カフェ・ホーリーのカウンター席で、二、三人の客が腰を下ろしている。
彼らは、飲み物を飲んだり、焼きスイーツを食べたりしている。
「うん……この前、来た時よりも、味が美味くなっているわね」
白いコートを羽織っている女性が、コップに注がれたカフェラテを口にしながら、感嘆の声を上げる。
真向かいには、エプロン姿の輝男がカウンター越しに立っている。
「そうですか? お口にあって何よりです」
真向かいに腰を下ろすコート姿の真白に、輝男は嬉しそうな顔で言葉を返す。
その横では、マスターである真理が、別の客にホットティーとアップルパイを差し出す。
バイトが終わってすぐに小春、そして、彼女の父親と家で対面した翌日――
輝男はまるで何も無かったかのように、いつも通り週末のバイトに励んでいる。
絶えず出入りする客たちにキチンと応対し、カフェの店員としての務めをしっかりと果たしている。
「勉強でちゃんと成績を上げつつ、休みの日にはこうしてバイトに勤しむ……
まさかに、勤労学生の鑑、全校生徒の模範って感じね」
「先生、おだてても、お代は負けませんから」
過分とも取れる生徒会顧問からの称賛に、輝男は半ば呆れながら言い返す。
二人のやり取りに、傍にいる真理はクスッとほほ笑む。
真白は別段、気を悪くする様子を見せず、そのままカフェラテを飲み干す。
空になったカップをカウンターテーブルに置くと、輝男をまっすぐに見つめる。
輝男はすぐに、神妙な面持ちを見せる真白を認める。
「どうしたんですか?」
「天江君……折り入って、大事な話があるんだけど……」
「こんなところで、一体、何の話なんですか?」
輝男は目の前の真白につられて、神妙な面持ちを見せる。
真白は輝男をまっすぐに見つめながら、口を開く。
「実は、聖さんのことだけど……」
「聖さん……神楽先輩のことですか?」
輝男がたずねると、真白は黙ってうなずく。
「聖さん、来週、一校目の入試を受けるけど……
彼女、ずっと大学受験の勉強で相当、神経を張り詰めているみたいだし……
その上、ずっと一人きりで受験勉強を続け、そのまま試験に臨むけど……
今の彼女の状態だと、いずれの志望校も合格できる見込みはかなり厳しいから……」
真白は自ずと真剣な表情を見せながら、かつての生徒会長を取り巻く状況への憂慮を言い連ねる。
輝男は神楽に対する憂慮を聞きながら、真剣な表情を見せる。
そして、傍で注文の品を支度する真理も、輝男たちに背中を見せながら憂い顔を見せる。
母親として、苦しみ、悩みながら大学受験の勉強を続けている娘のことを、まるで我が事のように思い巡らしている。
「……だから、私たちで、何とか聖さんを元気づけるために、応援グッズみたいものでも贈ろうかと思ってるんだけど……」
真白が続けてそう言うと、
「そういうことでしたら、僕も力を貸してあげますよ」
輝男は笑顔を見せながら真白に言い返す。
輝男の返事に、真白は嬉しそうに顔をほころばせる。
「ありがとう……。
黒山さんや百川さん、それに、他の生徒会の皆には、私の方で後から言っておくから」
「お願いします。僕の方でも何とか用意しますから」
真白と輝男のやり取りを見ると、真理は穏やかな笑みを浮かべる。
娘に対する恩師と後輩の思いやりを前にして、嬉しそうに気持ちを和らげる。
やがて、一組の男女が店内に入って来た。
「いらっしゃいませ」
真理が笑顔で挨拶をすると、
「ご注文は?」
席に着いた男女に、輝男が注文を聞く。
カフェのバイト店員としててきぱきと動く輝男を、真白は愛しそうに傍観する。
◇ ◇ ◇
カウンター奥の事務所兼休憩室で、輝男は戸惑いに満ちた表情で腰を下ろす。
ため息を付きながら見下ろす先には、真白がブラウスをはだけさせながら身を屈めていた。
すぐ傍の椅子には、着ていたコートとセーターがかけられている。
はだけられたブラウスの下には、色白の素肌と、ずり上げられたレース模様のパープルのブラジャー、そして、Eカップはあろう形良い左右の大きなふくらみが認められる。
輝男がはいているジーンズのジッパーは既に下ろされ、内側から肉の棒が取り出されている。
輝男の股から出て来た肉の棒は、真白の美巨乳に挟まれ、埋もれている。
真白は裸の胸で輝男自身を挟むと、ジックリと上下に動かす。
「先生……真白さん……」
困惑しきった調子で、自分自身をパイズリする真白に声をかける輝男。
真白は自分の胸で肉の棒をしごきながら、上目遣いで輝男を見る。
「もう、どうしたの? そんな困ったような顔をして」
「お客さんとしてお店に顔を出したかと思ったら、こんなことをするなんて……」
保健教諭兼生徒会顧問によるパイズリに、輝男は歓喜に震えるどころか、困惑の念を隠そうとしない。
「せっかくわざわざシてあげてるんだから、少しは喜びなさい」
「俺、休憩中なんですよ。少しでも疲れを取って、また改めて仕事に臨まなきゃいけないのに……」
輝男は大事な休憩時間の最中であることを訴え、困惑の念を続けて言う。
しかし、真白は構わず、可愛い教え子の陰茎を己が美巨乳でしごき続ける。
生々しい肉の摩擦音が真白の胸から響く。
「こうしてもらった方が、さっきよりも元気がつくでしょ?
それに、口では困るかのようなことを言っても、体の方は正直なんだから」
真白はパイズリを続けながら、不敵な笑みを見せる。
彼女の胸中では、輝男自身が固さ、大きさを増していく。
みだらな刺激に率直に反応する陰茎に、輝男は恥ずかしさの余り顔を赤らめ、言葉を失う。
(真白さんったら、あれこれ言ってるけど、結局は、ただ単に俺とヤりたいだけじゃないか……)
内心、深く嘆息する輝男。
しかし、真白は輝男の心境に構わず、胸中からはみ出た剛直の上半分をくわえ込む。
首を傾げながら、回すようにして剛直の上半分をしゃぶっていく。
「んんっ……んうぅ……」
剛直でふさがれた口元から、真白の艶やかな喘ぎが漏れる。
愛しい教え子のモノをくわえ、貪りつつも、根元の部分を胸でしごくのを忘れない。
真白のパイズリフェラに、輝男は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ため息を付く。
生温かい口内の感触と強くこすり付ける大きな柔肉の感触が、二重の刺激となって輝男の神経を襲う。
(真白さん……相変わらず上手い……)
ジックリと弄びながらも、心地よい刺激を絶えずもたらす真白の技量に、輝男は思わず感嘆してしまう。
呆然とした面持ちで深くため息を付きながら、そのまま真白によるパイズリフェラを甘受している。
しかし、しばらくすると、股の辺りからかすかな震えが生じる。
(あぁ、ヤバい……出る……!)
自らの中でわき立つ沸騰感に、内心、苦悶の声を上げる。
真白による懸命なパイズリフェラに、輝男の中で淫欲が煮えたぎってきているのだ。
輝男の内心の困惑に応じるかのように、
「んうぅっ! んぐっ、んむっ……!」
剛直の上半分を貪り続ける真白が、息詰まるようなうめき声を漏らす。
真白の口内では、輝男自身が更に固く膨張していく。
大きく柔らかなふくらみと生温かい口腔による二重の刺激に、輝男自身、際限無く充血しているのだ。
しかし、すぐに、
「プハァッ……」
真白は大きく息を弾ませながら、輝男自身を口から離した。
真白の前には、天を向くように突っ立つ剛直がハッキリと認められる。
上半分を唾液と別の液でまぶされ、固くいきり立っている自分自身に、輝男は羞恥の余り、閉口する。
すると、真白は、はだけられたままのブラウスの胸ポケットから小さな一包を取り出した。
一包を破き、中に密封された黒のコンドームを口にくわえる。
そのまま、フェラチオする要領でコンドームを輝男自身に包み込ませる。
「これで、万一の事態に対する心配は無くなったわね」
「え、えぇ……」
不敵な笑みを浮かべながら言う真白に、輝男はいささか覚束なげに返事をする。
真白は腰を上げると、ブラウンのひざ丈スカートに手をかけ、脱いでいく。
乾いた布ずれ音と共にスカートが床の上に落ちると、そのまま、下にある黒のパンストとブラジャーとお揃いのパンティーも脱ぎ出す。
パンストとパンティーを右足首に引っかけると、輝男の腰の上にゆっくりとまたがる。
「ま、真白……さん……」
輝男は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、間近にいる真白に声をかける。
真白はクスッと笑みをこぼすと、輝男とキスをし、彼自身を、自分の秘裂にあてがう。
「あぁっ……か、固くて……たくましい……」
輝男自身の先端部分の感触に、真白はたまらずかすかな喘ぎ声を上げる。
歓喜の声を上げると、真白はゆっくりと腰を沈める。
「あぁ……うぅ……あ、ハァッ……」
声を殺すようにして喘ぎながら、輝男自身を自らの中に飲み込ませる。
(ま、真白さんの中……狭くて……温かい……)
既に剛直が固く膨張しているせいか、自らを飲み込むヴァギナの狭い感触に、内心、感嘆の声を上げる。
併せて、ヴァギナの表面を覆う微熱も感じ取る。
「あぁ、いい……。輝男君ったら……どうしてこんなにたくましいの……?」
うわ言のように歓喜の念を漏らしながら、輝男自身を深々と受け入れる真白。
固く大きな一物を飲み込むことに対する苦痛よりも、愛しい者自身を受け入れる嬉しさの方が、真白の中で大きな比重を占めている。
間も無くして、真白は勢いよく腰を下ろすと、
「あぁっ……あ、ハァッ……!」
のけ反りながら艶やかな喘ぎを発し、腰を上下に動かし始める。
「あぁっ、あっ、うぅっ、ハァッ、あぅ、んうぅっ、うっ、あぁっ……」
艶やかな喘ぎと上下運動を繰り返す真白。
真白の胸元では、彼女の動きに合わせてEカップバストがブルブルと揺れる。
「ま、真白さん……」
「輝男君……あなたはそのままでいいから……あたしに任せて……」
真白は艶を帯びた声で輝男にそう言い返しながら、上下運動を繰り返し、時折、腰を前後にくねらせる。
「あぁ……んんっ……うぅっ……」
艶やかなうめき声を上げながら、上下運動と前後のうねりを交互に繰り返す真白。
輝男と真白の間では、乾いた衝突音が絶えず聞こえて来る。
様々に腰を動かす真白の中では、飲み込まれた剛直が、何度もしごき、うねっていく四方の肉壁によっていいように弄ばれている。
自分自身を執拗に翻弄するヴァギナの動きに、輝男は嘆息し、歯を食いしばる。
(ま、真白さんの中……かなりキツく……熱くぬめっている……)
深く嘆息する奥で、強まる肉圧と熱、そしてぬめりを痛感する。
「あぁ、いい……気持ちいい……わ……」
絶えず腰を動かしながら、歓喜に声を震わす真白。
腰の動きに合わせるかのように、真白の美巨乳は上下に波打ち、ブルブルと震えている。
恍惚さを増す美貌と艶めかしく動く腰と美巨乳が、輝男の目に否応無く映る。
すると、輝男は、無我夢中に動き続ける真白の腰を左右から抑え、勢い良く自ら突き上げて来る。
「うぅっ!」
突然の突き上げに、真白は思わずのけ反り、うめき声を上げる。
顔を紅潮させつつも、ハッと我に返ったかのような表情で、真正面にいる輝男と向き合う。
輝男は熱に浮かされたかのような顔で真白を見つめると、
「ごめん、真白さん……俺、もう、我慢できない……」
淡々としつつも荒い吐息を交えた声をかける……
真白ははだけられたブラウスのみをまとった状態で、左右の手を壁に付け、直立している。
真白の背後では、下半身を素裸にさせた輝男が、剛直を美尻に突き刺しながら突っ立っている。
真白の美尻を左右からつかむと、勢いよく腰をぶつける。
「あぁっ、ハァッ、あっ、ん、うぅあっ……」
声を殺すような喘ぎを繰り返しながら、真白がのけ反る。
背後からの律動に押されるように、真白は繰り返しのけ反り、美巨乳を震わせる。
輝男と真白の間では、腰と美尻の衝突音が絶えず響く。
「あぁっ……て、輝男君……すごい……!」
背後からの律動を甘受しながら、歓喜の声を上げる真白。
彼女の中は、剛直の猛進に応じるかのように四方の肉壁を狭めていく。
輝男は、自らを締め付けんとする肉圧を痛感しながらも、絡み付く熱とぬめりに押されて律動をペースアップさせる。
トーンアップする肉と肉の衝突音に、
「あぁっ! んんっ! うぅっ、んあっ!」
上ずったかのような喘ぎが重なる。
真白は痙攣でも起こしたかのように何度ものけ反りながら、
「て、輝男君の……奥に当たってる……」
自らの中、最深部に突き当たる輝男自身を、震える声で伝える。
何かが吹っ切れた輝男の動きは、真白の中、最深部に何度も突進を仕掛ける。
もっとも、ゴムでキッチリと全身を覆われているせいで、万一の事態は起きないのだが……
それでも、恩師の一人たる真白の中を存分に味わおうと、激しく小刻みな猛進を繰り返す。
「あぁっ! うぅっ! んんっ! ハァッ、あっ、あぁんっ……!」
妖艶さを増す喘ぎを繰り返しながら、愛しい教え子の動きを甘受する真白。
輝男は、真白の妖艶な喘ぎと肉と肉の衝突音を重ねて聞き入りながら、
(真白さん……更に熱く……キツくなってる……!)
狭まる一方の肉圧と勢いを増す熱とぬめりを痛感する。
ヴァギナと剛直の摩擦は、苦痛を伴わずにはいられない状態にまで達している。
しかし、輝男による律動は、まったく止む気配を見せない。
一方の真白は、内側で強まる摩擦の苦痛に身を震わせながらも、
「もっと……もっと強く突いて……!」
艶を帯びた声で、更なるみだらを求めようとする。
同じ学校の恩師と教え子という立場にある二人は、今だけは、愛欲に耽り、淫欲に狂うオスとメスであり続ける。
輝男は激しく小刻みに腰をぶつけながらも、背後から真白の胸元に手を伸ばす。
真白の裸の胸をわしづかみにすると、そのままパン生地でもこねるかのように揉みしだく。
「あぁ、いい……いいわ……」
剛直による律動と背後からの愛撫に、真白は我を忘れたかのように歓喜の声を上げる。
輝男は狭まる一方のヴァギナを痛感しつつ、柔らかくて大きい、熱を帯びた美巨乳の感触を同時に味わう。
すると、真白は突然、体をブルッと震わせ、のけ反らせた。
「あぁっ、イヤッ、ダメ……イ、イく……イっちゃう……」
律動を愛撫を受けながら、声を震わせて、自らの限界を訴える。
その言葉が嘘でない証拠に、真白の身を支える手足がわなわなと震えている。
真白の哀訴を聞いて一呼吸、間を置いた後、
(ダ、ダメだ……! 俺も長くはもたない……)
荒く息を弾ませる奥で、輝男は自らも限界が近付いたことを痛感する。
真白への律動と愛撫が、みだらな刺激となって輝男の神経を伝い、彼の中の沸騰感をいたずらに昂らせているのだ。
肉圧と熱、ぬめり、柔らかく大きな肉の感触が、輝男の中で淫欲を煮えたぎらせているのだ。
グツグツとわき立つ沸騰感を認めながらも、そのことを必死に押し隠し、律動と愛撫を繰り返す。
小刻みに腰をぶつけて来る輝男に、
「あぁっ、んっ、ハァッ、あぁ、んうぅっ、う、くぅっ……」
真白は何度ものけ反りながら、艶やかな喘ぎで応じる。
薄赤色に染まる美巨乳、輝男の指が深々と食い込む。
そして、真白の中は、輝男自身をギュッと締め付けんと限界まで収縮を強める。
輝男は真白の限界にあらがおうと動きを繰り返すが、強さを増す摩擦は輝男自身の限界をうながす。
歯を食いしばり、額に冷や汗を垂らしながらも、愛撫も律動も止めようとしない。
「ま、真白さん……俺……」
「ま、待って……あ、あたし……もうすぐ……イく……イくから……」
速まる限界を訴える輝男に、真白は必死になって言葉を返す。
二人とも声に余裕は感じられず、その身をハッキリと震わせている。
ラストスパートをかけるかのように何度も腰をぶつける輝男に、真白は押されるように身を揺らし続ける。
「あぁ……うぅ……んん……あぁっ……」
ギリギリまで愛撫を続ける輝男の耳に、真白の切なそうな喘ぎが届く。
ヴァギナを荒らされ、胸を揉みしだかれながら、何度ものけ反り、切ない喘ぎを繰り返す真白。
やがて、
「ヤダ……ダメ……もう……イっちゃう……イくぅ……」
声を震わせながら、限界の到来を弱々しく告げる。
真白の今の声を聴くと、輝男は背後から美巨乳を揉み続けながら、二、三回、美尻に腰を強く打ち据える。
腰を打ち据える動きに押されて、真白は体を大きくのけ反らせると、
「あぁっ、イッ、イヤァ――――――……」
背後から胸を揉まれたまま絶頂の声を上げた。
真白が絶頂に達して間も無く、ギュッと締まり切った真白の中で輝男は勢い良く果てた……
◇ ◇ ◇
四日ほど経った後――
明朝学園高校校舎内の廊下に、生徒たちがひしめく。
教室内の時計の針は三時半を指している。
今日一日の授業を終え、一人、また一人と、生徒たちが教室を後にしていく。
しばらく経った後、校舎内の階段を、一人の女子生徒が下りていく。
左右に均等に分けられた長い黒髪――
制服を着ていてもわかるスレンダーな体格――
聖神楽はやや曇りがちな表情を見せながら、一階へと下りていく。
疲れと憂いが混ざったような顔で、唇を硬く閉ざしている。
いつも見せるような柔和な形相は影を潜め、ただならぬ状況にあることをそれとなく示そうとする。
そのまま、生徒玄関に向かおうとした刹那、
「聖先輩」
後ろから神楽を呼び止める声が聞こえてきた。
神楽が後ろを振り返ると、カバンを手にした輝男が、後を追うようにして階段を下りて来た。
目の前に着いた輝男に、神楽は半ば驚いたかのような顔を見せる。
「天江君、どうしたの?」
「実は、先輩にどうしても渡したいものがあるんです」
訝しげにたずねる神楽に輝男はそう言い返すと、カバンの中からLサイズの買い物袋を取り出した。
更に袋の中から何かを取り出すと、それを神楽に手渡した。
神楽の手には、一枚の色紙と一個のお守りがある。
「これ……合格祈願のお守り……」
左手に持ったお守りを見てつぶやくと、右手に持つ色紙に目を向ける。
色紙の中央には、
祈!聖 神楽 志望大学合格――
と記された一文が、大きく記されていた。
そして、真ん中の一文を囲むようにして、色紙いっぱいにメッセージが記されていた。
数えきれないくらいのメッセージは、すべて、神楽の受験合格を祈願するメッセージばかりである。
神楽は色紙を埋め尽くす寄せ書きを見ると、驚きながら輝男の方に目を向ける。
「これは……!?」
「先輩のために、皆から寄せ書きを集めたものです」
驚く神楽に、輝男は笑みを浮かべながら返答する。
改めて色紙を見ると、輝男をはじめとして、桜月や葵、七海、他の生徒会役員や後輩生徒たち、理華や真白、石上といった何人かの教諭たち、更には真純や瑠奈からの書き込みさえあるのだ。
誰もが、神楽の健闘を祈り、必ず志望大学を合格することを信じる旨を記している。
輝男をはじめ、寄せ書きを贈ってくれた人々の思いやりに、神楽は感極まったかのように言葉を詰まらせる。
すると、
「聖先輩」
横の方から、神楽に呼びかける声が聞こえて来た。
神楽はお守りと色紙を手にしながら、声が聞こえてきた方を振り向く。
振り向いた先には、葵と七海が神楽をまっすぐに見つめながら立っていた。
葵の手には、やはりLサイズの買い物袋が握られている。
「先輩、どうか、私たちの気持ちを受け取って下さい」
葵は真剣な表情で神楽を見つめながら、袋の中身を取り出す。
袋の中から取り出したのは、厚手の半纏とジャンパー、そして、毛糸のマフラーであった。
「生徒会長として頑張って下さった神楽先輩のために、何をすればよいのか?
いかなるものを贈ったらいいのか?
皆で色々と相談した結果、お金を出し合って、これらの品々を先輩に贈ることにしたんです」
葵がそう言うと、横にいる七海がカバンの中から何かを取り出した。
七海の手には、ココアと生姜湯の粉袋が握られている。
葵と七海は、先輩である神楽に自分たちが持つ品々を手渡す。
「聖先輩、私たちにできることはこれしかありません。
でも、私たち、先輩が自らの望みを果たし、無事に大学受験を合格できることを信じています」
笑みを浮かべながら言って来る七海に、神楽はその場で身を震わせる。
葵と七海に笑みを見せつつも、目元にうっすらと涙をにじませる。
「ありがとう……皆……私のために、ここまでしてくれて……」
涙交じりに感謝の言葉をかけると、すぐ傍にいる輝男の方を向き直す。
「天江君もありがとう……。そこまでして、私のことを……」
笑みを浮かべつつも、必死に泣くのをこらえ、感謝の言葉をかける。
神楽の涙交じりの感謝の言葉に、輝男は笑みを見せる。
「先輩……あなたは、ずっと一人で苦しんでいたかもしれませんが……
僕も皆も、聖先輩のことは決して忘れていませんから……
大した形では無いけど、少しでも先輩の力になれればと思って……」
輝男の今の言葉に、神楽は笑みを浮かべつつも涙の粒をこぼしていく。
「僕たちは、いつまでも先輩のことを見守ってますから。
だから、先輩も自信を持って頑張って下さい」
優しく言葉をかける輝男に、神楽は涙交じりのまなざしを向ける。
そのまま、葵と七海にも目を向けると、
「ありがとう……。天江君……黒山さん、百川さん……皆、ありがとう……」
感極まったかのような調子で、改めて感謝の言葉をかける。
後輩たちの思いやりに、内に抱えていた憂いを取り払い、大きな励ましを受けた喜び、嬉しさを見せ付ける神楽。
そんな先輩の姿に、輝男、葵、そして七海は、愛しそうな笑顔を見せるのであった。