※この作品はR-18です。

Overwrite   作:ムラムリ

3 / 6
Overwrittenの後でヒカリも喪ってしまったムラクモくんが、
ユクシーに、自分の記憶を消し飛ばした上で自分の事を知らない土地に飛ばして欲しいと懇願したという体で、たつおかさん( https://syosetu.org/user/143789/ )の作品にゲスト出演した、以下のifの話
https://pokestory.pgw.jp/main/?%E3%80%9034%E3%80%91%E6%9C%80%E6%9E%9C%E3%81%A6%E3%81%AE%E5%B3%B6
が続きまして、そしてこちらでそのムラクモくんに、夜な夜なマフィアなどを必殺仕事人の如く殺していくという属性が加えられまして。
https://pokestory.pgw.jp/main/?%E3%80%9046%E3%80%91%E6%9C%80%E6%9E%9C%E3%81%A6%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%95%B4%E8%80%85
まあ、ムラクモくんがそのままその世界観で長続きしていくなら、どういう属性が欲しいかって言われたらやっぱり、あんな過程を辿ったのもあって(そしてヒスイダイケンキは殺しているところが似合うという自分の性癖もあって)、夜な夜な悪人を殺していく属性が欲しいですねって自分から提案した代物ではあるんですが。
数人を軽く殺すくらいかなーって思ってたら。
・マフィアを一匹で全滅させる
・これまで三つの半グレ集団やヤクザどもも壊滅させている
と盛りに盛られまくりまして。
それはもう、こちらとしてもそこの補強をカウンターとして書くしかないな!!!!
と、熱が出て書いたものになります。

要するに……エッチシーンは無いんですけど、沢山死にます。
そしてそれは、私にとってはエッチしているより熱が上がるものなのです。


Ghost of Saihate 1

「俺達が、俺達なんかよりよっぽど悪どい資本から守ってやっても良いんだぜ?」

 長閑な商店街には似つかわしくない、胡散臭い声が響いた。

 

*

 

*

 

 最果ての島。

 その名の通り、本土からは遠く離れ、これと言った観光名所も無いような孤島。

 しかし島には草木が溢れ、また複雑な海流がその島の周りを渦巻く事で魚も良く迷い込んで来る為に、食料資源には事欠かない。

 また、海流の複雑さは海の資源の豊かさを担保すると同時に、海路からは島への侵入が容易ではない事を示しており、時代の中では流刑地として扱われる事もあれば、悪党の根城として一時名を馳せた事もある。

 昨今においては運航技術が発達した事により、そんな天然の要塞じみた扱いまでは受けていないものの、辺鄙な場所にある島である事は変わらない上に、これといった観光資源も持たないが故に、ここ数十年は人もポケモンも少なく、落ち着いた……言ってしまえば閑散とした、遠くない未来においては無人島となってもおかしくない島となっていた。

 だが、ある時を境にして、まるでテレポートでも使ったかのように、どこからやってきたのかすら分からないようなポケモンや人がぽつぽつと根差すようになってから、また賑わいを見せるようになっていった。

 

 その、どこからやってきたかすら分からないようなポケモンの一匹。

 現代では殆ど見る事のない、ヒスイ地方……シンオウ地方の過去の名称である、現在の幾倍も過酷な自然環境に適応したダイケンキのリージョンフォームである、ヒスイダイケンキ。

 名をムラクモと言うそれは、自身の名前以外の全てを忘れていた状態で、そして生きる気力すら失くしたような状態でこの地に現れた。

 そのままでは微塵も動かず、何も食べず、野晒しのまま死んでしまいそうだった彼は島民の献身的な介抱によって少なくとも生きる事だけはするようになり、時間が経つに連れて少しずつ前を向くようにもなっていった。

 誰かと暮らす事もなければ、他のポケモンや人間との付き合いも積極的にする事もないが、ただ静かな環境を好むだけで気難しい訳でも堅物でもなく、会話を試みれば意外な程に話し易く、その禍々しいとも言うような風貌とは裏腹にそう恐れられる事もない。

 そしてまた、喪っていた自身の記憶を取り戻そうとする気持ちも何故だか沸かなかったが、自ずと追い求めてしまうようなその原風景を木彫りとして形にする事を生業とした事や、荒波に呑まれた船の救助活動を他の島民と共に敢行したという事もあって、段々と親しまれるような島民の一員となっていった。

 

*

 

*

 

 僻地であったはずの、島の賑わい。

 最果ての島には、過去になかった食堂や商店街が立ち並ぶようになり、人やポケモンが和気藹々と活気良く過ごすようになる。

 祭りも開かれたり、また観光客も少しずつ訪れるようになり。

 しかしそれは同時に、そこから零れ落ちる旨味を甘受しようとする輩が出始める兆しでもあった。

 

 まず、この島の歴史に深く紐付く形で、しかしこの昨今においては大した影響力も持っていなかったケッキングの一家。

 島が再び賑わいを見せてくるに連れて、当初こそは他の島民と共にとりわけ利権なども争う事なく、平穏に発展を望んでいたように見えていた。多少のみかじめ料を取る事もあったが、それは過去からの慣習に基づくようなものであり、その金額も良心的であった。

 ただ、代替わりをしてからは平穏とは程遠い欲を見せ始めているように見え始めていた。

 

 次に、島の再興しようとするタイミングにて、金の匂いを嗅ぎつけて真っ先にやってきた、ゲンガーを頂点とする半グレの集団。

 彼らは島の歴史に紐付くゴーストポケモン達も勢力に加え、そして更に若者達に薬物によって依存させる事によって無視出来ない影響力を持ち始めていたのだが、ある日『カミナリのしっぽ亭』という食堂で騒ぎを起こした翌日、その頂点であるゲンガーとその取り巻きが一匹残らず行方不明となり、そのまま立ち消えとなった。

 噂では、ケッキングの一家の逆鱗に触れたのではないかと言われており、ケッキングの一家もそれを後から主張しているのだが、それにしては証拠もなければ、その後のケッキングの一家の動きも違和感があるもので、説得力はない。

 

 そして今現在。また新しい勢力がこの最果ての島に根差そうとしていた。

 島の一角の土地を広く買取り、そこに豪邸が建ち始めた。

 最初こそは富豪が移り住んで来るのだろうか? と噂になったが、時が経てどもそこに誰が住むのかも不明なままで、また次第に明らかになっていくその豪邸が、さながら要塞のような堅牢さを見せ始めれば不穏な空気が漂い始める。

 結局、その中に住むのが誰なのかが分かったのは、建物が完成してから……既にこの島の各地に以前よりその身を誤魔化して生活を送っていたゾロアーク達が一斉にその身を明かしてからの事だった。

 そんな彼等は、既に準備が整えた後であり、すぐに行動に出た。

 観察の期間を入念に挟んでいた彼等は、この島が抱えている欠点を次々と挙げる。中にはこじつけのようなものもあったが、最初に至極全うなものを挙げてから、畳み掛けるようにまくしたて、更に思考させる時間すら与えずに選択を強要してくる。

 そしてそれは、商店街への提案に繋がった。

 

「この島から出た事の無えような小山の大将共が、ここから先にやって来る悪意を防げると思うのかあんた達は?

 現に俺達が色んな場所に住んでいても、誰一人としてあんた達は気付かなかった。

 俺達がその気になれば、あのケッキング共も含めてあんた達を一人残らず支配下に置くことだって出来た。

 そうしなかったのは何故か分かるか? 分かんねえよな。俺達にもまだ良心ってものが残っているからだ」

 首領であるような、他のゾロアークより明らかに頭の回るゾロアークは、商店街の中を巡り歩きながら大声で演説する。

 振る舞いはヤクザそのものでも、それに抗う術を今ここに居るポケモンや人間達は持っていなかった。

 ゾロアーク達も、ケッキングの一家が少なく、また善良な用心棒としての並外れた体躯を誇るダイケンキが居ないタイミングを狙っていたのだ。

 そして、それらがもし居ても、全面抗争が勃発したとしても彼等は勝てると踏んでいた。それだけの勢力を集めてきたし、またどちらもゾロアークの特性であるイリュージョンを駆使した戦法を崩す事も出来ないだろうと。

「俺達は、お前達の事をもうどれも知っている。

 例えばあんた。家には一人息子が居るよな? 小さい頃にいじめに遭って引き籠もりになってしまったまま、もう成人も過ぎて何も出来ない子供が。

 そしてお前。でっぷりとした自己管理なんぞ出来てねえと言わんばかりの腹を見せびらかしているお前だ。

 お前がそのいじめの主犯格だろう? 随分と悪どい事をやっていたみてえじゃねえか。そして当のお前は親の傘に守られてばっかりで、何も受け継ぐ事もせずに、家業そのものを傾けさせている、自分じゃあ何の取り柄もないクズだ。

 どっちにせよな、あんたらはこのままじゃ、真っ当で、それでいて俺等なんかよりよっぽど巨大な力を持った企業様に食い荒らされる運命なんだよ」

 そんな事を言いつつも、彼等は全能というまででもない。

 長であるそのゾロアークは島でぼけっと生きてきただけの人間なんぞより遥かに頭が回るし、この場に居る殆どの村民の名前とプロフィールまでを頭に叩き込むまでに至っていたが、それでも分からない事はあった。

 その中の最大の事柄は、以前ここに居たという、ゲンガーを頂点とした半グレ達が何故居なくなったか、だった。

 

*

 

 世にも珍しいポケモンであるビクティニが営む食堂である『カミナリのしっぽ亭』にて、盛大に騒動を起きたその翌日から、ゲンガーを頭とする半グレ共は消えた。

 誰も知る事もなく、さながら天罰でも下ったかのように。根城にしていた古い墓地を後から調べても、抜け殻になったゴーストタイプのポケモンの依代……ミミッキュの布やジュペッタだったであろうぬいぐるみが辛うじて転がっているばかり。

 きちんと実体を持つ人間やゴーストタイプ以外のポケモンに関しては、後から僅かに体の一部だったようなものが漂着するくらい。

 そしてまた、依代を持たないような純粋な霊体で構成されているようなポケモンは、ゲンガーも含めて何もかもが消えてしまっていた。

 天罰だとか神隠しだとか言う島民も少なくなかったが、話を纏め合わせてしまえば、明らかに島民の誰かが……圧倒する実力か、入念な準備か、とにかくそれなりの何かを以てして実行した事だった。

 話を聞く限りのその半グレ共の実力を想定するに、ゾロアーク達でも同様の事が出来なくもないだろうが、それでも誰にも知られず、というのは容易ではないだろう。

 またケッキングの一家が遅れて、自分達が片付けたのだと発表した事に信憑性がない事も、ゾロアーク達は当然掴んでいた。

 だから、数の少ない何人かが共謀して成し遂げた。それかもしくは、多くの島民達が共謀して事実を隠し通している。

 ゾロアーク達はそう結論付けた。

 

 まず前者を調べる事にしたゾロアーク達は、二匹のポケモンに目をつけた。

 それは、むらまさという巨漢のダイケンキと、ムラクモという精悍なヒスイダイケンキだった。同じミジュマル、フタチマルという過程を辿りながらも、異なる姿に進化したその二匹は、戦闘に長ける種族として知られており、また難破した船に閉じ込められた人々を、あろう事か船を両断して助け出したという実績も兼ね備えていた。

 だが二匹共、一日経たずしてその候補から外しても構わないだろうと思えるものだった。

 まず、むらまさに関しては、日々鍛錬を欠かさない事もあって、実力に関してはゾロアークの長であろうとも正面からの戦いは避けたいと思う程のものを感じられた。加えて、かなり遠くからでも監視している自分達に気付くような勘の良さもある。けれども、闇討ちなど出来るような性質ではなかった。

 例え相手が救いようのない悪党だろうとも、正々堂々と決着を付けなければ気が済まない。誰かが共謀しようとも、それを容認する事もないだろう。

 そしてムラクモに関しては、船を両断した事があるとすら思えない程に覇気も何もなかった。むらまさが毎日のように大振りなアシガタナを振り回して鍛錬に励んでいるのに対し、ムラクモはそんな鍛錬など、少なくともゾロアーク達が見ている前では一つも見せていなかったし、また、むらまさが気付いた距離の半分まで行っても、ゾロアーク達に気付いた素振りはなかった。

 更に距離を狭めてみれば流石に違和感のあるような様子を見せたが、その距離は勘が良いとは到底思えないものだった。

 そして何よりも決定的なのは、どちらも一晩で大量のポケモンを惨殺し、それを今の今まで大衆の前でいつも通りに過ごしながら隠し通す、という事が出来るような、ゾロアーク達からしたら同族のような臭いも全くしなかった事だった。

 正々堂々と戦うより、闇討ちや騙し討ちを得意とするヒスイダイケンキのムラクモからも、だ。

 そのような臭いに関してはケッキングの一家の方がよっぽど感じられたが、彼等の実力はそこまで高いものでもなく、彼等がゲンガー達を仕留めたというのは信憑性が薄いというのには、ゾロアーク達も頷いている。

 それならば……多くの島民が共謀して、ゲンガー達をリンチするような形で殺したのだろうか? それが正しいなら、今日、分かるはずだ。

 だが……商店街のポケモンや人間達はどれも、そんな事まで出来るような、激しい敵意や殺意を見せる事はなかった。

 遠くでそれを眺めているムラクモも含めて。

 …………真実は、どこにある?

 この島には、むらまさ以上に実力の立つポケモンや、ポケモントレーナーは居ない。

 ムラクモが実力を隠していたとしても、あの覇気の無さからして、むらまさ以上だとは考えられない。

 それ以外の島民達にも実力のある者は居ても、むらまさまでには及ばず、そして殺しなど経験した事もないような甘ったればかり。そしてケッキングの一家も大した存在ではない。

 ゾロアーク達は、表面上は威風堂々としながらも、言いようのない不安に駆られて。

 その日は突っかかってきた一人に対し、思わず手を出してしまった程だった。




むらまさは、同じくゲストキャラとして既存作から出てきた、
P-tanさんの以下の作品のダイケンキになります。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22362143
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