ただ二人だけの為の島 作:赤鱶
「クソが……絶対に殺してやる……!」
脳裏を灼く烈火は関節を外された上に骨を砕かれた右腕の叫びだ。 痛みに意味はない、だがこの負傷を恵んでくだすったあのアマは絶対に殺す。 ログインしなくなるまで切り刻んでやる。
俺に目を付けた事を後悔させてやる……!
あれは一週間前の事だ。 いつものようにフラリと浜に現れた新参を刺し殺し、再び現れたのでデリンジャーを眼に撃ち込み、また現れたので魔豚をけしかけて殺し、それでも現れたのでリスキルしまくったのが最初の遭遇。
それからもうログインするたびに何処かから嗅ぎ付けて襲い掛かってくるようになった、武道か何かをやっているのか妙に動きにキレはあるが戦術は素人のそれだ。
もちろん全て返り討ちにしてやったが……どうにも俺の戦い方を学んでいる節がある。 いつの間にかデリンジャーを拾ってきて致命の一撃を狙ってきたり、モンスターを引き連れてこっちの余裕を削ってくるようになった。 3日でこれだ、末恐ろしい。
ガサリ、背後で草が鳴る。
咄嗟に飛び出た藪が強烈な振り下ろしで真っ二つになった。
いや生木! 枝が折れ飛んでいるのが理解できない。 物理エンジンバグった? そうじゃないコイツは――
「見付けましたよ、サンラクさん……」
「出たなレイ! 死ねぇッ!」
咄嗟に突き出したナイフは冷静に逸らされた。 バランスを崩すが本命はお前にボロ雑巾のようにされた右腕! まだ肉と皮で繋がったそれは天然素材スプラッターのブラックジャックとして使い得る!
「きゃっ」
顔面に一撃、怯んだ所にナイフを切り返して追撃。
どれだけ俺が使い込んだと思ってるんだ、デリンジャーを構える動作に潜む隙なんて片手で足りない程に知ってんだよ!
この身体は小さくてパワーは足りないが、小回りは利く。
さっきのお礼だ、四肢を奪われたなら……
奪い返せばいい。
丁寧に。
「あ゛っ……い、痛いですよ、サンラクさん……」
「俺の右腕をやっておいて、それを言うのか?」
怯んでいるうちに、まずは足からだ。 切れ味の鈍いナイフだが扱い次第では腱も断てる。
飛んでくる拳も想定内だ、掴まれたらたぶん極められる、だから壊す。 その意志を体現するだけのリソースを削り切ってしまう。
腕も無力化させてもらおう。
「なん、で……」
「腱を切られたのは初めてか? どれだけ力を入れても動かないんだからスゲェよなぁ、っぶね!?」
頭突きを回避、跳ね起きて身体を支えられずに崩折れたレイの後頭部にナイフの柄を振り下ろす。 スタンが起きれば御の字だ。
「強い…い゛っ」
「食らい付いておいてよく言うぜ」
腹筋だって結局は筋肉と腱で骨を繋いで動かしている。
どっちかをズタズタにしてやれば、身体を起こすこともままならない。
内臓に刃が刺さるとHPが減る、コイツにはもう少し苦しんで欲しいので丁寧に、細い身体に紅い線を引いていく。
俺に外科手術の才能はないらしい。 ズタズタになってしまったお腹をみていると不思議な感情が浮かんでくるが、その正体は分からない。 苦痛に歪む顔も……ッ!?
「……ハァッ……、何だ……」
隠し玉があるのかと思えば、浅く息を漏らすだけで、咄嗟に飛び退ったのは徒労か、いやそれよりも
「なんでお前、笑ってんだよ……!?」
「だって、サンラクさんと遊ぶのは楽しいですから」
淀みなく言い切られた。
自らの血に塗れる笑顔、不相応な輝き。
負けている奴の表情じゃない。
やり込められた奴の表情じゃない。
それはまるで、これこそが勝利なのだと誇るようで――
「気が変わった」
付き纏われたとばかり思っていたが……こういうのも悪くない。
「木に目印を刻め……次の鬼は俺だ」
トコトン付き合ってやろうじゃねぇか。
次はサンラクがやり込められるシーンを書く(宣言する事で自分を追い込んでいくスタイル)