「ほい、んじゃいきまっせー」
蝉の音が外から聞こえてくる。窓からはぎらぎらと太陽が照りつける夏休み終盤の真昼。殺人的な外気温とは隔離された、エアコンの効く俺の部屋で、俺と大輔はテーブルを間に挟んで座っている。
それぞれ自分のパソコンで作業をしていたが、大輔のほうが先に終わったようだった。
「おう。やってくれ」
はいはーい、と呑気な調子で返事をすると、大輔は手に持ったUSBを自分の端末に挿し込んだ。それから少し待ち、俺は自分のキーボードを叩いた。
俺のディスプレイにしばしのローディング画面が表示される。そしてまたしばらく待つと、大輔の端末と同じ画面が映し出された。
「よし、入った」
そして適当にファイルをいくつか盗んだり消したりしてから、侵入の痕跡を消して接続を解除した。
「すげぇ。完璧だよ、大輔」
ぱたん、とノートパソコンを閉じて、大輔にオッケーサインをだした。すると大輔は、かちゃりとメガネのふちをつまみながらキメ顔を見せた。
「当たり前っしょ。僕を誰だと思ってんのよ」
「天才ハッカーだろ? いやほんとマジですごい」
素直に賞賛の言葉を口にする。だがべた褒めしすぎたのか、大輔は不思議そうに首を傾げた。
「なんか珍しいね。優一がそんな言ってくれるなんてさ。『ちょーし乗んな』とかいわれると思っとったんだけど」
「いわねぇよそんなこと。『ウイルス作れ』って突然頼んだのに、一日でここまで仕上げるとか普通にやべえだろ」
昨日の昼、電話で頼んだ時はだいぶ戸惑っていたが大輔は理由も聞かずに引き受けてくれた。そして、わずか一日で注文通りのものを作り上げた。
「まそこまで言ってくれんのはうれしいけどもー。でも実際バックドア作成のところは優一が作ったわけっしょ? 僕はそれをちょこっといじってウイルスにしただけだしそんなたいしたことなくね?」
「なに謙遜してんだよ。十分大したことあるっての」
俺がまた褒めると、それほどでもー、と顔をにやけさせた。普段は見た目も言動もオタクだが、こういうスキルを持ってるのは素直に尊敬する。
「あー……それで優一氏?」
ふいに大輔は声を潜めた。内緒話をするような仕草。それを見てすぐに察する。
「安心しろ。もう予約してある」
パソコンを開き、大輔のほうに画面を見せる。そこには通販サイトが映し出されている。
「おほー! さっすが仕事が早いですなー!」
大輔は嬉しさ全開といった様子で声を上げた。
この件を大輔に頼む際、報酬として提示したエロゲ。俺の画面に映っているのは、その注文確定画面だ。
ちなみに支払いも済んでいる。財布の中身がだいぶ寂しくなったが、必要な対価だろう。
「いやぁやっぱり持つべきものは友ですなぁ!」
うんうん、と一人で納得したように頷きながら大輔は口にした。
「そりゃこっちのセリフだ。すごく助かったよ、大輔。ありがとう」
「いやいやこれくらい友達として当然のことよ」
うはは、と浮ついた声で大輔は笑った。どうやら、お目当てのエロゲがタダで手に入ることで浮かれているみたいだった。
「そんじゃこれ、ありがたく使わせてもらうから」
「ん、おけー」
大輔のパソコンの傍らにおいてあったUSBを手に取り口にする。大輔は快く頷いたが、「でも」と口を開いた。
「それ何に使うつもりなん? この前もちょっと言ったけど下手すると捕まっちゃうぞよ」
「あー、そうだな……」
今まではあえて聞かないでくれていたこと。だがさすがに気になるのだろう。
話すことに躊躇はするが、ここまで付き合ってくれたのだから秘密にするのは筋が通らない。
「三枝のために使う」
そう答えた俺に、大輔はきょとん、とした顔を見せた。まあそりゃそうだろう。
「三枝さん? え、どゆこと?」
「悪いんだけど詳しくは話せない。ただ、決して悪いことに使うわけじゃないんだ」
三枝と彼女の兄の関係。それを三枝に強制させているのは、脅しに使われているハメ撮りだ。ならそれを潰せばいい。
だが、さすがにそこまでは大輔には言えない。ものすごくデリケートな問題だから。
「んー、そっか。ま、優一がそういうならええか」
「え」
驚くほどあっさりと引き下がった大輔に、俺のほうが固まってしまった。
「そういうなら、って……いいのか、大輔」
「別にー? 優一はガチ犯罪するような人間じゃないし、そもそもそんな度胸ないし」
そして、「それに」と大輔は続けた。
「優一は嘘つかないっしょ?」
当たり前のように、大輔は言った。なんの確証もないのに、そんなことを言ってくれた。
昔から、親に「嘘をついてはいけない」と教えられてきた。それ以来、そうあろうと心がけてきた。
正直、めんどくさいだけだと思っていたが、今はそれが報われたと思えた。
「はは、どうだろうな」
ちょっと照れくさくて、俺は苦笑交じりにそう誤魔化した。
大輔はそんな俺にいつもの調子で、呑気に言った。
「ま、よくわからんけどがんばってねー」
「ああ。ありがとう、大輔」
夕方ごろまで大輔とゲームやらをして過ごし、夕飯時になって大輔は帰っていった。ちょうどそのタイミングで俺の両親も帰宅し、家族で夕食を囲んだ。
そうして、一息つけたのは夜八時頃だった。俺は気分転換がてら、外に散歩に出ることにした。
夜とはいえ、まだそこまで遅い時間じゃない。住宅街の家々は、窓から室内の明かりが漏れていた。
「まだ起きてるよな」
ポケットからスマホを取り出す。
大輔が頑張ってくれたおかげで、手札は揃った。だが実行に移すにはまだ今少し足りない。
その最後のピースに電話をかけた。呼び出し音がスマホのスピーカーから流れてくる。それが三度、四度と続く。
なかなか出ない。忙しいのか、それとも意識して出ないのか。
「……はい、三枝です」
だが、あと少しで留守電に切り替わるところで、聞きなれた声が聞こえてきた。
「あ、内田だけど」
「内田くん……その、なにか用事?」
心なしか、その声は沈んでいるような気がした。
だがそれも仕方ないだろう。この前は互いに気まずいまま別れてしまったから。それきり連絡はとっていない。
「ああ、ちょっと。……あ、今近くにお兄さんいたりするか?」
兄がいる前で俺の電話にはそもそも出ないだろうが、念のため確認をする。
「ううん、平気。今は自分の部屋にいるから」
そうか、と安堵する。が、本題はここからだ。
「三枝。明日か明後日──いや、できるだけ早く、一回俺と会ってくれないか? 話したいことがあるんだ」
俺がそう言うと、え、と一言口にして三枝は押し黙ってしまった。
その返答を黙って待つ。無理強いはできない。
そうして、十秒ほどの後に再び三枝の声が聞こえてきた。
「……どうして。この前、もう関わらないほうがいいって言ったのに」
感情を押し殺したように平坦な声で、三枝は言った。
「そうだな。そのほうがお互いにとってもいいってのはわかる」
「だったら──」
三枝が言う前に、「でも」と遮った。
「それは、今のままだったらだろ。ずっと今のまま、三枝がお兄さんに脅されたままでいるならそうだ。でもそんなのもうイヤだろ」
つい熱が入って語気を強くしてしまう。が、それでもできるだけ優しく、諭すように口にした。
「でも、どうしようもないじゃない」
「いや」
諦めるような口調の三枝。だがめげずに言葉を続ける。
「やりようはある。でも、そのためには三枝。お前の協力が必要なんだ」
電話越しであるが、三枝に正面から真摯に語りかけるように言葉にする。
そうしてまた沈黙。考え込んでいるのか、無言の時間がさっきより長い。
「……わかった」
俺の気持ちが僅かではあれ通じてくれたのか、ぽつりと三枝は呟いた。
「まずは話だけ聞かせて。それから考えるから」
「ああ。ありがとう、三枝」
まだ三枝の声に暗いものは残っている。だが、俺の言葉で少しは前向きに考えてくれたのがうれしかった。
それからすぐに話は決まり、ひとまず明日の午前中に俺の家で話し合うことになった。
「あ……その、おはよ」
翌日、約束の時間ぴったりに三枝は俺の家にやってきた。呼び鈴を聞いて玄関のドアを開けて、三枝と相対する。
俺の顔を見た三枝は、あはは、と暗い気持ちを隠すように笑った。そんな彼女にずき、と胸が痛む。
本当、三枝の言うとおりだ。一緒にいたら辛いだけ。でもそんなのはすぐにでも終わりにしてやるのだ。
「ああ、おはよう。……まあ、とりあえず中入ってくれ」
頷いた三枝を家の中に招きいれる。今日はあの時みた私服ではなく、見慣れた制服姿だった。
そんな彼女を伴って二階の自室に案内する。そうして、不器用なりに片付けた部屋の真ん中、テーブルに向かい合って座る。
相変わらず外はうんざりするほどの晴天。陽の光がまぶしいくらいに窓から差し込んでいる。だがこの部屋の空気はそれとは正反対に重苦しい。
「それでさ、三枝。さっそく本題なんだけど」
そんな空気に負けじと、話を切り出した。正座をしてうつむいていた三枝は、俺の言葉に顔を上げた。
「三枝はさ、お兄さんに、その……やってるところの録画撮られてるから脅されてるんだよな?」
確認のために聞いた俺に、三枝はうん、とだけ頷いた。やはりというか、この話題を出した瞬間、三枝の顔にまた一つ影が差した。
「それを全部消しちまおうと思うんだ。ついでに証拠としていくつか盗んでやる」
「え……」
三枝は、俺が言ったことにしばし唖然とした顔を見せた。そりゃ突拍子もなくこんなこと言ってるんだから当たり前か。
「そんなことできるの?」
「できる。これを使うんだ」
ポケットからUSBメモリを取り出し、三枝に見せる。
「こいつには大輔が作ってくれたウイルスが入ってる。これでお兄さんのパソコンとスマホに侵入する」
「えっ、う、ウイルス?」
さすがにこいつは予想外だったのか、三枝は驚いた顔をした。
だが三枝は聡明だから、すぐにその意味を理解したようだった。
「えっと……まあ理屈はわかったけど」
そう前置きをして、三枝は言葉を続けた。
「それって犯罪じゃないの? もしバレちゃったら君が……」
さすがに冷静だ。大輔と同じことを言われた。
「そこは上手くやるさ。それにさ、こう言うのはアレだけど、三枝のお兄さんがお前にやってることだって犯罪と同じだろ」
ぎゅ、と握るこぶしに力が入ってしまう。
三枝の意思を無視するだけじゃなく、脅してまで体を要求する三枝の兄。十分すぎるほど酷いことをしているのだから、こっちだって手段なんか選べない。
「それは、そうだけど……」
それでも良心が痛むのか、三枝は踏ん切りがつかないようだった。
「ねぇ、君がそこまでする必要なんてないよ。私は我慢すれば耐えられるんだしさ、君は私のことなんか忘れて──」
「三枝」
作り笑いを浮かべる三枝。その言葉は痛ましくて聞いていられなかった。
「そんなことできるもんか。もう俺は知っちまったんだから」
三枝と兄の関係を知ったあの日のことは、忘れたくても忘れられない。これから三枝と関わらないようにして、いつもような学校生活に戻ったとしても、ずっと引っ掛かり続けるだろう。
「それにさ、俺は三枝とちゃんと付き合いたい。お兄さんから隠れることなんかしないで、普通の恋人みたいにデートとかしたいんだ」
いつか三枝が言ったこと。それは俺も同じ気持ちだった。
所詮俺も男だ。三枝を助けたいとかそれ以前に、彼女と一緒になりたいという気持ちが強い。
「……ずるいなぁ」
三枝は、つい先ほどまでとは変わり、ふわりと表情を和らげた。
「そんなこと言われたら断れないよ」
どこか困ったように、だけど嫌悪感は感じない。それは、近頃はほとんど見られなかった、三枝本来の表情に思えた。
「じゃあ」
「うん。内田くんのお話に乗らせてもらいます」
そう口にする三枝は、どこか吹っ切れたような顔をしていた。
それを見たら、もうそれだけで満足してしまいそうになる。が、それはまだ我慢。まだ何も成し遂げちゃいないんだから。
「それでさ、三枝にはひとつ協力してもらわないとなんだ」
「ん、わかった。なに?」
真面目な顔で問うてくる三枝に、手に持っていたUSBを差し出す。
「これをお兄さんのスマホとパソコンに挿し込んでほしい。それでウイルスに感染する」
こればかりは俺じゃできないことだ。危ないが、三枝に頼むしかない。
「わかった。いいよ」
だが、三枝は即答で頷いてくれた。
「え、いいのか?」
「いいもなにも、私がやらないとでしょ?」
当然のように三枝は口にする。
三枝のことだから、危険があることは当然理解しているだろう。それでも簡単にそう答えてくれる彼女に、俺は驚きを隠せなかった。
「君にばっかり任せるのも申し訳ないしさ、喜んでやらせてもらうね」
そう言って、三枝は微笑んだ。俺が差し出したUSBを両手で大事そうに受け取りながら。
そうして、驚くほどすんなり話し合いは終わった。問題は決行日だが、三枝の希望で今日すぐにということになった。
「もうすぐかな」
かち、かち、と規則正しくリズムを刻む時計を見て呟く。時刻は午後十時を過ぎたところだ。
俺はいつもの自分の部屋──ではなく、ラブホテルの一室にいた。理由はいくつかある。
三枝が兄のパソコンとスマホに接触できるのは夜しかない。そして、証拠になる動画を盗むにしても、三枝自身に確認してもらう必要がある。しかし、両親のいる自宅に女の子を連れ込んで、ハメ撮りを確認するとか普通に無理だ。
自宅以外で落ち着ける場所というとここくらいしかないのだ。幸い、ここでもネットはつながる。作業するのに支障はない。
実行するのは三枝の兄が風呂に入っている時という手筈だ。そろそろか、と思った時だった。
「ん」
ぶぶぶ、とテーブルに置いてあったスマホが振動する。画面を見ると三枝からだった。
「はい、内田です」
電話に出ると同時にノートパソコンを開く。準備はすでに終わっている。あとはエンターキー一つで実行可能だ。
「三枝です。今お兄ちゃんのパソコンの前にいます」
「了解。パソコンの電源は入ってるか?」
「うん、入ってる」
三枝の声は、電話越しでもわかるくらいに緊張していた。それにつられて俺も心臓がどくどくと早鐘を打つ。
「オーケー。じゃあUSB繋げてくれ」
「うん。……挿したよ」
がちゃ、と無機質な機械音が聞こえた。それと一緒にこちらもエンターキーを押した。
ウイルスの感染には少しではあるが時間が必要だ。大した時間じゃないのに、それがやけに長く感じる。
「来た」
ローディングが終わり、ディスプレイの表示が切り替わる。侵入成功だ。
「三枝、もういいぞ。USB抜いてそこ離れてくれ」
「わかった。次はスマホだよね」
一つ仕事が終わったが、まだ次がある。三枝はあくまで冷静にそう俺に確認してきた。
「ああ。悪いけど頼む」
「悪くなんかないよ。君は自分の仕事に集中して?」
こんなときでも三枝は気遣いを忘れない。それが少し俺の緊張をほぐしてくれた。
電話口からはすたすたと三枝が歩く音が聞こえる。やがてそれが止まると、再び三枝の声が聞こえてきた。
「内田くん。これから脱衣場入るから」
ああ、と相槌を打つ。それと同時にがらら、と扉を開ける音が聞こえた。
「お兄ちゃん? タオルここ置いとくね」
ざああ、というシャワーの音に混じって、「ああ」とぶっきらぼうな返事が聞こえてきた。今のやり取りを聞いた感じ、いつものことなんだろうか。タオルくらい自分で用意すればいいのに。
そんなどうでもいいことを考えていると、電話口から三枝の声が聞こえてきた。
「内田くん、スマホ取ってきたよ。もう挿していい?」
「ああ、やってくれ」
少しだけ安堵している三枝の声。後ろからシャワーの音も聞こえない。脱衣場からはもう離れているようだ。
俺も仕事を再開する。ウィンドウを切り替えて、スマホ側に侵入する。そして、幾ばくかの時間ローディングの表示が続いた後、画面が切り替わった。こちらも成功だ。
「よし。いいぞ。それじゃスマホ戻しておいてくれ」
「うん。わかっ──」
そこで不自然に三枝の言葉が途切れた。まさか見つかったのでは、と不安になったが、すぐにまた彼女の声が電話口から流れてきた。
「お兄ちゃんお風呂上がったみたい」
「え、本当か?」
小声で話す三枝の声には強い警戒が混じっている。
「おい、美咲! 俺のスマホ知らねぇか?」
遠くから兄の声が聞こえてくる。一気に緊張が走る。
「こっちに置いてあるよー!」
脱衣場にいるらしき兄に向かって三枝が答える。怪しさのない、自然な声だ。
「こっち持ってこい!」
命令するような口調の言葉が聞こえてくる。そして、今度は俺に向けた三枝の言葉が耳に入ってきた。
「ごめん、そういうわけだから切るね」
手短にそれだけ言い残すと、すぐに電話が切られた。
ざわ、と不安感が襲う。三枝のことだから上手くやると思うが、もし見つかったら──
「いや」
ぱん、と自分の頬を叩く。今それを考えても仕方がない。俺はやるべきことをやるだけだ。
まずはスマホのほうを調べる。すると、驚くほどすぐに見つかった。
「これか」
サッカーの記録らしき動画に交じって、それはあった。試しに一つ俺のパソコンに保存し、再生する。
が、すぐに止めた。再生してすぐ、薄暗い部屋で後ろから犯されている三枝の後ろ姿が映った。これ以上見なくてもわかる。
とりあえず兄のスマホからは削除し、ほかの動画を探る。しかし、大した数が見つからない。三枝が言っていた、学生証付きのものという動画も見当たらなかった。
「スマホにはあんま残してないのか」
見つけた動画をいくつか盗んで、あとはすべて完全消去した。念のためもう少し探ったが、それ以上は見つからなかった。
「こっちが本命かな」
画面を切り替えて、今度はパソコン側だ。かたかたとキーボードを叩いて捜索を始める。
しかしなかなか見つからない。彼の粗暴な性格のせいか、いろいろなファイルがあちこちにとっ散らかっている。
非常に探しにくいが、諦めるわけにはいかない。それらしきフォルダを片っ端から調べていく。スマホになかったのだから、必ずこっちにはあるはずだ。
そうして二十分ほど探し、本当にあるのか不安になってきたころだった。
「あ」
かなり深い階層。そこに「テスト対策」というフォルダがあった。
これまで探してきて、勉強関係のフォルダなんて一つもなかった。それなのに、アクセスしにくい場所に一つだけこんなフォルダがあるなんて怪しすぎる。
中を開いてみると、そこには大量の動画ファイルが保存されていた。
「うわ……こんなに」
ざっと見ただけでも三十本はある。正直、こんなにあるとは思っていなかった。もはや怒りを通り越して呆れてしまう。
そして、また一つ一つ確認しようと思った時だった。動画ファイルの名前は全て「20210108」のように日付の名前で保存されていた。
その中の一つ。「20210728」というファイルが目についた。
七月二十八日。それは、三枝が輪姦されたという日だった。恐る恐るその動画を再生してみる。
「これ、は」
兄に犯されている三枝の後ろ姿。その周りには、何人もの男の影があった。
そして、三枝の正面に立つ男。そいつは三枝に自らのものを咥えさせていた。
事実として知ってはいた。三枝本人から告白されたのだから。
だが、こうして映像でその時の光景を前にすると、抑えられない怒りがこみあげてくる。そのままディスプレイをぶち破ってやろうかという気にもなる。
その時だった。
「ごめん、遅くなっちゃった!」
がちゃ、と俺の背後からドアが開く音と一緒に、聞きなれた声が聞こえてきた。振り向くと、そこには三枝美咲が立っていた。
今日の昼間に会った時の制服姿ではなく、半袖のブラウスとスカートを身にまとっていた。走ってきたのか、はぁはぁと息を切らしている。
「良かった。三枝、何事もなかったんだな」
さらりと伸びた黒髪と整った美しい顔立ち。疲れているとはいっても、その表情はどこか晴れやかだった。
その姿に心から安堵した。
「あー……いや、何事もなかったわけじゃ、ないんだけどさ」
気まずそうに目をそらしながら三枝は言う。もしかしてばれてしまったのだろうか。
「スマホ渡しに行ったらさ、そのまま『やらせろ』って言われて……」
ぎゅ、と自らの片腕を握りながら、三枝は口にする。後ろ暗いその表情に胸が痛む。
「でもね、君が頑張ってくれてるって思ったらなんか勇気が出てきて──お兄ちゃんのこと、ビンタして逃げてきちゃった」
えへへ、と照れくさそうに笑って三枝は言った。それは、いたずらをした少女のように、純粋な表情に思えた。
「そっか。……はは、そっか。そりゃ最高だな!」
俺も一緒に嬉しくなって、勝手に笑ってしまう。
今まで三枝はただされるがままだった。それが、今日初めて兄に歯向かうことができたのだ。
こんなに喜ばしいことはない。そして、少しでも俺が力になれたというのなら、それは幸せなことだ。
「うん。なんか、スッとした。──君のおかげだよ。ありがとう、内田くん」
そうして、ぺこりと三枝は頭を下げた。
「いっ、いやそんな……顔あげてくれよ三枝。それにまだ終わってないんだ」
あたふたして情けない反応をしてしまう。
そうだ。まだ動画を消し切ってないし、証拠になるやつも盗んでない。
「あ……それ」
顔をあげた三枝は、俺のパソコンに映っているものを見て固まった。
しまった。さっきの動画を流しっぱなしにしていた。
「それ、証拠になるからとっとこうか」
だが、三枝はあくまで冷静な声で言うと、俺の隣に歩いてきた。そして、近くにあった椅子を持ってきて隣に座る。
「あ、ああ……そうだな。保存しとくよ」
言われるがまま俺の端末に転送する。
「あ、あと──これと、これ。私の学生証が映ってるやつと、お兄ちゃんの顔が映ってるやつ」
三枝はディスプレイを指さすと、いくつかの動画ファイルを指定した。中身も確認していないのに。頼りは日付だけ。
「三枝、お前……全部日付まで覚えてるのか?」
「うん。忘れたくても忘れられないから。……私、記憶力には自信があるんだ」
視線だけこちらへ向けて三枝は言った。どこか悲しげなその瞳。
兄や、ほかの汚らわしい男たちに触れられた記憶は、そう簡単には消えてくれないのだろう。
それはきっと、俺がどうにかできる問題ではない。俺は、せめて彼女がこれ以上汚されないようにすることしかできない。
「──三枝」
体を寄せてその肩を抱く。あとは、こうしてそばにいることだけ。それがどれくらいの効果があるのかはわからない。だけど、三枝は俺に体をそっと預けてくれた。
「はい、これに全部入ってるから」
証拠になる動画をすべて盗み、兄のパソコンにある動画データはすべて消し飛ばした。ついでにOSごと破壊してやろうかとも思ったが、痕跡が残るのはまずいからやめた。
「ん、ありがとう」
三枝に渡したのは、証拠が入ったUSBメモリだ。
「俺にできるのはここまでだ。これをどうするかは三枝が決めてくれ」
「うん。大事に使わせてもらうね」
USBを受け取ると、三枝は柔らかく顔を綻ばせた。しかし、そこにはまだ僅かに影がある。
まだ全部終わったわけじゃないから。証拠をどう使うにせよ、三枝にもそれなりの苦労はかかってしまうだろう。
それでも。
「これで──やっと自由なんだ、私」
心の底から安心したような声で、三枝は言った。
それを見て、俺も同じように心底よかったと思う。きっと、もう取り繕うように笑うこともなくなるのだろう。
「内田くん、本当にありがとう」
三枝はそう口にすると、俺にぎゅ、と抱きついてきた。
ぽす、と三枝の小さな顔が胸の中におさまる。俺も彼女の背中に腕を回し、そっと抱き寄せた。
「今すごく幸せ──こんな幸せなの、もう一生出会えないかも」
くす、と三枝は笑う。俺の胸に顔を埋めているせいで見えないが、きっと純粋な笑顔を浮かべていることだろう。
「いや、三枝。それは違う」
俺の言葉に、三枝はその顔を上げた。宝石のようなその瞳には、僅かに雫が滲んでいた。
「今までがおかしかっただけで、自由でいられるなんて当たり前のことだ。幸せってのはそんなもんじゃないだろ。三枝はもっと幸せになれるはずだ」
今、三枝はようやく普通に戻れたのだ。だったらここが幸せの絶頂なわけがない。
「──そっか。そうだよね」
三枝はそう言って、ふわりと微笑んだ。陰りも誤魔化しもない、三枝の純粋な笑顔。
それが見れたのは本当に幸せなことだ。三枝に偉そうなことを言ったが、俺は今が幸せの絶頂かもしれない。
「じゃあ、さ」
すい、と三枝は俺に顔を近づけてきた。
鼻孔をくすぐる女の子の匂いと、華奢で柔らかい三枝の体の感触。意識していなかったが、俺は今三枝と抱き合っているのだ。
「……三枝?」
三枝の顔が近い。あと少しどちらかが顔を寄せれば口づけしてしまえそうなほど。
息がかかるほどの距離で、三枝は微笑んで口にした。
「──君がもっと幸せにして?」
そうして、ごく自然な動きで俺の唇を塞がれる。
ちゅ、とわずかな水音と一緒に、柔らかな感触に包まれる。少し驚いたが、それ以上に嬉しかった。
その甘い感触をさらに堪能しようと、背中に回した腕で強く抱き寄せた。
「んっ……っ、ぅん──っ」
氷菓子のように溶けてしまいそうな三枝の唇。それを、互いの感触を混ぜ合わせるように絡める。
俺は彼女の下唇を、三枝は俺の上唇を。ちゅく、と音を立てて、体の中で一番柔らかいトコロを愛し合う。
「んっ……すき──ンむ、ぅ……っ、ん、ぁ……っ」
そして、そんな甘くて幸せなキスをしているのだから、それがもっと深くなるのは至極当然のことだった。
三枝は俺の首に腕を回し、さらに強く俺に唇を押し付けてきた。それと一緒に、彼女の蜜がたっぷりと塗られた舌を差し込んでくる。
「ん……三枝──っ、んぅ、ん……っ」
「うちだくん……んぅ、ンっ、む……は、ぁ……ちゅ……っ」
唇を合わせるだけじゃ飽き足りず、その奥の濡れた粘膜まで絡め合う。刺激的なその快感は、すぐに情欲を昂らせる。
そのディープキスはどんどん激しくなっていき、それでもまだ足りないと舌を動かす。互いの口内はどちらのものとも知らない唾液でどろどろだ。
そうやって唇と唇、舌と舌で貪りあい、キスだけじゃ我慢できなくなったころ。
「ん、は……っ、あ、ふぁ……」
ゆっくりと唇を離す。唾液で口の周りが汚れているが、そんなことはどうでもいい。
上気した三枝の顔。はぁ、と甘い吐息がとめどなくこぼれ、彼女も完全にスイッチが入っている。
「三枝……ベッド行こう」
三枝は俺の言葉に、うん、と一言だけ頷いた。
「んっ……ぁ、ん……っ、はぁ、ア……っ」
二人で寝るには十分すぎる大きさのベッド。ふかふかのマットレスが、俺と三枝の重みで沈み込む。
俺はベッドに座り、同じく座っている三枝のことを後ろから抱きしめていた。もちろんただ抱いているわけじゃない。
彼女の正面に回した両手で、さすさすとその豊満な乳房を撫でていた。下着はもちろん、その白いブラウスもまだ脱がしていない。
それなのに、三枝はびくびくと小刻みに体を震わせていた。
「あ……っ、ぁん、ンっ、内田、くん……もっと、さわって──んっ、あっ……切ない、よ……」
潤んだ瞳をこちらに向けて、三枝はそう懇願してきた。
意地悪はしたりせず、いいよ、と耳元で囁く。それでまた三枝の体が震えた。
「あ……」
ブラウスのボタンに手をかけ、上からひとつずつ外していく。それが下に下りていくほど、はぁ、と彼女の呼吸が少しずつ荒くなっていく。
それにつられるように俺の心臓の鼓動もどくどくと速まる。俺に体を預けている彼女にはそれが伝わっているだろう。
「触るぞ、三枝」
「うん──いっぱい触って……」
ぱさ、とブラウスを両側にはだけさせる。そうして、形の良いその乳房を下からそっと包んだ。
「ぁンっ……」
興奮で敏感になっているのだろう。ブラジャーに守られているのに、びくん、とその体が跳ねた。
今度はむにむにと優しく揉みほぐしてやる。すると、小刻みに震えながら甘い声を漏らし始める。
「ぁ……あっ、んぁ……ん、きもちい……っ、ふぁ、アん──あぅ、んっ……すき……もっと、あっ──もっとシて……」
とろけた顔のまま、甘えた声をあげる三枝。そんな彼女がたまらなく可愛らしい。
さら、としなやかな黒髪を揺らして、胸への愛撫に体を震わせている。刺激をほんの少し強くするだけで、ベッドが軋むほど跳ねる体。
たわわなその乳肉は、ブラジャー越しでも柔らかさを十二分に伝えてくる。いっぱいに広げた掌で揉んでみると、ぐにゅんとした確かな感触が返ってくる。
「んっ、ぁ……アっ……は、ぁん──おっぱい、あっ、あ、ぅ……っ、おっぱい、きもちいい……」
力が入らないのか、三枝はくたりと俺に寄りかかってくる。その体重が心地いい。
彼女のブラウスを肩まではだけさせて、するすると脱がせていく。露になる白い背中と、そこに差すブラジャーの桜色。
その留め具をぷち、と外す。肩紐も一緒に外し、その乳房を束縛から解放した。
もう一度三枝の正面に両手を回し、ずる、とブラを下へずらした。
「あ……」
期待するような声が三枝の口から漏れる。
それに応えるように、その双丘を鷲掴みにした。
「ふあっ……!」
さっきよりも甘く、熱い声をあげる三枝。
そのままぐにゅぐにゅと遠慮なく揉みしだくと、三枝は面白いくらい乱れた。
「あっ、んぁ、アっ……! んっ、ぁん、うちだくん……っ、あっ、おっぱい揉まれるの、すき……っ! あ、ぅあ、んン……っ、は、ぁんっ……!」
性感帯を責めているわけでもないのに、三枝は体をくねらせながら感じてくれる。それがぞくぞくとした興奮を運んでくる。
ブラの上からでも十分凶悪な感触だったが、直接はそれ以上だ。弾力と柔らかさに加えて、すべすべとした肌触りまである。
それを手のひら全体で思うままに味わう。なんて贅沢なひと時だろうか。
「んっ、あン……っ、ふぁ、あっ……! もっと、シて……? んアっ、ぅ、ん……っ、君の手で、めちゃくちゃにして──?」
そう言って俺を見る目は、とろん、と物欲しそうに惚けていた。
三枝のそのおねだりに頷いて、人差し指を乳肉の頂点へ這わせた。女の子の性感帯のソレは、ぴん、と勃起していた。
それをかり、と軽くひっかいてみる。
「んアっ!」
びくんっ、と電流が走ったように痙攣する三枝の体。よほど敏感になっているのだろう。
そのままかりかりと爪の先で何度も引っかく。すると、甘い声を漏らしながらいやらしくその体を震わせる。
「んっ、あぅ、アっ──! は、アん……っ、ん、ぁう、はぁ……っ、あ、ちくび、あっ……だめ、あっ、かんじすぎ、ちゃう……!」
三枝は胸から与えられる快楽に、気持ちよさそうな声を何度も漏らしている。その声は部屋全体に響き、ラブホテルの一室をよりいやらしい空間に変えていく。
その空気に当てられれて、もっと彼女を狂わせてしまいたくなる。
「ぁ、あっ、ア……っ! んぁ、あ──え……?」
一度乳首から指を離す。その瞬間、三枝は名残惜しそうな目で俺を見た。
だがそれに構わず、乳首の周りをくるくると優しくなぞってやる。
「あ……っ、あん、ぁう──うちだくん……っ、だめ、焦らさないで……っ、ん、あぅ、アん……っ」
懇願するような目で三枝に見つめられる。その表情すら愛おしい。
「どうして。気持ちよさそうにしてるのに。これじゃダメか?」
「ん、ぁ……っ、だって、あっ、あ……もう、わたし……あっ、足りなく、て──んァっ!!」
こり、と人差し指と親指で乳首をつまむ。その瞬間、三枝はびくん、と体をのけぞらせた。
焦らしたからまた一つ感度が上がってしまっているのだろう。だけど手加減しない。
きゅ、と痛くないくらいにつまみ、固い乳首をほぐすようにこりこりと愛撫する。
「あっ、あ、あっ……っ、だめ、アっ……! んぁ、あ、ぅア……っ、あっ、ちくび、んあ──っ、おかしく、なる……っ!」
もう恥じらう余裕すらないようで、三枝はずっと体を痙攣させっぱなしだ。表情は快楽にゆるみ、くたりと弛緩した体を俺に預けている。
ふと後ろから彼女の体を覗き込む。ぴん、と勃った乳首も煽情的だが、その向こう。
三枝は両足をもじもじとくねらせていた。それが、スカートの下の陰部を慰める行為であることは容易に理解できた。
「三枝──」
「ひぁっ!」
はむ、とその耳にキスを軽く口に含む。彼女の口から漏れた声は快楽より驚きが大きい。だが、そのままぺろぺろと優しく舐めてやると、すぐに快感に染まった。
それと一緒に、乳首を愛撫していた手の片方を離した。それを彼女の下半身にもっていき、スカートの下へ潜り込ませた。
「あんっ……!」
そうして、ぴと、と指の腹で股布に触れてみる。そこは、湿っているといった生易しいものではなく、ぐしょぐしょに濡れていた。
だから、余計なことはせずに下着の下へ手を侵入させた。淡く茂る陰毛をかきわけ、その源泉へと指先を触れさせた。
「あっ──! ぁう、ア……っ、うちだくん……おまんこ、指入れて……っ、ん、ンっ、もう、我慢できないから……」
もうたまらないといった表情で三枝が懇願してくる。耳を口と舌で愛撫したまま、いいよ、と返す。
濡れた割れ目に指を突き入れると、いともたやすく俺を受け入れた。浅く挿入しただけでわかる。中までもうどろどろだ。
「あ、ア……っ、そのまま、シて──っ、内田くん……っ」
切なさに染まり切った声。そんなものを聞かされて、止まれるはずがなかった。
じゅぷん、と指の根元まで突き入れて、激しく抜き差しを始めた。ひくひくと疼く膣肉は、俺の指をきゅん、と締め付けてくる。
「ん、ぁんっ、あっ……! はぁ、アっ……すごっ、ア、あっ! おまんこ、いい……っ、あん、んぁ……ふぁっ、あ……!!」
抜き差しするたびぐちゅぐちゅと卑猥な音が響く、三枝の蜜壺。もう十分濡れているのに、奥からとめどなく愛液があふれてくる。
ナカの柔肉は俺の指の形に変動して、蛇のように絡みついてくる。陰茎を挿入したら絶対気持ちがいいに違いない。
それを想像して、ズボンを突き破りそうなほど勃起している俺のものを三枝の尻にこすりつけてしまう。
「あんっ、あっ、はっ……んアっ、あっ! すきっ、あ、あぅ──っ、アっ、うちだくん……っ、もっとシてっ──おまんこいじめて……っ、あっ、ふぁ、ァん──!!」
三枝は淫らな声をあげながら、全身を絶え間なく痙攣させている。両脚にいたっては、壊れたようにがくがくと震えている。
もう絶頂が近いのだろう。そんな彼女にさらに責めを強くする。
今までは一本だけだったが、さらにもう一本指を挿入する。そのまま性交を真似るように抽送を繰り返す。
「あっ、ア、ふぁ……っ! だめっ、あっ、ぉ、んお……っ、イっちゃう、イっちゃうから──あっ、んアっ……オっ、あっ、うちだくんっ──!!」
さらに熱くなる三枝の喘ぎ声。痙攣も激しくなり、もうすぐ果ててしまうことが手に取るようにわかった。
俺の指を包んでいる媚肉はにゅるん、と欲しがるように絡みついてきて離さない。それに抗うように、愛液が泡立つほどじゅぷじゅぷと抜き差しをする。
そして、もう片方の手で包んでいる乳房も強く揉みしだく。手のひら全体で乳肉を鷲掴みにしながら、人差し指と親指で乳首をくりくりと愛撫する。
「あっ、あ、イクっ! おまんこイっちゃうっ、オっ、んぉ、あッ……っ、うちだくん──っ、イかせて……っ、あっ、ン、んぁ、アぅ……っ、あっ、イクイクっ、イっくぅ、ぅうう……っ!!」
びくんっ、と弓なりに体を反らせて、三枝は絶頂した。
はしたない声を部屋中に響かせながら、がくがくと痙攣する三枝の体。絶頂の快感が全身を犯しているようだった。
「あっ、ア、ぁん……っ、あ、イってる──おっ、んあ、あぅ……っ、あ、イクっ、またイっちゃう……っ」
くい、と指を軽く折り曲げてやると、三枝はまたがくん、と跳ねた。体の震えと一緒に、陶酔するような嬌声をこぼしながら。
よほど深くイったのか、その体の痙攣はなかなかおさまらない。ぴく、ぴく、と余韻にしびれるように、俺の腕の中で三枝がかわいく反応する。
「は、ぁ──は……ん、すご……何回もイっちゃった……」
ようやく波が落ち着いたのか、俺に顔を向けてそう言った。恥ずかしそうに頬を朱に染めたその顔はとても魅力的だった。
「ねぇ、次は君も一緒に気持ち良くなろ?」
くい、と腰を動かして、三枝はどこかいたずらっぽく言った。押し付けていた陰茎をこすられて、思わず情けない声を出してしまった。
「う……ああ、そうだな。正直、早く三枝とつながりたくておかしくなりそうだ」
そう口にした俺に、三枝は嬉しそうにはにかんだ。
そしてぐっと力を入れて腰をあげると、震える足でこちらに体を反転させた。そのままスカートの中に手を入れると、自らの下着をするすると脱いでいく。
それを片足に引っかけると、君も、という仕草をして見せた。促されるがまま服を脱ぐ。上に着ていたTシャツも、下に履いていたズボンと下着も、全部。
そして脱いだものを軽くたたんで視線を戻すと、三枝も同じように服をすべて脱いでいた。
「じゃあ──しよっか、えっち……」
くす、と妖麗な笑みを浮かべて、三枝は口にした。そして、座っている俺の前で膝立ちになる。先ほど俺が弄っていた三枝の秘部は、ひくひくと物欲しそうに口を開けていた。
そのまま三枝は俺の肉棒を握ると、くい、と天に向けさせた。その先には、だらだらと涎を垂らす三枝の蜜壺。
三枝はゆっくりと腰を落として、互いの生殖器を触れさせた。
「あんっ……」
ぴり、と軽くしびれるような快感が走る。だが当然それだけでは止まらず、くぷぷ、と亀頭から少しずつ飲み込まれていく。
三枝に食べられたソレは、温かい柔肉に容赦なく愛撫される。外から見てもあんなにひくついていたのだからそれも当然か。
「あ、ぁう……っ、すごっ……おちんぽ、おっきい……っ、あ、アっ……すご、い……っ」
とろとろで柔らかい三枝の膣内。あふれるほど濡れたその蜜穴は、ただこうして挿入しているだけで気持ちがいい。
ずぶずぶと腰を落としていく三枝は、気持ちよさげな声を漏らしている。その表情と声には少しの苦痛もなく、恍惚とした淫らな姿を俺に見せてくれる。
「んっ……あ、んア……っ、く、ぅ……あは──入った、よ……」
そして、完全に三枝の腰が落ちきり、俺と三枝はひとつになった。こつん、と子宮口を押す感触。両脚にかかる三枝の重みすら心地いい。
「ああ……三枝、もうめちゃくちゃ気持ちいい」
「んっ……そう、だね。私もだよ。ふふ……動いたらすぐイっちゃいそ」
嬉しそうにはにかむ三枝の顔は、純粋な女の子そのものだった。だが、上気した頬や甘い吐息が淫らな彩りを加える。
そんな彼女がとても愛おしくて、ぎゅ、と抱きしめた。三枝は一瞬驚いたようだが、すぐに力が抜けた。
とっくにわかっていることだが、三枝の体はどこもかしこも柔らかい。男を堕落させるためだけにできてるんじゃないかと思うほど。
「はぁ──君のカラダ、あったかいね。すごく安心する」
耳元で三枝が優しく囁く。そこに混じる吐息の感触がくすぐったくて心地いい。
「そっか、それはなにより。……でも三枝もすごく熱い。興奮してくれてるんだな」
「うん、だって君と抱き合って繋がってるんだもん。興奮しないわけないよ」
抱擁を緩めて、互いに顔を向き合う。紅くなった頬と、わずかに浮かぶ汗の雫。柔らかく綻ばせた表情には、一点の曇りもない。
「それじゃあ、腰動かすね。いっぱい気持ち良くなろうね──っん、ア……っ」
俺の首に腕を回したまま浅く腰を上げると、三枝は一気にずぷん、と腰を落とした。ぱちゅん、という淫らな音が、俺たちの秘め事の始まりの合図だった。
そのまま三枝はゆっくりとした動きで抜き差しを繰り返す。湿潤した膣内は、ぬちゅん、と柔らかく肉棒を受け入れてくれる。
でも締め付けはきつく、白濁を搾り取ろうという意思すら感じられる。そのまま三枝の腰の動きに合わせてごしごしと扱かれる。
「んっ、ア、あぅ……っ、ん、うちだくん……っ、あ、ぅアっ──ん、きもち、いい……?」
「ああ……めちゃくちゃいい。……っく、ぅ、三枝、濡れすぎ……っ」
さっき手で愛撫していたせいもあるだろうが、それでも愛液が多い。根元から先端まですべて三枝の蜜が塗りたくられて、そんな状態で柔肉に包まれているのだから気持ちいいに決まっている。
「だって──あっ、ぁん、ア……っ、うれし、すぎるから、ぁ……っ、勝手に濡れちゃう、の……っあ、ぅ、はぁっ……んアっ、あっ……!」
もうたまらないといった顔で答える三枝。その言葉と、そこに混じる抑えきれない喘ぎ声が欲望を一気に加速させる。
俺は背中に回していた手を下に滑らせ、果実のように形のいい尻を鷲掴みにした。ぴく、と三枝の体が震えたが、それだけじゃ終わらない。
それをつかんだまま軽く持ち上げ、強引に俺の腰に振り下ろさせた。
「んおっ──!」
どちゅん、と子宮に亀頭が抉り込むのと一緒に、それに押し上げられるように三枝の口から獣のような声が漏れる。
だがそれに構わず、両手でがっしりと掴んだ尻肉をぱんぱんと叩きつける。
「オっ、ぁ、あっ、んお……っ! だめ、あっ、ぉ……っ、うちだくん……っ、だめ──オっ! すご……っ、あっ、んぁ、アっ──これ、すっごい……っ、あっ、おっ、んぉ……っ、あっ、ひあっ……!!」
だめと言いつつ、口からは気持ちよさそうな声を漏らしている。快楽で緩み切った唇の端からは、だらしなく涎が垂れていた。
もう十分すぎるほど感じてくれているけど、もっと気持ちよくさせたい。
両の手で包んだ尻を、好きにぐにぐにと揉みしだいてやる。そうすると、ナカで陰茎と膣が強く擦れ合って、より激しい刺激になる。
「あっ、あぅ、アっ……はっ、あっ、好き──っあ、あぅ、んンっ……! おっ、あぅ、ぉ……っ、ぁンっ、すき……っ、アっ、もっとシて──おっ、オ……っ、んぁ、もっとぐちゃぐちゃにシて──っ、あっ、オっ、んぉ、オっ!!」
たがが外れたように乱れる三枝。とろけた瞳で俺を見つめながら、はしたない声を際限なくこぼし続ける。
陰茎を包む膣は、きゅんきゅんとソレを締め付ける。尻肉を強く揉んでやるとまた一際強く。
激しい腰の動きにぎしぎしとベッドが軋み、そのリズムに合わせるように射精感が近づいてくる。
「アんっ、あっ、オっ……あっ、キちゃうっ……! イくっ、あ、ぁアっ、ん……っ、ぉ、オっ、イクっ……うちだくんっ、アっ、んあっ……イっちゃうっ!!」
限界が近いのは三枝も同じだった。快楽に押し上げられるような声と、逃がさないとばかりに締め付ける膣がそれを教えてくる。
その快感をさらに加速させるように、ばちゅばちゅと激しく三枝の尻を叩きつける。むっちりとした桃を、気持ちよくなるための道具みたいに扱う。
それでも三枝は嫌がる素振りの一つも見せず、一層淫らに狂うだけだ。髪を振り乱し、縋るように俺を抱きしめながら。
「三枝っ、出るっ──! 三枝、いっく、三枝ぁっ……!!」
「あっ、ア、イクっ、わたしも、イっちゃうっ──! おっ、んっ、ァんっ……イっく、あっ、んオっ──イッグ、イぐっ……あっ、イっぐうっ、ぅう──っ!!」
そして、快感が限界まで高まった瞬間、どちゅ、と思いっきり三枝の尻を奥まで押し込んだ。ごり、と三枝の子宮口に陰茎を先端を突き入れ、そこで溜め込んだ白濁を吐き出した。
どびゅん、どびゅん、と半固形になった快楽が放出される。敏感な亀頭の穴をこじ開けながらする射精は、死んでしまいそうなほどの快感だった。
「あっ──すごっ……っオ、んぉ……あ、すっごい……びゅーって、せーし、あっ、んア……なかだし、されてる……っ、あ、ぅあ、だめ……っ、おっ、またイっちゃう……」
三枝も同じように絶頂し、がくがくと腰をふるわせて浸っている。その振動が膣肉にも伝わり、奥からどくどくと精液がこみあげてくる。
それを抑えることなんかせず、そのまま三枝の中に射精する。そうやって子宮の中へ子種を注ぎ入れるたび、びくん、と三枝の腰が跳ねる。
「さえ、ぐさ……まだ出る……っ、ぐ……っ」
「んぁ、あっ……だし、てっ……ぜんぶ、せーえきだして──ん、オっ、ほぉ……っお、んぁ……たね、もっと蒔いて……あっ、ア……きもちい、あっ、んぉ……まだイグっ、あっ、んぁ、オっ……」
どぶん、どぶん、と際限なく吐き出される白濁液。気持ち良すぎておかしくなりそうだ。
俺が射精してるのか、三枝に搾り取られてるのかまるでわからない。生温かい快楽の海で三枝と溶け合っているよう。
そのあまりの快感に力が入らず、どさ、と仰向けにベッドに倒れてしまう。抱きついていた三枝も同じように体を倒し、俺の体の上に乗っかる形。
「あっ、アん……っ、すご、い……きもち、いいね……っ、あっ、んぉ、アっ……」
小刻みに体を震わせたまま、三枝は顔をこちらに向けた。快楽にゆるんだ瞳には、満足そうな色が宿っていた。
「ああ……気持ち良すぎておかしくなりそうだ」
「んっ、ン……そう、だね。私も……あっ、だめ、またイクっ……」
びくん、とまた三枝の体が跳ねて絶頂する。その瞬間、締め付けがよくなってさらに搾り取られてしまう。
ぶぴゅん、ぶぴゅん、どくん、どくん。真っ白な欲望で三枝の膣内を満たしていく。脳が焼ききれそうなその快感に、三枝のこと以外何もかもどうでもよくなる。
「は、ぁ……っ、あ、ん……内田くん、大好き……」
「三枝──っん……」
不意に顔を寄せられたと思ったら、そのまま唇をふさがれた。
そうしてくちゅくちゅと唇を愛し合う。舌までは絡めない、甘い戯れ。
幸福感が体の芯からこみあげてきて、より強く三枝を抱きしめる。羽毛のように柔らかい三枝の体。それを全身で感じながら、長い長い絶頂に浸る。
そうやって俺たちは、自然に身を任せて快楽を享受し続け、気が付けば二人で眠ってしまっていた。
「ほい、こっち終わったおー」
夏の暑さがまだ残る九月の中旬。夏休みの名残惜しさも消えた頃、放課後のパソ研部室。
俺の隣の机で作業をしていた大輔は、たーん、とカッコつけながらエンターキーを叩いて言った。
「お、まじか。こっちもちょうど終わったところだ」
パソコンのディスプレイから目を離し、大輔とは反対方向を向く。そこには、かたかたとキーボードを叩く三枝美咲が座っている。
「あ、ちょっと待って。私も……はい、終わり」
たん、とキーを押し、三枝がこちらを向いた。
「おー、全員息ぴったりですな」
大輔が楽しそうに笑って言った。
文化祭まで残り少なく、ゲーム制作も大詰めだ。俺たちは今、テストプレイで見つかったバグの修正をしていた。
「二人ともお疲れ様」
「ん、さんきゅ。三枝もありがとな」
「ううん、いいの」
これでひとまずだいたいの作業は終わりだ。あとはちょっとした仕事が残っているくらい。
「いやぁ、それにしても三枝さんやりますなぁ。僕らちょっと教えただけなのに普通にバグ修正終わらせちゃうなんて」
「そんなことないよ。二人の教え方がうまかっただけ」
あはは、と照れくさそうに笑いながら三枝は謙遜する。
彼女はそんなことを言っているが、普通にすごいと思う。三枝はゲーム制作とか未経験だったのに、俺と大輔が最初の一、二歩を教えただけで勝手に自分で覚えていってしまった。
「そんじゃ一仕事終わったわけだし、今日はここいらでお開きにするか?」
「ん、せやね。もう結構暗くなってきたし」
「うん。今日はみんな頑張ったし、もう帰って休んだほうがいいね」
窓の外を見ると、夕日が半分ほど沈んでいるのが見えた。季節は秋に向かい、太陽の活動時間も少しずつ短くなっている。
そんなわけで、全員一致で今日の活動は終わりになった。
「それじゃまた来週ー」
校門の前まで三人で来たが、大輔はここでお別れだ。
「おう、それじゃあな」
「気をつけて帰ってね」
手を振る俺と三枝に、同じように手を振り返すと、大輔は帰っていった。
そうしていつもの通り俺と三枝が残される。三枝に「いこっか」と促され、二人並んで帰路に就く。
「内田くん、あのさ」
歩き出して少しした頃、三枝は不意に口を開いた。
「ん? どうした」
「その、さ。お兄ちゃんのこと、なんだけど」
その言葉に、否応なしに身構えてしまう。
一応、三枝はもう兄から脅されることはなくなった。とはいえ、やはり緊張するものがある。
「この前、ちょっとだけ顔を合わせることがあって」
三枝の兄は、もう彼女とは一緒の場所にはいない。なんでも、そういう人間たちが集まる全寮制の学校に転校させられたらしい。
証拠として盗んだ動画と一緒に、三枝は両親にすべてを告白したという。その後は警察も絡んだ話し合いがあったそうだが、兄が罪に問われることはなかった。
兄妹間ということもあるが、三枝自身の意向もあったようだ。だがその代わりめちゃくちゃ厳しい高校に飛ばされて、今はひいひい言ってると聞く。
ちなみに、夏に三枝を輪姦したという大学生たちも退学処分を食らったという話を聞いた。デリケートな問題だから詳しいことは伏せられているが。
「──それでさ、お兄ちゃんに言われたの。『どうしてお前ばっかり』って」
三枝はそう口にすると、どこか悲しそうな目をした。
「私の両親ってさ、結構成績とか厳しくて。お兄ちゃんはあんまり勉強が得意じゃなかったから、昔からよくきつく当たられてた。……私とは反対にね」
三枝自身は学年でも上位の成績だ。きっと彼女は両親からよく褒められていたのだろう。
「それでお兄ちゃんはサッカーを始めて、エースになるくらい上手くなったんだけど……お父さんとお母さんはそれを大して評価しなかったの」
「まさか、それで嫉妬して──」
「うん。本当はどう思ってたのかはお兄ちゃんにしかわからないけど、きっと私を下に見たかったんじゃないかな。従順な奴隷みたいに」
三枝はぎゅ、と片腕を握りながら口にした。
その言葉を聞いて、そうか、と合点がいく。他の男たちに輪姦させたのも、無様な三枝な姿を見たかったのだろう。
「でも私、そんなこと全然知らなかった。……もしそのことにもっと早く気づけてれば、こんなことにはならなかったのかもしれないのに」
兄を憐憫するような声で三枝は言った。さんざん酷いことをされたというのに。
事情は確かにわかる。だが、だからといって一人の女の子の尊厳を踏みにじるなんて俺には許せなかった。
「……そうか。三枝は優しいんだな」
「いいや。そんなことないよ」
俺の言葉に、三枝は首を横に振った。
「君のほうがずっと優しい」
優しげな目で俺を見て、三枝は言う。
「いや別に俺はそんなことねぇだろ」
「ううん。だって私のこと助けてくれたじゃない。ちょっと危ないことまでしてさ。君はすごく優しいよ」
温かみのある声。それがどこかくすぐったい。
前に三枝にも言ったが、俺は三枝を助けたいという気持ちより、三枝と一緒になりたい気持ちのほうが大きかった。だから、こんなのはきっと偽善なのだ。
「でも、俺が特別ってわけじゃない。三枝とお兄さんのことを知ったのがたまたま俺だっただけだ。だからきっと俺じゃなくても、三枝のことは助けられたさ」
そう口にした俺に、三枝は少し考えたあとに口を開いた。
「それはそうなのかもしれない。……でもね、私はそれが君で本当に良かったって思うよ」
三枝は柔らかく微笑んでそう口にした。満面の笑みというわけでない表情だが、俺にはそれがとても綺麗なものに思えた。
「……そうか。そう思ってくれるのはなんというか、ありがたいよ」
照れてしまって、三枝から視線を外しながら答える。
だが、俺も同じことを思う。兄とのことを知ったときはショックだったが、それを知らないままでいるよりはずっと良かった。
結果論だが、ただ憧れていただけの三枝とこうして話せるようになったし、知らない一面も知れた。それに、恋人にだって──
「三枝」
それで気が付いた。俺は三枝との関係について、何一つ言葉にしたことがない。
三枝が兄とのことで色々忙しかったのもあるが、俺自身がビビッて先延ばしにしていたのもある。だったら、今ここではっきりさせるべきだ。
「ちょっといいか。言いたいことがあるん、だけど」
ぴたりとそこで足を止める。
「うん?」
急に立ち止まった俺に、三枝は首を傾げて足を止めた。そんな彼女の方に向き直る。その瞬間、急にドキドキしてきた。
だが、ここで逃げたら次の機会はいつになるかわからない。せっかく決心がついたのだから、逃げないで向き合おう。
「その、さ。三枝。……俺と──俺と付き合ってくれませんか」
がば、と頭を下げて、精一杯の気持ちを口にする。完全にテンパってしまったのが恥ずかしいが、時すでに遅し。
そのまま頭を下げっぱなしにしていたが、三枝から何も言葉が帰ってこない。しばらくその姿勢で固まっていたが、いい加減気になって恐る恐る頭を上げた。
「さ、三枝?」
三枝は目を丸くして完全に固まっていた。俺が声をかけると、はっとした様子で我に返った。
「あっ、ご、ごめん! なんかびっくりしちゃって……」
あはは、と誤魔化すように笑う三枝。
「いや、えっと……その、私たちって付き合ってないんだっけ?」
「えっ」
その言葉にあっけにとられる。
いや確かに、その、夜のお付き合いは何度かしているが。それ以外は恋人らしいことをしてない。
「え……三枝はその、付き合ってるって思ってくれてたの、か……?」
「うん。……ほら、エッチもしたし、お兄ちゃんとのことも全部終わったわけだし」
気まずそうに目をそらしながら三枝はたどたどしく口にする。
そう思ってくれているのはすごく嬉しいが、困惑していて頭が追いついていない。
「あ、でもちゃんと言葉にはしてもらってないんだっけ」
合点がいったような顔で三枝は言う。
俺もようやく思考が落ち着いてきたが、今度は一気に恥ずかしくなってきた。
「じゃあその、返事は……」
「もちろん、イエスです」
当たり前のように三枝は口にして笑った。なんか、無駄に恥かいただけのような気もする。
「ははは……俺、何やってんだろうな。なんかすまなかったな、三枝」
「ううん」
照れを隠すようにいった俺に、三枝は首を振った。その顔はさっきと違って真剣さがあった。
「私は嬉しかったよ。ちゃんと言葉にしてくれて。──私、君のそういうところが大好き、だから」
ふふ、と小さく微笑んで三枝は言う。前からだが、三枝は結構「好き」って言葉をちゃんと言ってくれる。
しかも恥じらいが無いから、こっちのほうが照れてしまう。でも今はそれを抑えて、三枝に向き直る。
「──そうか。ありがとう、三枝。俺も三枝のこと、大好きだ」
そうして、三枝を真っすぐに見つめながら、心からの言葉を口にする。
すると、三枝は「うん」と俺の言葉を噛みしめるように頷いた。そうして、一歩俺に歩み寄ると、顔を近づけてきた。
「うん。これからも、どうぞよろしくお願いします」
ぱあ、と桜の花が咲くように笑顔を見せて、三枝は言った。
そのまま二人で顔を寄せ合い、唇で触れ合った。その接吻は、春の日差しのように甘い甘いくちどけだった。
最後だけだいぶ長くなってしまいましたが、この作品はこのお話で最終回とさせていただきます。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。