チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
地面に片膝をつき、至極真剣な表情で手を動かしているオルガン。彼女の目の前には、おとぎ話などに出てくる豪華な装飾の施された、いわゆる”宝箱”が鎮座しているのだ。
暫くそうやって宝箱の鍵穴を弄っていたオルガンだったが、不意にカチッと少し遠巻きに見ていたディット達にも聞こえるほどの大きな音で、何かが開く音がした。すぐさま蓋を開け、中に手を突っ込むオルガン。
「よっし! 宝物手に入れたぞーっ!」
その中身を高々と掲げながら自慢げに快哉を上げるオルガン。その姿を前に、ディット達もノリよく「おーっ」と感嘆の声と共に拍手喝さいを送る。
「これが”鍵破り”の能力かぁ…。確かに、この先に行くには不可欠の能力だね」
そして、その正体不明の宝物を鑑定してもらうべくササメアに渡すオルガンを見つめながら、プレアは得心した様子でうんうんと頷いていた。
鍵破り。ディットのレベル操作と同じくこのダンジョン特有の特殊能力。効果は名称通り、宝箱だろうが扉だろうがそこに掛かっている鍵を無条件で破れるという物。一応魔法にも”シンクロナイズ”という鍵開けの魔法があるのだが、このダンジョンには魔法開錠を無効化する宝箱や扉もあるのだ。そうなれば、この鍵破りの能力の出番だ。
とはいえ、低階層ではほぼ役立たずの能力だ。宝という宝は既に先人たちに荒らされているし、マッピングもとうの昔に終わっているので、開かない扉なども既にない。
更に、レベル操作と同じくこの特殊能力にもデメリットがある。なんと、純粋な近接戦闘用の武器の使用が出来なくなってしまうという物だ。正確に言うと、持つだけなら可能だが、そこにレベルによる補正が乗らないという厳しい制限だ。
必然、戦闘ではスリングショットや弓矢のような遠距離武器か魔法を使うしかない。このどちらかにでも才能があればまだよかったのだが、残念ながらオルガンはこのどちらにも才能がなかった。
戦闘にも制限があり、その制限の元となった特殊能力もほぼ役立たず。これでは落ちぶれてしまっても仕方がないだろう。そして、初対面の時の様にひねくれて尖ってしまうのも当然と言えた。
「えーと…。体の秘石…という道具らしいです。効果は、永続の身体能力の微増…重ね積み可…」
「なんと…。と、いう事は、この道具を使い続けるだけで身体能力が無限に上がっていく…という事でしょうか…?」
「その様ですね…。見かけはただの赤い石なのですが、かなりの貴重品とお見受けします」
ササメアの出した鑑定結果に、アールとヤシュティーも驚きの声を上げる。
「どうだ!? ボクの特殊能力のおかげですげえお宝を手に入れられただろ!? もっともっとボクを褒め称えてくれてもいいんだぞ!」
「うんうん! 凄いよオルガンちゃん!」
「確かに見事だ。昨日の探索中にササメアの魔法でも開けられない宝箱や扉にもいくつも遭遇してどうしたもんかと頭を悩ませていたが、それらもこれで解決できる」
「だろ? だろ!? これからもどんどん頼ってくれていいからなっ!!」
腰に手を当て、自慢げにふんぞり返るオルガンに、ササメアとディットからの惜しみない称賛が降りかかる。それを受け、嬉しそうに笑顔を振りまくオルガン。どうやら、いままで足手まといでしかなかった自分の特殊能力が初めて役に立って、有頂天となっている様だ。その姿に、以前までの尖った様子は全く見られない。
こうして、昨日は探索できなかった場所を改めて探索しながら、ディット達はダンジョンの更なる奥を目指す…。
そうして来たるはダンジョンの69階。この辺りの魔物も、近階で散々戦った蜘蛛型の魔物だ。大きくて素早い上に力も強く、壁や天井を這いまわるので動きが捉えにくい上に、しっかり注意をしなければ天井からの不意打ちの危険もあるという厄介な魔物だ。
圧倒的なレベル差で強引に道を切り開いているが、もしそれがなければ一つの階を踏破するだけでも想像を絶する苦労をしていたのは予想に難くない。
そうして、強引な進軍をしてきた一行の目の前に、やっと下へ降りる階段が姿を現す。が、さあ次の階だ! と意気込んで階段に近づいた一行の前に、不意に謎の女が姿を現したのだ!
「くっ!? な、何者だっ!?」
先頭に立っていたディットが慌てて立ち止まり目の前の女に問い質すが、返事はない。その事に警戒しながらも、改めてその女をじっくりと観察するディット。
身長はディットよりも高くアールと同じくらい。ゆったりとしたローブの上に軽装の鎧をまとっており、その右手には金色に輝く眩い剣を携えていた。
しかし、ディットは別の意味で驚いていた。何故なら、彼女の顔がプレアに瓜二つだったからだ。髪色こそ銀色で身長も彼女よりは低いが、それ以外ではプレアと名乗られても信じてしまいそうなほどに似ている。
そして、驚いているのはディットだけではない。彼の後ろにいる面々…とりわけ、全く同じ顔付きのプレアの驚きは、兜をかぶっているのも関わらず息を呑む音が聞こえた事からも、その深さが分かる。
その謎の女。一応はディット達に視線を向けているが、うつろな瞳に実際にディット達が映っているのかはかなり怪しい所だ。しかし、その胡乱な目つきとは裏腹に、階段の前を退くつもりはない様だ。
「―――みんな、気を付けろ。こいつ、かなり危険な感じがする…」
この謎の女が発している危険な香りを敏感に察知したディット。全員に注意を促しながら、自身も武器を構えて戦闘態勢に入る。それを確認した謎の女もまた、剣を正眼に構えた。