※この作品はR-18です。

チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~   作:塞翁が馬

38 / 45
豪快な女商人

 翌日の早朝に、マールとベラーリは軽い挨拶と共に出て行ってしまった。

 

 主の依頼であるマールは仕方ないにしても、ベラーリはもう行く必要がないのではと説得したのだが、ベラーリもビットにはもう飽きたらしいが、新しくパーティに入った女…ソンヒという名らしい…に一緒にいて欲しいと懇願されている…と行ってしまったのだ。このソンヒという女も、ダンジョン特有の特殊能力に悩まされているという話だ。

 

「お兄ちゃん、ダンジョン特有の特殊能力ってどんなのがあるの?」

 

「そうだな…。俺が知っている限りじゃレベル操師や鍵破りの他に、魔物千里眼、宝千里眼、階層把握、あと完全記憶なんてのも聞いた事があるな」

 

「剣専門や火魔法専門みたいに、戦闘スタイルを無理強いする迷惑能力も聞いた事あります。あと、変わりどころでは魔物使い…なんてのも」

 

 朝食を終え一服している時のプレアの質問に、ディットとササメアが答える。ディットの挙げたものはとにかく、ササメアの挙げたものは確かに迷惑以外の何物でもない。剣士なのに魔法専門とか言われても困るだろう。更に、この特殊能力には例外なくデメリットもあるらしいので、この剣士の場合はデメリットだけ強制される事となる。ササメアが迷惑能力などと表現するのも頷けるところ。

 

「―――さて、約束の時間が迫ってきています。準備は整っておりますので、そろそろ出立した方が…」

 

 と、ここでアールが懐中時計を確認しながら口を開く。それを聞いて全員が席をた…とうとしたのだが、

 

「でも、今からお会いする商人さんって、確かディットさんの古巣の知人なんですよね…? ディットさんに辛く当たったっていう…」

 

 一人、椅子に座ったままのヤシュティーが少し険しい表情で愚痴る。そう、この商人こそが、あのノーザとホリナが気にしていた当人だったのだ。聞くところによると、二人も商人に付いて再びこのダンジョン街に来ているらしい。

 

「そうだな…。とはいえ、手に余っていた物品を大金に替えてくれたのも彼女だ。これについては改めて礼を言いたいと思っている」

 

 しかし、ディットは会う気満々のようだ。そのディットの様子を見て、ヤシュティーも重い腰を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 待ち合わせの場所に指定された酒場に到着したディット一行。

 

「お! 来たな! おーいこっちだ!!」

 

 酒場に入った途端、大声で一行を呼ぶ声が飛んできた。見ると三人の従者を連れた女がディット達に向かって手を大きく振っている。そして、その従者の中にはノーザとホリナの姿も…。

 

「なんだなんだ! 女をぞろぞろ連れてきて! もしかして、全員ダンナの女かい!?」

 

「うん、その通りだよ」

 

「へえーっ! まあ、エリクシルを手に入れられるほどの男だ! 複数の女に惚れられるのも致し方なしだな! はっはっは!!」

 

 興味深そうに一行を見る商人の言葉に、プレアが即答する。プレアの声色には警戒の色が含まれていたが、商人はそれを知ってか知らずか感心したように豪快に笑った。

 

「な、なんだかすごく元気そう…。何故エリクシルを欲しがってたんですか…?」

 

「いや、いまこそ力漲りまくりだけど、数日前までは本当に死にかけてたんだよ! 医者からも、あと数か月遅かったら手遅れだったって言われたし! ダンナには本当に感謝してるよ!」

 

「病に侵された体を押して商売にあちこち駆けずり回れば死期も早まって当然です。本当に、貴女は昔から無茶ばかり…っ!」

 

 その快活ぶりにササメアが疑問を口にするが、その後の商人と従者の三人目…眼鏡をかけた女の、歯を噛みしめながらの言葉から察するに、本当に危ない状況だったみたいだ。

 

「おや、イノーリちゃん泣いてくれてるの? ははっ、うれしいねえ!」

 

「泣いてませんっ!」

 

「はっはっは、そうかいそうかい! でも、商売はアタシの生きがいだからね! 病ごときがこのアタシを止められると思ったのなら大間違いさ! たとえ死んだって商売は絶対にやめないよっ!!!」

 

 高らかに宣言する商人に、ノーザもホリナも眼鏡の女…イノーリも諦念の溜め息を吐く。まさしく女傑と呼ぶに相応しい人物ではあろうが、この調子では周囲が苦労するのも目に見える様だ。

 

「…っとと、こんな話をしにここに来たわけじゃなかったね。つい熱くなっちまった」

 

 ここでハッと我に返る商人。そして、こほんと一つ咳払いをしてから、視線をディット達に向ける。

 

「改めて自己紹介だ。アタシの名前はシング。シング・ディスリアだ。多分ディスリアの名前は聞いた事があると思うけど、アタシは現会長ダード・ディスリアの娘だ」

 

「ディスリア…三国に名を轟かす大豪商…」

 

 商人…シングの紹介に、ディットは冷汗と共にその名を口にする。ディットの言葉通り、ディスリア商会はダンジョン街の周囲を囲う三つの国すべてに名が知れ渡っている強力な団体だ。その団体の長の娘ともなれば、立場的にはプレアにも匹敵するレベルだろう。プレアとヤシュティー以外が思わず委縮してしまうのも仕方ない所だ。

 

「ああ、そんな畏まらなくてもいいよ! 確かに娘だけど、ちょっと事情があって親からは縁を切られててね。今のアタシはしがない一商人さ。…で、用件なんだけど、こっちのノーザとホリナがダンナに結構ヤンチャしてたみたいだね。その非礼を詫びようと思ってる訳さ」

 

「詫びなら昨日の物品を精算してもらった事で…」

 

「何言ってんだダンナ。ありゃ商売だろうが! 実際、買い取った品々は既にさらに高値で買い手がもう決まっているからね! こっちも丸儲けだ、これじゃ詫びになってないだろ?」

 

 シングの要件…非礼の侘びに、ディットは昨日の大金の事を持ち出すが、どうやらそれではシングの気は収まらない様だ。ついでに、ディット達ではどうすればいいかもわからない貴重な品の買取を既に終えているシングは、名前を抜きにしてもかなりやり手の商人だという事も伺える。

 

「どうしてそこまで謝る事にこだわるのですか? 確かに大事な事だとは思いますが…」

 

「何言ってんだい嬢ちゃん! 商人に…いや! 職種に関係なく、立身を目指すんだったら人脈は絶対に蔑ろにしちゃいけないものだよ! そして人脈を築くにもいろいろ大事な事はあるが、その内の一つは『筋は絶対に通す』さ! これが出来ない奴で大成した奴なんて見た事ないね!」

 

 シングの姿勢に疑問を持ったらしいヤシュティーの質問に、シングは身振り手振りを交えて持論らしきものを語る。それを聞き、ヤシュティーも成程…と言わんばかりに頷いた。

 

「それなら…。一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

 

 そんな中、唐突にプレアが真顔で口を開いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。