※この作品はR-18です。

天江輝男の日常   作:原野イアン

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新生徒会長・葵と可愛い後輩・七海 ●

 「では、返却は一週間後になります」

 

 図書室のカウンターで、百川七海が本二冊を差し出しながら言う。

 “図書委員”を記された腕章を腕に巻いている七海は、緊張しきった顔を半ばうつむかせながら細々と声をかける。

 カウンター越しには、輝男が七海から差し出された本二冊を受け取る。

 

 「百川、いつも頑張ってるね」

 

 自然と笑顔を見せながら、七海に言葉をかける輝男。

 輝男の今の言葉に、七海は顔を紅潮させながら思いっきり顔を下げる。

 緊張と恥ずかしさで言葉を詰まらせている様子だ。

 そこへ、一人の女子生徒が歩み寄って来る。

 

 「どう? 天江君、生徒会の方は?」

 

 「あぁ、別に問題無いよ」

 

 桜月からの問いかけに、輝男はすぐに返答する。

 

 「黒山さんとは上手くやってる?」

 

 桜月がまたもたずねると、

 

 「あぁ、今のところは何とか上手くやってるよ」

 

 輝男は何の迷いも無く即答した。

 すると、桜月は七海の方に目を向く。

 

 「七海ちゃんはどうなの? 新しい生徒会長と上手くやってる?」

 

 にこやかな顔で七海に同じ問いかけをする。

 しかし、七海はうつむいたまま表情を暗くさせる。

 同じ図書委員の先輩である桜月からの問いかけに、何故か暗い顔で沈黙する。

 七海の暗い沈黙に、桜月は不安そうな顔を見せる。

 

 「どうしたの? 七海ちゃん」

 

 心配そうに呼びかける桜月に、輝男は彼女の肩に手を当てる。

 桜月がすぐに輝男の方を振り向くと、輝男は重い表情を見せながら黙って首を横に振る。

 輝男の今のジェスチャーに、桜月は彼が言わんとしていることをすぐに察する。

 そして、重くうな垂れる七海を置いてその場から歩み去る。

 

 

 図書室を出た輝男と桜月は、そのまま横並びに廊下を歩く。

 

 「あの様子だと、相当、辛く当てられてるみたいね」

 

 「いや、別に、黒山が百川をいびり倒しているわけじゃないけど……

 百川のヤツ、黒山にかなり圧倒されているというか、かなりビビってるみたいで……」

 

 「黒山さん、普段から厳しくてキツいところがあるから、気の弱い人には耐えられないかも……」

 

 「聖先輩の時は、先輩が百川を優しくフォローしてくれたから何とかなったけど……

 アイツは先輩とは真逆のタイプだから……」

 

 輝男と桜月は憂いを帯びた表情を見せながら、ため息交じりに会話を交わす。

 生徒会役員も兼ねている七海と、新しく生徒会長となった黒山葵の折り合いのことで、色々と憂慮しているのだ。

 二人の今の表情と会話からは、七海と葵――特に七海――に対する心配が強く出ている。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 生徒会室で一人の女子生徒が勢い余って席を立つ。

 

 「あなたたち、本当に生徒会の一員なの!?」

 

 黒山葵は元から鋭い美貌をキッと厳しくさせながら、怒気鋭く声を上げる。

 クッキリと吊り上がった目で、正面に見える男女生徒数名を鋭くにらむ。

 眼光鋭くにらむ葵に、彼女と向き合う男女生徒――すなわち、生徒会役員たちは、萎縮したかのように言葉を詰まらせる。

 輝男もまた、他の生徒会役員たちと一緒に気まずそうな顔で沈黙する。

 一方、末席に座る七海は重くうな垂れながら萎縮しきっている。

 

 「生徒会役員を務めているのであれば、日々、学校生活を送っている中で、様々な問題に直面し、そのことに対して色々と思いを馳せ、改善すべき方法をいくらでも考えられるはずなのに……

 数える程度の提言しかしないばかりか、その内容も取るに足らない些事ばかりだなんて……

 このままでは、わざわざ生徒会役員を務める意味など無いし……

 下手をすれば、生徒会が存在していること自体、無意味になりかねないわ!」

 

 生徒会長として、学校生活にまつわる様々な問題を討議し、解決策を見い出そうと言う葵であるが、はかばかしくない状況に苛立ちの声を上げる。

 あからさまに威圧する葵の声に、他の生徒会役員たちは中々、言葉を返そうとしない。

 しかし、すぐに一人の男子生徒が席を立ち、葵と向き合う。

 輝男だ。

 

 「会長。あなたは、僕たちがまるで怠慢の極みにあるかのように言ってますけど……

 僕たちも、他の皆と接しながら、今の学校生活はこのままでもいいのかどうか考えています。

 でも、実際、学校生活を送り、皆と接した結果、早急に事を要する件は今のところ見受けられないと思います。

 皆、真面目で勉強し、何の問題も無く日々の生活を送っていますから……

 今の平穏をキチンと維持することこそが大事なのではと…」

 

 「ふざけたことを言わないで!」

 

 臆することなく自説を諄々と言い聞かせようとする輝男を、鋭い声がさえぎる。

 

 「天江君、あなたの目は節穴過ぎるわ!」

 

 葵は輝男をキッとにらみ付けながら、鋭い口調で反論する。

 

 「今の学校生活は何も問題無い。

 皆、真面目で、校内の環境も至って平穏。

 そう思えること自体が、怠慢極み以外の何物でも無いわ!」

 

 輝男の今の発言を、問題意識の著しい欠如と見なし、誰はばかることなく舌鋒鋭く批判する。

 葵の批判に、輝男は表情を強張らせながらも、何も言い返そうとしない。

 気分を害していないと嘘になるが、手加減を知らない罵倒にいい気分ではいられない。

 輝男が言い返すのを待たずに、葵は鋭く言葉を続ける。

 

 「既に、この校内のどこかで、由々しき問題はひそかに大きさを増して来ているのよ!

 ほんの些細な兆候に目が行かず……いいえ、些細な兆候を見て見ぬフリしてしまえば……

 この学校はすぐにでもダメな方向に落ち込んでしまうわ!

 ハッキリと万人の目にも明らかになった時には、取り返しがつかなくなっているんだから!」

 

 大げさ、もしくは考え過ぎとも取れる葵の憂慮の叫びに、輝男は表情を強張らせたまま、腰を下ろす。

 不承不承ではあるが、葵の言い分にも一理はあると認めざるを得ないからだ。

 輝男が着席したのを認めると、葵はなおも言葉を続ける。

 

 「あなたたちは、私のことを独裁者の類か何かと思ってるかもしれないけど……

 私は、高所からあなたたちや他の生徒を頭から抑え付けて、一方的に命令を下すつもりは無いわ。

 むしろ、あななたちの方から、この学校生活に対して色々と思うところ、由々しき問題と考えていることを言ってもらう方を強く望んでいるのよ。

 その上で、わずかな隙も無い完全な解決策を皆で考え、実行に移し、本当の意味でこの学校が何の問題も無い、平穏無事な環境となることこそが、生徒会長として私が望むことなのだから」

 

 厳しくも真剣みを帯びた面持ちで言う葵に、輝男、そして、他の生徒会役員たちは何も反論しない。

 言い方こそ高圧的だが、内容自体が至極もっともなことであるから、反論しようにも反論できないのだ。

 すると、葵は厳しい表情をそのままに、末席に鋭いまなざしを向ける。

 

 「百川さん、あなた、今日、何も発言してないけど、何か言うことは無いの?」

 

 葵の今の問いかけに、七海はビクッと驚きながら、縮こまったかのように重くうな垂れる。

 

 「い、いいえ……今のところは何も……」

 

 怯えきった調子で声を震わせながら、葵に言葉を返すと、

 

 「あなた、本当に生徒会役員なの!?

 学校生活における問題意識が欠けているばかりか、たった一言の発言すらしようとしないなんて!」

 

 葵は怒りに表情を険しくさせながら、舌鋒鋭く七海に言い返す。

 容赦無い生徒会長の批判に、七海は陰鬱な表情で重くうな垂れる。

 そして、遠目にもハッキリとわかるようにその身をわなわなと震わせる。

 輝男は怒りの声を上げる葵を見ると、すぐに、末席で萎縮しきっている七海の方を振り向く。

 輝男の目に、身を震わせながら、泣き出すのを必死にこらえる七海の姿が映る。

 一方、葵は、七海を情け容赦無く責め立てたことに、わずかでもやましさを見せないばかりか、怒りが収まらないといった様子を見せる。

 今まで感じたことも無いような重苦しい空気が、生徒会室に充満する……

 

 ◇ ◇ ◇

 

 一階と二階の間の階段の踊り場で、七海は一人、うずくまるようにして腰を下ろしている。

 顔を隠すようにして伏せると、かすかに身を震わせ、すすり泣きを漏らす。

 幸いと言うべきか否か、既に放課後に入っているせいか、人の足はまったく無い。

 だから、周囲の目を気にせずに、孤独の中で悲嘆の極みに浸っている。

 そこへ、何者かがゆっくりと近づいて来る。

 七海の横に、一人の男子生徒が腰を下ろす。

 左右の手にジュース缶が握られている。

 すると、男子生徒が横から缶ジュースを差し出す。

 ずっとうな垂れ、すすり泣いていた七海は、ゆっくりと顔を上げる。

 あどけない美貌を涙で濡らしながら、目の前に差し出された缶ジュースとそれを差し出す者の顔を交互に見る。

 

 「先輩……」

 

 弱々しい声で、横に座っている輝男に声をかける。

 輝男は、悲哀に満ちた後輩女子の顔を憂いを帯びた表情で黙って見つめる。

 七海が缶ジュースを受け取ると、二人はそろってジュースを飲む。

 無言のままジュースを飲むと、しばらくの間、重い沈黙が二人の間を覆う。

 やがて、七海が暗い顔を見せながら口元をゆっくりと開く。

 

 「すみません、先輩。私なんかのために、こんなことをしてもらって……」

 

 七海が申し訳無さそうに感謝の言葉をかけると、

 

 「俺こそ、あの時、君が黒山に責められていたのに、何もしなくて……」

 

 輝男は気まずそうに言葉を返す。

 さっき、生徒会室で葵が七海を難詰した時のことを思い出したのだろう。

 

 「今更、こんなことを言っても意味無いけど……

 あの時、俺が君のことを少しでも庇って、フォローしていれば……

 君への風当たりも少しは緩んだのに……」

 

 今更のように後悔の念を言って来る輝男に、七海はゆっくりと首を横に振る。

 

 「先輩は何も悪くありません。

 元はと言えば、私が余りに消極的だったのがいけなかったんですから」

 

 七海は暗い顔でうつむいたまま、自らの非を認める言葉を返す。

 七海の今の言葉に、輝男は重い表情を見せたまま、何も言い返さない。

 

 「会長の言う通り、もっと、生徒会の一員としての自覚を持って、学校生活のことに色々と思いを巡らし、考えなければならないのに……

 自分に自信が持てず、まだまだ一年の若輩に過ぎないという立場に無意識に甘えて……

 ……だから、黒山会長に強くなじられた時も、とても悔しくてつらいけど、仕方ない、当然のこととして受け止めなければいけないと思って……」

 

 そこまで言うと、ノンフレームのメガネに覆われた瞳から、涙が流れ出て来た。

 涙があふれ出る様に、七海は一旦、メガネを外して涙を拭う。

 あどけない美貌を悲哀に歪ませ、かすかな声ですすり泣く。

 未だに、葵からの難詰を引きずる七海を見ると、輝男は彼女の頭を優しく撫でる。

 

 「百川、君がちゃんとわかっていてくれれば、それでいいんだ……

 黒山だって、君のことが嫌いだから、いじめ抜きたいという気持ちから、あんな態度に出たわけじゃない。

 他の誰よりも真面目で、自分にも他人にも厳しいから、あんなキツいことを言っただけだし……

 それに、君だって、何の取り柄もないただの臆病者なんかじゃない。

 生徒会の役員をやるだけの力量を、君はちゃんと持っているわけだから。

 後は、君が、そのために一歩、前へ踏み出せるかどうかが大事なんだ」

 

 輝男は真剣な表情で七海を見つめながら、諄々と言い聞かせようとする。

 話を終えると、ニコッとほほ笑み、七海の反応を待つ。

 七海は輝男の今の言葉を聞くと、悲哀に満ちた形相を和らげさせる。

 必死に涙を拭い、再び、メガネをかける。

 そして、落ち着きを取り戻した顔で、輝男と向き合う。

 

 「ありがとうございます。

 そこまで私のことを励ましてくれるなんて、とても身に余る思いです」

 

 七海は深々と頭を下げながら、輝男に感謝の言葉を返す。

 

 「い、いや……わかってくれたら、それでいいから……」

 

 輝男は少し照れながら七海に言い返すと、すぐに腰を上げた。

 

 「じゃあ、俺、帰るから。百川も気を付けて帰って」

 

 そう言いながら一人、階段を下りようとすると、突然、背後から七海がギュッと抱き付いて来た。

 輝男はすぐに足を止め、後ろを振り返る。

 

 「お、おい、どうしたんだ!?」

 

 思わず顔を赤らめながら、戸惑いに満ちた調子で七海に声をかける。

 七海は、輝男の肩の辺りに顔をうずめ、後ろから輝男に抱き付いたまま離さない。

 彼女の柔らかく大きな胸の感触が、制服越しに背中から押し付けられる。

 

 「お願いです……先輩……私の頼みを聞いて下さい……」

 

 七海は顔をうずめたまま、震える声で輝男に申し出る。

 輝男は七海の今の言葉を聞くと、体の向きを変えながら、彼女を自分の体から引き離す。

 再び、後輩女子と向き合う輝男は、目の前の少女が、頬を赤らめながら自分を見つめているのに気付く。

 さっきまでの悲哀に満ちた面持ちとは違い、緊張とときめきが混ざり合った顔を輝男に見せる。

 

 「天江先輩……私を…抱いて下さい……」

 

 七海は輝男をまっすぐに見つめながら、ただならぬ申し出を言う。

 七海の今の申し出に、輝男は愕然としながら言葉を失う。

 思いもしなかったことを言われて、すぐに言葉を返すことができずにいる。

 わずかな沈黙の後、輝男の口がゆっくりと動き出す。

 

 「だ、抱いてくれ…って……君、自分が今、何を言っているのか、わかってるのか?」

 

 驚き、戸惑いながら、後輩女子に向かって言葉を返す。

 しかし、七海は緊張しきってはいるが、一歩も引く気配を見せない。

 

 「わ、わかってます……。私の“初めて”を……天江先輩、あなたに……」

 

 かすかに身を震わせながら、勇気を振り絞って自らの思いを告げようとする。

 

 「で、でも、どうして、俺に……? それも、自分の“初めて”を……」

 

 「私、天江先輩が好きですから……

 生徒会の役員として一緒になった時から、真面目で優しい先輩に惹かれて……」

 

 七海は輝男をまっすぐに見つめながら、自らが抱く思慕を当の相手に告げる。

 ガチガチに緊張しているが、その口調と表情が真剣なのは、誰の目にも明らかである。

 

 「中々、勇気を出して告白できなかったけど……今なら、先輩にこの思いを伝えられると思って……」

 

 言葉を続ける七海に、輝男は神妙な面持ちで唇を閉ざす。

 即答に窮してはいるが、少なくとも冷たく突き放す様子はまったく認められない。

 何も言い返そうとしない輝男に、七海は若干、不安げに表情を曇らせる。

 

 「……私じゃダメですか……?」

 

 七海が半ば、落胆したかのようにたずねると、

 

 「いや、別にダメってわけじゃないけど……

 いくら、君が可愛い後輩だからと言っても、君の大事なものを俺が奪うのは……」

 

 輝男は気まずそうな表情を見せながら、ためらう気持ちを言って来る。

 すると、

 

 「どうしてですか……? 妹なら良くて、私だとダメだなんて……」

 

 七海は落胆の度合いを増しながら、輝男に向かって言葉を返す。

 

 「え? 妹?」

 

 輝男は、首を傾げるようにして、七海に向かってたずねようとする。

 

 「先輩、この前の夏休み、私の妹の“初めて”をもらったそうじゃないですか」

 

 「夏休み? 妹? “初めて”? 一体、誰のことを言ってるんだ?」

 

 「あの娘……うちの妹の七瀬が、先輩に“初めて”をあげたって教えてくれたんです」

 

 七海の今の言葉に、輝男はハッと何かを思い出した。

 

 夏休みも終わりに近づいたとある夜――

 

 瑠奈の同級生にして友人でもある百川七瀬(ももかわ・ななせ)を抱いた時の生々しい記憶が、輝男の脳裏によみがえった。

 七瀬との淫行を思い出すと、

 

 (まさか、七瀬ちゃんが、俺とのセックスを言いふらすなんて……!)

 

 内心、信じられないといった様子で、愕然とした思いを叫ぶ。

 しかし、すぐに、七海とまっすぐに向き合うと、

 

 「し、しかし……君に妹がいたなんて知らなかったよ。

 七瀬ちゃんも、君のことを何も言ってくれなかったし」

 

 戸惑いを隠せない様子で七海に言葉を返す。

 

 「私も妹も人見知りがひどい方なので、中々、先輩に言い出せなかったんです」

 

 (確かに、二人ともそれっぽいところはあるよな……)

 

 七海の今の言葉に、輝男は内心、納得したかのようにつぶやく。

 そして、改めて七海と向き合うと、

 

 (確かに、よく見れば、七瀬ちゃんも百川もホントに似てるよな……)

 

 脳裏に浮かぶ七瀬のあどけない顔と、目の前にある七海の顔が、輝男の中で合致していく。

 実の姉妹の証しとも言うべきあどけない気弱そうな顔が、輝男の脳裏で重なり合う。

 すると、輝男は、七海に気まずそうな顔を見せながら口を動かす。

 

 「あの時は仕方なかったと言うか……七瀬ちゃんが勇気を出してお願いしてきたのをどうしても拒めなくて……」

 

 今更ながらに、後輩の妹である中学一年女子を抱いたことに対する弁明を試みようとする。

 すると、七海は頬を赤らめ、弱々しくはあるが意を決したかのような形相を輝男に見せる。

 

 「七瀬を抱いたのなら、私を抱くのも問題ないはずでは……

 それとも、私だけはどうしても嫌だと言うのですか……?」

 

 乞うようにまなざしを震わせつつも、既に覚悟を決めたかのように言って来る。

 七海の今の言葉に、輝男は何も言い返せない。

 

 ダメだ――

 

 抱いてやる――

 

 いずれか一つの返答を言おうとしない輝男に、七海は言葉を続ける。

 

 「身勝手な言い分かもしれませんが……

 先輩が私を抱いて、私の“初めて”を奪ってくれたら……

 私、少しは変わることができるんじゃないかと思うんです……

 先輩がさっき言ったように、一歩、前へ進めるような気がするんです……」

 

 輝男をまっすぐに見つめながら、自らの希望に添うような一押しをかけようとする。

 そして、間を置くこと無く、なおも言葉を続ける。

 

 「お願いです……先輩……」

 

 精一杯の勇気を振り絞るかのような一言が、七海の口から発せられる。

 メガネのレンズ越しに、神妙な面持ちをした輝男の姿が映る。

 輝男はそのまま、七海の間近にまで近付くと、そのままそっと抱き締める。

 輝男の優しい抱擁に、七海は思いっきり顔を紅潮させる。

 

 「百川……ホントに俺でいいのか?」

 

 優しく抱き締めながらたずねる輝男に、顔を真っ赤にしたまま返答に窮する七海。

 

 「君もわかってるけど、“初めて”をあげるなんて、簡単にできることじゃない。

 男に抱かれることなんて、もしかしたら、痛い思いを強いられるだけかもしれないんだ。

 それでも、俺に…」

 

 七海の気持ちが本気か否かと確かめようと念を押す輝男に、

 

 「抱いて下さい……。私、天江先輩じゃなきゃ、ダメなんです……」

 

 七海は彼の言葉を中途でさえぎりながら、自らの思いを強く言い聞かせる。

 覚悟を決め、精一杯の勇気を振り絞って自ら身を投げ出す七海に、輝男は神妙な表情を見せ続ける。

 そして、そのまま、彼女の体を優しく抱き締める。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 同じ時刻、同じ校舎――

 

 輝男と七海がいる一階と二階の間の階段から数十メートルほど離れた教室に、一人の女子生徒がいる。

 教室正面入り口のドアに、“3年D組”と横書きで記された札が掲げられている。

 ドアの内側、ひと気も無く静まり返った教室の片隅で、女子生徒は腰を下ろしながら。

 

 「あぁ……ハァ、ハァ……あぁ……」

 

 半ば恍惚としたような喘ぎと切ない吐息を交互に繰り返している。

 彼女は、制服のワイシャツを上半分程はだけさせ、Eカップはあろう大きな胸のふくらみを覆う水色のブラジャーをさらけ出している。

 女子生徒の右手が自分の胸をブラジャー越しに揉みしだいている。

 恍惚と悲哀が入り混じった顔を赤らめながら、

 

 「せ、先輩……先輩……」

 

 弱々しいトーンで繰り返しつぶやく。

 うわ言のようにつぶやきを繰り返しながら、左手を、スカートの内側に忍び込ませる。

 細い左手の指が、スカートの内側、ブラジャーとお揃いのショーツの内側に入り込む。

 二本の指が茂みをかき分け、秘裂に入り込む。

 左手の指が秘裂の中で抜き差しを繰り返すと、

 

 「あっ、あぁ……ハァッ、ハァッ……」

 

 か細い喘ぎと吐息を繰り返しながら、右手が大きな胸をブラジャー越しに揉みしだく。

 既に放課後に入って久しく、他に誰もいない孤独と静寂の中、女子生徒――黒山葵は、自分の胸と秘裂を弄り続け、自らを慰め続ける。

 

 「先輩……どうして……どうして、私じゃダメなの……?」

 

 葵は今にも泣き出しそうな声で、悲哀に満ちた独り言をつぶやく。

 すると、大事なところを荒らす指の動きが速まり、葵の右手が、胸を覆うブラジャーをずり上げる。

 ついに、裸の胸をさらけ出すと、そのまま、葵の右手が大きく柔らかなふくらみを直に揉みしだく。

 

 「あぁ……うぅっ……んんっ……」

 

 声を殺しながら切なそうに喘ぐ葵。

 さっきまで、生徒会室で鬼のように厳しい態度を見せていた新生徒会長の姿はそこにはいない。

 今の黒山葵は、誰もいない教室の片隅で、誰かが近付き、見られるかもしれないという危険な状況を甘受しながらも、孤独な自慰に耽る哀れなメスでしかない。

 やがて、葵は席を立つと、裸の胸をさらした格好はそのままに、スカートの中に手を入れた。

 すぐに、スカートの内側から水色のショーツが姿を現した。

 細く引き締まった右の太ももにショーツを引っかけさせると、裸の股を机の角にあてがう。

 うっすらと潤っている秘裂を机の角に当て付けると、そのまま腰を前後に動かし始めた。

 

 「あっ、あぁ……あんっ……」

 

 葵は机の角に秘裂を当てこすりながら、艶やかな喘ぎを繰り返す。

 

 「せ、先輩……先輩……」

 

 悩ましげに腰を前後に動かしながら、泣くようにして先輩の名を呼ぶ。

 葵は悲哀の念を募らせながら、孤独と静寂の中で自慰に耽り続ける……

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