太陽が顔を覗かせ、薄暗かった空が徐々に明るくなっていく。
夜明けの空を見上げながら、一人の若者が露天風呂に浸かっている。
「夜明けの露天風呂も風情があっていいもんだなぁ……」
遠くを見据えるような面持ちで、輝男が感嘆とつぶやく。
透き通るようなお湯を顔にかけると、深くため息を付く。
自然と、脳裏にある光景が浮かび上がる。
貸し切り風呂での小春、静流との3Pセックス――
別の浴場でまさかの再会を果たした泉とのセックス――
そして、静流が使ってた宿泊室で、小春、静流、そして、泉と繰り広げた4Pセックス――
昨晩だけでも、美少女三人相手に三度も激しいセックスを繰り広げたことを思い出し、疲れたようなため息を漏らす。
(小春たちが求めてきたせいもあるかもしれないけど、俺自身もよくやってくれるよ……)
昨晩の濃厚な淫欲のひと時を思い出しながら、内心、自分自身に呆れてしまう。
淫交の余韻が冷めやらぬ体を癒すかのように、他に誰もいない露天風呂の真ん中で湯に浸かり続ける。
やがて、輝男の表情は自ずと安堵の色をにじませていく。
そのままの状態がしばらく続いていると、こちらの方に静かな足音が近付いて来るのが聞こえて来た。
足音が聞こえて来た方を振り返った途端、輝男は驚きと恥じらいに顔を赤らめた。
下ろしていた腰を思いっきり上げて、目の前にあるものと向き合う。
「ヤダ、どうしたの? 輝男さんったら、そんなに驚いちゃって」
長い髪を後ろに束ね、大事なところを手拭いで隠す以外は一糸もまとわぬ裸体をさらす真純が、にこやかな笑みで輝男を見ていた。
驚きを隠せない輝男に構わず、真純は湯船の中に入り、そのまま輝男の横に寄り添う。
輝男と真純は並んで腰を下ろし、湯船に浸かりながら、ますます明るくなる夜明けの空を見つめている。
「どうしちゃったの? 義母さん、こんな時間に……」
「急に目が覚めちゃって……
それに、朝ご飯、食べたら、この旅館出なきゃいけないから、せめてもう一回くらい、お風呂に入りたいと思って」
義息と義母はそう言葉を交わすと、黙りながら露天風呂を満喫する。
温かな日差しと夜明けの静寂が、露天風呂内の義母子を取り巻く。
数分程、沈黙が続いた後、真純の口が開く。
「輝男さん、結局、お部屋に戻らなかったわね……」
柔らかな表情を崩さずに言う義母に、輝男は気まずそうな顔を見せる。
静流の宿泊室で小春、静流、泉と乱交を繰り広げた後、疲れ果てて、そのままその場で眠ってしまったのだ。
小春や静流が眠っている隙をついて、今、この露天風呂にいるのだ。
真純は、横で気まずそうな顔をした義息を認めると、
「気にしないでいいのよ。義母さん、別に怒っていないから。
旅の解放感につられて、静流さんや小春さんたちと楽しいひと時でも過ごしてたんでしょ?」
まるで、その場に居合わせたかのように、輝男を取り巻く状況を言ってのける。
輝男は、更に恥ずかしそうに顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる。
恥じらいを募らせる一方の義息に、義母は柔和な笑みを見せる。
「せっかくの旅行ですもの。
素敵な思い出の一つや二つ、作っておかないと、わざわざ遠くまで足を運んだ意味が無いでしょ?」
そう言うと、真純は湯の下で義息の裸の股を手探りする。
義母の細い手が肉の棒を手探りするのを認めて、輝男は驚きの表情を認める。
「か、義母さん、何を……!?」
「本当は、義母さんも輝男さんとの混浴を楽しみたかったけど、中々、機会が無くて……」
「何、言ってんだよ? 今、こうして混浴を楽しんでいるじゃないか」
輝男がそう言うと、真純の唇が彼の唇をふさいだ。
湯気と柔らかな唇の感触に、輝男は紅潮しながら身を固くしてしまう。
一瞬のキスの後、真純は改めて輝男と向き合う。
柔和な笑みを絶やさずにいるが、火照ったかのように顔を紅潮させ、乞うようなまなざしを震わせている。
目の前に突き付けられた義母の形相に、輝男は戸惑いにも似た面持ちを見せる。
「か、義母さん……」
「何も言わないで」
人差し指で義息の唇をふさぎながら、真純はそっとささやく……
輝男は依然として、腰を下ろしながら露天風呂に浸かっている。
彼の膝の上には、真純が腰を下ろしている。
義息の体に背もたれし、自分の身を預けながら、背後からの愛撫を甘受する。
お湯に濡れ、ほのかに熱を帯びているたわわな肉の果実を、輝男の手のひらがジックリと揉みしだく。
「あぁ、いいわ……輝男さん……」
「義母さんの体、とても温かいよ……」
ウットリとした声を上げる真純に、輝男は感嘆の念を返す。
お湯に濡れているとはいえ、滑らかな肌触りをし、モチモチしたハリのある肉感を誇る義母の美巨乳は、何度揉んでも飽きることがなく、むしろ、揉めば揉むほど心地良い刺激が増していく。
「あっ、あぁっ、ハァ……」
背後からの愛撫に、真純は切なそうな喘ぎで応じる。
温かなお湯と柔らかな肉感は、輝男を否応無くのぼせ上げてしまう。
真純の頬に、荒い息遣いがかかる。
すると、突然、真純の体がビクンとのけ反った。
まるで、体に電流が流れたかのような刺激が、真純の神経を襲ったのだ。
「ヤダ、もう、輝男さんったら……」
チラッと後ろを振り返りながら、恥じらい、とがめるかのような声をかける。
右手と共に義母の美巨乳を揉みしだいていた左手が、茂みをかき分け、真純の大事なところに人差し指と中指を差し込ませたのだ。
「ごめん、義母さん。我慢できない……」
淡々と詫びの言葉をかけながら、左手の二本指を義母の中に行き来させる。
自分の中に入り込む細長い異物の感触に、真純は痙攣でも起こしたかのような動作を見せる。
すると、右手を湯の下に潜り込ませ、義息の裸の股を手探りする。
間も無くして、真純の右手は、固く突っ立つ義息の陰茎を触れ、繰り返しさすり始めた。
背後から右手で形良いFカップバストを揉み、左手の二本指でヴァギナをかき回す輝男。
二重のみだらな責め苦にさいなまれながらも、肉の棒を確保し、滑らかな刺激を加え続ける真純。
他に誰もいない早朝の露天風呂で、義母子は互いを刺激し合う。
「義母さん、大分、濡れて来たみたいだよ」
「輝男さんも、すっかり固く、大きくなってるわ」
互いに感じ入っていることを告げ合う輝男と真純。
輝男の指は、真純のヴァギナが熱を帯び、内側から染み出た愛液と隙間から流れて来たお湯で濡れて来ているのを感じ取る。
一方、真純の片手は、輝男自身を絶えず撫でさすりながら、固く膨張させていく。
共に後へ引けない状態に差しかかると、二人は改めて顔を合わせる。
真純は振り返りざまに、すがり付くかのような面持ちを赤らめ、乞うようなまなざしを震わせる。
一方の輝男は、熱に浮かされたかのような顔を見せながら、真純をまっすぐ見つめる。
二人の口からは、わずかな一言も漏れない。
言葉を交わす必要など無いのかもしれない……
「あっ、あぁっ……!」
露天風呂に艶やかな喘ぎが響く。
足踏みのための淵場に両手をつかませ、前傾体勢を取っている真純が、何度も体をのけ反らせる。
真純の背後では、輝男が彼女の美尻をつかみ、固く膨張した剛直を、お湯と蜜で濡れている秘裂に差し込まれる。
秘裂に突き刺さった剛直を通して、輝男は己が腰を義母の美尻にぶつける。
「か、義母さん、気分はどう?」
繰り返し腰をぶつけながら輝男がたずねると、
「あぁ、うっ……! い、いいわ……とても……気持ちいい……!」
艶を帯びた声で歓喜の念を返す。
温かなお湯に浸かっているせいか、輝男の動きはいつになく激しい。
腰と美尻のぶつかり合う音に、お湯の跳ねる音が重なって響く。
(お風呂も義母さんの中もとても温かくて……病みつきになりそう……!)
我が身を覆うお湯の熱と熱とぬめりを帯びたヴァギナの感触に、感極まった思いにとらわれる輝男。
輝男の動きは自ずとペースアップする。
「うぅっ! イヤッ! て、輝男さん……激しい……!」
背後から貪欲に犯す義息に、真純はたまらず苦悶の声を上げる。
「ご、ごめん、義母さん……! でも、締まる……!」
輝男は詫びの言葉をかけながら、収縮を強める義母のヴァギナの感触に感嘆する。
そのまま、激しく小刻みに、背後からの律動を繰り返す輝男。
一方の真純は、背後からの律動に押されるように、その身を前後に揺らしている。
お湯に隠れてよく見えないが、真純の胸元から盛り上がっている左右のふくらみは絶えず震えている。
「て、輝男さんの……奥に当たって……。ダメ……頭の中、真っ白になりそう……」
真純は、義息自身が自分の中、最奥に突き当たるのを認めながらも、意識がボンヤリしていくのを痛感する。
風呂に浸かり過ぎたことと背後から容赦なく犯される刺激が、真純の意識をぼやけさせようとしているのだろう……
露天風呂から、お湯の跳ねるような音がトーンアップして響く。
腰を下ろすようにして風呂に浸かっている輝男の腰の上で、真純が跳ねるようにして腰を上下に揺らしている。
湯の下では、秘裂に突き刺さった剛直を通して、輝男の腰が突き上げを繰り返している。
「ヤバいよ……! 義母さんの中……俺に絡み付いて…離れない……!」
熱に浮かされたかのように腰の突き上げを繰り返しながら、苦悶の声を上げる輝男。
彼の目の前では、突き上げに押され、その身を揺らしながら、美巨乳を上下に波打たせる真純の姿が認められる。
「いい……いいわ……輝男さん……そのまま……!」
歓喜と恍惚が入り混じった声で、真純は更なるみだらを義息に求める。
義母にうながされるがままに、湯の下から小刻みに腰を突き上げる輝男。
「あぁっ、ハァッ、んっ、んうぅっ、う、くぅっ……!」
真純の艶やかな喘ぎが、お湯の跳ねる音と重なって響く。
やがて、
「ダ、ダメだ……! 義母さん……出る……!」
輝男は額に冷や汗をにじませながら、自らの限界を痛切に訴える。
輝男の中では、昂ぶりがグツグツと煮えたぎっている。
真純は輝男の今の訴えに、恍惚とした笑みを浮かべる。
「いいわよ……そのまま、輝男さんの熱いほとばしり……義母さんの中に流し込んで……」
義母の紅潮した恍惚の笑みとうながすかのような優しい声に、輝男は吹っ切れたかのように腰の突き上げを激しくさせる。
引っぱたくようにぶつけて来る腰の動きと猛進を繰り返す剛直の動きに、真純の中は締め付けを増す肉圧で応じる。
「す、すごい……輝男さん……もっと……もっと……!」
熱に浮かされ、我を忘れたかのように恍惚の声を上げる真純。
跳ねるようにその身を上下に揺らし、左右の大きなふくらみを絶えず震わせる。
そんな真純を犯す輝男は、義母の中の生温かい感触を堪能しながらも、自らが暴発寸前であることを否応なく思い知る。
「義母さん、俺、もう…我慢できない……! で、出る……!」
声を震わせながら自らの限界を訴える義息に、
「輝男さん、お願い……早く…来て……」
義母もまた声を震わせて、愛する義息を切々と求める。
間も無くして、輝男の腰が湯の下から強い一突きを食らわせると、
「あっ、あぁっ! あぁ――――――……!」
真純は輝男の腰の上にまたがったまま、体を大きくのけ反らせ、絶頂の声を上げた。
輝男は義母の今の叫びを聞くと、彼女の中にありったけの淫欲を一滴残さず流し込んだ……
◇ ◇ ◇
快晴の空が見下ろす中、箱根湯本・もがみ屋の正面入口から輝男たちが出て来る。
「輝男さん、今回の温泉旅行、十分、満喫できたかしら?」
「うん、とても楽しめたよ」
向かって右側にいる真純からの問いかけに、輝男は笑みを見せながら返答する。
何気無く、当たり前のように振る舞っているが、まだ、他の皆が寝静まっている頃、早朝の露天風呂で二人きりの淫交に浸っていたことなど、おくびにも出そうとしない。
すると輝男は、真純の横にいる静流に目を向ける。
「でも、元はと言えば、静流さんが旅館のチケットをくれたおかげだよ」
「私も今回の件では、静流さんに心から感謝しているわ」
「いいえ、そんな……。皆様が喜んで下されば、それだけで結構ですから……」
続けて感謝の言葉を言って来る輝男と真純に、静流ははにかんだ笑顔で言葉を返す。
すると、向かって左隣にいる小春が、輝男の腕にギュッと抱き付く。
「そんなことより、まだたっぷり時間があるんだから、思いっきり楽しんじゃおうよ!」
嬉々として声を上げると、輝男を引っ張りながら前へと駆けて行く。
「もう、どさくさに紛れて、何、ふざけたことをしてるのよ!」
「ホントにこの子ったら、輝男さんのこととなると見境が無いんだから……」
はやる小春に瑠奈は不機嫌になり、母親である小夜子は困惑と羞恥が入り混じった苦笑いを見せる。
もがみ屋をチェック・アウトした一同は、あじさい橋に差し掛かり、遠くに見える箱根湯本駅の方へと歩を進める。
三十分ほど経った頃、駅近くのビル内に輝男の姿がある。
今、輝男がいるのは、ビル内にテナントを持つ着付け店の手前である。
誰かを待っているかのように、店入口の横に広がっている壁に背もたれしている。
やがて、何者かが店内から出て来た。
店入口の方を振り向いた途端、輝男はドキッと顔を赤らめた。
「どう? 輝ちゃん、似合うでしょ?」
輝男の目の前に立つ、赤を基調とした鮮やかな着物をまとう一人の少女が、得意げな面持ちで輝男に言葉をかける。
後ろに束ね、結われた長いストレートな金髪に気の強そうな美貌と小麦色の素肌、そして、着物を着ていてもしっかりと自己主張する左右の大きなふくらみが、輝男の目に否応なく突き付けられる。
レンタル着物をまとう小春を取り巻くようにして、着物姿の女性たちが次々と姿を現す。
花柄模様の水色の着物をまとう静流に、白を基調とした着物姿の真純、柳を彩られた黒の着物をまとう小夜子、そして、桃色の花柄模様の着物を着た瑠奈が、あでやかな姿を輝男に見せる。
「いかがですか? 輝男さん」
「あぁ……皆、すごく素敵だよ……」
にこやかにほほ笑みながらたずねる静流に、輝男はボゥッと見とれながら感嘆の声を上げる。
「ねぇ、誰が一番、きれいかな?」
期待に胸を弾ませるようにして瑠奈がたずねると、
「誰が一番なんて決められないよ。皆、同じくらいにきれいで素敵だから」
輝男は、断言を避けるかのような曖昧な返答を返す。
義兄の曖昧な態度に、義妹は思わず憮然と表情を曇らせる。
「もう、お義兄ちゃんったら、いつもこうなんだから……!」
瑠奈が不満を隠し切れずに愚痴をこぼすと、
「しょうがないよ。この状況じゃあ、誰が一番だなんて言いたくても言えないからね」
小春はすかさず、自信に満ちた調子で言葉を返す。
彼女の今の言葉に、その場にいた一同はドッと笑い声を上げる。
駅近くのビルを出た一同は、各々、自由行動に出て行った。
真純と瑠奈の義母娘は、湯本観光人力車を利用して名所を一通り巡って行く。
小夜子は一人、箱根湯本駅の裏手にある足湯を一人、満喫し、周辺を散策している。
一方……
「すごいね。さすが観光地だけあって、お店がいっぱいだよ」
小春は目を大きく見開きながら、辺りにひしめく店々に感嘆の声を上げる。
「そうですね。これだけ店が多いと、どこへ足を運べばいいのかわかりませんわ」
静流もまた、辺りの店々を見渡しながら感嘆する。
「こうして、通りをブラッと歩くだけでも乙なものだよ。
どの店に足を運べばいいかは、そのまま道を歩きながらでもいいし」
小春と静流に挟まれながら、輝男が言葉をかける。
今、彼らは、駅前通りをゆっくりと散策している。
舞妓のけいこ場前で記念撮影をしたかと思ったら、通りに面した土産物店で土産物を買ったり…と、時が経つのを忘れて思い思いに時を過ごしている。
駅の方へ引き返す道すがら、小春が口を開く。
「やっぱり、温泉旅行に行くなら、輝ちゃんと一緒が一番だよ」
「そうか……」
輝男は素っ気なく言い返すと、横で何故か憂い顔を見せる静流に気付き、目を向ける。
一歩先へ進む小春の後ろで、輝男は静流に声をかける。
「静流さん、何だか、元気が無いけど……」
「そ、そうですか……?」
「やっぱり、アイツがいないのが…」
「言わないで下さい」
心配して声をかける輝男の言葉を、静流は気まずそうにさえぎる。
半ば、沈痛な面持ちでうつむく静流を見ると、
「確かに、アイツは、今が一番、大変な時かもしれないし……
俺たちももう少ししたら、アイツと同じように苦しい思いをしなければいけなくなるから……」
神妙な面持ちを見せながら言葉をかける。
二人の脳裏には、今、この場にいない大富 豪の姿がハッキリと浮かび上がっている。
しかし、すぐに輝男は、表情を和らげながら静流に目を向ける。
「でも、大丈夫さ。俺たちもそうだけど、アイツもきっと、必ず大学に受かるから……
今、この時期を乗り越えられたら、いつでも一緒に旅行に行けるから」
輝男がそう言うと、静流は顔を上げて輝男の方を振り向く。
「輝男さん、あなたが私や豪さんのために、ここまで気にかけて下さるなんて……」
静流が申し訳なさそうに言うと、
「前にも言ったかもしれないけど……俺はヤツに君を差し出すつもりなんて無い。
でも、君とアイツとのせっかくの絆を無理矢理に引き裂くつもりも無い」
輝男は努めて平素の表情を見せながら言葉を返す。
すると、
「ちょっと、二人とも、さっきから何、ブツブツ話してるの?」
小春がじろっとにらみ付けながら、二人を問い詰めようとした。
詰め寄って来る小春に、輝男はギクッと気まずい顔を見せ、静流は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「このアタシを差し置いて抜け駆けなんて、絶対に許さないんだからね」
「何、言ってんだ? 静流さんは別に抜け駆けなんてしてないから」
静流に詰め寄ろうとする小春に、輝男は呆れながら苦言を呈する。
人一倍やきもち焼きな小春に呆れつつも、静流と豪の関係がまだ知られていないことに、内心、安堵にも似た気持ちを抱く。
駅前通りの中央に位置するフードコートで、輝男たちは食事をしている。
ジャンボエビカツバーガーを美味しそうに頬張る小春の横で、静流は醤油ラーメンを口にしている。
小春、静流とテーブル越しに向き合っている輝男は、大盛りカレー焼きそばを食べながらも、どこか上の空といった様子である。
(いずちゃん、大丈夫だろうか……?
昨日の夜、あんなに激しくエッチしちゃったから……)
内心、不安の念を募らせる輝男は、自ずと食事の手を止めてしまう。
輝男の脳裏には、昨日、偶然、再会した泉の姿が克明に浮かび上がる。
番宣のためのバラエティー出演のロケに始まって、同じ宿泊先の露天風呂でのセックス、そして、小春、静流と交えた4Pセックスが、輝男の記憶にこびり付いたまま離れない。
美少女三人をまとめて相手にしたこと自体もそうだが、その内の一人が、今をときめく人気アイドルにして売り出し中の若手女優、そして、小さい頃、ずっと一緒で仲良しだった幼なじみであることが、昨晩の一幕を忘れ難いものにさせている。
激しい愛欲の記憶を噛みしめながらも、あの後、泉が無事でいられたかどうか不安で仕方がない様子である。
すると、
「…ちゃん……輝ちゃん……」
正面の方から、心配そうに呼びかける声が聞こえて来た。
ハッと我に返ると、真向かいにいる小春と静流が訝しげに自分を見つめているのに気付いた。
「どうしたんですか? さっきから、全然、食事に手を付けていらっしゃいませんが」
「まさか、具合が悪いとか、食事が不味いわけじゃないよね?」
「そんなことないさ。ただ、ちょっと考え事をしてただけだから」
必死に平素の表情を装いながら言い返すと、食べかけのメニューを口にする。
「まだまだ楽しい旅行の真っ最中なんだから、変な心配事なんかしなくていいのに」
「あぁ、わかってるさ」
半ば呆れながら言って来る小春に、輝男は素っ気無く言い返す。
ソースとカレーが絡み合った濃厚な味わいを噛み締めつつも、脳裏からは昨晩のセックスの際の泉の姿が消えることは無い。
(大丈夫……。いずちゃん、今もちゃんと元気でやっているさ……)
安堵をうながすかのように、内心、自分にそう言い聞かせる輝男。
未だ、幼なじみのことを忘れられずにいることを、真向かいにいる小春や静流はまったく気付かない。
箱根湯本駅の正面手前に、輝男たちがいる。
「皆、ちゃんと戻って来たみたいね」
安心したかのように小夜子が言うと、
「この着物を返したら、後はもうお家に帰るだけだから」
着物姿の真純が、やはり着物を着ている瑠奈、小春、静流に言う。
「ねぇ、せっかくだから、最後に皆で記念撮影でもしようよ」
「いいじゃん、それ! やろうよ、やろう!」
提案する瑠奈に、小春が声を弾ませながら応じる。
間も無くして、駅正面入口をバックにして、着物姿の女性陣が並び立つ。
真純を真ん中にして、その両脇を瑠奈と小春、更にそれぞれの横に静流と小夜子が立つ。
一同が向き合う先には、スマートフォンを構えている輝男が立っている。
輝男は、スマートフォンのディスプレイを見ながら、正確な位置に角度を調整する。
「よし、皆、いいぞ。じゃあ、行くよ」
スマートフォンを構えながら、写真撮影のアイコンをタップする輝男。
と、次の瞬間、小春が勢い良く前に出て、元気よくピースサインをしてきた。
輝男は、訂正をうながす余裕も無いまま、突然のハプニングをそのまま写してしまった。
「おい、小春、何、やってんだよ!」
予期せぬ小春の行為に、輝男が半ば苛立ったかのように声を上げると、
「まったく、最後の最後までふざけたマネをしちゃって……!」
瑠奈もまた、ムッと不機嫌に表情を険しくさせながら、小春に向かって怒りの声を上げる。
「ごめんごめん。せっかくの記念撮影なものだから、つい気持ちははやっちゃって」
輝男と瑠奈の抗議に、小春は悪びれた様子を見せずに言い返す。
しかし、すぐにちゃんとした記念撮影を終えると、輝男と小夜子が入れ替わった。
スマートフォンを構える小夜子の目の前には、輝男を真ん中にして、小春と静流、そして、瑠奈と真純がそれぞれ左右両脇を固めながら並び立っていた。
角度の調整を終えると、
「じゃあ、皆、行くわよ。小春、今度は変に飛び出したりしないで」
小夜子は、写真撮影を呼びかけ、娘に注意がてら苦言を呈する。
「もう、ママったら、ちゃんとわかってるから」
小春がそう言い返すと、小夜子は写真撮影のアイコンをタップする。
写真を撮ろうとしたその瞬間、小春は、横にいる輝男の頬に不意打ちのキスをした。
またしても、突然のハプニングを仕掛けた小春の姿が、そのまま写真に収まってしまった。
「お前、ホントにいい加減にしろよ!」
まさかの突然のキスに、キスされた当の輝男は、驚きと戸惑いの入り混じった顔を赤らめて、声を上げる。
しかし、小春は動ずるどころか、してやったりと言わんばかりの顔を見せる。
「いいじゃん、キスくらい。この程度のアドリブなら、全然、OKでしょ?」
「何、言ってるの!? そんなの超NGに決まってんじゃない!」
反省のかけらも見せない小春に、瑠奈はまたしても怒りをあらわにする。
「小春さん、あなたが許されるのなら、私だって……」
静流は思わず表情を曇らせながら、瑠奈に加勢するかのように小春に苦言を呈する。
同じ愛する男を挟んで、激しく言い合う美少女三人に、真純はクスッと笑みをこぼし、小夜子は呆れ顔でため息を付く。
特に小夜子は、ちょっとした騒ぎの大元となった自分の娘に、呆れ果てずにはいられない様子である。
◇ ◇ ◇
薄暗くなった空がタワーマンションを見下ろす。
マンション内のリビングでは、輝男がソファーにもたれながらひと息付いている。
向こうのキッチンでは、エプロン姿の真純がいつものように料理をしている。
二時間ほど前に温泉旅行から帰ったばかりだが、そんなことなど無かったかのようにいつも通りの日常光景を繰り広げている。
それでも輝男は、旅行の疲れが抜けきっていないのか、ソファーに深々ともたれたまま動こうとしない。
すると、はいていたジーンズのポケットから振動音が小さく響いて来た。
ポケットからスマートフォンを取り出すと、すぐに電話に出る。
「もしもし……」
『あぁ、輝ちゃん? 私だけど、今、どうしてる?』
「旅行から帰って、今、家でのんびりしてるところだけど。
ところで、君はどうしてるの?」
『番組のロケが終わって、今、ロケバスで帰ってるとこ。
明日も明日でスケジュールがギッシリ詰まってるんだから』
電話の向こうから、ウンザリしたかのような少女の声が聞こえて来る。
電話の向こうの少女の声を聞くと、輝男は脳裏にある光景を浮かばせる。
もがみ屋の浴場で泉と繰り広げたセックス――
幼なじみとのまさかの再会を思い出しながら、輝男は電話を続ける。
「ところで、あの後、君の方は大丈夫だった?」
心配そうに輝男がたずねると、
『長湯した後、思ったより長く涼んでいたから…って言っておいたから。
マネージャーもそんなにしつこく問い詰めて来なかったし』
安堵をうながすかのような返答が電話の向こうから聞こえて来た。
電話相手の今の言葉に、輝男は表情を落ち着かせる。
「そうか……。君さえ無事ならそれで何よりだよ」
輝男がそう言い返すと、
『輝ちゃん……来年、大学受験が控えてるんでしょ?』
電話の向こうから、心配そうにたずねてくる少女の声が聞こえて来る。
「あぁ……。東大の他にも、二、三、大学を受けるけど」
輝男は自ずと神妙な面持ちを見せながら、大学受験について話し出す。
『輝ちゃんなら、きっと大学受かるよ。だから、頑張って。
泉も、遠くから輝ちゃんのことを応援してるから』
「ありがとう。君も頑張ってね」
電話越しに応援メッセージを贈る泉に向かって、輝男は応援の一言を返す。
電話越しとはいえ、小さい頃、ずっと一緒で仲良しだった幼なじみにして、一度ならず二度も体を重ねた人気アイドルからの声援に、輝男は、旅の疲れも受験のプレッシャーも一気に払い除けられたような気分になった。
一泊二日の温泉旅行、つかの間の楽しいひと時を終えた輝男は、一人、次へのステップに歩を進めようとする。