今後、エロ主軸の話はサブタイトルに「だけの話」をつけ、いちゃいちゃメインで微妙な回はそれ以外で行こうと思います。
「こうして団の長を集めた理由は他でもない、これからこのヒスイを訪れるであろう者たちへの……」
ギンガ団本部の団長室は最上階である3Fにある。
団長のデンボクはそこで事務処理やらヒスイに流れてきた者への対応に追われている。
その強面の良くも悪くも古いタイプのオヤジであるデンボクだが、結構苦労しているらしい。
ちなみに最近腰をやっているらしく数日前片隅で悶絶していたのは内緒だ。
本題に戻ろう。
やってくる余所者に対してどう受け入れていくのかについてコンゴウ団とシンジュ団を交えて、こうして会議をやっているのだが──
──おれいる?
多くのヒスイの民を率いる人間たちとポケモン研究の一任者であるラベンという錚々たるメンツが集まるまさに重役会議同然のところに、一応ずば抜けた高ランクとはいえ団員のあなたが1人ぽつんと座っている。
コンゴウ団の長であるセキ曰く
「数々のキングを鎮め、この広いヒスイのポケモンについて多くを知る人間は必要だろ?」
──それさぁ、ラベン博士だけでいいと思うんだぼかぁ
「まぁまぁ、行った行った!」
……という流れで雑に押されてここにいるわけだが。実際問題あなたが出会ってきた無数のポケモンたちはそれぞれ刺激してはいけない地雷のようなものもあるし、その辺の上手い付き合い方は知っておく必要はある。
あなたも散々っぱらオヤブンを刺激したり、鳩尾目掛けてでんこうせっか食らったり、電撃を食らったり、破壊光線ぶち込まれたり、キングの直接攻撃を避けまくったりしているので経験者ならではの視点は必要なのだろう。
無論、質問されたら答える形式で通常あなたは黙って話を聞いているのが基本となる。
今回の議題はコトブキムラの人口の限界がいずれ来るであろうということか。
いやでも開拓しないといけないこともあり、ポケモンの生態やら何やらを知っておく必要があるというのだ。
たしかに、開拓部隊も破壊光線でぶっ飛ばされたくはないだろう。
例えコロトックのものでも興味本位で破壊光線を受けてはいけない。
死ぬほど痛いのだ、アレは。
「次に原野の件についてなのだが……」
デンボクが気難しい顔で取り仕切る中、向かいのテーブルについているカイと目が合った。
ちょっと嬉しそうににこっと笑って、小さく手を振ってる。
デンボクにバレようならお説教待ったなしだし、セキにはネタにされること間違いなしだ。あなたは咄嗟にデンボクとセキの方を見るものの、カイの方は幸い見ておらずあなたはほっと一息ついた。
「ん、どうした?」
その一連の動きがキョドっているように見えたのか、セキに指摘されて慌ててあなたは佇まいを直す。
「肩の力抜けよ。別段初対面ってわけでもあるめーし」
──アッハイ
それを目にしていたカイがちょっとおかしげに笑うもので、あなたは決意した。
後で覚えておれと。
それから目を合わせるたびにちょっと嬉しそうに手を振ったりとかして来るのは何なのだろう。
からかっているのか、それとも心細いのか。
会議が終わるまであなたはそれだけ考えていた。
終わり際、セキはいつも通り時間が惜しいと言わんばかりさっさと本部を後にしラベン博士も資料を漁るために研究室へ向かっていく。
残されたカイとあなたは手持ち無沙汰で、団長室から出て行き、階段を降りていく。
ここの階段は意外と死角になっていて他の隊員やら団員の目に入りにくくなっている。
そんな中で、カイはデンボクや他の面々がいないか目配せをしてからあなたの袖をちょいちょいと掴んだ。
最近何かを訴える時やるようになっているのは性格だからなのか。存外堂々としている時よりこっちの方が素なのかもしれない。
「えっと……その……」
急に何かを伝えようとするカイにあなたはきょとんとした。
喉の奥に餅が引っかかったような態度でにわかに頬もほんのり赤い。
一体何を言い出すのか、身構えたあなたを待っていたものは──
「おっ──お団子は……好きですか!?」
……とても拍子抜けなお茶のお誘いだった。
◆◆◆◆◆
このコトブキムラも少しずつ大きくなっていっている。
元々人と少数のポケモンの力だけでこのムラは出来上がった、そんなムラだ。
ただあなたが紡いできた縁が、結果として数多くのポケモンたちが協力してくれるようになり、加速度的に大きくなりつつある。
加えてイチョウ商会が持ち込んだ明らかに場違いな珍妙奇怪な物体、つまるところ明らかに時空の歪みから仕入れてきたであろう文明の利器の力によるものもある。
その一つがカイの言うお団子屋、と言うわけだ。
ここの店主は西のとある地方から船でやってきたのだという。
問題のお団子屋にやってきたのはいいが、そこにいるのはあなた1人だ。
言い出しっぺのカイは──
「あれ? こんなとこにいたんだ。ぐ、偶然だねぇ、あははは……」
わざと時間をずらして白々しい物言いと共に現れた。
理由は明快、怪しい謎の男と逢瀬しているなどということを変に表沙汰にしたくはない。その辺はあなた自身の意向も大きい。
ただその必要はあまりなかったらしく客足という客足はない。
外に置いてある木製のベンチについて、あなたと隣に座ったカイは店員に出されたお品書きを見てみた。
成る程、存外種類というものはあるらしい。
みたらし団子に、黒ごま団子、蜜団子(多分ミツハニーの集めた蜜だと思われる)、闇団子、草団子……
あなたとカイは互いを見合わせてから、二度見した。
「思ったより種類が多い……全部食べ切れるか……?」
──無理だろというか一度に食べきりに行くんじゃあない
唐突に無茶をしようとするのであなたのツッコミが冴え渡る。当然、カイもそんなことは重々承知の上だ。
「わ、分かってはいる。分かってはいるんだけど……こう、どれも気になるし……この氷結団子とか」
お品書きの膨大さに完全に目を回してしまっている。しかしここでずっと決めあぐねていると閉店まで終わらなさそうだ。
──全部は無理だけど、一緒に分け合えば色々食べられるんじゃない?
あなたの提案に「確かに」と頷く。そうすればきっと一品でも多く食べられるはずだ。
あなたは店番中のゴーストに店員を呼んでもらうことにした。
注文から間もなくして団子がやってきた。
意外と一つ一つの大きさは大きく、分け合う提案は間違ってなかったらしい。
「ねぇ、どれから食べる?」
大量の団子たちに、子供のように目を輝かせている微笑ましい光景を横目にあなたはお先にどうぞ、とカイに委ねる。
最初に選ばれたのはみたらし団子だ。
はむっと、1つだけ口で引き抜いて頬張る。
それから手を口で隠しながらもっちもっちと咀嚼し次第にその顔は明るくなってきた。
「はむっ……ん……うん。甘過ぎることもなく薄過ぎることもない。ちゃんとしてて美味しいよ、これ。ほら、口開けてっ」
あなたにも食べて欲しいようだ。
はい、と差し出されたお団子にあなたは息を呑んだ。
今更と言えば今更だが。完全に間接キスだ。
本当に今更だ。今まで散々っぱら体を重ね合わせて実際問題キスをしておいて何今更アオハルじみたことを考えているのか。
あなたは逡巡を捨てて、差し出された団子を口にする。みたらしの上品な甘い味と噛み応えのあるもちもちとした歯ごたえ。
確かにカイの言う通り美味しいお団子だ。あなたが団子を食べている間カイの表情は心なしか不安げだった。
──うまいね、これ
あなたがそう口にすると、例えるなら雲が突然何かしらで切り裂かれて太陽が現れるような勢いでカイはぱぁっと明るくなった。
「でしょっ」
そんなカイが可愛らしくて、あなたの心の奥にどこかで邪な心がざわつく。
仕返しをしてやろう。
残った団子をカイに差し出す。
貴様も悶々とするがいい! そんなことを目論んだ内なるあなたがゲス顔をする。しかし──
「あーん……はむっ」
何の躊躇いもなく一口。あなたの目が点になった。
「んっ、さっきより美味しい」
──なんでさ。
「ここでこうして同じお団子を食べて。不味いわけないよ」
それは殺し文句だ。屈託ない笑顔でしれっと言ってのけるカイ。
みたらしの量とか違うからなのかとか必死に考えてみたのがバカみたいだ。と思ったせいであなたの方が悶絶した。
なんなんだこいつ……ほんとこいつ……なんなんだ。
お互いに団子を食べさせ合い、粗方食べたところで目を引いたのが──? と焼きを入れられた団子だった。
お品書きによるとナゾ団子。
店主によると13種類の味を持つというそれは、いわゆる博打のような団子だった。
ハズレを引けば死ぬほど辛かったり苦かったりする団子が待っている。
イチョウ商会から聞いたことがある。
とある地方には、13種類のえらく珍しいきのみ*1があるのだという。
「13種類の味を持つという、珍妙奇怪なお団子……一体どのような味があると言うのだろうか……」
──そりゃあ、食べてみないとわからんでしょ。
あなたは一番手前のナゾ団子を手に取る。
応えるようにカイも手前にあったナゾ団子を手に取った。
先に口にしたのはカイだ。
何の味か判らないそれを少し躊躇してから、エンジュの寺を飛び降りる勢いで口にすると──
「えっ……何これ。口の中ざらざらするけどいろんな味がする。甘いし辛いし苦いしすっぱいししぶいし」
──結局、どう?
「お団子としては変な気がするけど美味しいよ。……はい、あーんして」
慣れたようで串を差し出してあなたに食べさせてくる。あなたは口を開けて差し出してきた団子を口にした。
不思議な味がした。明らかに相反する味が同居している。まるでこのヒスイ地方のように。
この様々な味を内包した団子。原因はクオの実だ。イチョウ商会の人間から聞いたことがある。
さて、次の団子でも食べるか。
あなたはクオ団子を堪能し切った所で、自分が手に取った団子を頬張った。──が。
噛んだ時じゅっ、と鳴ってはいけない音がした気がした。
気づいた時にはもう遅い。口の中は突如として──爆弾が爆ぜるかのように燃え上がった。
──ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! とっ、トウガだぁぁぁぁぁ!!
トウガの実。
それはとある地方でしか採れない珍しい木の実の中で最も強烈な辛さを持つ。
一度に全てを食べ切った人間がいないと言われるほどで団子になって多少マシになったとはいえあなたは半泣きになりながら悲鳴を上げた。
舌が焼けるように熱い、というか熱い通り越して痛い。
口の中に棘玉を放り投げたような痛みに苦しむ中、カイが不思議そうな顔をした。
「もう大袈裟だなぁ……そんなめちゃくちゃ辛いお団子なんてあるわけないじゃん」
呆れたようにひょいと皿の上に雑に置かれたあなたの食べ残した団子の串に手を取る。
いかん! そいつには手を出すな!
あなたは慌てて手で制しようとしたが、タッチの差でカイの方が早かった。
「……あむ。……ん?」
──あっ
時間が止まったようだった。
カイの動きがあからさまに止まり、あなたも手遅れという現実に動けずにいる。
けれども現実、時間が止まったという訳ではない。
カイの顔がオクタンのように赤くなりじわっと、カイの目尻に涙が溜まり始める。
あぁ、ダメだった。
「か゛ら゛い゛」
やっと辛さに慣れてきたあなたは、吐き出せと言うにも少しばかり店主に悪い気がして。
辛さのあまり思考がバグっていたあなたはカイをそのまま抱き寄せて、唇を重ねそのままナゾ団子を吸い出した。
「ぁん……んっ……ちゅぅ……ぷはっ」
吸い出したのはいいものの、冷静になったあなたは思った。
普通に吐き出させとけばよくね? と。
というか、現在進行形で滅茶苦茶辛い。
口の中で針で刺されたような痛みと辛さに白目を剥きかけていたが、完全にカイは突然団子を吸い出されたことで頭が追いついていないのかフリーズしていた。
取り敢えずこのトウガ団子はこっちが食べておいた。……死ぬかと思った。
爆弾処理を終えたあなたはお茶と他の甘い団子で相殺し切ったところで、心ここに在らずと行った具合のカイをみてみる。
ボーっとしながらお茶を飲んだり辛さをあなたと同じように相殺をしている。余程口移ししてしまったことに驚いているのだろう。
それからしばらくして──
「口移し……いいかも」
やっとこさ出てきた第一声がそれだった。
──は?
呆気にとられるあなたをよそに残った1本のナゾ団子を口にする。
最後の一本は意外とまともな味だったのだろう。満足そうにうんうんと頷いてからもう一本口にする。
あなたは黙して一連の動きを見守っていると、カイがその団子を飲み込まず、周りをキョロキョロと見回した。
周りに人の気はない。店主もどうも店内で仕込みをしているのか未だ顔を出していないし、店番のゴーストくんは休憩に行ってしまった。
──え
その動きから大体察した瞬間、カイはあっという間にあなたのすぐ目の前まで詰めより──口を小さく開ける。中に見えたものはカイの唾液でにゅるにゅるに塗されたナゾ団子。
それが酷く淫靡で、美味しそうに見えた。
吸い寄せられるようにあなたもその口に唇を近づける。
「あ……んっ……ちゅっ……れる……はぁむ」
最初は舌と舌で団子を転がし合い、互いの舌が突き合う。あまりこれ以上やろうなら理性が保たれない。
いい加減で終わらせたところ口移しで、互いの唾液で出来上がった団子はあなたの口の中へと運ばれる。
口を離した所で絡み合った唾液が白い橋を作り、とろりと重力に従って地面に落ちた。
「ぷは……ぁ。こっちの方が一緒に食べてるって感じだね」
いやその理屈はおかしい。
何処かの青狸が脳裏をよぎるが、カイはちょっと満足そう。
今更、またまた本当に今更なのだけれども。カイは心を許すと甘えたがりになるらしい。
団長さんとしての仕事に影響しないといいんだけどなぁ、などと思っていると第二波がやってきた。
ここぞとばかりに誰もみていないことをいいことに。
また、唾液で光る団子をあなたに押し付ける。
そのキスの味は言葉にすれば非常に陳腐だが団子の甘い味がした。
「ん……れろ……れる……へぅ……ちゅ、ちゅるる……ふぅっ……んっ!」
気付けばあなたの手がカイの胸に伸びていた。チューブトップ越しの胸に触れると既に敏感になっていたようだ。ぴくりと肩が跳ねる。
だが、引き上げる。
蛇の生殺しのような感覚だ。多分宿舎だったら押し倒している勢いなのに、今の場所がそれを押し留めている。
流石にコトブキムラの片隅とは言え乱れ狂うカイをみせるわけにはいかない。
団子の口移しは、思いの外ペースが早かった。
そんな中でカイは隠していた。キスの傍らもじもじと太腿を動かしていることを。子種が欲しいと降りてきた子宮を宥めることに必死で、ベンチに股を擦り付けていることを。
あなたに気づかれないように。
「ぷはぁっ……」
青玉色の瞳が蕩けている。
いつもなら吸い込まれそうなくらいに綺麗な色が、雄を誘う雌の色に蕩け切っている。
もっと欲しい、そう言わんばかりに。
しかし休憩明けのゴーストや新しい団子屋の噂を聞きつけてやってきた村民の登場で慌てて佇まいを戻すハメとなった。
◆◆◆◆◆
食べ切った所でさぁ宿舎、なんてことは叶わなかった。
「おいしかったね。もうちょっと居たいけど……ね」
カイには団長の仕事はまだ残っている。
常にあなたの家で夜這いをしたりべたべたし合ってはいられない。
けれども、言葉に反してカイの手はあなたの袖を掴んで離していない。このかわいい生き物を可愛がりたい所はあったのだけれども、あなたにも思うところがある。
──カイには待っている人がいっぱいいる。だから今日はここまで。
カイの手を取って諭すように離す。最初は頑なに離さなかったが自分の仕事をちゃんと理解していたのだろう、次第にあなたの袖を掴む力は弱まった。
──またムラにおいで。
そう言うと、カイはあなたの袖から手を離し──腰の方に手を回した。
ぎゅう、と力一杯に抱き締められた。
あなたの世界で言うなら充電のつもりなのだろう。あなたも抱き締め返す。
女の子特有の柔らかい感触だ。もっと触れていたい、あの時のように滅茶苦茶にしてしまいたい。
けれども──今はダメだ。
「……よしっ」
一頻りあなたを吸ったカイは声に反して名残惜しげに手を離す。あなたも同じだ。
もっとああやって溶け合っていたい。そんな欲がカイと同じようにある。
「またね」
そう誰にも気づかれないよう小さく手を振るカイにあなたは小さく手を振りかえした。
カイはずっとあなたが見えなくなるまで何度も振り返り、あなたもまた、カイが見えなくなるまでずっと見送っていた。
カイの姿が見えなくなった所であなたは我にかえり、ふと空を見上げる。
空の裂け目は相変わらずデンガン山を見下ろすように光を放っている。
アレは一体何なんだろう、時間が経てば経つほどに心なしか酷くなっているような気がする。
少なくとも、アレが不自然なものであり、あってはならないものである。そんな気がしていた。
その時、あなたはまだ知らなかった。
これから先、残酷な未来が待っていることを。
シリアスに見せかけて実はそうでもないやつ。メンタルリセットのために主人公くんを吸ったりキメたりするだけで。
次回は凍土の温泉回。