チート能力会得してダンジョン潜り ~たまにエロい事します~ 作:塞翁が馬
「しっ!」
きらめく剣閃! プレアの放った剣での一撃が小柄な怪生物の胴体を綺麗に両断する。相手は三人の中で一番小柄なササメアの更に3分の1程度しかないちいささだったのだが、この狙いにくいちょこまか動く標的を的確に切り捨てて見せたのだ。
「小鬼は物理攻撃を当てずらい事で、前衛を目指す初心者の最初の関門なのだが…。レベルも上げていないのにこの精度…。かなりの剣術の腕だ…」
「おおー! プレアさん凄いです!!」
冷静にプレアの腕前を分析するディットと、素直に称賛の声を上げるササメア。しかし、当のプレアは相手を両断した際に籠手に付着した微かな返り血を凝視していた。
「…プレア、大丈夫か?」
「―――う、うん…。大丈夫…」
近づき心配そうに見上げるディットの問いに、プレアは気丈な返事をする。が、その気丈さとは裏腹に返り血を凝視し続けているプレアは少し震えている。鍛錬は積んできたけど実戦は初めて…と言っていたので、恐らく「剣で生物を切る」不快な感触と、理由はどうあれ殺生をしてしまったという事実に震えているのだろう。
ディットとしても気持ちはわかる。今でこそだいぶ慣れたが、初めてダンジョンの魔物を仕留めた時はどうしても押し寄せてくる罪悪感に顔を青ざめさせたものだ。
「うーん、何も出ないですねぇ…。じゃあ、次に行ってみましょうか!」
そんなしんみりした雰囲気の中、底抜けに明るい声を上げるササメア。その瞳に迷いは無く、宝物が出るまで魔物を殺し続けると言外に宣言していた。
「………命が……軽い…」
そんなササメアを見て、プレアから息を飲み込む音が聞こえた。
それからしばらくダンジョンの地下2階の探索を続け、一旦引き上げる事にしたディット一行。何だかんだ言ってそれなりの時間探索していたらしく、ダンジョンを出るころには既に日も落ちていた。
「うーん、結局出てきたのはこの剣一振りだけかぁ…」
「まあ、そんなポンポン出てくるもんじゃないからな…。もっと欲しいなら根気よく探すしかない」
ダンジョンで拾った”ホイップソード”を見つめながら唸るプレアに、ディットも少し残念そうな声色で応じる。そうしながら、何やら足取りの鈍いササメアに視線を移した。
「ササメア、どうした?」
「う、そ、その…。ウチ、日の光が苦手で…。ずっとダンジョンで暮らしてきたから…」
ディットが声を掛けると、ササメアは言葉通りに少し辛そうに日の光を腕で遮りながら答える。だが、その言葉はプレアからしたらあまりにも驚愕の事だったのだろう。
「ず、ずっとダンジョンの中で…!? へ!? ずっと…って具体的にどれくらい…?」
と、驚きの声と共に質問をぶつける。
「えっと…。物心ついたときにはもうダンジョンの中でしたね。両親がダンジョンの探索に全てをなげうっていまして、魔術の才があったウチも一緒に連れていかれてたんです。それで外に出る事もなくなっていって…。その両親も昔に死んでしまいました。両親を邪魔に思っていた人達に宝物でダンジョンの外に釣りだされて殺されてしまったそうです」
対して、自分の昔を語るササメア。しかし、非常に辛く厳しかったであろうその過去を語っているというのに、そのササメア本人はまるで他人事の様に冷淡だ。
「両親が”アンデッド”であるが故に、子供も”アンデッド”にならざるをえなかったタイプか…。成程、物心ついた時から魔物を討伐しているなら、俺より魔物の討伐に慣れていても何の不思議もない…という訳か。その年齢で豊富な魔術が使えるのも納得だ。悲しい話だがな…」
ササメアの話に、ディットは得心が言ったとばかりに頷きつつも、その表情はどこか辛そうだ。が、このダンジョン街で住んでいる以上は似たような境遇はいくらか聞いた事もあるのだろう。故に、それ以上の行動に出ることはなかった。
しかし、問題はプレアだ。
「え…? じゃあ、お父さんとお母さんが死んでからずっと一人だったの? ずーっと一人であんな薄暗いダンジョンの中で一人ぼっち…?」
「あ、いえ。たまにチームを組んでくれた人たちもいるのでずっと一人だったわけでは…。でも、私の生い立ちを警戒してか、長くは組んでもらえないんですけど…」
「そんなの赤の他人と一緒じゃん! ヒック、ずっと一人だったなんて、悲しいよぉ…」
涙声を発しながらササメアをギュッと抱きしめるプレア。明らかに感情が高ぶっているが、プレアが幼少の頃から優しかった事を知っているディットからすれば、こうなるのは予想できた。
しかし、肝心のササメアがプレアの突然の行動に驚き戸惑っている。明らかに、何故こんな悲しまれているのか意味が分からない…といった様子だ。この温度差が、後々問題になりそうなのは誰が見ても明らかであった。
そう、明らかであった…のだ。当然ディットも読めてはいた。読めてはいたが、まさかその問題が本日の夕食後に早々訪れるとは思いもしなかった。
「ふ、二人とも落ち着け! な!?」
ディットの自宅において、ジリジリとにじり寄って来るプレアとササメアに、ディットはたまらず大声を上げる。
「大丈夫! お兄ちゃんは横になってるだけでいいから!」
「は、初めてですけど頑張りますっ!!」
しかし二人は聞く耳を持つ気はない様だ。そして、その視線がディットの股間をロックオンしているのを見るに、明らかにこれから性的な行為をするつもりなのだろう。
「そもそもプレアはササメアと話をしていたんだろう!? なんでこんな流れになったんだ!?」
ならばと今の流れに疑問を呈してみるディット。
「そう! 色々話してみたの! でもやっぱりそこかしこにかみ合わない所があって…。でもそこで私はピンと来たの! 穴兄弟…ならぬ棒姉妹になればもしかしたらもっと分かり合えるかもって!」
「それにこうすればプレアさんだけでなく、ディットさんとも仲良くなれるんですよね!? ウチお二人ともっともっと仲良くなりたいんです!」
「理論が飛躍し過ぎてるーっ!!?」
しかし、返ってきた答えがあまりに論理感がなく突拍子過ぎたため、ディットは最早悲哀の絶叫をするのみだ。
「とりゃっ! よしっ! お兄ちゃん確保! さあササメアちゃん! グッといっちゃって!」
「わ、分かりました! えいっ!」
「わっ、ま、待って……っ!」
その絶叫を上げている隙を突いてディットを羽交い絞めにしてしまうプレア。そして、プレアの合図を受けてササメアはディットのズボンを強引に引きずりおろす。その直後に発したディットの静止の声は空しく掻き消えるのみだった。