チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
「ミジマルさん…そのエルフというのは一体どういう種族なんですか…?」
階段を下りていく途中で、ディットが同行しているミジマルに聞く。今までと比べても妙に長い階段に加え、その場にいるミジマル以外の全員が未知の種族に出会う…という緊張に押し黙っているので、その緊張に耐えられなかくて口を開いてしまった様だ。
「そうだな…。非常に温厚で生真面目な種族だ。俺もまだ付き合いは浅いが、今までエルフの連中が怒っているところを見た事がない。また、あらゆる技術に精通した高い文明を持つ種族でもある」
「あれを”エルフの文明”と呼んでいいのかは正直疑問ですね…」
淡々と答えるミジマルに、先導していたエールヒも口を開く。が、このエールヒの意味深な言葉にディット達は首をひねるばかりだ。
「後、驚くことにエルフは女しかいない。だが、にわかには信じがたいがどうやら彼女達は不老の存在らしい…。だから、女しかいなくても特に困らねえんだとよ…」
「寿命…という奴ですね。私達も使っている機械が壊れる所などを見ているので、そういう概念がある事は知っていますが、私達そのものが寿命で死んだ例は今まで見た事がありませんね」
困惑気に語り続けるミジマルに感情を出さずに補足を口にするエールヒ。しかし、不老の存在などそんなものがこの世に存在するのか…? とでも言わんばかりにディット達は目を丸くしてエールヒを見つめる。
「―――さあ、着きました…が、少々お待ちください」
そうこうしているうちに階段は終わり目の前に大きな扉が現れる。が、ここでエールヒは一旦全員を制止し、懐から何か薄い板の様な物を取り出し、それを己の耳に当てたのだ。
「エールヒです。……昨日お伝えした通り、人間の男性一人、女性三人、あとミジマルをお連れしました。………はい……ええ…ええ……はい、分かりました」
何やら独り言を喋っているエールヒだが、よく耳を澄ますと彼女が持っている薄い板からも声が聞こえてくる。どうやら、何かと会話をしている様だ。
「では行きましょうか。この扉を抜けてすぐのところにカーゴを止めておりますので…」
薄い板を懐にしまいながら、そう言って扉を開けるエールヒ。その扉の先に広がっていた景色…基本的には31階と同じく草原と森林が混じり遠くには山も見える平原だった。しかし、その中において異様な建造物が集中している異質な場所があった。
「あれがエルフの村です。皆さん、あのカーゴにお乗りください」
そう言ってエールヒが指差した先には、細長く何か所かに中に入るための扉が付いた鉄の箱があった。唐突な指示に困惑しながらもその箱の中に入るディット一行。そして、ミジマルとエールヒを加えた全員が乗り、中にあった座席に座った途端、何と鉄の箱はゆっくりと動き出したのだ!
「わ、わわ…っ!?」
「は、箱が…宙に浮いて、動いてるっ!?」
謎の箱から突然乗り物へと変化した事に驚きの声を上げるササメアと、同じく驚きついていた窓から外を見遣るプレア。ディットとアールも驚きに言葉を失っている様だ。
「カーゴっていう乗りもんだそうだ。良く分かんねぇが、なんか不思議な力で動いてるらしい。俺も初めて見た時は仲間共々驚いたもんだ」
「動力自体は電気の力…だそうです。その電機の力をどこから出しているのかは未だ解明されていませんが…」
「解明されていない…?」
そんなディット一行を見て気持ちはわかる…とばかりにうんうんと首を縦に振りながら口を開くミジマルと、この乗り物の動力を解説するエールヒだったが、気になる言い回しにディットが疑問の声を上げる。
「はい、これらは全て古代の遺物となってるんです。幸いにも操作方法と問題が発生した時の対応方法は記載されていたので運用自体は可能なのですが、肝心の構造が全く未知の状態で…」
今までずっと無表情のままだったエールヒが、ここで初めて少し困った様子の表情となる。聞いている方も、本当に大丈夫なのだろうか…? と、不安になる顔つきだ。
「ところで、私達はどちらへ連れていかれるのでしょうか?」
そしてもう一つ、当然の疑問がアールから放たれる。が、これに対し、エールヒは表情を元に戻しながら何でもない様子で言い放った。
「これから皆さんには私達エルフ族の首席に会っていただきます」
カチコチに緊張しているディット一行を乗せ、カーゴはエルフの村を突き進む。村の中に合った天を衝くほどの高さを誇る、塔と言っても差し支えの無い建造物に向かって。
最初、首席という言葉にピンと来ていなかったディット一行だが、
「首席ってのは俺達の世界で言う、王や皇帝の意味だぜ…」
というミジマルの説明に、全員一気に気持ちを張り詰めさせてしまったのだ。そして、そう説明するミジマルにも何と言うか諦めの雰囲気が漂っている。恐らく、彼もはじめてこの地に降り立った時、その主席とやらに会わせられたのだろう。
誰も口開かない重苦しい沈黙が続く中、カーゴは目的地に到着…そのまま建造物の中に入り、今度は何と真上に動き始めたのだ。
「アールヴ首席は地上60階の会議室でお待ちです」
カーゴが昇り始めると同時にどこまで登るのかを説明するエールヒ。ぶっちゃけダンジョンの階層構造と全くあっていないが、もう何でもありの様相を呈してきたこのダンジョンに、今更そんな合理性を求めるのも詮ない話なのだろう。
などとディット達がもやもやしているうちに、60階に到達。その付近にカーゴが着地するとともに扉が開いた。そして、カーゴを降りたディット達の目の前に現れるは今まで見た事もない様な巨大且つ堅固な、そして無機質な感じの扉だ。
「ようこそ、エルフの村会議室へ」
「お話は伺っております。どうぞ中へ」
その扉の番をしているらしき棒を手に持った二人のエルフが、ディット達に恭しくお辞儀をし、扉の横についていたスイッチらしきものを同時に押す。すると、扉に何か文様が走ったと思うと、重い音を上げて扉が内側に開き始めたのだ。
中は広く、床と天井は全てが純白だ。更に壁は一面が鏡張りとなっており、外の景色が一望できるようになっている。一応部屋の隅や机の上には観賞用らしき花が飾られたりはしているが、全体的には高潔だが殺風景…というのが部屋全体の第一印象だろう。
そして、その部屋の窓側中央に一人のエルフがディット達の方を向いていた。
「皆さんこんにちは。私の名はアールヴ…一応、今期の首席を任されている者です」