青春中央駅正面入口の向こうに面する中心街の地下に、距離にして一キロ、幅二百メートルはある地下大ホールが広がっている。
地上からの階段でつながっており、往復通路としての役割も果たすこの大ホールは、大規模災害の際の緊急避難場所として設けられたところである。
午前中、千早の家に足を運んだ後、午後から予備校の講義を受けた輝男は、その日の講義が終わった後、鬼頭を連れてこの地下大ホールにやって来たのだ。
大ホールの隅の壁際まで来ると、鬼頭の腕をつかんでいた片手を振り払った。
自由を取り戻した鬼頭は、自分をここまで連れて来た輝男を険しくにらむ。
不快感に表情を険しくさせる鬼頭に対し、輝男は厳しい表情を彼に見せる。
不快感と怒りを隠そうとしない輝男に、鬼頭はまったく動ずる気配を見せない。
幸いと言うべきか否か、今、この大ホールには、輝男と鬼頭の他には、行き交う人も設置された腰かけに腰を下ろす者も誰一人としていない。
「こんなところまで連れて来て、俺に何の用だ?」
吐き捨てるような口調で鬼頭がたずねると、
「お前、この前の学力診断テストの後、稲田に彼女の昔の動画を見せて脅したのは本当か?」
輝男は鬼頭を鋭くにらみながら、絞るような声でたずね返す。
輝男の今の問いかけに、鬼頭は呆れ果てた面持ちで深くため息をする。
「脅したなんて失礼な。俺はただ、彼女に身の程をわきまえろと言ってやっただけだ」
「ふざけるな! お前、彼女に東大受験を諦めろなどと言ってないと言うのか!?」
「いや、彼女に受験をやめろと言ったのは事実だ。
もちろん、例の動画をちゃんと見せた上でな」
輝男の怒りを前に、鬼頭は動ずる気配もなく、あっさりと事実を認めた。
しかし、輝男は怒りを収めるどころか、逆に憤りを増していく。
千早を卑怯なやり方で脅したことを認めたこと以上に、自らの卑劣な所業をまったく恥じるどころか、至極真っ当な行為であるかのように振る舞おうとする鬼頭の態度に、憤りを募らせずにいられなかった。
「何故、稲田にそんなひどい仕打ちを……?
あの動画はどうやって手に入れたんだ……!?」
輝男は怒りの余り、握り拳をわなわなと震わせながら、必死に感情を押し殺して問い詰めようとする。
怒りの余り沸騰しかねない輝男に対し、鬼頭は氷よりも冷やかな形相で、輝男を汚物でも見るようなまなざしで見据える。
「稲田をむごく辱めてるあの動画は、最近になって、俺や他の受講生のもとにLINEを通して広まったものだ。
あくまで推測だが、他のGTT予備校の受講生かそれ以外の関係者が俺たちのもとに送り付けたのだろう。
それ以外では、まったく心当たりは認められん」
忌々しく卑劣極まりない行為を認めつつも、まるで他人事(ひとごと)のように平然とした態度を見せる鬼頭。
鬼頭の今の説明を聞くと、輝男はハッと何かに気付いたかのような表情を見せる。
一瞬の驚きの後、輝男はまたも怒りに満ちた表情を見せる。
彼の脳裏には、夏休みの予備校合同合宿の際、別のGTT予備校から参加し、千早に執拗に絡み、卑劣な脅しをかけた二人組の若者――千早の前の学校の同級生――の姿が克明に浮かび上がる。
(まさか、ヤツらが……!?)
思い出したくもない忌々しい記憶を思い返しながら、内心、確信めいたつぶやきを発する。
それでも、これ以上は無いくらいに怒りに満ちた形相を見せていることに変わりはない。
千早の忌まわしい過去を平然とばらまいた真犯人への憤りを胸の内に抑え付けながら、なおも鬼頭と対峙する。
「どうして、お前は彼女のあの動画を消すどころか、それを利用して、彼女を脅し、追いつめようとしたんだ?
お前、今まで総合学力診断テストではずっと稲田に勝っているじゃないか?
なのに、どうして、ずっと下位の成績にある稲田をそこまでして追い込もうとするんだ?」
輝男は必死に怒りを押し殺しながら、肝心の問いを鬼頭にぶつける。
鬼頭は輝男の今の問いを聞くと、呆れ果て、さげすむかのような冷たい面持ちを見せ、フンと鼻であしらう。
「例え、俺よりずっと下の成績の者であろうと、他に東大を目指す者など許容するわけにはいかん。
彼女が潔く身を引いてくれれば、俺と同じ東大を目指す者が一人減る。
その分、俺が東大に受かる確率は上がると言うものだ」
身勝手で卑怯極まりない考えを、何の迷いもなく平然と言い放つ鬼頭。
彼の今の言葉に、輝男は愕然とした面持ちで思わず言葉を失い、その場に立ち尽くす。
しかし、すぐにハッと我に返ったかのような表情を見せると、またも憤怒の形相を鬼頭に見せる。
「見損なったぞ……!
他の誰よりも勉強ができて、トップの成績を収めているのに、そんな浅ましく卑怯な考えを持っていたなんて……!」
怒りに身を震わせ、力の限り拳を握り締めながら、憤激の余り、声を震わせる輝男。
激しく憤っているが、至極真っ当な輝男の怒りに、鬼頭はわずかでも恥じるどころか平然とした態度を見せ続ける。
「お前は、あの動画で稲田を脅し、彼女に悲痛と逼塞を強いたが……!
もし、お前がアイツと同じ立場に立って、脅しを受けたら……
それでも、今と同じ言葉を平気で言えるのか!?
お前には仲間を思いやり、他人の痛みを理解する心が一かけらでも無いのか!?」
これ以上は無い心痛と陰鬱を強いられる千早に心を痛め、思いやる心を、鬼頭に向かって容赦なくぶつける輝男。
しかし、鬼頭はそれでも、輝男の怒りを受け止めるどころか、逆に平然、かつ冷淡な態度を見せ付けようとする。
言葉を交わすたびに一層、相容れない関係に陥る輝男と鬼頭。
そんな二人の対峙を、向こうの物陰から重々しく見つめるまなざしが一つ。
物陰の向こうに立つ千早が、憂いに満ちた面持ちを見せながら、輝男と鬼頭のにらみ合いを遠くから見ている。
「仲間を思いやり、他人の痛みを理解するなど、バカな落ちこぼれのクズがすることだ。
同じ競争相手を一人でも多く排除するためなら、どんな卑怯なやり方でも普通に利用する。
そんなことは、小学生はおろか、幼稚園児でも普通に理解できることだ」
これ以上は無いくらいの侮蔑の念を、鬼頭は吐き捨てるような口調で言い放つ。
と、次の瞬間、真正面から振り上げられた握り拳が、鬼頭の左頬を力一杯に殴った。
殴られた拍子に、鬼頭はその場で倒れ込んでしまう。
殴り倒された鬼頭だったが、すぐに腰を上げる。
左頬に殴打の痕を刻ませながらにらみ付けると、すかさず、真正面から伸ばされた手が、鬼頭の胸倉をつかんだ。
鬼頭の視線の先には、鬼の形相を浮かべる輝男が、相手の胸倉をつかみながら握り拳をわなわなと震わせていた。
「……それが東大を目指す優等生のすることか……!?
それとも、必死に勉強するより、競争相手を一人でも多く陥れることの方が、東大に入るためには一番、大事だと言うのか……!?」
輝男は憤激を必死に押し殺しながら、震える声で鬼頭にありったけの怒りをぶつける。
闇雲に受験勉強に勤しむだけならまだしも、同じ東大受験を目指す仲間を快く思わず、卑怯なやり方で陥れて平然とする鬼頭に、激しい怒りを覚えると同時に、これ以上は無い失望を覚えずにいられない。
鬼頭の言い分を真に受けるようであれば、東大を目指す者、東大に受かり、東大生となる者は、勉強ができる以上にいびつなエリート意識に凝り固まって他人に対する思いやりを頭から排除するか、己のエゴのためなら仲間を陥れて平然とする者ばかりということになってしまう。
輝男は怒りと失望にとらわれ、これ以上の言葉を言うことがどうしてもできない。
何も言って来ない輝男を見ると、鬼頭は彼を冷やかに見据えながら口を開く。
「下らん考えを当然のことと思うようであれば、どうあがいても君は東大に入れん。
だが俺は、君とは違って必ず東大に入れる」
「俺のことはどうでもいい。だが、稲田には必ず謝れ。
お前が稲田を苦しめ、彼女の心の傷をえぐったことは、何度、殴り倒されたって償い切れるものじゃない。
無実の罪で陥れられ、心身共にボロボロにされた挙句、一度は高校中退を強いられた稲田の傷は…」
「俺一人を責め、土下座を強要すれば済むことではない。
例え、俺が何もしなくても、他のヤツが彼女に対して、同じことをやっていただろう。
あの動画は、うちの予備校の者、ほぼ全員の手中にあるのだから。
だから、まず何より大事なのは、俺を謝らせることではなく、稲田がすぐに予備校からいなくなり、東大受験を諦めることだ」
「バカ野郎!!」
なおも自分の非を認めぬ旨を平然と言い放つ鬼頭に、輝男は腹の底から怒りの声を上げる。
と、次の瞬間、鬼頭の右頬を力一杯に握り締めた拳が殴打した。
またも殴り倒される鬼頭を、輝男は握り拳を震わせながら見下ろす。
「まだ、わからないのか……!
俺は今、お前を二度殴ったが……
稲田が前の学校の連中に無残に犯され、お前に脅された痛みや苦しみに比べたら……
今、お前が殴られたことなんかかすり傷程度にもならないんだ……!」
鬼の形相で鬼頭をにらみながら、怒りと悲痛の念を声を上げてぶつける輝男。
二度も立て続けに殴られ、鬼頭は思わず、一瞬、愕然とする。
しかし、すぐに表情を険しくさせながら、ゆっくりと立ち上がる。
「バカな落ちこぼれの分際で……一体、何様のつもりだ……!?
いくら俺でも、これ以上の暴力を甘んじて受け入れることなどできん……!」
「どうしても、自分が悪いことをしたと認めるつもりは無いのか?」
「俺は何一つ、悪いことなどしていない。悪いのはお前と稲田ではないか」
「鬼頭……! お前がその気なら、もう俺も容赦しない……!」
なおも身勝手な傲慢を見せ付ける鬼頭と、怒りのリミットを外そうとする輝男。
絶対に相容れない二人が、共に怒りを増しながらにらみ合う。
すると、
「やめて!」
横から、必死に制止を訴える叫びが、輝男と鬼頭の耳に入って来た。
二人が振り向くと、急ぎ、駆け寄って来た千早が輝男に抱き付いて来た。
怒りに駆られようとした輝男を押し留めるかのように、彼の身にギュッとしがみ付く。
「天江君、お願いだから、もうやめて!」
輝男の身にしがみ付き、顔をうずめながら、痛切な調子で訴える千早。
「稲田、いくら君の頼みでも、これだけは……!」
鬼頭への怒りに満ち満ちてはいるが、千早の訴えに耳を傾け、断りの返事を返そうとする輝男。
すると、
「鬼頭君、一人、殴り倒しても何もならないわ。
例え、彼が私を脅し、延々と苦しめたとしても……」
千早はなおもすがり付きながら、制止をうながすかのような言葉をかける。
輝男は千早の今の言葉を聞くと、鬼頭に向かって振り上げようとした拳を下ろし、怒りに駆られた震えを鎮める。
何とか落ち着きを取り戻そうとする輝男を認めると、千早は輝男から身を離す。
輝男と鬼頭の間に立ち、鬼頭を庇うような位置で輝男と向き合う。
「あなたが私のためにそこまでしてくれただけでも、私にとっては十分だわ」
千早は未だ悲哀の収まらない形相を見せながら、輝男に向かって言葉をかける。
千早の今の言葉に、輝男は重い表情を彼女に見せる。
「それに、鬼頭君だって、あなたが思うほどバカじゃない。
あれだけ殴られ、あなたの心からの怒りを真正面から受けたんですもの。
少しは考えを直してくれるはず」
自分を脅し、陥れた者を庇うかのような言葉を続ける千早。
すると、彼女の背後にいる鬼頭は、輝男と千早が自分たちの会話に集中している隙を突くかのように、一人、その場を黙って去る。
輝男と千早が気付かぬまま地下の大ホールを後にすると、
「俺としたことが、無駄な戯れ事に時間を潰すとは……由々しきタイムロスだ」
何一つ反省の色を見せないまま、舌打ちするかのような悪態をつく。
一方、輝男と千早は、大ホールの隅でなおも向き合っている。
「確かに、アイツが反省し、然るべき態度を見せてくれるなら、それに越したことはないけど……
さっきのヤツの態度を見ると、どうしてもそのことを信じることができない。
それに、他の連中も……」
重い表情を見せながら輝男が憂慮を告げると、
「確かに、私がいなくなれば、それで済むことかもしれないけど……」
千早は沈痛な面持ちを見せながら、あってはならないことをつい口走る。
途端、輝男は厳しい表情を千早に見せる。
「何、言ってんだ! そんなことをして済む問題じゃないだろ!?
こんなことは言いたくないし、認めたくないけど……
ヤツらは、卑怯なイジメや脅しで相手を陥れ、死に追いやっただけで満足なんかしない。
相手の屍を土足で踏みにじり、その骨を跡形も無く踏みつぶして笑い飛ばすこともやぶさかじゃない」
起こり得る懸念、最悪の事態を千早に言い聞かせようとする輝男。
輝男の今の言葉に、千早は何も言い返さず、沈痛な面持ちで黙り込む。
否が応にも輝男の言わんとすることを理解し、認めざるを得ない。
前の学校で死ぬ以上にむごい辱めを強いられた千早としては、今の彼の言葉を否定することがどうしてもできない。
すると、輝男は重い表情を浮かべ、千早をまっすぐ見つめたまま黙り込んでしまう。
何か言いかけようとしているが、中々、口に出せずにいる。
そんな輝男を、千早は黙って見つめ続ける。
ホール内では、数人の人間が、輝男と千早の横を素通りしていく。
彼らはホール内に入ったかと思うと、誰一人、輝男と千早を気に留めず、向こうの方へと消えて行く。
その間、輝男と千早は、互いに向き合いながら重い沈黙に包まれる。
やがて、輝男をまっすぐ見つめながら千早が口を開く。
「“君には俺がついている。君は俺が守る。”
……そう言いたいんでしょ?」
重い表情を見せながら黙り続ける輝男を見て、千早が言葉をかける。
千早の今の言葉に、輝男は勘付かれたかのように驚きの表情を見せる。
思わず驚く輝男に、千早はつい、クスッと笑みをこぼす。
「中々、口に出して言えないことだけど……
あなたの思ってることくらい、私にはわかるわ。違うかしら?」
笑みをこぼしながら念を押す千早に、輝男は恥ずかしさと気まずさに口をつぐんでしまう。
そんな輝男を見ると、千早は一転して、すがり付くかのような面持ちを見せる。
未だ深い心の傷がうずいている様を、輝男に向けて遠慮なしに見せる。
「今、私を襲っている苦しみは、すぐには解決できない……
それこそ、大学受験が終わった後も、後々、尾を引いてしまうかもしれない……
でも、あなたが傍にいてくれたら、どんなつらいことがあっても、何とか耐えられる……
あなたにとっては無理な頼みかもしれないけど……」
無理を承知で相手の優しさ、思いやりにすがり付こうとする千早。
輝男は千早の今の言葉と表情に、神妙な面持ちを見せる。
「君がそんなことを心配する必要はない。
俺にとっても、君はかけがえのない、大切な人……
大学受験の苦しみや困難を分かち合える大事な仲間だから。
そんな君を苦しめ、傷付けるようなことは、どんなことがあっても俺が決して許さない。
そんなことを平然とするようなヤツは俺が…」
と、言葉をかけようとしたさ中、千早は突然、輝男の身にギュッと抱き付いて来た。
またも輝男の身に顔をうずめると、
「ありがとう……。あなたのその気持ちだけで私にとっては十分だから……」
真に迫るような切々とした調子で、輝男に言葉をかける。
自分の心の傷、忌まわしい過去を真正面から受け止め、我が事のように痛感し、救いの手を差し伸ばそうとする輝男に、これ以上は無いくらいの感謝の言葉を返そうとする。
輝男は、神妙な面持ちで千早の抱擁を受け止めると、彼女の身を優しく抱き締める。
そのままの状態が三分ほど続いた後、千早は輝男の身から我が身を離した。
改めて輝男と向き合うと、今にも泣き出しそうなくらいに瞳を震わせ、努めて笑顔を見せようとする。
「天江君……あなたの心も体もとても温かい……」
「千早……」
泣くのをこらえながら嬉しそうに言って来る千早に、輝男は彼女の名を呼ぶのが精一杯といった様子だ。
すると、
「天江君……お願いだから、今日はこのままずっと一緒にいて……
嫌なこともつらいことも何もかも……忘れさせて……」
目元に涙をにじませ、すがり付くかのような面持ちを見せながら、千早が弱々しく懇願する。
千早の今の懇願に、輝男は首肯もしなければ拒絶の意も示さない。
ただ、黙って千早を見つめ続ける……
◇ ◇ ◇
ホテル・ラブベストの一室に、輝男と千早の姿がある。
二人は共に、生まれたままの姿でベッドの上にいる。
ベッドの下、床の上には、二人分の衣服と下着が無造作に脱ぎ捨てられている。
「あっ、あぁ……ハァ……あぁっ……」
千早は切なそうな喘ぎを漏らしながら、悩ましげに身悶える。
真上から被さるかのように向き合いながら、輝男が千早の美乳を揉みしだく。
輝男の優しい愛撫を受け、手のひらに収まる程度の左右のふくらみはかすかに形を歪ませる。
輝男の手のひらは、千早の胸の柔らかな肉感と滑らかな肌触りを併せて味わう。
そのままジックリと千早のCカップバストを揉み続けると、
「どうだ? 千早」
輝男が言葉少なく、千早に具合をたずねる。
千早は、恥じらうかのように頬を赤らめた顔を横に背けると、
「うん……そのまま……もっと……」
消え入るかのような声で、切々と求める思いを返す。
千早の求めに応じるかのように、輝男はそのまま愛撫を続ける。
円を描くようにして左右の柔らかなふくらみを揉みながら、真上から千早とキスをする。
唇を重ね、舌先を絡ませ合う。
やがて、輝男と千早の間からは、唾液の跳ねるような音と、
「ん……んふ……んうぅ……」
荒い吐息を交えたかすかなうめき声が重なって漏れ出る。
ディープキスを続けながらも、輝男は千早の美乳を揉む手を止めない。
輝男の左右の手は、パン生地でもこねるかのように左右のふくらみを揉みしだく。
愛撫を続ける傍らで、左右の指腹は、千早の胸先の蕾を優しくこねくり回す。
輝男の左右の指腹は、千早の胸先が徐々に固くなっていくのを感じ取る。
やがて、輝男が千早とのディープキスをやめると、
「あっ……あぁ……うっ、んっ……ハァ……んぁ……」
千早の切ない喘ぎが艶やかさを増していく。
千早の艶やかな喘ぎを聞き入りながら、なおも愛撫を続ける輝男。
やがて、胸先の小さな蕾が固く突っ立っていくのが、輝男の指先にもハッキリと認められた。
輝男はようやく、千早の胸元から左右の手を放す。
美乳への愛撫を終えて間も無く、千早の左右の太ももを苦も無く開かせる。
太ももの付け根、茂みの奥に見えるサーモンピンクの恥肉を認めると、すぐに顔をうずめ、舌を這わせる。
「あんっ、ヤダ……! ダメ……! そこ……汚い……!」
ざらつく舌の感触が大事なところに触れる様に、千早はたまらず声を上げる。
千早の羞恥の声に、舌なめずりするかのような音が返って来る。
左右の太ももを抑え、開かせながら肉の花弁を舐め続ける輝男に、千早は成すすべがないといった態度を見せる。
成されるがままの千早に構わず、輝男は、花弁から突き出た小さな豆のようなものを口に含む。
そして、表面を舐め回した舌を内側に差し込まれる。
トーンアップする舌なめずりの音に加えて、貪り、砂ぶるような水音が重なって響いてくる。
「あぁっ……イヤ……あぁ……あんっ、んうぅ……」
股の方から襲って来るみだらな刺激に、千早は悩ましく悶えるばかりである。
一方の輝男は、千早の喘ぎを耳にしながら、彼女の奥から吐き出される芳醇なメスのにおいを嗅ぐ。
わずかながら内側に差し込まれた異物に応じるかのように、裂け目のはるか奥から、蜜のようなものが染み出て、こぼれていく。
こぼれ出る蜜に伴って、強度を増したメスのにおいが、輝男の嗅覚に突き刺す。
輝男は舌の動きをペースアップさせ、千早の大事なところを舐め尽くし、貪ろうとする。
蜜を舐め取ろうとする舌の動きに、
「ヤダ……ダメ……。そんなにしたら……変になっちゃう……」
千早は悩ましく悶えながら、切なそうな調子で苦悶の念をつぶやく。
我が身を支えるかのようにベッドのシーツをギュッとつかみ、荒い吐息を交える。
輝男の執拗な舌攻めに、恍惚の念が強まっているのだ。
今の千早の気分を反映するかのように、花弁を覆い、秘裂からこぼれ出るイヤらしい蜜は流れる量を増す。
千早の中から吐き出されるメスのにおいも、鼻をつき、極めてかぐわしいものとなっている。
「あぁ……んん……んうぅ……ハァ…んぁ……」
千早の艶やかで切ない喘ぎが、高く響く舌なめずりの音と重なる。
すると、輝男はようやく、千早の股から顔を離す。
千早は、弱々しく股を開いたまま、蜜に濡れぼそった秘裂をひくつかせる。
半ば呆けたかのような形相を赤らめながら、正面を見上げる。
視線の先に固く突っ立った肉の棒を認めると、驚きながらハッと我に返る。
「ヤダ、もう……こんなになって……」
輝男の裸の股から突っ立つ肉の棒を見て、千早は思わず驚嘆の声を上げる。
「千早、いいか?」
直立の体勢で見下ろしながら呼びかける輝男に、
「うん……来て……」
千早は言葉少なく、首を縦に振る。
すがり付くかのような面持ちを紅潮させ、乞うようなまなざしを震わせながら、輝男と彼自身を交互に見る。
千早はベッドの上で仰向けになりながら、押されるように我が身を前後に揺らす。
ベッドのシーツをつかんで我が身を支えながら、
「ああっ、あっ、あんっ……んぁっ……」
艶やかな喘ぎ声を上げる。
千早の真向かいでは、輝男が彼女の左右の太ももを抑えながら、秘裂に突き刺した自分自身を千早の中に行き来させる。
「ど、どうだ? 千早」
「うん……。いい……気持ちいい……」
スローペースな律動を繰り返す輝男に、千早は歓喜の念を返す。
コンドームに包まれた輝男自身は、収縮を仕掛ける千早の中を行き来している。
千早を気遣ってか、ゆっくりとした律動を繰り返す輝男。
主(あるじ)の意思に応じるかのように、輝男自身は、相手の体の感触を存分に味わうかのようにゆっくりと動き続ける。
すると、
「もっと……もっと強く……」
千早は輝男をまっすぐ見つめながら、更なるみだらを求める。
「いいのか?」
輝男が心配するかのようにたずねると、
「もっと強く…激しくしていいから……何もかも忘れさせて……」
千早は乞うようなまなざしで輝男をまっすぐ見上げながら、重ねて懇願する。
輝男はすぐに腰の動きを勢い良く速める。
水音混じりの鈍い抽送音は、肉と肉の衝突音に切り替わっていく。
腰をぶつける輝男に押されるかのように、千早は絶えず身を揺らし続ける。
彼女の胸元では、なだらかな丸みを帯び、手のひらに収まる程度の美乳がフルフルと震え続ける。
輝男は腰をぶつけ、律動を繰り返しながら、真上から千早の上に被さっていく。
千早はすぐに輝男を抱き寄せ、ギュッと体を密着させる。
「あぁんっ! いいっ! すごい!」
輝男を抱き締めながら、何度ものけ反り、歓喜の声を上げる千早。
「千早、大丈夫か?」
「うん、大丈夫……。とても気持ちいい……。天江君は?」
「俺も…すごく気持ちいい……。締まり具合が半端ない……!」
輝男は千早の呼びかけに即応しながら、自分に心を開き、体を許す千早の中の感触を痛感する。
千早の中は、増す一方の熱とぬめりを輝男自身に絡ませ、四方から肉圧をかける。
熱とぬめりに煽られ、肉圧にさいなまれながらも、輝男は自分自身を千早の中、奥深くへ猛進させる。
わずかでも減退するどころか、何度も最奥目がけて猛進する輝男自身の動きに、千早は輝男を強く抱き締めながら何度ものけ反る。
「うぅっ……んんぅっ!
あ、天江君の……何度も奥に当たってる……!」
輝男自身の猛進を認め、震える声で輝男に呼びかける。
輝男は真上から千早を抱き締めると、彼女と密着したまま体を起こす。
対面座位の体位を取ると、抱き締め合ったまま腰を突き上げる。
真上からの突き上げに、千早は跳ねるようにして上下に身を揺らす。
「あぅっ、うっ、んっ……! ハァ、うぅっ……んぁっ……!」
何度ものけ反りながら、艶やかな喘ぎと荒い吐息を繰り返す千早。
一方の輝男は、千早の喘ぎと彼女の中の強まる締め付けを同時に受け止めながら、真下からの突き上げをペースアップさせる。
輝男と千早がつながる個所からは、水音混じりの衝突音が絶えず響く。
その上、密着した二つの体の間では、熱と汗が混じり合っている。
狭まる一方のヴァギナと徐々に固さ、大きさを増す剛直の摩擦が、輝男と千早に少なからぬ苦痛と刺激をもたらす。
わき上がる苦痛と刺激をこらえるかのように、千早はグッと歯を食いしばり、輝男を抱き締める細腕の力を増す。
輝男は絶えず腰を突き上げながら、千早とまっすぐ顔を合わせる。
目と目が合うとすぐに、輝男と千早は唇を重ね、舌を絡ませ合う。
上下共につながり合った状態で、二人は愛欲の極みに耽ろうとする。
やがて、輝男を抱き締める千早の腕がわなわなと震え出す。
間も無くして、千早が輝男とのディープキスをやめると、
「ダ、ダメ……イく……イっちゃう……」
震える声で自らの限界が近付いた旨を告げる。
輝男は言葉を返す代わりに、腰の突き上げを激しく小刻みにさせる。
引っぱたくかのような衝突音が、輝男と千早の間で響く。
ほぼミリ秒単位で剛直が行き来する秘裂の隙間からは、蜜が絶えずこぼれ出ている。
ラストスパートをかけるかのように上下運動を繰り返す輝男自身。
限界まで締め付けんとする四方の肉壁にさいなまれているその内側では、昂ぶりがグツグツと煮えたぎっている。
輝男もまた、欲望の暴発が遠くないことを痛感している。
しかし、そんなことはおくびにも出さず、荒く息を弾ませながら上下運動を繰り返す。
「ダ、ダメだ……! 千早……で、出る……!」
厚めのコンドームで自分自身を覆っているのを忘れて、輝男はたまらず限界間近を告げる。
「き、来て……! 早く……! あぁっ、ダメ……!」
汗を噴き出す体、そして、輝男を抱き締める両腕を震わせながら、千早は限界の声を上げ、のけ反る。
間も無くして、輝男が真下から腰を強く打ち据えると、
「あっ……あぁ――――――……!」
千早は輝男を力一杯に抱き締めながら、絶頂の声を上げた。
輝男は千早の今の叫びを聞いてすぐに、彼女の中で思いっきり果てた……
◇ ◇ ◇
輝男と千早は、なおもラブホテルの一室、ベッドの上にいる。
火照り切り、汗だくになった体を仰向けにさせ、あるいはグッタリと横たわっている。
二人とも呆然としているが、心地よい疲労にでも浸ったかのような顔を見せる。
加えて、セックスと絶頂の余韻に浸るかのように顔を赤らめている。
二人の足元には、したたりの溜まったコンドームが無造作に捨てられている。
「千早、少しはスッキリしたか?」
すぐ横で横たわる千早に輝男が言葉をかけると、
「うん……。ありがとう……」
千早は、恍惚とした笑みを浮かべながら輝男を見つめ、感謝の一言をかけた。
今の感謝の一言に、輝男は熱っぽく赤らむ顔をほほ笑ませる。
輝男と千早は、共に笑みを見せ合いながら、しばし、そのままの状態でいた……