チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
ビットを退散させたその日は大人しく帰路につき、家でゆっくりと休養を取ったディット。が、残念ながらディットの”疲労”はこの程度ではとても癒えるものではなかったのだ。
「お兄ちゃん! おはよう!」
「うっ…!? ………あ、ああ、プレアか…。お、おはよう…」
朝、就寝中だったディットを起こしに来たプレア。しかし、ディットはプレアの声を聴くや否や跳び上がって跳ね起き、プレアに警戒心丸出しの視線を向けていた。
「ディットさん、朝ごはん美味しいですか?」
「―――う、うん…。美味しいよ…」
「ディット様、今日のエルフ村訪問の荷物はこちらで宜しいですか?」
「―――え、えと…。ああ、そうだな…」
朝食の時のササメアとの会話も、出立の準備中のアールとの会話もどこかぎこちない。なにやら、彼女達に壁を作っている感じだ。
「村の観光ですね。でしたら、私のお勧めはこことここと………」
「わ、分かった! ちょ、ちょっとプレア達にも伝えてくるよ!」
そして、特に顕著なのがヤシュティーとの会話時だ。楽しそうに話しかけてくるヤシュティーに、しかしディットはあからさまに緊張して、ヤシュティーの話が終わる前に脱兎の如く移動してしまったのだ。上記三人の壁は薄い膜の様な物だが、ヤシュティーに対してはハッキリと厚い壁を作っているのが分かるのだ。
「お兄ちゃん、明らかに私達を避けてるよね…」
ダンジョンに向かって歩くディット一行。が、少し距離を置いて先導しているディットを見つめながら、ポツリとプレアが呟いた。
「あ、やっぱりプレアさんもそう思います? ウチも感じました」
「何やら怯えているようにも見えますが、どちらにしてもあのままではいけませんね」
「怯えている…。やはり、私達がやり過ぎたのがいけなかったのでしょうか…?」
そのプレアの声に呼応するように、ササメア、アール、ヤシュティーも口を開く。特にヤシュティーは明らかな後悔の感情が声に出ていた。
「ああ~、うん、まあ、それだけじゃないとは思うよ…というか、私達もあんまりヤシュティーちゃんを責められる立場にないけどね…」
そんなヤシュティーに対し、フォローを入れるプレア。確かに、二十人近くで逆レイプまがいの性交を強要してきたヤシュティー達も問題かもしれないが、それを言えば、プレアもササメアと一緒に殆ど無理やり押し倒したようなものだ。そこにディットの意思があったかと言われれば正直怪しい。それらが、心労として今のディットに現れてしまっているのだろう。
「とにかく、このままじゃ駄目だね。何か対策を講じないと…」
過去の出来事を振り払うように頭を左右に振り、改めて口を開くプレア。しかし、心労に対する策などそうそう思いつく筈もなく、全員でうんうんと唸る羽目になってしまうのだった。
そして場所は再び昨日の会議室。ディット達の対面にいるのは、しっかりと服装を整えたアールヴだ。昨日の淫靡な姿の面影は何処にもない。
「おはようございます皆さん。…おや、ベラーリはどちらに?」
「―――べ、ベラーリなら、面白そうなものを見つけたと昨日…」
柔和な笑みでいなくなった同胞を尋ねてくるアールヴに、やはりぎこちない様子で返すディット。それを聞いて、あらあら…とばかりにクスクスと笑うアールヴ。ホントあの子はしょうがない子…とでも言わんばかりだ。
「わかりました。まあ、あの子の事ですからその内飽きて帰って来るでしょう。さて、本題ですが…この村の探索をしたいという申し出。承りました。まずはこちらをお持ちください」
そう言って、アールヴが目配せをする。すると、傍に控えていたエルフがディット達の前に四つの小箱を差し出したのだ。
「その中には『貴賓用カードキー』が入っています。この村に点在する各種施設に入場するにはそのカードキーが必要となりますので、大切に保管してください」
アールヴの説明を受けたディットが小箱を開け中を確認する。中には、薄い金色のカードが一枚入っていた。
「そのカードキーを持っていれば、自動で承認して入り口が開かれます。また、そのカードキーに行き先を伝えると、その場所まで矢印で誘導もしてくれる優れものとなっております。施設名はそのカードキーの裏に記載されておりますので…」
カードキーについて手短に説明してくれるアールヴ。しかし、その説明を終え、いざ探索を始めようとした矢先に、アールヴはディットに視線を送ってきた。そう、あの淫靡な視線だ。明らかに、また機会があれば楽しみましょう…と誘っている。
が、今のディットはこの視線に怯える事しか出来ないのだった。
エルフの村にはいくつもの施設があったが、まずディット一行が訪れたのは鍛冶施設だった。やはり戦闘がメインになりやすい探検者としては最初に押さえておきたい場所だ。
非常に文明が進んでいたエルフの村ではあったが、意外な事に普通の剣や槍、弓といったディット達にもなじみの深い武具も取り扱ってはいた。
「こ、これ…。オリハルコン製って本当なんですか…?」
その内の槍について店員から説明を受けたプレアが、信じられないものを見るような目で槍を手に取りながら震えた口調で尋ねていた。
オリハルコン。世界最硬の鉱物。そのあまりの硬さゆえに、いまだに加工技術が確立されておらず研究が続けられている鉱物だ。
「ええ、本当よ。それとヒヒイロカネをスリーディークラフターにぶち込んで、あとは図面をイメージドレイナーに思い描けば完成。30分くらいで出来るわよ」
その、ある意味鍛冶屋泣かせの筈の鉱物を加工したと頷く店員。訳の分からない名詞もさることながら、そもそも鍛冶が30分で終わる…なんて事からして聞いた事がない。儀式用や将軍以上の高貴な者が所有する高価な剣なら数週間、国が兵に配る量産型の槍ですら数日はかかるのだ。
「…っ、ふんっ! ぐ…ぬぬぬぬぬ…っ!! …っ、はあ、はあ…。ダメ、全く曲がりすらしない。その辺の鉄槍くらいなら簡単に折れるのに…。本当にオリハルコン製っぽい…」
槍を持ち、必死の声を上げて柄を折り曲げようとするプレアだったが、曲がるどころか形状すら変化しない槍を前に、確かにオリハルコン製である事を認めざるを得なくなったようだ。
「て…鉄槍を…折る…? え、素手で…? え、え、ど、どうやって…?」
「あの…一応商品だから、あんまり乱暴はしないでくれない…?」
そして、その時にはなったプレアの衝撃的な言葉にササメアは驚愕に声を震わせ、プレアの唐突な凶行に店員は苦言を呈するのだった。