チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
メグミの驚愕の表情を確認してから一時間ほど質問を続けるディット達だったが、結局メグミからは何も聞きだす事は出来なかった。
「―――とにかく、今はこのダンジョンの奥を目指してください。答えはその先にあります。ナ…いえ、プレアさんを擁する今のディットさん達なら最深部にたどり着けるはずです」
これがメグミからの唯一の返答だ。確かに、レベル的には問題ないかもしれないが、なぜそこにプレアが関わるのかは謎のままだ。
「プレアさんってこのダンジョンに来た事があるんですか?」
「んー? 一回も来た事ないよー。だって私…」
メンバー全員が思っていたであろう疑問を最初に口にしたのはササメアだ。対してプレアは先ず否定をするが、その途中で言葉を詰まらせてしまう。
「………マール達も来ちゃったしもう大体ばれてるだろうしいっか。私、一応帝国の皇女やってたから外に出た事なんて数回しかないんだ。勿論ここには一回も来た事ないよ」
が、数瞬のあと意を決したように己の出自を明かすプレア。そういう雰囲気を薄々感じていたディットとササメアはやっぱりか…という顔をする。が、
「皇女か………………は? 皇女?」
「皇女というのは偉い人の事ですよね? プレアさんは偉い人だったんですね」
まだ仲間入りしてから日の浅いオルガンは呆けた顔でプレアをまじまじと見上げる。一方、まだ人間の文化に疎いヤシュティーはのほほんとしたものだ。
「偉く…はないと思うよ。人に言えないような事も結構してきたし、それに嫌気がさして出てきたってのが実情だし…」
しかし、そのヤシュティーの言葉に不穏なものをかぶせるプレア。人に言えない事をした…という割には、指を顎に当て、何かを思い出しているその顔に罪悪感のような物は一切ない。その様子に、ディットは微かな恐怖を感じる。
それに、よくよく考えれば一国の主の娘がこんな傭兵まがいの仕事をしているというのも確かにおかしな話だ。
「ま、まあ、プレアの実情は一旦置いておいて、ここに来たことはないって言うのは本当なんだな?」
「うん」
「私もその事は保証いたします」
この話は手早く終わらせた方がいいと判断したディットの確認に、プレアは素直に頷き、更にアールからの合いの手も入る。
「分かった。あと、プレア。新しい兜はいるか? 出自的に顔は隠していたいだろ?」
「うーん、どうだろ。勿論顔を隠すためにかぶってたけど、帝国ならともかくここで私のこと知ってるひとなんて殆どいないみたいだし。というか私、帝国でも事情があってあんまり知名度ないんだよね…」
続いて破壊された兜の新調を提案するディットだが、プレアの反応はイマイチよろしくない。
「視界は狭いし中は蒸れるしで、正直脱げるなら脱ぎたかったんだ。どうせならもうこの全身鎧も脱ごうかな…。頭だけ兜かぶってたら変だから着てたけど、兜脱ぐんだったらもう必要ないし」
と、兜のみならず全身鎧にも結構ご不満な様子。とはいえ、全身を金属で覆って快適な訳もないので、当然と言えば当然だ。
「ディットさん、プレア様、そして皆様。お久しぶりです~」
と、ここでディット達に掛かる何だかふんわりした声。振り返ると、ニコニコ顔のマールが立っていた。そして、その後ろには少し難しい顔をしたベラーリも。
「仕事中に呼び出してごめんねマール。お兄ちゃんが心配してたから…」
「姉さん、お久しぶりです」
「す、すまん…。やっぱ迷惑だったか…?」
「大丈夫ですプレア様~。アールちゃんもお久しぶり~。そしてディットさん、迷惑なんてとんでもないですよ~。心配して頂いてありがとうございます~」
プレア、アール、ディットからかかる言葉にそれぞれ返すマール。この瞬時の間にマールは視線をプレアに向け、それを確認したプレアもコクリと頷く。
「今遂行している仕事は、ある標的に元から知っている情報を小出しにしていくだけという非常に簡単な仕事なので、楽させてもらってます~。まあ、たま~に体を要求されますが機嫌を取るためには仕方ないですね~」
視線でのやり取りが終わった後、現在請け負っている仕事内容を語るマール。プレアとの目配せはこれを話していいかのやり取りだった様だ。
そして、体という単語にディットは顔をしかめる。とはいえ、プレアが必要と感じて出しただろう指示だ。プレアの指示とあらば、マールは体くらい喜んで差し出すだろう。この絶対の忠誠心の前にディットが口を出す言葉などない。
「うーん、何と言うか…歯がゆいね」
一方、ベラーリはヤシュティーに言葉通りに歯がゆそうに難しい顔で語っている。
「ちょっと反省して謙虚になればやり直せそうなのに、意固地になって誰のいう事も聞かない。今までも悪事に手を出していて今更引き返せない…って言うのもあると思うけど、差し出した手も受け取って貰えず自分からずぶずぶと深みにはまっていくのを見ているのはかなり歯がゆい…。あと、同情で寝ただけなのに自分の女みたいに扱うのは止めて欲しいかな…」
「あの男と寝たの貴女…?」
「うん、なんか必死過ぎてあまりに可哀そうだったからつい…。まあ、ぶっちゃけ下手糞で痛かっただけだからもう二度と寝たくないけど」
その内容を聞くに、どうやらビットと同行した感想を述べている様だ。しかし、後半の辛辣な評価を聞いたディットは、嫌いな相手ながらもかすかながら憐れみの念が浮かんでくる。
「そう、私の標的もセックスがど下手で苦痛なんです~。感じてるふりするのもストレスが溜まって~…。そこでディットさんにお願いがあります~」
と、ここでベラーリの話を聞いていたマールが唐突にディットに話を振って来る。…何か嫌な予感がするディットだったが、
「久方ぶりに私を抱いて頂けませんか~…? たまには楽しいセックスで発散したいです~…」
ディットが口を開く前に強引に…しかしうるんだ瞳で懇願してくるマール。
「ディットさん…その、できれば私も…あの下手糞なセックスの記憶を消してほしい…」
更に、ベラーリがマールに続いて悲しそうな顔で頭を下げてくる。
「ディット様…その、姉さんを抱くのでしたら…できれば…あの…その…」
「私も、そろそろディットさんに新しい愛を注ぎたいです…」
更に更にアールとヤシュティーまでもがディットに頼み込んでくるではないか!
「うーん、お兄ちゃんモテモテだねー!」
「何故でしょう、ディットさんが女性にもてると、ウチなんだか嬉しくなってきます」
終いには、プレアとササメアからも常人の感性からはとても理解し難い言葉が飛び出てくる始末。
「…お前、本当に大変だな」
唯一常識人っぽいオルガンだけが、顔を引きつらせているディットに労いの言葉をかけるのだった。