「響」
名前を呼ばれる。臭い鼻息が顔にかかったが、響はそれでも顔を逸らさなかった。いつの間にか口が半開きになり、浅い息が断続的に漏れていた。
徐々に、お互いの顔が接近する。
響と訃堂の息が、混じり合う。
そして、ついに。
「ん……っ❤❤❤❤❤」
唇が、重ねられた。
響は、まるで恋人とするように、目を閉じて受け入れた。自分でも驚きだった。なぜか、まで考えられない。頭の後ろ側が、ぼうっとする。
しばらくは、唇と唇が触れ合うだけのキスだった。
しかし徐々に、訃堂の動きは激しくなっていった。
唇をすりつけ、あるいは響の瑞々しいリップの感触を味わうように押しつける。おぞましすぎる行為。これまでの訃堂の悪行を考えれば、思わず嘔吐いてしまいそうな汚辱。けれども響は、どういうわけかさほど不快感を覚えなかった。
「はっ……❤❤❤❤んんっ❤❤❤❤」
一旦唇が離れ、息継ぎをするも、すぐにもう一度口を塞がれてしまった。
「んんっ?❤❤❤」
しかも今度は触れ合うだけのキスではない。舌が入り込んできたのだ。ざらざらとした熱をもった塊が、上下の歯茎を丁寧になぞった後、さらに奥まで侵入する響の舌の上を、訃堂の舌が這っていく。ぞぞぞぞぞ、と知らない感覚が少女の背筋を走る。けれどもそれは、怖気ではなかった。
風鳴訃堂は、責めの手を緩めない。
じゅううう、と口内にため込んだ唾液を、舌を通じて響の口内へと流し込んできたのだ。――臭い。気持ち悪い。けれども唾液の混入を止められない。自分の唾液と入り混じり、その一部を飲み込んでしまう。
「あ…❤❤❤❤❤…ふっ❤❤❤❤❤」
再び、口が離れる。二人の舌先の間に、ねっとりとした唾液の橋がかかる。
「お前もベロを動かせ❤❤❤響❤❤❤」
短い命令が体育教師から下り、ねっちょりとした唾液が響の口元に落ちてくる。それさえもむしゃぶるように、訃堂は三度響に口づけた。
「ん❤❤❤ぁんむ…❤❤アナタ…❤❤❤❤❤❤❤」
不器用にも、自分から舌を伸ばしていた。ぶつかり合う、二人の舌。訃堂は時計回りに舌先を回転させ、誘われるように響も舌を絡ませる。さらに引き寄せられ、口をすぼめて舌を突き出す響。
――じゅううううううっ!❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤
その隙を逃さないと言わんばかりの速度で、舌根から吸い付かれてしまう。響が思い描いていたロマンチックなキスではなく、唾を飛ばして貪り合うような下品なキス。こんな、動物みたいなやり方に、自分も舌を動かし続けてしまう。唇を押しつけてしまう。
「んじゅっ❤❤アナタぁ❤❤❤❤ちゅっ、❤❤ちゅうっ、❤❤❤むう、❤❤❤❤❤ちゅ……❤❤❤❤」
立花響は風鳴訃堂の妻になり長時間接吻をするのであった。
立花響が堕ちたことで事実上国連直轄の超常災害対策機動部タスクフォース「Squad of Nexus Guardians」は解体された。