リビングで、真純が理華たちと話をしている同じ頃――
輝男は自室で桜月とキスを交わしていた。
共にベッドの淵に腰を下ろし、唇を重ね、舌を絡ませ合う。
ディープキスに耽っているが、桜月の表情は何故か、曇っているように見える。
いまいち気が乗らないと言ったような顔を見せつつも、輝男と舌先を絡ませ合い、
「うぅっ……んっ、んぅ……」
絡み合う舌先から、かすかなうめき声を漏らす。
二人の耳元で、唾液が跳ねるような音がかすかに聞こえる。
そして、絡み合う舌の隙間から漏れる吐息が、輝男の頬にかかる。
やがて、輝男と桜月はディープキスをやめる。
桜月は頬をほんのりと赤らめつつも、憂いを帯びたような面持ちで輝男と向き合う。
「輝男君、こんなことをしても、あなたにとっては何の気休めにもならないわ」
「そんなことは、俺もわかってる」
苦言を呈する桜月に、輝男は表情を曇らせながら言い返す。
「けど、このままジッとしていても、いたずらに苛立ちが募ってしょうがないんだ」
「だから、私を抱いて、少しでも気晴らしをしたいのね」
今、輝男にかける桜月の言葉には、軽蔑よりも哀れみに似た気持ちの方が色濃く出ている。
「こんなことが無意味なのはわかってるが……
今は何も言わず、俺に抱かれてくれ……」
輝男はそう言うと、更に表情を沈痛なものにさせる。
「本当なら、“いずちゃん”……いや、泉を助けなきゃいけないんだけど……」
そう言葉を続ける輝男の脳裏には、泉が路地裏で悪漢たちに暴行を受けた時のことと、彼女の所属事務所社長である郷沢が泉を平然と侮蔑し、嘲笑した時のことが、克明な姿で浮かび上がっている。
押しも押される人気スターの仲間入りを果たしたはずの幼なじみの悲痛極まりない姿を目の当たりにして、身を引き千切られるような思いに駆られているのだ。
「泉はアイドルとして女優として一生懸命、頑張っている……
でも、その頑張りも、芸能界を牛耳っている腐り果てた老いぼれ連中にとっては、何の意味も無い。
ヤツらにとって、アイドルや女優なんて、自分たちのみにくい欲望のはけ口以外の何物でも無い。
気分次第で、遊び飽きたオモチャか役に立たなくなったボロ雑巾のように、すぐにでもポイ捨てできる。
泉だって、いつでも簡単にポイ捨てされる運命にある」
小さい頃ずっと仲良しだった幼なじみを襲う陰湿な窮状を、輝男は怒りと憂いを入り混ぜた調子で言い連ねる。
桜月は重い表情で唇を閉ざしながら、輝男を黙って見つめる。
「もし、泉を本当に助けなければならないのなら……
あの忌々しい老いぼれを殺し、泉に芸能界をやめさせる以外に、他に方法は無い……!
でも……」
そこまで言うと、輝男は沈痛な面持ちを言葉を詰まらせる。
歯を食いしばり、握り拳をわなわなと震わせる。
泉を好き放題に弄び、傷付けている郷沢善児への怒りを果てしなく募らせつつも、自分の希望が不可能であることを、輝男は十分に思い知っている。
どうしようもない状況に身を震わせる輝男を、桜月はそっと優しく抱き締める。
「桜月……」
桜月の抱擁に気付き、輝男は驚いたかのように声をかける。
桜月は輝男を優しく抱き締めながら、悲哀に満ちた面持ちを見せる。
輝男の心痛、そして、泉を襲う悲惨に対する共感がハッキリと認められる。
「わかってるわ……
泉さんを助けたくても助けられない……
私も、あなたに対してはこんなことしかしてやれない……
もし、できることがあるとするなら……
泉さんが曲がりなりにも無事でいられるよう、神様に祈るしかない……」
沈痛な調子で、輝男の耳元に優しくささやきかける桜月。
桜月の今のささやきに、輝男は幾分、表情を落ち着かせる。
泉を思う憂慮と郷沢への怒りは完全に消え失せていないが、今は感情の爆発を抑止させている。
やがて、桜月は抱擁を解き、輝男とまっすぐに向き合う。
未だ憂うかのような悲哀の形相で、輝男を見つめ続ける。
「私は輝男君を受け入れるけど……あなたはどうなの?」
応諾の意を伝える桜月に、輝男は神妙な面持ちを見せながら唇を閉ざす。
それでも、桜月をまっすぐに見つめたまま、その目を離そうとしない。
◇ ◇ ◇
リビングでは、真純が、理華、真白、石上とテーブル越しに向き合っている。
陰鬱な形相を見せる真純を、理華たちは神妙な面持ちで見つめている。
「“佐倉春花”……
十年以上も前に、突然、事務所を解雇され、そのまま芸能界を引退し、それ以降、行方知れずとなっていた……
アイドル、グラビア、お芝居……様々なジャンルで活躍し、同世代ではトップクラスの人気を誇り……
人気絶頂にありながら突然、芸能界からいなくなった“佐倉春花”と、まさか、ここで会うことになるとは……」
石上は、かつて“佐倉春花”だった真純をまっすぐに見つめながら、感慨深げに言う。
大ファンだった元人気アイドルと偶然、顔を合わせたのに、歓喜に震えるどころか、戸惑いにも似た重い表情を見せる。
当人の陰鬱な顔を目の当たりにして、憧れや歓喜の念が苦も無くかき消されてしまう。
石上の横にいる理華が、真純に向かって神妙な面持ちを見せる。
「どうして、芸能界をやめたんですか……?」
真純をまっすぐに見つめながら、肝心の問いを迷わずかける。
理華の今の問いかけに、真純は一呼吸、間を置いた後、口を開く。
「“枕営業”に疲れ、身も心もボロボロにされた上……
事務所の社長の気まぐれで、事務所をクビにされたんです……」
努めて感情を抑えつつも、沈痛な調子で自らを襲ったかつての非運を言う。
理華たちは、真純の今の告白に、感情を抑えながら黙って聞き入る。
わずかな沈黙の後、今度は真白が口を開く。
「……そんなこと、できることなら考えたくなかったんですが……
そんな忌まわしいことが、あなたの身も心も蝕んでいたなんて……
こんなことなら、何も聞かなければよかったです……」
申し訳なさそうに表情を曇らせながら、沈痛な調子で真純に言葉をかける。
「自分はあの時、噂程度で耳にしたのですが、本当だと認めたくないが故に、ずっとデタラメだと自分に言い聞かせて来ました……
だが、そんなことがあなたの心身を蝕み、人生を台無しにしていたなんて……!
悲しいやら腹立たしいやら、気持ちがわき立たずにはいられません……!」
真純の非運を哀れみ、世の暗部に対する憤りを言い連ねる石上。
すると理華は、真純に向かって、悲哀のこもった重い表情を真純に見せる。
「真純さん、もう、結構です。
今の話だけで、あなたがどれだけつらい思いを抱えているのかがよくわかりました。
あなたのような人の傷口に容赦なく塩を塗りたくって……
教師である以前に、人間としてとても恥ずかしい思いでいっぱいです」
沈痛な調子で詫びの言葉をかける理華。
理華が見つめる中、真純は暗い顔をうつむかせる。
「今、輝男さんは、桜月さんや他の同級生、後輩の人たちと楽しく平穏な学校生活を送っている……
……でも、私には、輝男さんが送っているような楽しい学校生活なんて、一日として許してもらえなかった……
歌のレッスン、レコーディング、グラビア撮影、テレビ出演、ドラマや映画の撮影……
日中、分刻みのスケジュールに追われ……
夜は、毎日のように“枕営業”や社長への肉体奉仕に駆り立てられて……
十七歳の誕生日を迎えたその日の夜には、一夜で、数え切れないくらいの年配の人たちとの相手を強いられ……」
淡々と自らの過去を述懐する真純の目元に、うっすらと涙がにじみ出る。
その表情は、悲哀を通り越して呆然自失の様相を呈している。
述懐を続ける真純の目元から、涙の粒がポロポロとこぼれていく。
彼女の声も、いつの間にか悲しそうに震えている。
「ま、真純さん、もういいですから……!」
理華が困惑しきった形相で制止をうながそうとすると、
「ダメだわ……
忌まわしいトラウマを自らこじ開けたことで、今まで心の底に抑えていたものが堰を切ったようにあふれ、流れ出ているのよ」
真白は横から沈痛な調子で、どうしようもない思いを込めた言葉を添える。
彼女もまた、最も忌むべき人生の一章を回顧する真純の悲痛な姿に、悲嘆しきっているのだ。
泣きながら忌まわしい過去を振り返る真純を、理華たちは成すすべもないと言わんばかりに傍観する。
彼らの表情は、真純の悲惨に共鳴するかのように、陰鬱なものとなっている。
◇ ◇ ◇
桜月は、輝男の自室のベッドの上で仰向けに寝そべっている。
真上から向き合う輝男は、被さるようにして桜月とキスを交わす。
唇を重ねながら、桜月の胸をTシャツ越しに揉みしだく。
「んんっ……」
胸を揉まれる感触に、キスでふさがれた唇からかすかなうめき声が漏れる。
一旦、キスをやめると、輝男と桜月は舌先を絡ませ合う。
うねり合う舌の感触と、服を着ていても感じ取れる柔らかな胸の肉感が、輝男の神経を伝う。
「うぅ……んふぅ……」
絡み合う舌の隙間から漏れる吐息と切ないうめき声を聞き入りながら、
(桜月の言う通り、こんなことをしても、俺にとっては何の気休めにもならない……
……でも、どうすれば、泉を救うことができるんだ……
このまま、いずちゃんがアイドル、女優として頑張っても結局は……)
泉を取り巻く状況への憂慮を内心、つぶやく輝男。
どれだけかつての幼なじみのことを憂いていても、今は同級生とのひと時に神経を集中させようとする。
ディープキスをやめると、桜月のTシャツをたくし上げる。
Tシャツの下から、色白の素肌と、形良いCカップバストを覆うシンプルな白のブラジャーが姿を現す。
輝男の左右の手が、桜月の胸を下着越しに愛撫する。
「あっ、あぁ……」
輝男の愛撫に応じるかのように、桜月の口から切ない喘ぎが漏れる。
二、三回、下着越しの愛撫を繰り返すと、ブラジャーのカップをずり上げる。
裸の胸がプルンと弾み出ると、輝男は、パン生地でもこねるかのようにジックリと揉みしだく。
「あぁっ、イヤ……」
色白の美乳を揉む輝男に、桜月は恥ずかしそうにか細く喘ぐ。
滑らかな肌触りと柔らかな肉感を手のひらを通して堪能しつつも、輝男は心ここにあらずといった様子である。
他の少女を抱くことで霧散できるほど、幼なじみのことを憂う気持ちは簡単に消せるものではない。
しかし輝男は、迷いを振り払うかのように、桜月の胸元に顔をうずめる。
愛撫を繰り返しながらも左右の頂を口に含み、舌を這わせ、指でこねくり回す。
「あっ、んんっ、んうぅ……」
胸先から襲って来るみだらな刺激に、桜月はイヤイヤと首を横に振り、かすかに喘ぐ。
頬を赤らめ、人差し指を噛む仕草さえ見せる。
輝男は、恥じらいを隠せない桜月の顔を見向きもせず、彼女の美乳を貪ることに集中する。
左右のふくらみの柔らかな肉感を揉みながら、先端の蕾を舌と指で味わう。
美乳の先端の小さな蕾は、舌で舐められ、指でこねくり回される内に、徐々に固く突っ立っていく。
先端が固くなるのを認めると同時に、桜月の胸が、内側からジンワリと熱を帯びてきていくのを感じ取る。
「あぁっ、ハァッ、あっ、ハァッ……んん、んぅ……」
桜月の口からは切なそうな吐息が絶えず漏れ、喘ぎも艶を増していく。
すると、輝男は桜月の胸元から顔を離した。
体を起こし、改めて、真上から桜月を見下ろす。
桜月は、半ば呆けたような顔を赤らめて、輝男を呆然と見上げる。
さらされた裸の胸の先端からは、小さな蕾がピンと突っ立って見える。
「て、輝男君……」
桜月が弱々しく呼びかけながら体を起こす。
感じ入ったかのような赤ら顔を見せながら、輝男とまっすぐ顔を合わせる。
「私にも……させて……」
やや恥ずかしそうに呼びかける桜月に、輝男は何も言い返さない。
輝男は、上半身Tシャツ、下は素裸という状態で、ベッドの上に腰を下ろす。
輝男が見下ろす先には、スカートをはいているが、その上は素裸の桜月が身を屈めている。
裸の股から突っ立つ肉の棒をつかむと、その先端にチュッとキスをする。
桜月は大きく口を開けると、輝男自身をゆっくりとくわえ込む。
スローペースでフェラチオをする桜月を、輝男はため息交じりに見下ろす。
「んんっ、んっ、んぅっ……」
桜月の口元から、かすかなうめき声と唾液が跳ねるような音が漏れる。
生温かく、柔らかい口腔が撫でるように陰茎をこする感触が、輝男の神経を伝う。
輝男は、ウットリと頬を赤らめながら自分自身をくわえ、しゃぶる桜月を呆然と眺める。
しかし、次の瞬間、
(“いずちゃん”……!?)
眼下でフェラチオに耽る桜月の姿が、一瞬、海原泉に変わったのだ。
輝男の目に映る泉の幻は、やはり、ウットリと顔を赤らめながら、輝男自身を貪るようにくわえている。
「んっ、んぅっ、んんっ、んうぅ……」
ペースを速めながら幼なじみのモノをしゃぶり、艶やかなうめき声を漏らす泉。
しかし、その姿は、今、現実にいる桜月へと戻った。
桜月は口の動きを速めながら、輝男自身を貪り続ける。
「んっ、んぅっ、んくぅっ……」
陰茎でふさがれた桜月のうめき声が艶やかにトーンアップする。
迷いを振り払うかのように、愛する男のモノを貪ることに神経を集中させようとする。
桜月の懸命な奉仕に応じてか、彼女の口内にとらわれている輝男自身は、固さ、大きさを増していく。
桜月の口腔は、固く大きくなっていく陰茎をハッキリとこすっていく。
「んっ、んぐっ、んうっ……!」
輝男の耳に、息詰まるような桜月のうめき声が聞こえる。
「さ、桜月……」
輝男は、フェラチオに耽る桜月を見下ろしながら、心配そうに呼びかける。
すると、桜月はようやく、輝男自身を口から離す。
桜月が見つめる先に、唾液にまみれながら固く突っ立つ剛直が認められる。
剛直を見つめる桜月の顔は、ほんのりと赤みを増しながらほほ笑んでいる。
「すっかり元気になったみたいね……」
笑みを浮かべながら言って来る桜月に、輝男は恥ずかしそうに閉口する。
輝男は、上半身Tシャツ、下半身は素裸のまま、ベッドの上で仰向けに寝そべる。
裸の股からは、剛直が天を向くように隆起している。
そこへ、上半身素裸の桜月が、輝男の腰の上にまたがる。
身にまとうスカートで剛直を隠すと、慣れた手付きで、剛直の先端を自分の秘裂にあてがう。
「桜月……」
「まだ、傷が完全に癒えていないんだから、無理しちゃダメ」
桜月は輝男に自重をうながすと、ゆっくりと自分の腰を沈める。
生温かい肉の洞窟に入り込む感触が、輝男の神経を襲う。
一方の桜月は、固く大きな異物が自分自身の中に入る様に、
「あっ、あぁっ……」
たまらずのけ反りながら、切なそうな喘ぎを漏らす。
一旦、動きを止め、深呼吸をすると、再び自らの腰を沈める。
「うっ、うぅ……」
たまらずうめく桜月の声を聞くと、
(桜月の中……温かくて……キツイ……)
自分自身を受け入れる桜月の中の感触に、輝男は内心、感嘆する。
と、次の瞬間、桜月は意を決したかのように、自分の腰を真上からぶつける。
剛直が深々と自分の中に差し込まれると、
「あっ、あぁっ……!」
輝男の上にまたがりながら、体を大きくのけ反らせ、かすかな悲鳴を上げる。
そして、ゆっくりと腰を上下に動かし始める。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
努めて声を抑えながら、腰を振り続ける桜月。
すぐ近くのリビングで、真純と理華、真白、石上が向き合っていることなど知る由もないが、恥じらいの気持ちからか、喘ぎ声を上げるのを抑制しようとする。
騎乗位で自分自身を貪る桜月を見上げる輝男は、上下に震える美乳と、恍惚の度合いを増す桜月の美貌を認める。
桜月は徐々に腰の動きを速めていく。
「輝男君……気持ちいい……?」
「あぁ……とても気持ちいいよ……」
桜月からの問いかけに輝男は返答すると、
「ホント……? 輝ちゃん……」
輝男の目に、恍惚とした顔を赤らめながら自分を見下ろす泉の姿が映った。
またも目の前に突き付けられた泉の幻に、輝男は思わず驚愕する。
すると、
「うぅっ!」
腰を振り続けながらたまらずうめく桜月が、輝男の目に映った。
「ヤダ、もう……また固くなってく……」
桜月は、自分の中で更に硬度と大きさを増す輝男自身に、ため息交じりのつぶやきを発する。
そして、腰の振りを小刻みに切り替える。
スカートの中に隠れてよく見えないが、桜月の腰が、輝男の腰に何度も真上からぶつかっていく。
剛直をくわえている秘裂の隙間からは、蜜がこぼれ続けている。
輝男は、自分と桜月の間から漏れる水音混じりの衝突音と、
「あぁっ、んんっ、あっ、うっ、ハァッ……」
艶やかで切ない桜月の喘ぎを重ねて聞き入る。
(桜月の中、熱とぬめりが半端無くなってる……
それに、さっきよりもかなり締まってきてる……)
輝男は、腰を振り続け、自ずと美乳を揺らし続ける桜月を見上げながら、彼女の中の感触に感嘆する。
桜月のヴァギナは、四方から輝男自身を締め付けながら、熱とぬめりで表面を覆っている。
郷沢の部下である悪漢どもに痛め付けられた傷のせいで、いつものように体を動かせない輝男は、全身全霊でもって自らに奉仕する桜月の動きを甘受するしかない。
「うぅっ、イヤッ……キ、キツイ……」
自分の中で固く、大きくなっていく剛直と収縮を強めるヴァギナの摩擦に、桜月はたまらず苦痛の声を上げる。
すると、
「輝ちゃん……もっと……もっと……」
騎乗位を続ける桜月の姿が、またも幻の泉に変わっていった。
恍惚の極みにある形相で見下ろしながら、切なそうに呼びかける泉。
途端、輝男は体を起こし、その勢いで腰を突き上げる。
「あぅっ!」
突然の予期せぬ突き上げに、桜月はのけ反りながらうめく。
「ダメだってば……まだ傷が…」
顔を赤らめながらも戸惑いの声をかける桜月の口を、輝男のキスがふさいだ。
一瞬のキスの後、輝男は桜月とまっすぐに向き合う。
「せっかくで悪いが、このまま続けていると……」
沈痛な調子で声をかけると、そのまま言葉を詰まらせてしまう。
桜月は、輝男の今の言葉を聞くと、憂いを帯びたかのように表情を曇らせる。
(泉さんのことを引きずってしょうがないのね……)
輝男の内心を見透かしたかのように、深い憂慮を心の中でつぶやく。
そして、輝男を優しく抱き締める。
「わかったわ……。でも、無茶しないで……」
優しく抱擁しながらそっとささやく桜月に、輝男は言葉を失う。
輝男と桜月はベッドの上で体を起こし、抱き締め合っている。
「あっ、あぁっ、あんっ……」
真下から腰を突き上げる輝男に、桜月は体をのけ反らせながら、切なそうに喘ぐ。
ベッドのきしむ音と荒い息遣いが、桜月の耳に絶えず聞こえて来る。
桜月は、輝男を抱き締める腕力を無意識に強める。
紅潮した顔を歪ませ、グッと歯を食いしばる。
「て、輝男君……お、奥に……当たって……キ、キツイ……!」
狭まるヴァギナを突き破り、最深部に何度も突き当たる輝男自身に、たまらず苦痛の声を漏らす。
輝男は、背中に刻まれている傷と痛みが今の抱擁で増しているのを忘れて、何度も腰をぶつける。
額に汗をにじませ、荒く息を吐きながら、桜月の中で自らを上下に動かし続ける。
正面から密着する桜月の素肌から汗と熱がすり付けられているが、そのことを気に留める余裕はまったくない。
(桜月の中……熱もぬめりも、俺にしつこく絡み付いて……離さない……!)
強まる一方の肉圧と剛直に絡み付く熱とぬめりの感触のみが、輝男の意識にこびり付いている。
そのまま腰の突き上げを繰り返していると、苦しそうに眉をひそめ、歯を食いしばる。
(ダ、ダメだ……体の中がわき立ってる……!)
内心、苦悶の声を上げる輝男。
傷の痛みを忘れて桜月を抱いていた輝男だったが、ここに来て淫欲の昂ぶりが煮えたぎっていることに気付く。
自分自身がいつ暴発してもおかしくない状態にあるのを認めると、
「さ、桜月……俺……」
荒い吐息を交えながら、桜月に呼びかける。
すると、桜月は輝男をギュッと抱き締めながら、
「いいよ……。今日は大丈夫だから……」
耳元でそっと優しくささやく。
桜月の今のささやきに応じるかのように、剛直の突き上げを甘受するヴァギナがギュッと締め付けを強めていく。
限界ギリギリまで肉圧を増すヴァギナを、輝男の剛直は何度も突き破ろうとする。
ラストスパートをかける輝男の動きに、桜月は抱き締める力を強め、何度ものけ反る。
「あっ、イヤッ、あぁんっ……」
ベッドのきしむ音と桜月の切ない喘ぎが重なって聞こえる。
やがて、輝男を抱き締める桜月の腕がわなわなと震える。
「イヤ、ダメ……あ、あたし……イっちゃう……」
輝男を抱き締めながら、震える声で自らを限界を告げる桜月。
桜月の今の訴えに、輝男は強い突き上げでもって応じる。
「さ、桜月……イくぞ……!」
「き、来て……早く……」
限界にさいなむ輝男の震える声に、桜月は健気に応じる。
そして、輝男が真下から腰を思いっきり強く打ち据えると、
「あっ、あぁっ、あんっ……!」
輝男を抱き締めながら、体を大きくのけ反らせ、絶頂の声を上げた。
桜月が果てて間も無く、輝男は桜月の中に自らの淫欲を暴発させた……
◇ ◇ ◇
死んだように静まり返っているリビングに、外からの雨音が大きく聞こえる。
沈痛な面持ちを見せる真純を、理華、真白、石上は、罪悪感をにじませるかのように表情を曇らせる。
「真純さん……
あなたにそのような心痛を強いてしまい、どうお詫びをしていいかわかりません……
私たち、あなたの昔のことなど、本当に何も知らないのに、あなたを苦しめてしまって……
私たちにとっては、義息(むすこ)さんと同じくらいに、仲良く親しい間柄なのに……」
理華が申し訳無さそうに詫びの言葉をかけると、
「私こそ、先生方に無理をさせて、申し訳ない限りです……
私の話を最後まで親身になって聞いて下さったのですから……」
真純は無理に笑顔を見せながら、理華たちに詫びの言葉を返す。
ずっと隠しておきたかった人生の忌まわしい恥部をさらけ出したことに対して、さげすむどころか、我が事のように心を痛め、最後までキチンと向き合ってくれたことに、嬉しさと申し訳なさが混ざり合った気持ちになっている。
「これで、義息(むすこ)にも、心置きなく昔のことを言えます」
必死になって笑みを浮かべて言う真純に、理華たちは返す言葉が中々、出て来ない。
過度な束縛、言語に絶する無残な辱め、そして、理不尽な切り捨て――
忌まわしく、唾棄すべき世の暗部を甘受することを強いられながらも、人並み以上の優しさ、更には人間性そのものを捨てずにいる真純の姿に、どう言葉をかけていいかわからないといった様子である。
それでも、理華や真白、そして石上は、今、目の前で向き合う教え子の義母が、親しく関係を持つに値する存在であることを強く認識している。
元・アイドルとしてではなく、一個の人間として……
「それじゃあ、これから、天江君のところに参りますので」
「真純さん、長いこと、お邪魔致しました」
理華と一緒に席を立つと、真白と石上は、真純に向かって深々と一礼する。
理華たちの礼に、真純は笑みを浮かべながらうなずく。
同じ頃、輝男は自室で服を着替え直している。
同じく服を着替え直している桜月に、輝男は背を向けている。
今更のように、申し訳なさそうな重い表情を浮かべ、桜月の方を振り返ろうとしない。
着替え終えた桜月は、背を向け続ける輝男の方を振り向く。
「輝男君……少しは気持ちが楽になったかしら……?」
桜月がそっと声をかけると、
「ごめん…と謝るべきかもしれないけど……
今更、謝るくらいなら、初めから君と……」
輝男は背を向けたまま、申し訳無さそうにお詫びにもならない言葉をかける。
桜月は輝男の今の言葉を聞くと、神妙な面持ちで輝男の背を見つめる。
「確かに、今日の輝男君は、全然、らしくなかったわ。
でも、ずっとモヤモヤを抱えたままだと、容易にできることもまったくできないから。
それに、本当に嫌だったら、私、初めから輝男君を受け入れてなかったし……」
諭すように言い聞かせる桜月の声が、輝男の耳に流れ込む。
今の桜月の言葉に応じるかのように、輝男がゆっくりと後ろを振り返る。
すると、既に至近距離にいる桜月が、輝男の頬にチュッとキスをする。
不意打ちも同然のキスに、輝男は半ば戸惑った顔を赤らめる。
「さ、桜月……」
戸惑うかのように呼びかける輝男に、桜月はクスッと笑みをこぼす。
「輝男君……早く、元気になって、いつもの輝男君に戻って」
そう言葉をかけると、桜月は部屋を出るべく、ドアを開ける。
しかし、ドアを開けた途端、桜月は目の前にあるものを見て、驚きに身を固くする。
「あら、日向さん」
「せ、先生……!」
理華、真白、そして、石上と予想だにしない形で鉢合わせしてしまい、何故か顔を真っ赤にしてしまう。
「日向、お前も、天江の見舞いに来てたのか?」
「は、はい……!」
石上からの問いかけにぎこちなく返答すると、顔を真っ赤にしたまま一目散に去って行く。
桜月の態度に思わず首を傾げる石上の傍で、理華と真白はクスッと笑みをこぼす。
「あの様子だと、輝男君とヤりまくってたみたいね」
「ホント、油断も隙もあったものじゃないわ」
桜月が輝男と事に及んでいたのを見抜き、小声でささやき合う理華と真白。
真純の忌まわしい過去を聞かされ、暗く沈んだ気持ちも、今の桜月の行動で幾分は和らいだようだ。
間も無くして、三人は輝男の自室に足を踏み入れ、輝男と顔を向き合わせる。