叩き付けるような豪雨が、明朝学園高校の校舎に降り注がれる。
静かな図書室にも外の雨音が大きく聞こえている。
カウンターでは、二人の男女生徒が席を挟んで向かい合っている。
向こう側に着席している“図書委員”の腕章をつけた女子生徒が、二冊の本を真向かいの男子生徒に渡す。
「それでは、二冊とも一週間後に返却して下さい」
腕章をつけている桜月が、男子生徒に向かってそう言葉をかける。
本を受け取った輝男は、桜月に向かって柔らかな笑みを見せる。
「日向、図書委員の仕事、すっかり板についているな」
「いつも休まず、やっているからね」
桜月の返事を聞くと、輝男は借りた本をカバンの中にしまう。
用を済ませて図書室を出ようとするが、すぐに足を止める。
何気なさを装いながら、辺りを見渡す。
今、この図書室には輝男と桜月の他には誰もいない。
誰もいないのを認めると、再び桜月と向き合う。
「あのさぁ、日向」
輝男は神妙な面持ちを見せながら話を切り出す。
「今度の休み、何か予定は無いか?」
「別に無いけど」
「もしよかったら、また一緒にデートしてくれないか?」
サラッと用件を言う輝男に、桜月は驚きながら唖然とする。
唖然としたままでいる桜月を見ると、
「イヤ……ダメならダメでいいけど……」
申し訳無さそうに言葉をかける。
すると、桜月はほんのりと頬を赤らめて、
「ううん……。いいよ……また一緒にデートしても……」
はにかみながらも応諾の返事をする。
しかし輝男は、桜月の応諾に喜ぶ様子を見せない。
半ば、思い悩むかのような顔を桜月に見せる。
「……もしかしたら、瑠奈も一緒に行くかもしれないけど……」
またも、申し訳無さそうに言葉をかける。
輝男の今の言葉を聞くと、桜月は脳裏にある光景を浮かび上がらせた。
先日、外泊した輝男の家で、瑠奈と激しく争ったこと――
義妹として、同級生として、同じ一人の男性を愛する思いを激しくぶつけ合った記憶が、今もなお、桜月の脳裏に鮮明に浮かび上がる。
容易には消え失せないわだかまりが、桜月の表情を自ずと重くさせる。
輝男は、桜月の表情の変化を見ると、気まずい顔を見せる。
「やっぱり、ダメか……?」
輝男がそうたずねると、桜月はすぐに首を横に振った。
「心配しないで。一度は義妹(いもうと)さんと一緒にいる機会が欲しかったから」
「悪い。君も瑠奈も、この前のことをまだ引きずっているんじゃないかと思って……
でも、わだかまりを背負ったままでいるのは、俺としてもいい気分にはなれないし……
君や瑠奈も色々と心苦しいんじゃないかと……」
輝男もまた、自分のために桜月と瑠奈が確執を繰り広げたことを大変、心苦しく思っている。
申し訳ない気持ちを率直に言って来ると、
「そんなことより、今度の休み、必ず、デートに行きましょ」
桜月は笑顔を見せながら、輝男に言葉を返す。
苦悩を隠せない輝男の気持ちを汲んでいるかもしれないし、彼との再度のデートを素直に喜ぶ気持ちによるものかもしれない。
桜月の今の言葉に、輝男はようやく笑顔を戻す。
「じゃあ、俺、これから生徒会の会議があるから」
輝男はそう言うと、桜月を残して図書室を出た。
一人きりとなった桜月は、カウンターの内側に忍ばせてあった本を引っ張り出して、読み始める。
孤独と静寂に包まれた図書室に、外からの豪雨の音が依然として聞こえている。
◇ ◇ ◇
二日後の夜――
輝男は自宅のリビングで真純と一緒にいた。
共にパジャマ姿の二人は、テーブルを挟んでまっすぐに向き合っている。
「そう言えば、輝男さん、明日、デートに行くんですってね?」
「あぁ、そうだけど」
輝男がそう言うと、真純は傍に置いてあるバッグから何かを取り出した。
真純は、手中にある白い封筒を、輝男の目の前に差し出した。
「義母さん、これは?」
「いいから、黙って受け取って」
柔和な笑みを浮かべながら、輝男に言葉をかける。
義母にうながされながら、輝男は封筒を受け取る。
中身をチラッと覗き込むと、一万円札が十枚入っているのが認められた。
封筒の中に十万円が入ってあるのを認めると、輝男は驚きながら真純の方を見る。
「義母さん、これは……!?」
「明日のデートのために特別に出したお金よ。これだけあれば満足のいくデートができるでしょ」
驚きを隠せない輝男に、真純は笑みを絶やさずに言葉を返す。
「でも、こんな大金……」
デートのためだけに十万円もの大金を渡してくれたことに対して、ためらいと申し訳ない気持ちが前に出てしまう。
ためらいと一種の罪悪感に表情を曇らせる輝男に、真純は柔和な笑みを見せ続ける。
「今回だけ特別に許してあげたんだから、何も言わずに受け取りなさい。
もし、余るようだったら、余った分だけ返せばいいから」
義母の今の言葉に、輝男は何も言い返せずにいる。
しばらくの間、無言で真純と向き合っていると、
「わかったよ、義母さん。これはありがたく受け取るよ」
依然として申し訳無い気持ちを見せながらも、十万円もの大金が入った封筒を受け取る。
さすがに居たたまれない気持ちになったのか、輝男はすぐに席を立つとそのままリビングを出る。
去り行く義息の後ろ姿を、真純はほほ笑みながら黙って見つめる……
◇ ◇ ◇
快晴の空が街を見下ろす。
駅まであと百メートルの距離にある街中の歩道を、私服姿の輝男と瑠奈が並んで歩いている。
「もう、お義兄ちゃんったら、わざわざアタシを付き合わせなくてもいいのに」
「お前、無理して、尖った態度を装わなくてもいいのに」
「べ、別に、お義兄ちゃんと一緒に遊びに行くのが嬉しいわけじゃないから!」
瑠奈はついつい顔を赤くしながら、唇を尖らせて反論する。
愛する義兄と二人きりではなく、むしろ大勢の人々が行き交い通り過ぎる状況のためか、ツンツンとした態度を必要以上に見せようとする。
そんな瑠奈を横目で見ると、
(ツンデレ義妹(いもうと)も、今はツンモード全開……ってわけか)
ついつい苦笑してしまう。
やがて、輝男と瑠奈は、青春(あおはる)中央駅の正面入り口に差し掛かった。
すると、正面入り口の壁際で、輝男と瑠奈に向かって大きく手を振る私服姿の一人の少女が見えた。
輝男は少女の姿を認めると、一足先に正面入り口の方へと向かった。
「ごめん、待たせたか?」
「ううん。ほんの二、三分前に来たばかりよ」
輝男と桜月――
共に私服姿の二人は笑顔を見せながら言葉を交わす。
後ろに束ねた長いブラウンの髪の上に被さるキャップ――
細く引き締まった肢体を包むTシャツとバーカー、そして、ひざ丈のスカート――
派手さこそ無いがオシャレに着こなす桜月を、輝男はしばし見入る。
すると、
「ちょっと、これってどういうことなの!?」
後ろから怒気を孕んだ少女の声が聞こえて来る。
輝男が後ろを振り返ると、明らかに不機嫌な形相を浮かべる瑠奈がその場に立っていた。
「お義兄ちゃん、まさか、この泥棒猫と一緒に行こうというわけ!?」
「ど、泥棒猫……!?」
明らかに憎しみのこもった瑠奈の今の言葉に、桜月は思わず驚愕する。
しかし、輝男は困惑するどころか、逆に不敵な笑みを瑠奈に見せる。
「瑠奈、嫌だったら、お前だけ家に帰ってもいいんだぜ。
俺は日向と一緒に、二人きりで思う存分デートを楽しませてもらうから」
半ばからかうように、瑠奈に言葉をかける。
義兄の今の言葉に、瑠奈は思わず愕然とし、困惑の色さえ浮かばせる。
愕然とする瑠奈を無視して、輝男は桜月の手を握り、駅の中へ入ろうとする。
「さぁ、急がないと、電車に間に合わないぞ」
輝男が桜月に向かってそう言うと、瑠奈はすぐに輝男の後に追い付く。
瑠奈は輝男の腕にギュッと抱き付くと、
「待って! アタシも一緒に行く!」
キッと輝男を見上げながら、自らも同行する旨を告げる。
輝男は瑠奈の方を見ると、すがるようなまなざしを見せていることに気付く。
「……ったく、しょうがないな」
輝男は苦笑混じりの一言を瑠奈に返す。
傍で義兄妹のやり取りを見ていた桜月は、クスッと笑みをこぼす。
◇ ◇ ◇
広々とした遊園地の真ん中を、輝男たちは歩いている。
輝男を挟むようにして、瑠奈が輝男に右腕にギュッと抱き付き、桜月が輝男の左手を握っている。
「ねぇねぇ、お義兄ちゃん、あれに乗ろう!」
瑠奈は前方に遠く見えるものを指差しながら言う。
瑠奈が指差した先には、高さ三十メートルはある絶叫マシンがある。
「瑠奈、あれって、確か身長制限とかあるだろ? お前、大丈夫なのか?」
「何、言ってるの? お義兄ちゃん、もしかして怖いんでしょ?」
「バカ言うな。俺があんなものにビビるわけが無いだろ」
「じゃあ、行くわよ」
瑠奈はそう言うと、輝男の腕を引っ張りながら前方に見える絶叫マシンに向かって急ぎ足になる。
瑠奈につられて足を速める輝男に、桜月は思わず苦笑いする。
今、輝男たちがいる遊園地は、輝男たちの住む街から電車で一時間ほど離れた場所にある。
広々とした港を一望する広大な敷地に建てられており、様々なアトラクションで連日、盛況を博している。
何より、輝男たちの住んでいる街から遠く離れているのが、今回のデートにおける一番の利点である。
義妹、そして同級生と、二人の美少女を連れ立ってデートをしても、知り合いに出くわす可能性がほとんど無い。
それこそが、輝男の一番の狙いである。
「キャア――――――!!」
急上昇する絶叫マシンに着席しながら、瑠奈と桜月はそろって悲鳴を上げる。
二人に挟まれて腰を下ろしている輝男は、緊張と驚きに顔を強張らせるも、何とか踏ん張っている。
三十分後――
今度は昇降式の展望タワーで眼下の遊園地や向こうに見える港を眺めている。
「ねぇ、見て、豪華客船が停まってるわ」
桜月が港に停泊している大型の船を指差しながら言う。
「あれは確か、世界一周クルーズの最中だろう」
桜月の横で、輝男もまた、向こうに見える豪華客船を見ながら言葉を返す。
一方、輝男の横では、瑠奈が憮然とした顔でソッポを向いている。
輝男はすぐに瑠奈の不機嫌な顔を認め、目を向ける。
「瑠奈、そんな顔してないで、お前も外の景色を見ろよ」
「アタシだってそうしたいけど、お義兄ちゃんと二人きりじゃなければ意味ないんだから」
「いい加減、素直になれよ。そんなに意地張っても、お前自身、気分が悪いだけだろ」
「そんなこと言われなくても、アタシはちゃんと素直なんだから」
強情な態度を貫く義妹に、輝男は呆れ顔でため息を付く。
三人一緒に仲良く楽しむためのデートだったのに、肝心の瑠奈の頑なさのせいも、それも台無しになりかねない状態になっている。
実りの無い義兄と義妹のやり取りに、桜月も自ずと表情を曇らせる。
遊園地内の軽食店で、輝男は桜月、瑠奈とテーブル越しに向き合っている。
三人はテーブルの上に並べられたメニューを口にしている。
「ねぇ、これからどうする?」
「そうだな……まだ、ホラーハウスに行ってないから、そこへ行って……
その後、お土産を買ってから帰るとするか」
「そうね」
輝男と桜月は、メニューを食べながら、今後の予定を話し合う。
彼らのすぐ傍では、瑠奈が依然として不機嫌な顔を見せている。
輝男は努めて、平素の表情を見せているが、
(ダメだ……。何とか、瑠奈に心を開いてもらおうとしたが……)
内心、落胆の念を漏らす。
今回のデートの真の目的である瑠奈と桜月の和解がまったくの暗礁に乗り上がったことを、輝男は否が応にも思い知らされてしまう。
このまま行けば、今回のデートは、何の成果も無く、無駄な徒労で終わってしまう算段が大きくなる。
それは、輝男だけでなく桜月も同じだった。
自分の横に着席しながらも、まったく目を合わせようとしない瑠奈に、困惑の念を押し隠せずにいる。
やがて、軽食店から輝男たちが出て来た。
そのまましばらく歩いたその時、
「あ!!」
輝男たちは、目の前にあるものの存在に気付き、その場で思わず驚きの声を上げる。
驚きの声を上げたのは、輝男たちだけではない。
彼らの目の前にいる者たちもまた、輝男たちの存在に気付き、驚いたのだ。
「せ、先生……!」
輝男と桜月がそろって驚きの声を上げると、
「あなたたち、どうして、ここに?」
二人の目の前にいる理華はすぐに輝男たちにそうたずねる。
理華だけじゃない。
彼女の横には、那須真白、そして、聖神楽もにいた。
「あら、天江君、奇遇ね」
神楽がおっとりとした笑顔で輝男に言葉をかけると、
「あらまぁ、天江君ったら、私たちというものがいながら、こんな可愛いお嬢さん方と一緒にデートだなんて……」
真白は不敵な笑みを浮かべながら、からかうかのように言葉をかける。
まさかの邂逅に、輝男と桜月は驚きと緊張、そして、困惑と恥じらいに顔を赤らめる。
「あ、雨宮先生、那須先生、違うんです、これは……!」
桜月はすっかり混乱しきった様子で、目の前にいる教諭二人に必死の弁明を試みようとする。
「ヤダ、もう日向さんったら。別に何か悪いことをしたわけでも無いでしょ」
理華はクスッとほほ笑みながら、桜月をなだめる。
「それより、どうして先生たちがここに?」
輝男はすかさず、理華たちに向かって問いただす。
「せっかくの休みを利用して、一緒にドライブをしようと思ってね」
「それはそうとして、どうして、聖先輩まで?」
理華の返答を聞くと、輝男は神楽の方を見ながら続けて問いただす。
「聖さん、生徒会の仕事や勉強で相当、疲れがたまってるから。
たまには息抜きもさせてあげないと…と思って、同行させたわけ」
真白がそう返答すると、
「まさか、たまたま立ち寄った遊園地で天江君や日向さんたちと会えるなんて、思っても見なかったわ」
神楽は柔和な笑みを浮かべながら、輝男と桜月にそう言葉をかける。
「わ、私たちも正直、想定外でした」
桜月は未だしどろもどろと言った様子で、理華たちに言葉を返す。
桜月の横では、
(いくら何でも、偶然にしては出来過ぎだろ……!)
輝男が平素の表情の奥で深く嘆息する。
輝男は思い通りにいかない事態がさらにややこしくなったことを思い知らされずにいられなかった。
薄暗くなり始めた空が、遊園地から出て来る一行を見下ろしている。
「あぁ……お義兄ちゃん、もう疲れちゃった……」
背中にデイバッグを背負い、右手に手提げ袋を持つ瑠奈が、弱り切った形相ですぐ横にいる輝男に向かって言う。
輝男を挟んで、瑠奈の横にいる桜月が空を見上げる。
「もう、空も暗くなってるし……」
「そうだな、じゃあ、そろそろ…」
桜月の言葉を受けて、輝男がそう言い出すと、
「ホテルに行きましょう」
輝男の言葉をさえぎるように、理華が声を上げる。
理華の突然の思わぬ言葉に、輝男と桜月は驚き、唖然とする。
「ホ、ホテルって……」
「それって、どういうことですか!?」
「だから、今日一日、遊び疲れた体を、ホテルで休みながらジックリ癒すってわけよ」
信じられないと言わんばかりにたずねる輝男と桜月に、真白は自信に満ちた笑みで応じる。
「皆で、今夜はあのホテルに泊まるのよ」
理華はそう言いながら、遊園地の入口、手前百メートル先にある十階建ての建物を指差す。
堅牢な造りをしつつ、高級感あふれるたたずまいが、前方にいる輝男たちの目にもハッキリとわかる。
「あのホテルって、かなり評判がよくて、中々、予約が取れないと言われてますけど……」
神楽がそう言うと、理華と真白は自信たっぷりに笑みを浮かべる。
「安心なさい。ちゃんと予約は取ってあるわ。もちろん、皆が泊まれる部屋はちゃんと確保してあるから」
「で、でも……私たち、今日は日帰りのつもりでいたのに……それを一泊に変更するなんて……」
「こんなこと、無断外泊になるのは先生たちだってわかってるでしょ?」
桜月と輝男が続けざまにためらいと不安を口走ると、
「親御さんたちには、私たちの方から上手く説明するから、あなたたちは何も心配しないで」
「宿泊代とかは私たちの方でちゃんと負担してあげるわ」
理華と真白が自信に満ちた態度で輝男たちの懸念をはね付けると、
「お義兄ちゃん、早く行こう!」
瑠奈はさっきまでの疲れが嘘のように、子供のようにはしゃぎながら先走っていく。
一目散にホテルに向かう瑠奈の後を、理華と真白そして、神楽が追う。
輝男と桜月は、その場に取り残されたかのようにポツンと立ち尽くす。
まさかの事態に、二人とも唖然とするばかりだ。
「どう……しよう……」
困惑を隠し切れない調子で、桜月がたずねると、
「仕方ない……。今回は先生たちに甘えるしかないな……」
輝男はため息を付き、半ば、諦めたかのように言葉を返す。
そして、瑠奈たちに大きく遅れながら、ホテルの方へと向かう。
◇ ◇ ◇
夜のとばりが降りて久しい頃――
投宿したホテル内のバスルームに、輝男の姿がある。
湯気が立ち込めるバスルームの中、輝男は一人、リラックスしたかのように、安堵の顔を見せる。
「あぁ、温かい……。ホントに疲れがいっぺんに吹っ飛んじゃうよ……」
輝男はホッと安堵の吐息を漏らしながら、独り言をつぶやく。
懸念は完全に消えたわけではないが、今は嫌なことも憂慮もすべて忘れて心地良いひと時を過ごそうとする。
すると、後ろの方からドアが開く音が聞こえて来た。
ふと、後ろを振り返った瞬間、輝男は驚きの余り、顔を赤くしてしまう。
驚愕した形相を赤らめる先には、
「せ、先輩……!」
手拭きタオルで大事なところを隠す以外は、生まれたままの姿でいる神楽が立っていた。
長いストレートの黒髪を後ろに丸め、控えめにふくらむ左右の乳房と細く引き締まった裸体を輝男の前に見せ付ける。
「ど、どうして、ここに……!?」
驚きと困惑に声を上げる輝男だったが、神楽はすぐに輝男に近付くと、彼の口をキスでふさいだ。
十秒ほど輝男の唇をふさぐと、神楽はキスをやめた。
「あんまり騒ぐと、皆にバレちゃうわよ」
神楽はニコッとほほ笑みながら、輝男に向かって言う。
ほほ笑む神楽に対し、輝男はやや苦い顔を見せる。
「どういうつもりですか? いきなり勝手に入って来て」
「天江君とはしばらくだったから、せっかくの機会に…ってね」
困惑する輝男に、神楽は笑みを絶やさずに言い返す。
神楽の返答にため息を付くと、
(こんな抜け駆けみたいなことをするなんて、相当、溜まってるんだろうな……)
内心、半ば、納得したかのようにつぶやく。
輝男と神楽はバスルームの真ん中で向き合い、キスをする。
二、三回、唇をついばんだ後、舌を絡ませ合う。
絡み合う舌の隙間から、唾液が跳ねるような音が小さく響く。
「うぅ……んふ……」
神楽のものと思われるウットリとした吐息が、絡み合う舌の隙間から続けて漏れる。
神楽は、ほっそりとした左右の手を、輝男の胸板に押し付ける。
一方、輝男は、Bカップはあろう神楽の裸の胸に左右の手を触れさせる。
輝男は舌を絡ませ合いながら、神楽の控えめな美乳を揉みしだく。
「うっ、うぅ……」
後輩の愛撫を受け、神楽はかすかにうめく。
真純や理華、真白は言うに及ばず、桜月と比べても神楽の胸は比較的小さい方だ。
それでも、輝男の手は、控えめながらも柔らかく温かい肉感を十分に堪能する。
そして、円を描くようにして揉み続ける。
一方、神楽は左手で輝男の胸板を撫でながら、右手を下の方へと這わせる。
神楽の右手が輝男の陰茎を優しくつかむと、手のひらで肉の棒の表面を何度も撫でさする。
やがて、輝男と神楽はディープキスをやめた。
舌の絡み合いはやめたものの、美乳を愛撫する動きはそのまま続ける。
「あっ、あぁ……」
輝男の愛撫を受け、感じ入ったかのように、神楽が艶やかに喘ぐ。
湯気に煽られたせいもあるが、神楽はその整った美貌を大きく紅潮させている。
輝男は神楽の胸の柔肉を揉みつつも、左右の指先で胸先の小さな蕾をこねくり回す。
「うっ、う、く……」
神楽は輝男の胸板に押し付けていた左手を離すと、人差し指を噛んで喘ぎを押し殺そうとする。
恥じらいの態度を見せつつも、右手で陰茎を弄る動きは続けている。
神楽の右手は、輝男の陰茎が徐々に固さと大きさを増していくのを直に感じ取る。
輝男の指もまた、神楽の美乳の頂がピンと固くなっていくのを感じ取る。
すると、輝男は神楽の胸元に顔をうずめた。
美乳を揉みしだきながら固くなる桃色の蕾を舐め回し、甘噛みする。
「うっ、うぅっ……!」
神楽は電流が全身を流れるような刺激を受け、声を殺してうめく。
すると、輝男はすぐに神楽の胸元から顔を離した。
「神楽さん……かなり、感じちゃってますね……」
神楽の火照った美貌を見つめながら、感嘆の念を伝える。
神楽は火照った美貌を恍惚とさせ、輝男に向かって乞うようなまなざしを震わせる。
「お、お願い……私も……天江君の……」
途切れ途切れに懇願する神楽。
彼女のまなざしは、輝男の顔と彼の陰茎を続けてとらえている。
輝男の陰茎は、神楽の手中で固く大きな姿を突っ立たせている。