※この作品はR-18です。

天江輝男の日常   作:原野イアン

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夏休み最終日

 やや曇りががった空の下、青春中央駅正面入口の壁際に、輝男が背もたれしている。

 スマートフォンで誰かと電話をしているが、余り気乗りじゃない表情を見せている。

 

 「一体、何の用だよ?」

 

 『今夜、『高校生クイズ甲子園』がテレビでやるけど、絶対に見てくれよな。

 この小中高大、一世一代の大勝負なんだから、必ずな!』

 

 電話の向こうから、興奮したような小中の威勢のいい声が聞こえてくる。

 

 「悪いけど、俺、勉強があるから。

 大事な勉強をほったらかしてまで、お前に付き合うほど俺は物好きじゃない」

 

 ぞんざいな調子で断りの返事を言うと、輝男はすぐに電話を切った。

 スマートフォンをジーンズのポケットにしまい、動き出そうとする。

 二、三歩進んだところで、ジーンズのポケットから振動音が鳴り出した。

 ポケットからスマートフォンを取り出し、すぐに電話に出る。

 

 「もしもし」

 

 『輝ちゃん、久しぶり。私よ私』

 

 「いずちゃん? どうしたの?」

 

 電話の向こうから聞こえて来る少女――すなわち、海原泉の声に、輝男はその場で思わず驚く。

 

 『実は、輝ちゃんに大事な知らせがあって』

 

 「何、大事な知らせって?」

 

 『今夜やる『高校生クイズ甲子園』に私、スペシャルサポーターとして出ることになってるの。

 よかったら見てくれる?』

 

 「あぁ、必ず見るよ」

 

 『ありがとう、じゃあ』

 

 電話の向こうで泉が嬉しそうに言うと、向こうの方から電話を切る音が聞こえた。

 ついさっき、小中からの申し出を断った舌の根の乾かぬ内に、同じ内容を言って来た幼なじみに対して快諾の返事をした輝男。

 いささかのやましさも感じることなく、何も無かったかのようにスマートフォンをしまい、そのまま歩を進める。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 駅南口に面するGTT・青春校二階のレストルームで、輝男はテーブル上に弁当を広げている。

 レストルーム内に掛かっている時計の針は、十二時半を指している。

 義母が作ってくれた弁当を食べながら、昼の休憩を取っている。

 やがて弁当を食べ終えると、ジーンズのポケットからスマートフォンを取り出す。

 スマートフォンを操作すると、ディスプレイに写真が次々と表示される。

 

 お盆前の海水浴に行った際、海を背に、水着姿でポーズを取る桜月、葵、理華、真白――

 

 同じく、海を背に、自分を挟むようにして写真に収まる桜月と葵――

 

 そして、黒のビキニをまとう小春とのツーショットを写した自撮りフォト――

 

 自分と体を重ね、絆を結んでいる少女たちとの素敵な思い出の証しを、輝男は愛しそうに眺めている。

 すると、

 

 「天江君」

 

 正面から呼びかける声が聞こえて来た。

 ハッと我に返るなり、すぐにスマートフォンをジーンズのポケットにしまう。

 顔を上げると、稲田千早が弁当箱を手にして、真向かいに着席した。

 テーブルの上に弁当を広げるが、ちゃんとした手作りの弁当だ。

 

 「さっき、スマートフォンで何か見てたけど、一体、何なの?」

 

 「去年の家族旅行の時に撮った写真だよ」

 

 弁当を食べながらたずねる千早に、輝男はサラッと嘘の返事をする。

 千早はクールな形相を見せつつも、怪しむ様子を見せない。

 今、輝男が言った嘘を本当のことと信じているようだ。

 輝男は平素の表情を装いながら、弁当を食べる千早とまっすぐ向き合う。

 

 (桜月や葵、小春たちのことは内緒にしておかないと……

 知れたらどうなるか、想像もつかないよ……)

 

 千早をまっすぐ見つめながら、心の中でつぶやく。

 桜月や葵、小春、静流にはるか遅れて、千早とも体を重ね、絆を結んだ輝男。

 しかし、千早と桜月たちとでは、絆を結び、体を重ねたいきさつがかなり違っている。

 前の学校を自主退学させられた程のひどいトラウマを心身共に刻まれ、深い心の傷を少しでも癒すために、千早を抱き、彼女に愛欲を注いでいるのだ。

 もし千早が、心も体も許している相手が、自分の他にも何人もの少女と深く関係を持ち、何度も体を重ねていることを知ったら……?

 下手をすれば、別の形でトラウマを刻まれるかもしれない懸念を、輝男は必死に押し隠そうとする。

 千早は、目の前で向き合う輝男の内心など知る由もなく、昼食を進める。

 やがて、千早の弁当箱は空になった。

 昼食の弁当を食べ終えた千早は、輝男とまっすぐ向き合いながら口を開く。

 

 「天江君、今日の講義が終わったら、ちょっと私と付き合ってくれる?」

 

 「え? あぁ、いいけど」

 

 クールな美貌を崩さない千早に、輝男は迷わず応諾する。

 用件を伝えると、千早は一人、席を立ち、レストルームを出ようとする。

 輝男はその場で腰を下ろしたまま、千早の後ろ姿を黙って見つめる。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 薄暗くなった空が、青春中央駅を見下ろす。

 駅に隣接する大型ビル内に、幾つものテナントがひしめくショッピングモールが広がっている。

 そのショッピングモールの奥にある男子トイレ奥の個室に、輝男がいる。

 しかし、輝男一人ではない。

 壁に背もたれしている千早とキスを交わしている。

 唇を重ね、半開きになった唇の隙間から舌先を絡ませ合う。

 輝男の耳に、唾液の跳ねるような音と、

 

 「ん……んふ……んうぅ……」

 

 切なくもかすかなうめき声が重なって聞こえる。

 やがて、ディープキスをやめると、改めて顔を向き合わす。

 

 「稲田、さすがにマズくないか?

 こんなところでこんなことして……下手したら絶対にバレるぞ」

 

 「だからと言って、この前みたいにラブホテルを利用すると言うわけにもいかないじゃない。

 大学受験を控えている者がラブホテルに足しげく通うなど論外以下でしょ?」

 

 言葉を返す千早に、輝男はため息を付きながら閉口する。

 

 (トイレの個室で事に及ぶのも、ラブホテルに行くのと大して変わらないのに……

 ……って言うか、千早も、よくこんなことを受け入れられるよな……)

 

 千早とのトイレ個室での淫行に、輝男は呆れ、戸惑う。

 かつて、千早が無実の罪を被せられたせいで同級生や教師たちからむごく犯されたことを知っているだけに、今のシチュエーションをすんなり受け入れられない気分に陥っている。

 すると、

 

 「天江君……キスして……」

 

 若干、艶を帯びたささやきが、輝男の耳に流れる。

 ハッと我に返ると、千早が乞うようなまなざしで見つめ、頬を淡い赤に染めている。

 言葉を返す代わりに、すぐに唇を重ねる。

 輝男は、千早とまたもディープキスを交わすと、そのまま、千早のはいているロングパンツの中に左手を潜り込ませる。

 絡み合う二つの舌先の下で、輝男の左手が、ショーツの下から千早の大事なところを突く。

 ショーツ越しに突き、筋をなぞる指の動きに、

 

 「んっ、んぅっ……!」

 

 ディープキスを続ける千早は、驚いたかのようにうめき声を上げる。

 艶を帯びていくうめき声を耳にしながら、輝男は左手の指で千早の大事なところを下着越しに突き、なぞる。

 真下から襲って来るかすかな刺激に、絡み合う舌の隙間から甘ったるい吐息を漏らす千早。

 繰り返されるうめきと吐息は、輝男の欲をいたずらに煽るだけだ。

 輝男の左手の指は、隙間を縫って、千早のショーツの内側に入り込む。

 人差し指が、ゆっくりと千早の秘裂を行き来する。

 かすかだが、異物が自分の中に入り込む感触に、千早はたまらずディープキスをやめる。

 輝男が着ているワイシャツの半袖をギュッとつかみながら、輝男の執拗な指責めを甘受する。

 

 「あっ、イヤ……ヤダ……」

 

 羞恥に声を押し殺しながらも、艶やかな喘ぎをかすかに漏らす。

 消え入るような千早の喘ぎを聞くと、ロングパンツの内側からかすかに漏れる水音も認める。

 千早の大事なところに入り込んだ人差し指が、熱と湿りを指腹にとらえる。

 

 「イヤ……ダメ……ダメ……」

 

 千早は輝男の二の腕をギュッとつかみながら、イヤイヤと首を振り、羞恥の声を切なく漏らす。

 千早の握力を認めると、彼女の中に入った指の動きをペースアップさせる。

 自分の中で小刻みに動く指に、千早は何度もビクンとのけ反る。

 輝男の指は、絡み付くぬめりが増していくのを直に痛感する。

 すると、

 

 「イヤ……お願い……やめて……」

 

 千早が震える声を押し殺しながら、痛切に制止を訴える。

 千早の今の訴えに、輝男はようやく、千早の中から左手を引き抜く。

 左手の人差し指には、濃い目の蜜が満遍無く絡み付いている。

 輝男は、左手の人差し指を一瞥すると、真正面の千早に目を向ける。

 千早は、熱っぽい顔を弱々しくさせながらも、乞うように輝男を見つめている。

 

 「天江君ばかりズルい……。私にも……」

 

 弱々しく懇願する千早に、輝男は言葉を返すのを忘れてしまう。

 普段、予備校では絶対に見せないすがり付くような形相と、やはり予備校では決して聞けないはかなげな声に、輝男は否が応にも感じ入ってしまう。

 自分一人にだけ愛欲を求めて止まない千早に、ちょっとした優越感さえ抱いてしまいそうだ。

 

 

 ドアが固く閉ざされた狭い個室の真ん中で、輝男が仁王立ちしている。

 下ろされたジーンズのジッパーから引き出された肉の棒に、千早は、膝立ちの体勢で身を屈めながら向き合う。

 先端にチュッとキスをし、口を開けてくわえ込む。

 スローペースに口を前後に動かす千早。

 進んでフェラチオをしてくれる千早に、輝男は感嘆する余り、言葉を失う。

 千早の口内では、生温かく柔らかい口腔が、輝男自身を優しく撫でるようにこすっていく。

 千早のフェラチオは徐々に動きを速めていく。

 やがて、陰茎でふさがれた千早の口元からは、唾液の跳ねるような音と、

 

 「んっ、んぅ……んむぅ……」

 

 かすかだが艶やかなうめき声が重なって漏れる。

 フェラチオを速める千早の口内では、口腔が輝男自身をハッキリとしごく、こすっていく。

 千早が口でもたらす刺激を痛感しながらも、輝男はその場に突っ立ち、千早の奉仕を甘受する。

 

 (千早のヤツ、前の学校では、死にたくなるほどフェラチオを強いられたはずなのに……

 俺相手では、自分から進んでやってくれるなんて……)

 

 千早が前の学校で強いられた凌辱を想像しながら、内心、戸惑いの声を上げると、

 

 (心も体も許した俺と進んでエッチし、俺に進んで抱かれることで……

 前の学校でむごく辱められた傷を少しでも癒そうと言うのか……?)

 

 過去、凌辱に傷付けられながらも、今また、同じような淫行に臨む千早の意図を見抜こうとする。

 千早のことで色々と思いを巡らす輝男の下で、当の千早は、貪るように輝男自身をしゃぶり続ける。

 やがて、

 

 「んぐっ、んんっ、んうぅっ……!」

 

 フェラチオを続ける千早の口元から、息詰まるようなうめき声が漏れる。

 千早の口内では、輝男自身が固さ、大きさを増している。

 あれこれと思いを馳せる主(あるじ)の意思に関係無く、輝男自身は絶え間ない刺激に素直な反応を見せる。

 唾液の跳ねる音はハッキリした形でトーンアップし、千早のうめき声も艶やかにトーンアップする。

 

 「んぐ、んぐ、んうぅっ、んむぅっ……!」

 

 千早の艶やかなうめき声と口腔との摩擦がもたらす刺激は、輝男の中の昂ぶりをわき立たせ、口内にとらわれたままの剛直を更に固く、膨張させる。

 すると、千早はようやく輝男自身を口から解放した。

 千早のフェラチオは、輝男自身を唾液まみれにさせ、天を向くように固く突っ立たせる。

 千早はゆっくりと体を起こすと、深く嘆息する輝男とまっすぐ目を合わせる。

 

 「いいよ……来て……」

 

 顔を赤らめ、まっすぐ見つめながら呼びかける千早に、輝男は黙ってうなずく。

 

 

 男子トイレ奥の個室で、千早は壁に両手を押し付けながら直立している。

 途端、背後から押されるように身を前後に揺らすと、

 

 「あっ……」

 

 のけ反りながらか細い喘ぎを発する。

 背後からは、輝男が何度も腰をぶつける。

 千早の足元にはロングパンツが脱ぎ捨てられ、細く締まった右足首にはショーツが引っかかっている。

 素裸の美尻の真ん中に、ジーンズからはみ出ていきり立つ剛直が突き刺され、行き来を繰り返す。

 

 「うぅっ、うっ、んうぅっ……」

 

 輝男自身が繰り返し前後に動く様に、千早は声を殺してうめく。

 ショッピングモール奥の男子トイレの個室。

 他に誰か来るかもしれないスリルが、輝男と千早をいつも以上に昂らせている。

 

 「ヤダ……天江君の…もっと固くなってる……

 あぁっ……お、奥……奥に当たってる……」

 

 「おい、余り声を出すと、バレちゃうぞ」

 

 たまらず歓喜の声を上げる千早に、輝男は制止をうながす小声をかける。

 それでも、千早の美尻を左右から抑え、いわゆる“立ちバック”で犯す動きを止めようとしない。

 息を潜めるような艶やかなうめき声と荒い息遣い、そして、肉と肉がぶつかり合う水音混じりの音がかすかに響く。

 

 (千早の中……すごく…キツイ……)

 

 前後運動を繰り返すたびに収縮を強めるヴァギナに、輝男は内心、感嘆する。

 一方の千早は、汗をにじませ、顔を紅潮させ、歯を食いしばりながら、背後から犯す動きに甘んじて耐える。

 固く膨張する剛直と狭まるヴァギナの摩擦は、少なからぬ刺激と苦痛で千早の神経を蝕む。

 

 「んっ、んくぅっ……」

 

 艶やかなうめきが息を潜めるように漏れ出て、我が身を支える手足も震えが認められる。

 そんな千早に構わず、輝男は何度も腰をぶつけ、自分自身を千早の中、最奥に突き当たらせる。

 

 「あぁっ、イヤッ……。もっと……もっと強く……」

 

 留まるところを知らない猛進に、千早はまたも声を上げ、更なるみだらを求める。

 

 

 輝男は、ふたの閉まった洋式便座の上に腰を下ろしている。

 輝男の腰の上には、千早が彼の身に背もたれしながら腰を下ろす。

 輝男は、千早の腰を左右からつかむと、真下から腰を突き上げる。

 

 「あぁっ……」

 

 勢い良く突き上げる輝男の上で、千早は跳ねるようにのけ反りながら喘ぐ。

 千早の喘ぎを聞き入りながら、何度も腰を突き上げる輝男。

 輝男と千早の間では、直立する剛直が、千早の中で上下に突進を繰り返す。

 剛直が突き進む先には、締め付けを増すヴァギナがあり、その表面を熱とぬめりが覆う。

 

 「うぅっ、んっ、んくぅっ……」

 

 苦痛と歓喜が混ざったうめきが、千早の口から漏れる。

 上下にぶつかり合う肉の音と重なって輝男の耳に流れる。

 輝男も千早も、剛直とヴァギナの摩擦に少なからぬ痛覚を覚えている。

 

 「ち、千早……痛くないか……?」

 

 「うぅん……。とても気持ちいい……

 何も考えられないくらいに……」

 

 小声で言葉を交わしながらも、淫交を続ける二人。

 輝男は、千早の腰から左右の手を放すと、背後から千早の胸元に両手を回した。

 真下から突き上げを繰り返しながら、千早の着ているブラウスのボタンを一つ、また一つと外す。

 上半分のボタンを外すと、はだけられた内側で、シンプルな白のブラジャーに覆われたCカップの美乳がフルフルと震えている。

 輝男は、背後から千早の胸を下着越しに愛撫する。

 加えて、真下からの突き上げを小刻みにさせる。

 

 「あんっ、ハァ、あっ、んっ、ハァッ、んんっ……」

 

 愛撫と突き上げという二重の攻めに、千早は艶やかな喘ぎを抑えることができない。

 

 「エッチが……セックスがこんなに気持ちいいものだったなんて……知らなかった……」

 

 そうつぶやく千早の美貌は、恍惚に紅潮している。

 普段、予備校で見せるクールで孤高な優等生の姿は、そこにはない。

 かつては、死ぬよりむごい恥辱以外の何物でも無かったセックスを受け入れる千早に、輝男は腰の突き上げと愛撫を強める。

 更に心を開いてくれる千早に感銘するより先に、今の淫交を最後まで快く味わおうと言う気持ちが、輝男を容赦なく駆り立てる。

 声や音を出したらマズいと自らが制したのを忘れて、引っぱたくような衝突音を千早との間に響かせる。

 

 「お、お願い……天江君……もっと…もっと…あぁっ……!」

 

 輝男に呼びかけようとした刹那、千早は、輝男の腰の上で痙攣でも起こしたかのようにのけ反る。

 

 「ダ、ダメ……私……私……もう……!」

 

 声を震わせながら、自らの限界が近付いたことを告げる千早。

 千早の今の訴えに、輝男は小刻みな突き上げと執拗な愛撫でもって応じる。

 輝男の手のひらは、ブラジャーの質感とその下にある柔らかな肉感を重ねて堪能する。

 そして、千早の中にある輝男自身は、四方からの肉圧に難儀しながらも、絡み付く熱とぬめりを潤滑油代わりにして、肉壁を突き破り、最奥を目指そうとする。

 

 「あぁ……あぅ……うっ、んんっ……」

 

 千早の口から息詰まるような喘ぎが漏れる。

 のけ反り、身を震わせながら、犯されるがままの状態を甘受する。

 そんな千早の背後では、輝男は荒く息を弾ませ、歯を食いしばり、冷や汗を流している。

 輝男の中では、欲望のほとばしりがマグマのようにグツグツと煮えたぎっている。

 ちょっとでも気を抜けばすぐ暴発してしまうくらいに……

 すると、

 

 「き、来て……早く来て……私、もう、ダメ……

 そのまま……私の…中に……」

 

 震える声で呼びかける千早に、輝男はハッと我に返る。

 

 「な、中って……大丈夫なのか……!?」

 

 輝男がたまらず不安げにたずねると、

 

 「うん……大丈夫……。私…今日は安全日だから……」

 

 千早は艶やかな声を震わせて言葉を返す。

 途端、輝男は苦しそうに顔をしかめ、歯を食いしばる。

 千早のヴァギナが、更に締め付けを強め、輝男自身をとらえようとしている。

 渾身の力を振り絞るようにして突き上げながら、鷲づかみするかのように愛撫を繰り返す。

 

 「ダ、ダメ……本当にもう…ダメ……!」

 

 「イ、イくぞ……千早……!」

 

 絞るような声で輝男が呼びかけると、真下からの強い一突きが千早を襲った。

 剛直の先端が千早の中、最奥に突進すると、

 

 「あぁっ、あっ……!」

 

 千早は、喉を突き出すようにしてのけ反りながら、絶頂の声を上げた。

 千早が果てて間も無く、締まりきった千早の中で、輝男は愛欲の濁流を一滴残さず流し込んだ……

 

 ◇ ◇ ◇

 

 暗くなったリビングに明かりが灯る。

 明かりがついたリビングに、パジャマ姿の輝男が入って来る。

 

 「すっかり忘れてた」

 

 独り言を言いながらソファーに向かい、腰を下ろす。

 傍に置いてあったリモコンをテレビに向け、電源をつける。

 映像が映し出されると、クイズ番組らしき映像が映っていた。

 

 『いよいよ、決勝。

 この決勝を制するのは、高校生クイズ甲子園の最常連、京都・左京学院高校か?

 はたまた、初の決勝に臨む東の明朝学園高校か?

 まさかに東軍対西軍、天下分け目の一騎打ち!』

 

 司会と思しき男性アナウンサーがテンション高めに言う。

 画面には、緊張し、真剣な面持ちで回答席にいる私服姿の若い男女三名が映る。

 小中、苑田栄子、そして、長身で黒の頭髪を短く刈り込む宇藤大樹(うどう・だいき)の三人だ。

 

 『明朝学園高校・クイズ研究会キャプテン小中君。

 東大を目指すための受験勉強をする傍ら、今回の高校生クイズ甲子園に臨んだわけですが……

 決勝を目指す意気込みを一言』

 

 『クイズ大会に優勝したからと言って、東大に入れるわけではもちろんありませんが……

 三年間、クイズに打ち込んだ情熱をこの決勝戦にぶつけ、是非とも足跡を刻みたいと思ってます!』

 

 司会にうながされ、小中は緊張しながらも、声を上げ、並々ならぬ決意を叫ぶ。

 

 『今回のスペシャルサポーターである泉梓さん。

 決勝戦に臨む若人たちに、是非ともエールを』

 

 男性アナウンサーが言うと、画面は、離れた席で腰を下ろす泉梓を映し出した。

 長い艶やかな髪にウェーブをかけ、清楚なたたずまいの半袖ワンピースをまとっている。

 

 『どちらが勝つかわかりませんが、皆さん、ここまで来た知力と気力、そして団結力を存分に発揮して、悔いの残らない勝負を見せて下さい』

 

 流れるような声でエールを送る泉に、

 

 『はい! 頑張ります!!』

 

 一人、小中は、感情が爆発したかのように声を張り上げて、泉に応じる。

 テレビの向こうにいる輝男は、必要以上に気合の入っている小中を見て、思わず頭を抱える。

 

 「あのバカ……! いつも肝心なところで恥知らずに羽目外して……!」

 

 頭を抱えながら、テレビの向こうにいる小中に向かって呆れ果てたつぶやきを発する。

 それでも、そのままテレビを見続け、テレビの向こうで大勝負に臨む同級生たちを見つめる。

 

 

 ニ十分経った頃、輝男は、信じられないと言わんばかりに驚きながら、テレビを凝視する。

 テレビの向こうでは、小中が驚きと歓喜の入り混じった形相で声を上げ、栄子、宇藤と抱き合っている。

 

 『初の優勝を飾った、明朝学園高校・クイズ研究会!

 キャプテンの小中君、今の心境は?』

 

 『ぶっちゃけ、信じられません! 一生分の運を使い果たしたような気がして……!』

 

 司会の男性からマイクを向けられ、動転しきった様子でしどろもどろにコメントする小中。

 続けて、感極まって泣き出す栄子の姿が映し出される。

 

 『ここで負けたら……今までの努力が全部、水の泡になって……

 大事な受験勉強の時間を割いてまで、皆と一緒に頑張って……

 その頑張りが……無駄に終わらなかったことが……とても嬉しいくて……』

 

 涙声で優勝の喜ぶを言う栄子を、輝男は感嘆とした様子で見つめる。

 やがて番組は、優勝旗授与のシーンとなった。

 番組のスペシャルサポーターを務める泉梓=海原泉によって、優勝旗がチームキャプテンである小中に手渡される。

 

 『優勝、おめでとうございます』

 

 笑顔を見せながら健闘を称える泉に、小中はドキッと顔を真っ赤にする。

 

 『あ、あの……握手してもいいでしょうか……?

 お、俺……じゃなかった僕、“いずみん”……じゃなかった、泉梓さんの大ファンなんです』

 

 大好きな人気美少女女優を前にして、歓喜と興奮にガチガチになる小中。

 

 『いいですよ。喜んで』

 

 泉は笑顔で快諾すると、小中に握手する。

 柔らかな肌触りと手の温もりに、小中は否応なく気分を高揚する。

 

 『あ、ありがとうございます! 俺、今度の映画、絶対に見ますから!』

 

 『ありがとうございます。是非、ご覧になって下さい』

 

 『あの、泉さん、今度の映画とは?』

 

 『はい。明日から、私、泉 梓の初主演映画『I live… ――私は生きる』が公開されます。

 難病で余命わずかとなった主人公の女の子が、死の恐怖に苦悩しながらも、大切な仲間や大好きな人と一緒に、残りわずかの人生、青春を懸命に生きる姿を描いた感動のヒューマンドラマとなっております。

 皆様、是非、劇場に足を運んで下さい』

 

 司会からの問いかけを受け、自分の主演映画の宣伝をする泉。

 テレビ越しにその模様を見ると、輝男はため息を付く。

 

 「何だ、結局は番宣だったのか」

 

 そうつぶやくと、リモコンのスイッチを押し、テレビの電源を切る。

 静けさを取り戻したリビングで、輝男はソファーにもたれながら、天井を呆然と見上げる。

 

 「今年の夏休みも色々とあったな……」

 

 天井を見上げたまま、淡々とつぶやく輝男。

 彼の脳裏には、今年の夏休みに起きた出来事の数々が走馬灯のように浮かび上がる。

 

 夏休み初日からの補習――

 

 桜月や葵たちと一緒に行った一泊二日の海水浴――

 

 予備校合宿と、その後の千早との逢瀬――

 

 そして、昨日、小春と一緒に海に行ったこと――

 

 受験勉強に追われながらも、色々と忘れがたい思い出が、輝男の脳裏と心にしっかりと刻み込まれている。

 やがて、リビングの明かりは再び消され、輝男は自室に戻る。

 夏休み最終日を終え、明日からの二学期を迎えようとする。

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