け「分かりました」と答えた。
「よし…。ならまずは移動するぞ。場所は地下50階。相手は…言わなくても分かるな?」
ミジマルの確認にディットは黙って頷く。そして…。
地下30階から影魔物という特殊な魔物が出るように、このダンジョンは特定階から厄介な…あるいは強力な魔物が出没し始める傾向があるのでは…? という話は有名だ。
地下50階…その次の階に降りる階段前に鎮座する赤い色の巨体。爬虫類を思わせる体躯に、その巨体をも余裕で覆い隠せそうな巨大な翼。口からのぞく牙は全てを噛み砕きそうなほど凶悪に尖り連なり、鈍く輝く爪はあらゆるものを引き裂けそうな鋭さを見せている。
ドラゴン…おとぎ話などでよく耳にする架空の存在…だった筈のもの。それが今、ディット達の前に立ち塞がっているのだ。影魔物が”厄介”ならば、このドラゴンは間違いなく”強力”だろう。
「こ、これがドラゴン…か」
「うわーっ! おっきいいーっ! ホントにおっきいなーっ!!」
「本当に凄く大きい…。こ、こんなのに本当に勝てるの…?」
「分かりませんが、やってみるしかありませんね…」
ディット、ササメア、アールの三人は目の前の脅威に明らかに怯んでいる。が、プレアだけはまるで少年の様に大はしゃぎしていた。
「確かに厳しいかもしれないけど、やってみるしかないよね! どりゃあああっ!!」
そのテンションのまま、ディットが止める間もなくドラゴンに突貫するプレア。対して、ドラゴンはプレアめがけて腕を振り下ろしてきた。
が、ここで信じがたい事が起こる。なんと、プレアは巨大なドラゴンの手から繰り出された叩きつけを、剣で受け止めてしまったのだ!
「ぐっ……あ、あれ…?」
ミジマルすらをも握りつぶせそうなほどの、最早巨岩と形容してもいい程の大きな手により叩きつけ。如何に立派な体躯を誇るプレアと言えど、まともに食らえばただでは済まない…筈だ。
しかし、実際は受け止められた。…どころか、心なしかプレアにはまだ余裕が感じられる。
「…っ! プレア、反撃だっ!」
その場にいる全員…防御したプレアも、そして攻撃したドラゴンからさえも感じる…驚愕に動きが止まる中、いち早く我に返ったディットがプレアに指示を出す。
「あっ、う、うんっ! えいっ!!」
その声を受け、慌ててドラゴンの手を受け止めたまま剣を振りぬくプレア。すると、剣も魔法も通さない…筈だった鱗に覆われたドラゴンの手が、あっさりと切り飛ばされてしまったのだ!
「ギャアアアアアアムッ!!」
明らかな激痛による悲鳴を上げるドラゴン。だが、次の瞬間には大きく息を吸い込み始めた。
「くるぞっ! ブレス攻撃だっ!!」
その様子を遠くから観戦していたミジマルが大声でディット達に注意を飛ばす。すると、今度はササメアがドラゴンの前に躍り出て、杖をドラゴンに向けて構えたのだ。その直後、ササメアを起点に後方を守るように透明な壁が出来る。
次の瞬間、ドラゴンが勢いよく口を開き、そこから放たれた火炎放射で辺り一面を焼き払う。その勢いはすさまじく、周囲を瞬く間に火の海にしてしまう程だった。
しかし、暫くして火が収まると、そこには壁に守られ傷一つないササメアたちの姿が。
「あのドラゴンのブレスを完全に無効化してしまうとは…」
ササメアの張ったあまりにも強力な障壁に、ミジマルの連れていた女性が唸っている。が、間髪入れずにササメアは今度は詠唱の体勢に入った。
「これより来たるは神の裁き…汝、轟雷の鉄槌にその身を晒せ! トール・ハンマー!!!」
詠唱と共に杖を振り下ろすササメア。直後、雷がドラゴンの頭上から降り注いだのだが、その威力の凄まじい事! 耳をつんざくような轟音と共に、たったの一撃でドラゴンを消し炭にしてしまったのだ!
「まさか…今のは”
「………神呪?」
「ええ…。
ドラゴンを一方的に仕留めてしまったプレア、ササメアコンビに目を見開いているミジマルの横から聞こえてくる連れの女性の声に、ハッと我に返るミジマル。そんなミジマルに今のササメアの魔法を説明する女性だが、その体は微かに震えている。どうやら、ササメアの使った魔法がよほどショックだったようだ。
「…な、何か意外とあっさり勝っちゃいましたね」
「え~…。なんかつまんなーい…。ドラゴンってこんな程度なの~?」
「こ、これはレベルが高すぎるからなのか? それとも、単純にこの二人が強すぎるのか?」
「恐らく………両方か…と」
一方、プレアとササメアは何か拍子抜けした様子で、プレアに至っては不満げに頬を膨らませている。が、そんな二人を見て、ディットとアールは戦慄していた。
そうして暫く場が固まっていたが、不意にミジマルの連れの女がディット達に近づいてきた。
「皆さま、お疲れ様です。そして、お見事でした。あのドラゴンをこうも易々と打ち砕くとは、予想外と言うほかありません」
真顔で称賛の声を送る女だったが、プレアとササメアはともかく、何もしていないディットとアールからすれば困惑するしかない。
「申し遅れました。私の名はエールヒ。エルフの一族です。皆さまには聞きなれない種族の名前でしょうが、この先にエルフの村がありますのでご案内します。こちらへ…」
そんな二人を他所に、ただ淡々と説明する女…エールヒ。そして、説明を終えると階段を下りて行ってしまうのだった。