チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
鍛冶施設を見学した後、他の施設も回る事にしたディット一行。が、改めてエルフの村の地図を見て分かった事だが、村内にある施設の殆どが何らかの娯楽施設なのだ。
温泉や按摩といったおなじみの物から、夢実体験などという聞いた事もない物、運動用の広大な敷地に何処かディット達にも馴染みのある運動用具が置かれているかと思えば、仮想運動というやはり聞いた事もない場所もあり、とにかくほかの施設に対して比率が膨大だ。流石暇を持て余しているというだけはある。
そんな様々な施設を見ていくうちに最初に反応したのはササメアだ。
「ウチ、ちょっとここに興味があります…」
と、指差したのは図書・情報写植館と印字された場所。
「図書か…確かに情報は欲しい所だ」
「ええ、私も好きな施設の一つです。本は色々な世界に旅立たせてくれます」
そのササメアに呼応するようにディットとヤシュティーも頷く。
「ええーっ!? こんな未知の場所にまで来てお勉強なんて嫌だよーっ!?」
一方、プレアはもうあからさまに嫌そうに声を張り上げる。その後ろではアールも何やら渋い顔。どうやらこの二人は勉強関連は苦手なようだ。まあ、プレアは見るからに勉強より体を動かしていた方が好き…という感じなのでこの反応も予想内ではあるが、一見お固く見えるアールも勉強にあまりいい顔をしないのはディットには少し意外だった。
「と、言われても正直俺もエルフの村の本というのは気になる…」
「やだやだーっ! もっと他のところ行こうよーっ! ほら、何か料理を振舞ってくれる場所とかもあるよっ! 絶対そっちの方が面白いよーっ!!」
それでも本に意思を示すディットに、しかしプレアは嫌々と駄々をこねる。あのビットの誘いすら、ディットの役に立つならと受けようとしたプレアがここまで嫌がるとは、どうやら筋金入りの勉強嫌いのようだ。
「…ふう、仕方ないな。ササメア、俺はプレアを飯屋に連れて行くから、情報収集を頼んで良いか?」
「分かりました。…でも、次は一緒に本を読みましょうね」
「ああ、機会があればな」
ディットの提案に、ササメアは少し寂し気にしながらも頷く。と、同時に次の約束も結ぶ。口こそ開かないがヤシュティーも何か期待に満ちた目をディットに向けていた。
「いえーっ! やったーっ! お兄ちゃん大好き! ササメアちゃんもありがとーっ!」
「どういたしまして。でも、次は譲りませんよ?」
「オッケーオッケー! 次はササメアちゃんに譲っちゃう!」
対して、プレアは嬉しそうにディットに抱きつきながら、ディットに好意を、ササメアにも礼を言う。アールも言葉にこそ出さないが何処かホッとしている雰囲気だ。そんなプレアに少し挑発的な仕草で返すササメアだったが、プレアは軽く流してしまうのだった。
「んまーい! この肉は美味いぞーっ!!」
一本のぶっとい骨に肉が付いた見るからに原始的な料理。その肉を丸かじりしたプレアが、肉を高々と掲げて叫ぶ。
「一見、調理など何もしていない感じだが、確かに信じられないほど美味い…。これは一体…?」
「何と言いますか、甘味、苦味、辛味といった味覚全てをフル活用させらている感じです」
その隣では、同じ肉に口を付けたディットとアールも唸っていた。
「おおーっ、その反応は新鮮だなぁ! 毎日食べてるとこれが普通になっちまって、美味いもんを食ってるっていう感覚が麻痺してくるんだよ!」
そんな三人の様子を見ていた店員エルフが、何やら嬉しそうに話しかけてきた。恐らくは、快哉を上げるプレアと驚くディット、アールを見て、その感情が伝わっているのだろう。
「ふっふっふ…。その味の正体はこれ! 万能調味料”一つ覚え”! 食べた物のイメージ通りの味を演出してくれるって逸品だ! しかも、食べ物の種類によって味もちゃんと変わる! 肉なら肉のイメージを、果物なら果物のイメージを、野菜なら野菜のイメージを…っていう優れものさ!」
この料理の秘訣を視線で問うてくるディットとアールに対し、店員は一つの小瓶をドンと机の上において説明をする。小瓶の中に入っている神々しく金色に光る粉を見るに、確かに何かそんな反則じみた効果がありそうな感じはする。
「あ、あの…これ、いくらくらい…」
「欲しいのか? いいよいいよ! 折角来てくれたんだ! タダであげるよ!!」
その小瓶を物欲しそうに見つめながら値段を聞こうとしたプレアだが、返って来たのはあまりに気前のいい返事。
「え、でも…」
しかし、プレアはそう言って自分の背中を気にしだす。そこには、最初の鍛冶施設でやはり同じような理由でタダで貰った例の槍が背負われていたのだ。
「気にしなさんな! これもその槍もいつでも作れるからさ! そもそも、本来ならこんな販売形式にする必要すらないんだよね! 原料なら幾らでもあるし!!」
「成程、俺達の様な見ず知らずの他人にホイホイ物をお裾分けできる程に有り余った物資。確かにこれなら、暇を持て余すというのも頷ける…」
が、そんなプレアの遠慮を気さくに笑い飛ばす店員。その様子を見て、ディットは小さな声で呟くのだった。
「ねえ、お兄ちゃん…今日の夜の事なんだけど…」
料理も一段落付き、一服をしていたディットに唐突にかかるプレアの声。その内容に、ディットは声こそださねどあからさまに狼狽し始めた。
「今までずっと私達主体で事をしてたじゃない? 今回からはお兄ちゃんが主体で始めて欲しいんだ…」
そのディットの様子を認識しながらも、話を続けるプレア。まだ店の中にいるので声こそ小さくハッキリとしたことは言わないが、ナニの話なのは明らかだ。
「そ、それって…」
「うん、まあ…。簡単に言えば、夜這い…ってやつ? かな…」
困惑気に聞き返すディットに、プレアは恥ずかしそうに答える。食事直後という事で兜を脱いでいるので、その恥じらいの表情もしっかりと確認できた。更に、その横ではアールも微動だにはせずとも少し頬が染まっている。
「勿論、気分が乗らなければしなくてもいいんだけど…」
そして、そう口を開くプレア。主導権はあくまでディットにあると伝えたいのだろうが、この言葉を口にした瞬間、アール共々目に見えて落ち込んでしまったのだ。
いくら心労が溜まっているとはいえ、やはりディットも男。こんないじらしい様子を見せられて、気分が乗らないから…等という下らない理由でこの誘いを蹴るなど論外だ。
(やっぱり、なんだかんだ言って主導権は女にあるんだよなぁ…)
と、あらためて実感してから夜中に向けて気合を入れなおすのだった。