「まもなく当機は・・・」
パソコンで資料を作成していた僕の耳にそんなアナウンスが聴こえた
(おっともうそんな時間か)
いつのまにか着陸間近であった。何度も飛行機に乗ってはいるけどなかなか慣れず今だって思ったより早く起きてしまい気晴らしにお仕事をしていた。
「う~ん」
先ほどのアナウンスが聞こえたのだろう。僕の隣にいるかわいいお嫁さんが声をだし起きかけていた。
「おはよう由奈。ゆっくり眠れた?まだ着陸まで時間あるからもう少し寝ててもいいよ。起こしてあげるから」
そう言ったけれども由奈はまだ目向け眼で席から体を起こす。
「う~ん、ヒロ君おはよう・・・おはようのキス・・・」
僕の方に寄りかかり唇を近づけてくる。
「いや、由奈寝ぼけてから分からないとおもうんだけどここお家じゃないからね。飛行機の中だからね。隣の人とかに見られちゃうからね」
ちらりと隣の席をちらりと見る
「ゴホン」
案の定隣の席の人は露骨な咳払いしてこちらをチラチラと見ている。
「だからね我慢して。ね?」
「嫌だ~」
甘えながらさらに唇を近づけてくる。
「いや・・・だからね由奈」
ちらりと再度隣の人をもう一度見ると諦めたのかアイマスクをして毛布に包まり狸寝入りを決め込んでいた。
「もう・・・ちょっとだけだからね」
「うん・・・ちゅ」
言う通りに軽めのキスをすると思っていたら
「んちゅ、れろ、んちゅっ、ンっ、んむ・・・」
がっつりと舌を絡ませてきて激しい音もだしている。まあ、反射的に僕も舌を絡める時点で同罪である。
「ぐーぐー」
隣の人は音を聞かないようにするためか露骨に大きないびきをしている。
「すいません。本当にすみません」
僕が周囲に謝っていると隣から
チョンチョン
僕の服を掴み引っ張っている。振り向くと
「えへへおはよう。ヒロ君」
キスをして目がしっかり醒め満面の笑みでおはようの挨拶をする。本当に無敵の由奈であった。
飛行機から降り手続きも終えて出発ロビーに着く。
「久しぶりの日本だね~」
「そうだね~最近はずっとあっちにいたから」
前までは仕事でちょくちょく日本に帰って来てはいたがもうすぐ臨月との事で安静にしていて仕事もキャンセルしていた今回は出産の為に帰って来た。
「確か紫苑さんが車で迎えに行くって聞いてたけど」
「由奈ちゃーん。浩孝君こっちこっち」
僕たちを見つけて大きな声で呼ぶ紫苑さん。相変わらずの美しさだった。
「紫苑さん。お久しぶりです」
「由奈ちゃんも元気そうで良かったわ」
「はい。みんな元気です」
「お久しぶりです紫苑さん。わざわざ迎えに来てもらっちゃってありがとうございます」
「いいのよ。大事なもう一人の娘ですもの・・・浩孝君も」
そうして紫苑さんの運転で僕と由奈は僕の実家に行く。
「でも本当にいいの?私や由奈ちゃんの家じゃなくて浩孝君の実家で」
「はい。昔のベビーカーとかベッドもあるのでこっちにいる間はそれを使おうかと。それに約束しましたから」
乃々香ちゃんにこっちに帰って来る時は家に行くと約束したのでこっち帰って来る時は顔を見せるようにしていがそれは本当に短い時間だし都合が合わない事もあった。
「今回は長めの滞在ですし。仕事先からも近いですから」
「そう・・・大体どのくらいこっちにいるの」
「由奈と生まれてくる子供の様子も見ますが一月くらいは日本にいようかな。向こうでのお仕事もオンラインでできる仕事にも限度がありますから」
「向こうでの事聞いてるわよ。頑張ってるそうじゃない。あの厳しい彼女が褒めてたわよ」
「そんな事ありませんよ由奈ちゃんの方が頑張ってますから
「いや~ん。ほんとアツアツなんだから」
久しぶりに会うけれど相変わらずの紫苑さんだ。そうな事を言っていると実家に到着する。
「ちょっと待っててもらっていいですか?」
先に僕だけ行く。久しぶりの我が家。本当に何も変わっていない。懐かしさを噛みしめながら僕はドアを開ける。
「ただい・」
「うおーーーーかあさーーーん俺もッイック~」
バタン。
住む人間も変わっていなかった。その事実を認識し僕は頭を抱える。
「やっぱりやめよう。生まれてくる子供の情操教育に悪い。今からでも紫苑さん頼んで天ヶ峰家にお世話になろう」
決心しながらそっと玄関の扉から遠ざかろうとすると扉が開く
「いや~案外すぐに慣れちゃいますよ」
そこには乃々香ちゃんの友達の愛ちゃんがいた。
「愛ちゃんなんで僕の家に?」
「何を言ってるんすか。乃々香が言ってたでしょ。うち今ここにルームシェアしてるんすよ」
「あーそんな話聞いたような聞いてないような」
「流石先輩っすね。どうでもいい事はすぐに忘れる鳥頭っぷりは健在のようで」
「じゃあ、今乃々香ちゃんと一緒の部屋で寝てるの?」
「先輩の部屋は今乃々香が使って乃々香に部屋をうちが使ってるって感じっす。まあ、それで乃々香は花丸先輩とよく揉めてますけど・・・まあ、仲良くやってますよ喧嘩するほど仲が良いっていいますから。うちあんな乃々香初めてみましたから」
「そうなんだ・・・・とりあえずごめんね。うちの親があんなんなのに乃々香ちゃんの為に」
「いや~家賃なし3食付きの物件なんて破格ですし。少しこれくらいはまあ目を瞑りますよ」
愛ちゃんも案外図太い所がある。
「乃々香ちゃん大丈夫?最近合わない間にうちにファッションメンヘラからガチのメンヘラになってない?」
「あはっはっはっは。乃々香は流石に先輩みたいにサイコな部分は無いっすよ。どこまで行ってもファッションですから」
「だよね~」
「「はっはっはっはっは」」
お互い笑いあう。
「盗聴器とか隠しカメラとかセットして無いよね?」
「・・・・・・・・・・・・」
僕の質問に愛ちゃんは目を反らす。妹も全然変わっていないようだ。
「いや・・・まあ・・・昨日乃々香が先輩の部屋で色々物音立ててたからどうなんでしょうね」
(後で大掃除しなくちゃ)
「あれ?じゃあ、愛ちゃんはどうするの。僕たち帰って来たから乃々香の部屋で寝るの?」
「いえ。自分家に帰りますね。着替えとか取りに帰るくらいですし。最近はうちの親も早い時間に帰ってきますから」
「そういえば乃々香ちゃんは?一緒じゃないの?」
「もうすぐ聖夜祭だから忙しんすよ。乃々香生徒会長ですし、うちは荷物を取りに戻ってだけっすから」
「おう、なんだ帰ってたのか」
すっきりした表情で半裸で父さんが玄関にやってくる。
「ちょっと。服着てよ」
「ああ?いちいち息子に対してそんな事する必要無いだろ」
「いや、乃々香ちゃんのお友達もいるからね」
「大丈夫。大丈夫。この子もお前の嫁さんと同じで俺がオナってても平然とスマホいじってんだぜ。大丈夫。大丈夫」
「それが当たり前だと思わないでね!?愛ちゃん。本当にごめんね」
「そうっすね~それじゃあ、お詫びと言ってはなんですがお嫁さんのサインください。メ〇カリで売りますんで」
「ねえ、人のお嫁さんのサインで小遣い稼ぎしないで欲しいんだけど」
「なんか揉めてるけどね。大丈夫?」
なかなか帰って来ないのを見て紫苑さんが様子を見に来た。見るからに今で来たようで。あれを聞かれていなくて良かった。
「ごめんなさい。少し揉めてましたが大丈夫です・・・あれ由奈は」
「それが・・・」
紫苑さんが車に視線を送る。
「 」
後部座席で由奈は爆睡していた。
「由奈ちゃん寝ちゃってて」
「仕方ないですよ。飛行機でも最後の方しか寝ていませんでしたから。最近は浅い睡眠ばかりでしたから」
妊娠後期で眠りが浅いと言っていた。起こすのも悪いので
「よっと」
僕は軽々と由奈をお姫様抱っこして移動する。そして僕の部屋のベッドに寝かしつける。僕の部屋は綺麗にされてベット隣にはこれまた綺麗に掃除されベビーベッドが置いてありその上にはベビーメリーも用意されていた。なんやかんや乃々香も優しい。ただ・・・・
「乃々香ちゃん・・・流石にこんなに分かりやすいところにカメラなんて仕掛けちゃダメだよ・・・」
ベッドをばっちりと映る所にセットされた隠しもせず堂々とカメラを見て僕はため息をついた。
「ヒロ君・・・」
ベッドに寝かしつけた由奈は寝言で僕の名前を呼んでいる。
「浩孝君はこれからどうするの」
そんな由奈を見た紫苑さんからそんな事を聞かれる。
「由奈には悪いけどお仕事の打ち合わせのために学園の方に行ってきます蓮菜ちゃん聖夜祭で踊るんですよね」
「そうだけど・・・いいの?帰国してすぐなのにもう少しゆっくりしたら。そりゃあ急ぎのお仕事だけど」
「大丈夫ですよ。蓮菜ちゃんにもみんなにも会いたいので。できれば由奈と一緒に行きたかったんですが。今は体を大切にしてもらいたい時期なので」
「分かったわ。じゃあ車だすわね」
「ありがとうございます。じゃあ行ってくるね由奈。チュ」
「あらあら浩孝君由奈ちゃんみたい」
「もうキスが日常茶飯事になってますからね」
事あるごとにキスをする。朝起きてから眠るまで・・・いや由奈は僕が寝ている時にもしているしもう一日50回くらいはキスをしてるだろう。
学校の校門に着く。紫苑さんは事務所に戻って他に仕事があるとの事でここからは僕一人でしなくちゃいけない。今までサポートがばかりで今回は僕一人での仕事だ。紫苑さんの期待に応えるためにも蓮菜ちゃんのためにも。何よりこれから由奈ちゃんのマネージャーとしてお仕事をしてくためにも
(まずは生徒会に居る良徳と乃々香ちゃん達に挨拶してから会場の下見をし後ライブの安全面の考慮もいれて今の風紀委員とイインチョとも話をしなくちゃね)
こっちに来る前にある程度オンラインで話はしているがやはり会ってみないと現場の人の意見は全部聞けない。これからの仕事の事を考えながらふと学園を見る。本当になつかしい。家もだがこの学園もだ。
「あの~ここで何をしてるんですか」
しみじみ眺めていると突如女の子が僕に質問してくる。
「あ、いえ。決して怪しいものでは無いのです。今日仕事でここに来まして」
説明をする。しかし、
「え~うそくさーい。証明するものもってますか~」
信じていない
考えてみると許可証って誰からもらうとか紫苑さんに聞いていなかった。
「フフフ」
僕が焦っているとその光景を見てくすくすと笑っている。それより冷静になってみると今の声は
「もう忘れちゃったんですか~セ・ン・パ・イ♪」
「もしかして蓮菜ちゃん?」
僕が聞くと結んでいた髪を溶く。すると見慣れた姿になった。
「そうでーす。グロリアスノウのトップ天ヶ峰蓮菜でーす」
「ごめん、ごめん。見違えるほどきれいになってたから」
「そうですよ。CMとかにもたくさん出てますから」
「うん。この前紫苑さんから蓮菜ちゃんが出たCM全部編集したのが送られてくて見てたから」
「ちょ・・・もうママったら何渡してるのよ」
「後はNG集もくれたよ。なんどもNGくらって涙目に・・・」
「それ以上はだめーーー」
あまりの恥ずかしさに声を荒げる蓮菜ちゃん。
「でもいい絵が取れたじゃないか」
「当然です。蓮菜は由奈のライバルなんですから」
「そうは言っても由奈は女優さんで蓮菜ちゃんはアイドルなんだし」
「そんなの関係ありません。由奈には負けたくないの。相手が女優でも」
こういって所も1年前と全然変わっていなかった。
「それはそうともう僕この学園退学してるからセンパイ呼びはそろそろやめない」
「え~センパイはセンパイなのに・・・じゃあ、マネジャーさんで。はいコレ」
そう言いながら蓮菜ちゃんから何かを渡される。
「これは?」
「学校に入るための入校証。ママがセンパイにって」
「成程。ありがとう」
紫苑さんの事だからこれを狙っていたのかもしれない。蓮菜ちゃんにすぐに会うように
「ところで由奈はどうしたんですか?」
「由奈ちゃんお眠で今僕の家で寝てる。最近寝不足がひどいから」
「ふ~ん」
「由奈に会えなくて寂しい?」
「別に」
どうでもいいように言っているが車内で紫苑さんから僕よりも由奈に会うのを楽しみにしていると聞いている。
「と、いけない。打ち合わせに来たんだった。良徳の所にいかないと」
「あー今行かない方がいいと思いますよ」
?