チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
「そりゃあっ!」
「でえいっ!!」
二人の男が突き出した槍での刺突が目の前の怪物…50階の階段を守っていたドラゴンにそっくりだが、それより二回りほど小型だ…に突き刺さる。
その攻撃を受け、怪物…小型ドラゴンは悲鳴を上げながら絶命した。
「今だ、撃てっ、射かけろっ!!」
その隣では、ミジマルが”影破のたいまつ”を掲げながら、後ろにいる槍持ちとは別の男二人とエールヒに号令を出す。
「はっ! せいやっ!」「ブリズオンっ!」「カンデオンっ!!」
その連続の射撃と強力な氷結、電撃魔法により、ミジマルの目の前にいた影魔物…これも30階の階段を守っっていた影魔物達の親分並みの大きさだ…の集団を次々に仕留めていく。流石にダンジョン街ナンバーワンのパーティーの名は伊達ではなく、並のパーティーでは一体ですら全滅の危険性が大きな魔物どもも危なげなく打ち倒していく。
だが、倒しても倒しても次々に新手が現れる。まるで、ダンジョン自体がこの怪物どもを作り出しているかのようだ。
「―――くそっ! 駄目だ、やはり数が多すぎるっ! みんな、一旦引くぞっ!」
「ミジマルさんっ…! おのれ、小癪な化け物どもめっ! 60階への階段は目の前だというのに何度も何度も邪魔しおって…!」
撤退の判断を下すミジマルに、先ほどエールヒと共に魔法を繰り出した魔術師風の男が悔しそうに呻きながらもミジマルに追随しようとする。
「まだだよっ! こんな程度で引けはしないっ!」
そのミジマル達の背後から躍り出てきたのがプレアだ。例のオリハルコン製の槍を横なぎに振るうと、影破のたいまつの光も当たっていない筈の影魔物どもが一撃で全員吹き飛ばされてしまったのだ!
「なっ!?」
そのあまりの威力にミジマルを含め全員が目を見開くが、驚きの光景はまだ終わらない。そのプレアの後ろから出てきたササメアが、杖を構えて詠唱を開始したのだ。
「これより来たるは神の裁き…終末の炎は全てを喰らい焼き尽くさん! スルト・ブリンガー!」
詠唱と同時に杖を振るうササメア。その杖の軌跡から放たれた豪炎は、詠唱の文言通りに新たに現れた怪物たちもろとも喰らいつき、灰すら残さない程に焼き尽くしてしまう!
「ば、化け物共が…」
「あ、跡形もなく消えた…」
「す、すげえ…滅茶苦茶強え…」
「エールヒから話は聞いていたが、本当にあの歳で神呪を使えるのか…」
二人の圧倒的な実力を前に、ミジマルの取り巻き達はただただ驚愕し放心するのだった。
現在地はダンジョンの59階。ここがミジマルチームの最高到達点だそうだ。必然、人類の最高到達点ともなる。
ミジマル達の話によれば、この59階も下への階段自体は見つけているのだが、その近辺に巣くう魔物どもを討伐しきる事がなかなか出来ずにいるらしかった。それに興味を持ったプレアが、ディット達を連れて同行しようと申し出たのだ。
ディットとしてもこの同行に文句はなかったし、ミジマルチームを含む他からも意見は出なかったので、同行しそして今に至るという訳だ。
「ぐ…ぐぐ…っ! な、なんつー重さだ…! これがオリハルコン製の武器…!」
「くっ…こ、これを片手で振り回しているのか…。体格が良いとは言え、それでも女性でそんな荒業が出来るとはますます信じられん…」
先ほど小型ドラゴンを倒した、槍で武装していた男二人はプレアの槍を借り受け、その重さとこれを扱うプレアの膂力に目を見開いていた。実際、この二人もミジマルに僅かに劣る程度で、十分素晴らしいガタイをしている。そんな男が二人がかりで持ってもかなり重いと感じる槍を片手で振り回しもすれば、驚かれもするだろう。
「え? あ、はい…。殆どの神呪は使えますけど…」
一方、弓使いと魔術師の男、そしてエールヒはササメアに言い寄っていた。
「ほー、あの威力の魔法を殆どの種類を使えると。こりゃまた、大した少女だな!」
「我々エルフも魔法は得意な種族ですが、神呪となると流石に一筋縄で習得…とはいきません。これはもう、素晴らしい才能を持っていたというしかありませんね」
少し戸惑いがちに答えるササメアに、弓使いとエールヒは絶賛の言葉を送る。
「殆どの神呪を…? バカな、神呪とはその名の通り神の魂を借り受ける古代高等魔法。その習得難度は数十年の厳しい修行の末に一つ覚えられるかどうか…というレベルだぞ。君の才能は認めるが、流石に殆どの神呪が使えるというのは荒唐無稽過ぎると思うのだがな…」
一方、魔術師の男は懐疑的な視線をササメアに向ける。対して、ササメアも困惑気な顔つきだ。
「それじゃあよ、試しに一番難しい神呪とやらを披露してもらったら良いんじゃないか? それが出来ればお前も納得するだろ?」
「一番難しいですか…。それでは、メギドアークでも発動してもらいましょう。私の知る限りでは、攻撃で一番取得困難な神呪はこの魔法ですからね」
咄嗟のミジマルの提案に、魔術師の男も一つ注文をする。お前の才能をもってしても、この魔法は使えまい…? とでも言いたげな表情で。が、
「…分かりました。それで納得するのなら」
と、微塵のためらいもなく詠唱の体勢に入る。まるで、そんなもの出来て当たり前だと言わんばかりに。
「これより来たるは神の裁き…。消えよ罪深き者。無間地獄の底にて、偉大なる彼の者の永劫なる裁きの雷に打たれ続けよ! フォーエンス・メギドアーク!」
高らかに詠唱を終えるササメア。すると、杖の周りを稲妻がまとわりつき始める。以前のトール・ハンマーと似ているが、あちらは稲妻らしい真っ白な光を放っていたのに比べ、今回の稲妻は黒い輝きを放っている。明らかにトール・ハンマーよりやばい物を顕現した感じだ。
「おー、なんか成功したっぽいぞ!」
「メギドアークまで使えるとは…。まさしく真の天才だな…」
その様子を見たミジマルは快哉を上げ、ディットは感嘆した様子で唸っている。背後で見ていた弓使いとアールも感動の面持ちだ。
「ば、馬鹿者! 本当に使う奴があるか!!」
だが、何故かこの魔法を所望した当の魔術師の男が、怒り心頭といった様子で怒鳴り始めた。
「な、なんだよ…。お前がやれって言ったのに、何をそんなに怒ってんだ?」
「顕現した魔力を放つ場所がありません! 下手に扱えば我々もろともこの階層が吹き飛ぶ!」
あきれた様子で聞くミジマルだったが、対して魔術師の男は慌てた様子で説明する。それを聞いてミジマルもディットも、いや、少し離れた場所にいるプレアと二人の槍使い以外の、その場にいる全員の顔色が変わった。
「な、何だそりゃ!? おまえそんな魔法を注文してたのか!?」
「まさか本当に使えるとは思っていなかったんです! 神呪の中でも最高位の魔法ですよ!?」
「し、しかし、魔法の効果を消すくらいそんな難しい技術ではないのでは?」
「ボットやブリズの様な初歩魔法なら確かに容易に中断できますが、流石に神呪…それもメギドアーククラスともなると、そう簡単に中断は…」
慌てるミジマルと魔術師の男。ディットも疑問を呈するが、それに無慈悲な答えを出すヤシュティー。ところが、さてどうしようと慌て始めた矢先に、ササメアは杖を縦に持ってグッと前に突き出す、すると、杖にまとわりつく黒い稲妻は少しずつ消えていったではないか!
「大丈夫です。魔法のコントロールと中断は一番練習したところですから」
完全に消滅した黒い稲妻を見て、ニコッと口を開くササメア。が、あまりに習熟され過ぎている技術を前にして、ミジマルもディットもエルフ達も、そして魔術師の男も…誰も口を開くことが出来なかった。