チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
目の前の謎の女を警戒しながら、ジリ…ジリ…と戦いやすいようにゆっくりと陣形を整えるディット達。そして、その動きが終わった直後、
「はあああああっ!!」
最初に飛び出したのはやはりプレアだ。突進から腰だめに構えた槍をまっすぐ突き放つ。が、これは素早い動作で横に身をずらされかわされてしまう。
間髪入れずに今度はその槍を、女を追いかけるが如く横なぎに払うプレア。が、信じられない事にこの女、そのプレアの一撃を剣で受け止めてしまったのだ!
「う、うっぐぐぐぐぐ…っ!!」
明らかに力んでいる様子のプレアだが、女は涼しい顔のまま槍を受け止め続けている。プレアの膂力をもってしても体勢を崩す事が出来ないとは、恐ろしい程の筋力だ。
しかし、いつの間にやら謎の女の背後を取ったディットが、声もなく女の背中めがけて剣を振るう。誰の目にも成功したように見えたこの奇襲だったが、剣が女の背中に届く直前、なんと女は自分の持っていた剣を手放してしまったのだ。
「うわっ!?」
唐突に支えの無くなったプレアはその場に転んでしまう。一方、ディットの剣は女を切りつけた…筈だったのだが、ヒットを確信し笑みを浮かべたディットのその顎に、いつの間にか金色の剣を拾っていた女にその切っ先を突きつけられていたのだ。
「な……に…?」
一瞬で不利な状況に持ち込まれ目を見開くディット。切った筈の女の体には傷一つ見当たらない。だが、女にディットを傷つける意図はない様で、動くディットに切っ先を追従させはするが、そこから一撃を加えようとする動きはない。
が、逆に言えばこれは、いちいち傷を付けずとも退散させられるほどの力量があるという自信の表れともとれる。余裕があるから無益な殺生などしない…という訳だ。
「「エアリオン!!」」
その余裕綽々の女に向かって、今度は二重の風の刃が襲い掛かる。更に、そこに重なる拳銃の発砲音。だが、信じられない事に、二つの風の刃は女の体をすり抜けて飛んで行ってしまったのだ。同じく、発砲により傷を受ける事もなかった。
「攻撃が…当たらない…?」
拳銃を構えながら、微かに震えた声を上げるアール。魔法を放ったササメアとヤシュティー…そして戦局を見守っていたオルガンも同じく冷や汗を流している。
「成程、さっきの俺の攻撃もこんな感じで体を素通りしてしまったのか…。まずいな…こんな反則じみた奴にどうやって勝てばいいんだ…」
十分に距離を放し、剣を構えなおしながら呟くディット。しかし、その声色は焦燥に満ちている。
「何だかわからないけど、とにかく攻撃してみるしかないっ! やあああっ!!」
謎の女を挟んでディットの対面にいるプレアが、再び突撃を繰り出す。そして、その一撃と女の振るった剣が交わった次の瞬間! 更に信じがたい事に、プレアの槍はその穂先を切り飛ばされてしまったのだ…世界最硬を誇るオリハルコン製の槍の穂先を…だ。
「なっ…!?」
猪突猛進をするイメージのあるプレアも、流石にこれには驚愕し一歩引いてしまう。そして、女の斬撃の余波なのだろうか、プレアの兜も真っ二つに割れ、その中からプレアの素顔が現れる。先ほど発した声色通りの、驚愕に染まっている素顔が。
プレアすら軽くあしらって見せるこの謎の女。敗戦ムードが漂いだした場に、ディットは撤退方法を考え始める。プレアこそ、腰からホイップソードを取り出しまだまだ戦いの意思を見せてはいるが、彼女以外は明らかに顔色に厭戦感が出ている。これ以上の交戦は無意味だろう。
しかし、ここで再び状況が一転する。唐突に女がプレアの顔を凝視し始めたのだ。
「な、なに…!? 私の驚いた顔がそんなにおかしいの…っ!!?」
その凝視を侮蔑ととったらしいプレアが怒りだすが、そんな怒りなどどこ吹く風とばかりに、じぃっと見つめ続ける女。
「―――………お…姉………ちゃ…ん……?」
そして、ここにきて初めて声を出す謎の女。と、思った矢先、謎の女の姿はゆっくりと虚空に消えてしまったのだ。
「お姉ちゃん? 私の事………? 私、妹なんていないけど…?」
不可思議の言葉を残しながら出現と同じく唐突に姿を消した謎の女に、プレアは険しい顔ながらも不思議そうに口を開く。こうして、謎の女との戦闘は一応の終わりを見るのだった。
一旦70階に降りてから地上に戻るディット一行。そうして、ディット達は先ずはメグミに会いに行く。69階で戦った謎の女の情報を貰おうと考えての事だ。
「な、なんとっ!!? バスティア様の幻影に出会ったのですかっ!!?」
しかし、この女の事を話すや否や、メグミは大変驚いた様子で声を張り上げたのだ。
「はっ!? あ、いえ、こ、こちらの話です…。そ、そうですね…まあ、強いて言うなら超低確率で現れる絶対勝てない敵…とでもいいますか…。私と同じくレベル無効の術持ちですし…」
だが、即座に我に返り、謎の女…バスティアに言及される前に強引に話をねじ込むメグミ。その様子からして、バスティアとやらの情報はこれ以上話す気はなさそうだ。
「レベル無効…?」
「言葉通り、相手のレベルを無効にする術だ。この街の荒くれ共が、メグミさんには絶対に手を上げない理由でもある。そりゃ、レベル1対レベル1000なんて無謀な戦い誰もしないさ」
初めて聞く単語に首を傾げるプレアに、ディットが説明をする。その説明の中で、メグミのレベルも明かされる。
「―――………な……ナスティア…様…?」
ところが、ここで再びかすれた声が聞こえる。その声の主はメグミだった。彼女はプレアの素顔を見て、先ほど以上に目を丸くし、打ち震えていたのだ。