チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
「こっちだ、きびきびと歩け」
槍を持った女に先導され歩くディット一行。何故か全員が縄で縛られ腕の自由が無くなっている。そうして木造の広大な建物の中を歩くうち、ひと際華美な装飾が施された扉の前にたどり着く。
「キュウビ様。連れてきました」
「うむ、入ってよいぞ」
女が中に声を掛けると、なにやら尊大な声が返って来る。声の高さからして中にいるのも女の様だが…。
「失礼します」
一礼を口にしてから扉を開け、ディット一行を連れて中に入る女。中にはやはり一人の女がこれまた華やかに飾られた椅子に腰かけていた。彼女がキュウビ様とやらなのだろう。
床にまで届きそうな綺麗な金色の長髪に、赤い瞳に白く整った顔立ち。だが、目は細長く吊り上がっており、凄まじい巨乳の為上半身の服がその大きな胸を覆いきれておらず、更に細長い足を組んで、先端から微かな煙を吹き出す長い棒を咥えるその姿は、完全に女王様の風格だ。
そして、それ以上に目を引くのが彼女の背後でゆらゆらと揺れている、これまた眩い金色の尻尾だ。それも複数が揺れている…恐らくは八本…いや九本ほどだ。少なくとも、彼女は人間ではないだろう。
「―――ふむ。こ奴らが屋敷に忍び込んだ賊共か。何やら異邦の香りがするのう…。して、貴様らは何故その様な奇行に走った? 訳を聞こうか」
「実は………」
キュウビ様の問いにこれまでのいきさつを説明するディット。と、いっても説明自体はそう長い物でもない。ダンジョンの百階にあった扉を開けると、なにやら仰々しい文様が彫られた部屋に出て、その部屋にあった階段を上るとこの屋敷に繋がっており、困惑しているうちに捕まってしまった…というものだ。
「何と!? 貴様らあの封印された扉の向こう側から来たというか!?」
だが、その説明を聞き終えたキュウビ様は目を見開いて驚く。そして目線でディット達を連れてきた女に尋ねるが、
「はっ、確認したところ確かにかの扉は解放されていました。今は閉じております」
との答えが返って来る。
「………ほう。…ほうほうほう! これはなかなか面白そうな賊…いや、客人ではないか! おい、縄はほどいてやれ! あと、宴の準備をせい! 客人を盛大にもてなすぞ!」
「は、はっ!」
何やら目をキラキラとさせ始めたキュウビ様の指示に、女は急いでディット達の縄をほどいた後、慌てて部屋を後にした。
「いいのか? 俺達が不審者である事に変わりはないと思うが…」
「くっくっく…。別に構わんよ。いざとなれば貴様ら如き皆殺しにしてやるわ」
いましめから解放されて一息つきながらも、警戒気味に尋ねるディット。対して、平然と帰って来る殺害宣言にディット達は思わず身構えてしまう。だが、この物騒な発言に加え、臨戦態勢に入ったディット達を前にしてもキュウビ様からは一切の殺気が感じらずニヤニヤと測れない笑みを浮かべ続けるのみであり、非常に不気味な相手だと感じさせる。
「うむ、まあ脅すのはこれくらいにして一つ聞きたい。貴様らはニンゲンとやらか? それともエルフとかいう種族か? 特徴的に獣人や竜人…ではなさそうだが…」
「………俺達は人間だ」
口にくわえていた棒を持ち、プカァ…と煙を吐きながら尋ねてくるキュウビ様に、簡潔に答えるディット。ヤシュティーが視線をディットに向けるが、今は人間という事にしておいてくれ…という感じの懇願の視線が返って来たので、ヤシュティーは小さく頷く。
「ふぅむ、ニンゲンか…。見た感じは我ら”物の怪”とそう変わるものでもないな…」
「物の怪…?」
ディット達をまじまじと観察しながら呟くキュウビ様だったが、その呟きにプレアが反応する。
「うむ、ここら一帯に住んでいる者達の総称だ。雪女やかまいたち、三つ目などの種族がおる」
「三つ目…って、さっきのボク達をここまで連れてきた女の事か?」
「やっぱりあの人、人間じゃなかったんだ…」
プレアの反応に解説をいれるキュウビ様。その解説に、今度はオルガンとササメアが反応する。そう、ディット達を連行していたあの女も、人間に酷似してはいたのだが額に第三の目がある人外だったのだ。
「ところで、もう一つ聞きたい事があるのだが…その前におい。お前の名は何という?」
と、ここでこれまでずっと不気味な微笑を浮かべていたキュウビ様が、初めてその表情を真面目なものに変える。同時にディットに名前を聞く。
「…ディットだ」
「ディットか。お前に一つ聞きたい。お前…もしかして男か?」
ディットの名乗りを受けてのキュウビ様の次の質問。しかし、ディットはその質問の意図が掴めず困惑気に頷く。
「………ほう。…ほうほうほう! わらわの知識内の男の特徴と合致しておるとは思ったが、まさか本当に男だとはな! 事ここに至って男が現れるとは、これもさだめかもしれんのう!!」
途端、先ほど以上に興奮気味にディットに関心を見せるキュウビ様。そして、この態度にディットは嫌な予感を覚える。そう、この感覚は知っている。かつてエルフの村に男として呼ばれたあの感覚だ…。
「も、もしかしてこの世界にも男がいない…とか?」
「ほう! 良く分かったのう! 貴様の推察通り、ここら一帯に男と呼ばれる種族はおらん」
思わず…といった感じで聞いてしまったディットに、キュウビ様は愉快そうに笑いながら頷く。
「という事は、この世界の住人も不老不死…なのでしょうか?」
「不老不死か…。うむ、確かに不老不病…ではあったな…」
しかし、続くアールの質問に途端に難しい顔で俯くキュウビ様。再び咥えた棒を軽くカリ…カリ…と噛んでいる事からも、何かしらの問題に悩んでいる様子だ。
「―――ディットよ、一つ確認したい事がある。故に今宵宴が終わった後…」
不意に顔を上げたキュウビ様がディットに向けて口を開く。そして、ここで一旦言葉を切って、一呼吸を入れてから、とんでもない事を口走ったのだ!
「わらわの夜伽を命ずる。使いを出す故、必ずわらわの寝室をたずねよ。よいな」