デカマラ絶倫パトロンおじさんと清楚担当アイドルの種付け後夜祭 作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)
「みんなー!! 今日はホントにありがとーッ!!」
ステージに立っていた一人の美少女が、輝きのシャワーを浴びながら、拍手喝采を全身で受け止めた。ファンたちが感涙してサイリウムを振り回した狂乱は、尊い煌めきの中でフィナーレを迎えたのだ。
アンコールまで完璧に歌い、踊りきった本物のアイドル。全てを背負うには小さすぎる身体は、誇らしげに胸を張って――満面の笑顔で、手を振りながら舞台袖に下りていく。
観客も熱狂的に盛り上がった。まつりも存分に楽しめた。文字通り、最高のライブだったと言えるだろう。
アイドルとしての達成感に満ちたまつりは、ステージの興奮冷めやらぬ身体でスタッフたちに礼を言い、汗だくの疲れた身体のままドームの最上階へと向かった。
その素晴らしい体験は、奇跡と称しても過言ではない出来栄えだった――だからこそ、その〝代償〟を一刻も早く払う必要もあったのだ。
長引かせれば、長引かせるほどつらくなってしまうから。ファンたちの声援が、胸の中で熱さを反響させているうちに終わらせたい悪夢があった。
グッと拳を握ったまつりは、無機質ながらも豪奢な通路を抜けて……荘厳な扉を前にして深呼吸をする。
「……ふぅ……」
最高だった気分を吐き出すように、憂鬱なため息を漏らす。躊躇いを残したノックを経て、煌びやかな夢から――一気に、生臭い現実へと入り込んだ。
「お疲れ様だよ、まつりちゃん。今日も素晴らしいライブだったね! さすがは歴代最強のアイドルだよ!」
豪勢なデスクの向こうには、小太りな中年の男が座っていた。このドーム会場の所有者であり、最高責任者であった。
まつりは引き攣った笑みを浮かべて、「ありがとうございます」と義理を通した。男が賞賛したまつりの〝肩書〟は決して偽りではなく、男の手厚い支援があったからこそ叶った現実でもあったからだ。
各種レッスン、営業活動、ライブ配信……それらをマルチにこなすまつりの努力は血が滲むほどのものだったが……その血染めの蕾を花開かせるには、世知辛い現代では潤沢な水と栄養が必要だった。
己の私財を過剰なまでに投資し、そのヒマワリの開花を間近で見届けた男は……まつりにねっとりとした視線を絡み付かせて、ちょいちょいと手招きをする。
その要求を向けられた少女は、一瞬だけ下唇を噛んで……豪勢な椅子に腰掛けた男の、開かれた脚にちょこんと座った。
男はまつりの肢体を抱き締め、犬の鼻のように湿った頬肉を首筋に押し当てて、ぶりゅぶりゅと頬ずりをする。
「ふっふっふ……うーん、たまらないねぇ……!」
「ど、どうかしました……? まつり、汗臭いですか……?」
「いいや、いつも通り、甘くて良い香りがするよ。ただね……ステージに立って存在感を増していた君が、こうして間近で触れると……思ったよりも小さくて、より可憐に感じるんだよ」
「…………はぁ……」
推しのアイドルが盛況のステージを下りた直後、その身体を独占して思う存分に抱き締めること。その行為が創出する優越感と独占感の大きさは、まつりには想像できなかった。
うなじのニオイをクンクンと嗅がれて、髪の生え際をべろべろと舐められる。総毛立つ嫌悪感が、大げさなほどの身震いを生んだ。
「ドームオーナーの特権でね。一番の特等席から、君の頑張りと煌めきを見せてもらったんだ……カバーもオリジナル曲も最高だった……溢れんばかりの魅力に満ちていたよ」
男がまつりに向ける、大きすぎてねっとりとした好意は本物だった。まつりも、そのことはよく理解していた……だからこそ、この〝関係〟を甘んじているところがある。
こうして不快なことばかりをされていても、無下にすることができない。まつりはその触手のような侵食を振り払って、ビンタをくれてやる気にもなれなかった。
「……それも、貴方のおかげですよ。あんなに良いステージ、どれだけ予算があっても個人じゃ作れなかったと思うんで」
「はっはっは。無理に媚びを売ろうとしなくてもいいんだよ。君というね、唯一無二の存在に与えられた〝特権〟を使っているだけなんだから」
個人が所有しているドームだからこそ、演出を細部までこだわることができるし、リハーサルも多く行える。ハコとしての機能が最高水準にある大規模なライブ会場は、有名アーティストがこぞってスケジュールを押さえたがる人気のステージなのだ。
ただし、その分の見返りは用意しなければならない。一介のアイドルや事務所では払いきれないほどのマージンか、所有者であるオーナーが望むものを提供しなければ厚待遇は受けられない。そして、オーナーは……意外と一途な愛を、ひとりのアイドルだけに向けていた。
まつりにとって、最高に等しい好機と最悪でしかない条件が噛み合ってしまい……こうして、VIPとしての立場を手に入れることができてしまった。
「……せっかくの社交辞令なんだから、素直に受け取ってくれてもよくないです?」
「んふふ、ごめんね。まつりちゃんのね、そういう……そう、屈さない心が好きなんだよ。僕のことを全然好きになってくれないトコロも含めてね」
「……いや、そんなことは……ない、可能性も……」
「いいんだよ、それで。僕は死ぬまで、まつりちゃんに恋をしていたいだけだから」
「…………そんなだから、金持ちなのに一生結婚できないんですよ……」
まつりは嘆息して、鼻を鳴らして肩を落とした。ゴリゴリに猫をかぶることなど即座に諦めて、気怠そうにしながら男に抱かれ続ける。
その生意気で不遜な態度に対し……男が「うんうん、そうでなくっちゃ!」と満足げに頷いているあたり、その不敬込みで〝思い通り〟にされているところもあるのだろう。
嫌う気持ちすらも好かれることは――全てを奪われているに等しい。まつりは、それがイヤで、本当にイヤでたまらなかった。
「飽きっぽいハズの僕がここまで入れ込むアイドルは……ううん、女の子は初めてだ。生涯唯一だと思うねぇ」
「……そりゃどーも」
まつりは心底から苦虫を噛み潰して、ため息を漏らして視線を落とした。
アイドルとして、大切なファンたちに最高のライブを届ける……その目標のために何でもするつもりだった。
しかし、思っていた以上に自分は強情だった。最高で最高な条件を提示した男に、身体までは許しても……心から媚びへつらうことはできなかった。そして不運なことに、その気高いプライドまで気に入られてしまった。
その異様な噛み合い方をした暗黙の契約が、ズルズルと続いてしまっている……それどころか、〝絆〟は深まる一方だった。
もはやただの枕営業ではなく、個人との肉体関係ありきの〝支援〟と〝見返り〟を提供し合っている状態に落ち着いていた。